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Claudeに敬語レベルを指定するプロンプト設計

Claudeに敬語レベルを指定するプロンプト設計

社内メール・議事録・稟議書では求められる敬語の格が違います。読み手との関係を明示する・実例を渡すという2つの技術で、Claudeの出力レベルを狙って揃える方法を解説します。

Claudeに敬語レベルを指定するプロンプト設計とは

Claudeに日本語のビジネス文書を書かせると、指定なしでは無難な丁寧語止まりの文章になりがちです。社内メールと社外向けの稟議書では求められる敬語の格がまったく違うのに、同じ「丁寧に書いてください」という依頼では書き分けが安定しません。効くのは「敬語の種類を名指しする」ではなく、読み手との関係と文書の格式を具体的に伝え、目標の文体の実例を渡すことです。

Claudeの公式プロンプト設計ガイドは、Claudeを「自分たちの慣習を知らない新入社員」に例え、欲しい出力を具体的に指定するほど結果が良くなると説明しています。敬語もこの原則がそのまま当てはまります。「敬語で」ではなく、誰に対するどの文書かを具体的に伝えるほうが再現性が上がります。翻訳調や敬語の過不足が繰り返し出る場合にカスタム指示で直す方法はClaudeの日本語が不自然なときカスタム指示で直す方法で扱っています。

敬語の3分類とプロンプトでの使い分け

日本語の敬語は大きく尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類に分かれます。Claudeへの指示では、この用語をそのまま使うより、どの立場からどの立場へ向けた文書かを伝えるほうが具体的に伝わります。

敬語の種類機能プロンプトでの伝え方の例
尊敬語機能相手の動作を高める(「おっしゃる」「ご覧になる」)プロンプトでの伝え方の例「取引先の発言を書く部分は尊敬語で」
謙譲語機能自分側の動作をへりくだる(「申す」「拝見する」)プロンプトでの伝え方の例「自社の対応を書く部分は謙譲語で」
丁寧語機能文末を整える(「です」「ます」「ございます」)プロンプトでの伝え方の例「文末はですます調で統一」

同じ文の中でも、相手の行為には尊敬語、自分側の行為には謙譲語を使い分ける必要があります。この使い分けを毎回言語化するのは手間なので、実務では「敬語の種類」より次に説明する「読み手との関係」を先に伝えるほうが早く目的の文体に到達します。

社内メール向けのプロンプト例

社内メールは丁寧語中心で、過度な尊敬語・謙譲語は不要です。読み手が上司か同僚かで格式を変えます。

以下の内容を、上司に送る社内メールの文面にしてください。
・宛先は直属の上司(部長)
・文体はですます調、丁寧語中心。尊敬語は最小限でよい
・件名も1行で提案してください
 
内容: 来週の会議を1時間遅らせたい。理由はクライアントとの打ち合わせが延びたため。

「上司に送る」「部長」という関係性の明示が、格式のレベルを決める主な情報になります。同僚宛てなら「同僚に送るチャットメッセージ」と書くだけで、丁寧語も控えめな文体を指定できます。

議事録向けのプロンプト例

議事録は敬語を使いません。発言者への敬意より、事実を簡潔に記録する常体(だ・である調)が標準です。ここで「敬語で」と依頼すると逆に不自然になります。

以下の会話メモを議事録形式に整えてください。
・文体は常体(だ・である調)。敬語は使わない
・発言者名は「◯◯氏」ではなく「◯◯」のみで統一
・決定事項と次回までのアクションを最後にまとめてください

議事録で敬語を使わない慣習を知らないままClaudeに依頼すると、発言の引用部分にだけ丁寧語が残るなど、文体が混在することがあります。「常体で」と肯定形で指定するのが基本です。避けたい表現を禁止形で添える場合は、肯定形の指定を補う位置づけにとどめます。

議事録を社外にも共有する場合は、社内用の常体版と、社外向けの丁寧語版を別々の依頼として出します。1つの依頼で両方を求めると、文体の指定が競合するからです。

稟議書・起案文書向けのプロンプト例

稟議書は社内文書の中でも最も格式が高く、定型表現が多い文書です。謙譲語を使った自社行為の記述と、決裁者への配慮を示す言い回しが求められます。

以下の内容で稟議書の本文を作成してください。
・宛先は決裁者(役員)、起案者は自分(担当者)
・「標記の件につきまして」のような稟議書らしい定型的な書き出しから始めてください
・自社側の行動を書く部分は謙譲語(「~いたします」「~させていただきます」)を使ってください
・箇条書きで「起案理由」「概要」「費用」の3項目を立ててください
 
