経営事項審査の評点を試算するExcelをClaudeで組み立てて検算する
経審の総合評定値Pを構成するX1・X2・Y・Z・Wの式を試算表に落とし、Claude for Excelで組み立てて、上下限の値と通知書の点数で検算する手順です。
経営事項審査の評点を試算するExcelをClaudeで組み立てて検算する
経営事項審査(経審)の総合評定値Pは、5つの評点を決まった重みで足した値です。式が公表されているので、決算数値から点数を見積もる試算表をExcelで作れます。Claude for Excelは、その表の組み立てと、式の抜けや桁違いの検算に向いています。
この記事では、X1・X2・Y・Z・Wを1枚ずつのシートに分けて試算表を組み、上下限の値と許可行政庁の通知書で検算する手順を示します。試算はあくまで目安です。正式な点数は、行政庁の審査結果として通知される値です。
決算変更届の書き方と経審の関係は、建設業の決算変更届の書き方をClaudeで下書き・点検する手順にまとめています。
総合評定値Pは5項目の加重和
経審は「経営状況」と「経営規模等評価」を数値で評価する審査で、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受けます。国土交通省の資料では、総合評定値Pの式は次のとおりです。
P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W各項目の中身と、令和8年7月1日以降の申請に適用される最高点・最低点を表にまとめます。
| 記号 | 項目 | ウェイト | 最低点 | 最高点 |
|---|---|---|---|---|
| X1 | 項目完成工事高(許可業種別) | ウェイト0.25 | 最低点397 | 最高点2,309 |
| X2 | 項目自己資本額と利払前・税引前・償却前利益 | ウェイト0.15 | 最低点454 | 最高点2,280 |
| Y | 項目経営状況 | ウェイト0.20 | 最低点0 | 最高点1,595 |
| Z | 項目技術職員数と元請完成工事高(許可業種別) | ウェイト0.25 | 最低点456 | 最高点2,441 |
| W | 項目社会性等 | ウェイト0.15 | 最低点▲788 | 最高点2,073 |
Pそのものの最低点は163、最高点は2,159です。この2つの値は、後で検算の基準点に使います。
試算表のシート構成
1ブックを次の4種のシートに分けると、式の見通しがよくなります。
- 入力シート: 決算書から拾う数値(完成工事高の年間平均、自己資本額、利払前・税引前・償却前利益の平均、技術職員数値、元請完成工事高の年間平均など)
- 換算表シート: 公表された評点の換算式を、区分ごとに1行で持つ表
- 計算シート: X1・X2・Z・Y・W・Pを式で求める
- 検算シート: 上下限の値と通知書の点数との差を並べる
入力と式を分けておけば、入力を差し替えても、Claudeが数式の参照関係を保ったまま値を更新できます。Claude for Excelは、数式の関係を保ったまま値を更新する機能を備えています。
年間平均は2年と3年の両方を入力に持つ
完成工事高と元請完成工事高の年間平均は、申請する事業年度の開始日の直前2年か直前3年のどちらかで求めます。選ぶのは申請ごとで、審査対象の建設業のうち一部だけ2年にして残りを3年にすることはできません。元請完成工事高も、完成工事高で選んだ年数に合わせます。
そこで入力シートには、完成工事高と元請完成工事高の「2年平均」「3年平均」を別の列で持たせます。計算シートでは2年平均だけで求めたX1・Zと、3年平均だけで求めたX1・Zを並べ、Pが高くなるほうと、通知書の点数に合うほうを見比べます。年数の選択は点数を左右するので、どちらで試算したかを表の見出しに残します。
技術職員数値は資格区分ごとの人数から出す
Zの技術職員数は、資格区分ごとの人数に重みを掛けた「技術職員数値」で決まります。重みは、一級監理受講者が6、一級技術者(一級監理受講者を除く)が5、監理技術者補佐が4、基幹技能者・レベル4技能者(一級技術者と監理技術者補佐を除く)が3、二級技術者が2、その他の技術者が1です。この合計を、許可を受けた建設業の種類ごとに求めます。
入力シートは、建設業の種類を行、資格区分を列にして人数を置きます。重みは別の1行に置いておくと、SUMPRODUCTで合計を出せます。
=SUMPRODUCT(入力!C3:H3, 入力!$C$2:$H$2)C2:H2に6・5・4・3・2・1の重み、C3:H3にその業種の人数が入っている場合の式です。ただし、1人の職員が技術職員として申請できる建設業の種類は2つまでです。検算シートには、職員ごとに申請した業種の数を数えて3以上がないか確かめる項目を置きます。
