Claudeの金融アドバイザー向けスキルで会議準備と相続・税を突合する手順
Claude for Financial Advisorsのプラグインに入る8スキルのうち、会議準備と相続・税の突合を担う2つが何を読み、どこで止まるかを説明します。
Claude for Financial Advisorsのプラグインには、顧客面談の準備から相続・税の突合まで、8つのスキルが入っています。会議準備を担うのは /pre-meeting、相続と税を担うのは /estate-and-tax-brief です。どちらも、接続済みのコネクタから読み取った情報を突き合わせて、アドバイザーが目を通すための資料にまとめます。
8つのスキルは、どのコネクタから何を読むのか
プラグインに入るスキルと、各スキルが主に頼る接続先を並べます。スキル名とコネクタ名は、GitHubリポジトリのREADMEと各スキルの定義に沿っています。
| スキル | 何をするか | 主な読み取り先 |
|---|---|---|
/onboarding | 何をするか事務所の情報と技術スタックを聞き取り、ツールを接続してサンプルを動かす | 主な読み取り先接続を選んだ各コネクタ |
/pre-meeting | 何をするか顧客レビューの準備資料を作る | 主な読み取り先CRM・ポートフォリオ・Wealth.com・Zocks・メール・MoneyGuide |
/post-meeting | 何をするか会議の記録や文字起こしをCRMのノートにする | 主な読み取り先CRM |
/compliance | 何をするか顧客向け資料をSEC Marketing Ruleなどで事前点検する | 主な読み取り先点検対象の文書 |
/prospect-intake | 何をするか見込み客の発言を要約・アナリスト引き継ぎ・案内メモに整える | 主な読み取り先見込み客の発言 |
/portfolio-rebalance-review | 何をするか目標配分からのずれを見て、税を考慮したリバランス案を並べる | 主な読み取り先ポートフォリオ系のコネクタ |
/alts-brief | 何をするかオルタナティブ投資の状況を面談向けにまとめる | 主な読み取り先iCapital・Addepar |
/estate-and-tax-brief | 何をするか遺産計画と口座の名義・受取人を突き合わせる | 主な読み取り先CRM・Wealth.com・Schwab・Orion・Addepar・iCapital |
READMEには、どのスキルも「接続できているコネクタから読み、接続されていない先は貼り付けかアップロードで代える」とあります。コネクタが一つも揃っていなくても、スキルは止まらずに動く設計です。
会議準備は、6つの情報源を並列に集めて1枚にする
/pre-meeting に必要な入力は、世帯名またはメールアドレスと、レビューの対象期間(四半期・年次・随時)の2つです。期間は、アドバイザーが気にしなければ四半期が既定になります。入力が揃うと、スキルは次の6つの情報源を同時に読みに行きます。
準備資料ができるまでの流れ
- 1
世帯を特定する
CRMを名前で検索し、候補が複数あれば名前・一部伏せたメール・口座を見せて、どの世帯かをアドバイザーに選ばせます。名前の一致だけで進めることはありません。
- 2
情報源ごとに読む
CRM、ポートフォリオ(Orion・Addepar・Envestnet Tamarac)、Wealth.comの遺産・税の変化、Zocksの面談記録、Gmail・Outlookのやり取り、MoneyGuideのプランが対象です。情報源ごとに別のサブエージェントが動きます。
- 3
食い違いを止める
同じ世帯について、2つの情報源の重要な事実が食い違えば、資料を仕上げる前にアドバイザーへの質問として止めます。
- 4
8節の資料にまとめる
世帯の概況、関係性のシグナル、前回からの経過、ポートフォリオ、計画上の機会、議題案、想定問答、アクション案の順に並べます。
世帯の特定を、並列に動くサブエージェントではなく親側の仕事に残している点が設計の肝です。サブエージェントは世帯を自分で決めず、候補が複数ある場合は IDENTITY MISMATCH を返して止まります。取り違えた顧客のデータが準備資料に混ざる事故を、構造で防ぐ書き方です。
情報源ごとの読み方に、実務の癖が書き込まれている
スキルの定義には、各コネクタの癖への対処が具体的に書かれています。