X1・X2・Zは区分ごとの一次式で点数が決まる
国土交通省の「経営事項審査の事務取扱いについて」には、X1・X2・Zの換算式が区分ごとに載っています。たとえばX1は、区分(1)が2,309点の固定値です。区分(2)は「114×完成工事高の年間平均÷20,000,000+1,739」で、区分(42)は「131×完成工事高の年間平均÷10,000+397」と、どの区分も「係数×数値÷除数+定数」の形です。
この形なら、換算表シートは4列で持てます。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| A | 内容区分の下限(告示の別表の区分に合わせる) |
| B | 内容係数 |
| C | 内容除数 |
| D | 内容定数 |
区分(1)のように固定値の行は、係数0・除数1・定数2,309と置きます。Excelでは、下限の列を昇順に並べたうえで、次の式で点数を引けます。
=INT(INDEX(換算表!B:B,MATCH(入力!B5,換算表!A:A,1))*入力!B5
/INDEX(換算表!C:C,MATCH(入力!B5,換算表!A:A,1))
+INDEX(換算表!D:D,MATCH(入力!B5,換算表!A:A,1)))評点の小数点以下は切り捨てる、と各表の注に書かれているため、INTで包みます。区分の境目の金額は告示の別表に定められており、換算式の表には載っていません。別表の値を換算表シートの列Aに写す作業が、試算表づくりで最も手間のかかる部分です。
X2とZには、合成のルールがあります。
- X2は、自己資本額の点数と平均利益額の点数を足して、2で割ります(小数点以下切り捨て)
- Zは、技術職員数の点数に5分の4、元請完成工事高の点数に5分の1を乗じて足します(小数点以下切り捨て)
この2つの合成は、計算シートで別の行に分けて書きます。1つの式にまとめると、検算で差が出たときにどこが原因か追えません。
YとWは式の入れ方が違う
Yは、経営状況の分析機関が出す経営状況点数Aから求めます。換算式は次のとおりです。
Y = 167.3×A + 583Aは小数点以下2位未満を四捨五入した値で、Yの小数点以下は四捨五入します。0に満たないときは0とみなします。Excelでは =MAX(0,ROUND(167.3*入力!B10+583,0)) です。
Aそのものは、登録された分析機関が計算します。試算表では8つの指標から自前で組み立てず、分析機関から届く結果通知書のAを入力欄に置くのが安全です。総合評定値の請求でも、経営状況の分析結果通知書の原本を添える扱いになっています。
Wは、社会性等の各項目の点数を合計し、10×175÷200を掛けて、小数点以下を切り捨てます。
W = INT(各項目の点数の合計 × 10 × 175 / 200)社会性等の合計点数の最高点は237、最低点は令和8年7月1日以降の申請で▲90です。W全体の最高点2,073は237×8.75=2,073.75の切り捨てと合い、最低点▲788は▲90×8.75=▲787.5をINTで切り捨てた値と合います。負の数にTRUNCを使うと▲787になるため、Wの式にはINTを使います。
Claude for Excelに組み立てを任せる手順
試算表を組み立てて通すまでの流れ
- 1
信頼できるコピーで始める
決算書の数値を拾った入力シートを、元のブックのコピーに置きます。外部から受け取ったテンプレートや取引先のファイルは、そのまま開いて指示しません。
- 2
換算表と計算式の骨格を作らせる
入力シートの項目名とセル位置を伝え、換算表シートと計算シートの骨格を作らせます。区分の下限は自分で写し、Claudeには写した表を前提に式を書かせます。
- 3
式の内訳を説明させる
P、X1、Wのセルを指して「このセルがどの式でどう求まるか」を尋ねます。回答にはセル単位の出典が付き、クリックで該当セルに移動できます。
- 4
検算シートで上下限を流す
入力に最低点・最高点が出る極端な値を入れ、Pが163と2,159になるかを確かめます。
- 5
通知書の点数と突き合わせる
行政庁の通知書にあるX1・X2・Y・Z・W・Pを検算シートに写し、試算値との差を列で出します。
次のようなプロンプトで、骨格づくりを始められます。
入力シートのB5(完成工事高の年間平均)、B6(自己資本額)、B7(平均利益額)を使い、
計算シートにX1・X2を求める式を作ってください。換算表シートの
A〜D列は、区分の下限・係数・除数・定数です。評点の小数点以下は