- Orion Connect: 新しい5つのツールは世帯・口座の特定と現在額の取得だけで、保有銘柄・運用成績・ずれ・手数料は返しません。これらはレポート生成の手順を通します。生成の前にアドバイザーの確認を取り、返ってくるのは本文ではなくレポートへのリンクで、リンクは24時間で失効します。
- Zocks: 面談の準備資料そのものを返す窓口はなく、会議・AI要約・インサイトを個別に読む作りです。要約を優先し、文字起こしは顧客の言葉をそのまま引くときだけに使います。既定で読むのは直近1〜2回の会議です。
- MoneyGuide: 期間の概念がなく、プランの現在の姿を読みます。プランがない世帯では、純資産は返るものの成功確率と目標は「該当なし」と書きます。0%と書くことも、接続待ちと書くこともしません。
- メール: 四半期レビューなら直近3〜4か月、年次なら約12か月を検索し、顧客の待っている依頼、アドバイザーの約束、生活上の出来事、不満の兆しを拾います。
数字の扱いも決まっています。MoneyGuideの値は返ってきたとおりに引用し、再計算や再丸めをしません。Wealth.comの税の定数も、該当年の値として引用するだけで、手元で推定しません。
落とし穴
成績が劣後した世帯でも、準備資料は悪い話から始まる
スキルの注意書きには、ポートフォリオがベンチマークを下回った場合は想定問答の先頭に置き、率直な説明を添えるとあります。顧客に画面共有する前提の資料なので、劣後を埋もれさせない順序づけです。顧客に見せる抜粋は /compliance に通すことも勧められています。
相続・税の突合は「書類が言うこと」と「口座が示すこと」を比べる
/estate-and-tax-brief が扱うのは、遺産計画の書類と実際の口座設定のずれです。入力は世帯名だけです。次の4つの読み取りが並列に走ります。
- CRMから、前回の面談メモと遺産計画に関する未了のアクション(世帯レコード自体と各人のレコードの両方)
- Wealth.comから、信託の構成、主要書類(遺言・信託契約・委任状・医療指示書)と、それぞれが署名・執行済みか
- Wealth.comから、直近の申告年の税の振り返りと、その年の税の定数
- Schwab・Orion・Addepar・iCapitalから、口座の名義と受取人
署名の状況は、書類の種類やファイルにあることから推測せず、ソースの書類一覧の記載どおりに扱います。税の振り返りは申告済みの納税申告書が対象で、遺言や信託には存在しないため、それらに対して求めることもありません。
突合の結果は4列の表と、優先度つきのフラグになる
読み取りが済むと、titling-compare というサブエージェントが「計画が意図すること」と「口座の実際の姿」を1行ずつ突き合わせます。表の列は、順序まで固定されています。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| Account / Position | 内容口座または保有の名前 |
| Intended per plan | 内容遺産計画が意図する名義・受取人 |
| Actual titling / beneficiary | 内容口座に実際にある名義・受取人 |
| Match? | 内容一致しているか |
計画側にあるのに対応する口座が見つからない項目も、落とさずに報告されます。信託が作られたのに資産が移されていない状態は、この形で表に出てきます。
不一致は優先度で並べ替えます。
- 高: 遺産の相当部分を持つはずの信託に資産が入っていない状態、元配偶者が受取人のままといった、資産の行き先を実際に誤らせる不一致
- 中: 資産の行き先は誤らせないが、計画が意図どおりに働かない名義の食い違い(信託への一部移管、口座種別の誤りなど)
- 低: 受取人の指定がなくても既定や予備の仕組みで動く場合や、軽微な書類の不備
同じ「高」の中では、金額と影響の大きさで並べます。どのフラグも、締めくくりに「顧客の遺産担当弁護士を交えてから助言する」という趣旨の一文が付きます。ファイルの冒頭にある注意書きだけでは、フラグだけ読んだ人に届かないためです。
この資料はMarkdownファイルとして先に書き出され、.docxやPDFへの変換は頼まれたときだけ行います。接続できない情報源があっても、その節を「接続待ち」と示してファイルは作ります。
組み合わせると、1回の面談サイクルに収まる
会議準備と相続・税の突合は、単独でも使えますが、並べると面談の前後が一続きになります。
- 面談前に
/pre-meetingで世帯の概況をつかむ。iCapitalかAddeparが接続されていれば、オルタナティブ投資の有無を軽く確かめる。あれば一行だけ触れ、詳細は/alts-briefを案内する - 保有に未公開ファンドがあれば、
/alts-briefで出資約束額・払込済み・未払込、資本拠出と分配を見る。IRRなどの成績指標はプラットフォームが計算した値をそのまま引用し、スキル側で再計算しない - 相続の論点がある世帯では
/estate-and-tax-briefを走らせ、フラグに承認したものをCRMのタスクにする - 面談後は
/post-meetingで記録をCRMのノートにする - 顧客に送る文面や資料は
/complianceで事前点検する
/compliance は、顧客向けの文書が「広告」に当たるかを最初に判定し、そのうえでSEC Marketing Ruleの一般的な禁止事項を順に当てます。出力は指摘の表、追記すべき開示、書き直し案です。
自分の業務に写すなら、突合型スキルの型を借りる
日本の読者がこのプラグインを入れても、接続先のサービスが使えないため、そのままは動きません。借りられるのは、スキルの書き方です。
突合型のスキルでは、次の4点が定義に明文化されています。
- 本人(対象)の特定は親が持ち、並列の読み取りには任せない
- 情報源が欠けても、その節だけを「接続待ち」にして成果物を出す
- 二つの情報源が重要な事実で食い違ったら、黙って片方を選ばずに止める
- 外部への書き込みは、案を見せて承認を得てから
たとえば、経理の月次チェックを同じ型で書くなら、SKILL.md に次のような断片を置けます。以下は構造を示す例で、公式の定義の写しではありません。
## 対象の特定
取引先名で会計システムを検索し、候補が複数あれば名前と取引先コードを
見せて、どれかをユーザーに選ばせる。名前の一致だけで進めない。
## 突合
契約書の条件(意図)と請求データ(実際)を1行ずつ比べ、
契約側にあって請求側にない項目も落とさず表に出す。
## 書き込み
会計システムへの修正は案として示し、ユーザーが承認したものだけ実行する。Cowork向けのプラグインの組み方はCoworkの部門別プラグインの作り方にあります。金融機関でClaudeを導入するときの安全面は金融機関のClaude導入とFISCの安全対策チェックリストが扱っています。
導入の前提と、見落としやすい食い違い
アナウンスによると、アドバイザー向けプラグインはすでに利用できます。登録投資顧問にはEnterpriseプランが勧められており、理由は記録保存を支える監査ログがあるためです。Enterpriseの契約があれば、Coworkのプラグインブラウザで「Claude for Financial Advisors」を探してインストールし、案内に沿って接続先を選びます。リポジトリのREADMEには、Claude Codeのコマンドでの導入も載っています。
claude plugin marketplace add anthropics/claude-for-financial-advisors
claude plugin install claude-for-financial-advisors新規にライセンスを申し込んだ会社への利用クレジットは、2026年9月末までの申請が対象でした。すでに締め切られています。
導入前に押さえたい点が3つあります。
- Schwabコネクタの扱い: 発表記事にはSchwabのコネクタが列挙され、プラグインが連携すると書かれています。一方、READMEのコネクタ表ではSchwabに「coming soon」が付き、スキルはSchwabに触れる箇所で貼り付けかアップロードに切り替わると記されています。相続・税の突合は口座の名義と受取人をSchwabから読む前提の部分があるため、利用前に接続状況を確かめる必要があります。
- リポジトリの位置づけ: READMEは、このリポジトリを「参考実装」とし、積極的な保守も監視もしておらず、貢献も受け付けないと述べています。事務所ごとに手を入れて使う前提です。
- 助言ではない旨の免責: READMEの免責は、出力が投資・法務・税務などの助言ではなく、顧客への直接配布には事務所の審査と承認が要ると定めています。プラグインの利用は、認可を受けた事務所と専門職に限られます。
発表記事は、投資の推奨、顧客とのやり取り、コンプライアンスの判断といった規制対象の活動に、人による確認と承認が残ると書いています。8つのスキルはどれも、情報を集めて整理する側に回る設計です。
Coworkの全体像はCowork完全ガイドに、同じ型の別業種の例はSalesforce in Claudeのニュースにあります。金融業界全体での使い方は金融業界のClaude活用ガイドで職種別に整理しています。