INTで切り捨てます。既存のセルは書き換えず、新しい行に追加してください。「既存のセルは書き換えない」「新しい行に追加する」と範囲を絞る指示は、公式のベストプラクティスにある「何を変えるかを具体的に伝える」に沿った書き方です。
検算で見る3つの差
組み上がった試算表は、次の3段階で検算します。
- 上下限の再現。Pの最低点163と最高点2,159を、5項目の最低点・最高点から手計算で出せます。0.25×397+0.15×454+0.20×0+0.25×456+0.15×(▲788)=163.15、0.25×2,309+0.15×2,280+0.20×1,595+0.25×2,441+0.15×2,073=2,159.45で、端数を落とすとそれぞれ163、2,159です。試算表に極端な入力を与えて同じ値が出れば、重みと符号の入れ違いはありません。
- 各項目の範囲チェック。X1が397〜2,309、X2が454〜2,280、Yが0〜1,595、Zが456〜2,441、Wが▲788〜2,073に収まるかを、検算シートでIF式にします。範囲を外れた項目は、換算表の写し間違いか、入力の桁違いです。
- 通知書との差。許可行政庁から届く結果と試算の差を項目ごとに並べます。差が出た項目だけを、Claudeに「このセルの値はなぜこうなるか」と辿らせます。
通知書との差の原因として多いのは、審査基準日や審査対象年の取り違え、許可業種ごとの数値の拾い漏れ、区分の境目の写し間違い、2年平均と3年平均の選び違い、技術職員を3業種以上に数えた重複です。数値は試算表の側で直し、行政庁の結果は変えません。
令和8年7月1日施行の改正をWに反映する
令和8年2月6日公布の改正は、令和8年7月1日以降の申請に適用されます。試算表のWは、改正前後で項目が変わります。
- 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入に関する項目(W1-1〜W1-3、各▲40点)が削除された
- 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無が新設され、5点が加わる
- 就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況は、最高15点から10点に配点が見直された
- 建設機械の保有状況で、不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが加点対象に追加された
Wの最低点が▲788になるのは、この改正後の数字です。改正前の試算表を使い回すと、W1の項目が残って最低点が合いません。過去の決算で試算した旧版のブックが手元にあるときは、W項目の列を改正後に組み替えてから、上下限の検算をやり直します。
公式が示すClaude for Excelの限界
Claude for Excelのヘルプは、最終的な顧客向け成果物を人の確認なしに出すこと、検証なしの監査上重要な計算、規制対象や機微なデータを統制なしに扱うことを推奨していません。経審の点数は公共工事の入札の格付けに使われるため、試算の誤りがそのまま申請方針の誤りにつながります。上の検算を通したうえで、人が式と入力を見直す流れにします。
そのほか、試算表づくりで押さえておく条件は次のとおりです。
- マクロとVBA、データテーブルには対応しません。式とINDEX/MATCH、IFで組みます
- Excel 2016・2019の永続ライセンス版やボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません
- 外部由来のファイルには、Claudeを誤作動させる隠し指示が含まれることがあります。信頼できるファイルだけに使います
- 入出力はバックエンドで30日以内に削除されます。社内の保持設定は引き継がれず、Enterpriseの監査ログにも入りません
Excelの他の使い方は、月次予実対比レポートの差異分析や資金繰り表の週次更新でも扱っています。数式を保ったまま編集する性質の比較は、Claude for ExcelとCopilotの比較が参考になります。
試算値は申請前の見立てに使い、点数は通知書で確定する
総合評定値の請求は、許可行政庁の計算事務として位置づけられ、任意請求です。発注者によっては請求を義務づけている場合があります。試算表で見積もった点数は、申請前に決算の組み方や技術職員の数を変えたときの影響を比べる材料として使えます。正式な点数は、経営状況の分析機関の結果通知書と、行政庁の経営規模等評価の結果通知書で決まります。
手数料は、経営規模等評価の申請が8,100円に審査対象業種1種類につき2,300円を加えた額、総合評定値の請求が400円に1種類につき200円を加えた額です。経営状況分析の手数料は、登録された分析機関へ直接問い合わせます。