内容: 新しい会議室予約システムを導入したい。理由は現行システムの予約重複が月10件発生しているため。費用は年間30万円。

稟議書のような型が強い文書では、求める文体を言葉で説明するより、社内の過去の稟議書を1通抜粋して「このような文体で」と実例を渡すほうが具体的に伝わります。稟議書の項目洗い出しとテンプレート化の手順はClaudeで稟議書をテンプレート化する方法にまとめています。

過去の稟議書を実例として渡す書き方

公式のプロンプト設計ガイドは、実例を出力の形式・トーン・構造を導く最も確実な手段の1つに挙げ、3〜5個を勧めています。実例は依頼文と混ざらないよう、<example> タグで包むと指示と見分けがつくとも説明しています。複数渡すときは <examples> で束ねます。

以下の稟議書を、文体の参考にしてください。
 
<example>
(過去の稟議書の本文をここに貼る)
</example>
 
この文体に合わせて、次の内容で稟議書の本文を作成してください。
実例の案件名・金額・固有名詞は使わず、文体と構成だけを参考にしてください。
 
内容: 新しい会議室予約システムを導入したい。費用は年間30万円。

同じガイドは、実例に「実際の用途に近いこと」と、意図しない型を拾わせないよう「変化があること」を求めています。稟議書に置き換えると、案件の種類や金額が違う稟議書を混ぜて渡すほど、文体だけが共通点として残りやすくなります。1通しか渡せないときは、上のように「内容は流用しない」と添えると、実例の案件名や数字が新しい稟議書に紛れ込むのを避けられます。

過去の稟議書には社名・氏名・金額が入っているので、貼る前に伏せ字へ置き換えておくと、社外のサービスに内部情報を渡さずに済みます。

システムプロンプトで敬語の基準そのものを固定する

稟議書や社外メールを継続的に作成する場合は、依頼文ごとに敬語のルールを説明し直す代わりに、システムプロンプト側に役割を設定しておく方法もあります。Claudeの公式プロンプト設計ガイドは、システムプロンプトで役割を設定すると、その用途向けの振る舞いとトーンに焦点が合うと説明しています。役割は1文でも違いが出るとされており、長い設定書を用意する必要はありません。

system: あなたは日本企業の総務部で稟議書や社内文書の作成を担当する事務担当者です。相手の行為には尊敬語、自社側の行為には謙譲語を正確に使い分け、慇懃無礼にならない自然な丁寧さを保ってください。

敬語の基準を役割としてシステムプロンプト側に固定しておけば、個々の依頼文では宛先と内容だけを伝えれば済み、案件ごとに敬語のルールを書き直す手間が減ります。

社外(初対面の取引先)向けメールのプロンプト例

社外向けはさらに格式が上がります。書き出しの定型句と、自社・相手側どちらの行為かを区別した敬語の使い分けが要点です。

以下の内容を、初めて取引する社外の担当者に送るメールにしてください。
・書き出しは「お世話になっております」のような社外向けの定型句から
・相手の行動には尊敬語、自社の行動には謙譲語を使ってください
・結び(「よろしくお願いいたします」等)まで含めてください
 
内容: 見積書を確認したので、来週火曜に打ち合わせを設定したい。候補日時は10時か14時。
くらべる

社内メールと社外メールの指定の違い

丁寧語中心

社内メール

宛先の役職(上司か同僚か)で格式を決めます。尊敬語・謙譲語は最小限で足ります。

定型句あり

社外メール

書き出し・結びの定型句を指定します。相手の行為には尊敬語、自社の行為には謙譲語と、主語ごとに分けます。

同じ取引先でも、初めての連絡か、何度もやり取りしている相手かで距離感は変わります。「初めての連絡」「これまでに3回メールをやり取りしている」のように関係の履歴を一言足せば、書き出しの定型句をどこまで固くするかの手がかりになります。宛先に社内の上司と社外の担当者が混在するときは、どちらの格に合わせるかも先に書いておくと、文面の途中で基準がぶれません。

よくある失敗パターン

敬語レベルを指定しても狙いどおりにならないとき、原因は次のいずれかであることが多いです。

失敗

敬語指定がずれる3つの型

  • 二重敬語

    「おっしゃられる」(「おっしゃる」+「られる」)のように、尊敬語を重ねる誤りです。書き言葉全般で起きやすい誤りです。「尊敬語は『おっしゃる』のように1回だけ使う」と望む形で書き、避けたい例として「おっしゃられる」を添えると伝わります。

  • 尊敬語と謙譲語の取り違え

    自社側の行為に尊敬語を使う(「弊社がご覧になります」)誤りです。「自社側の行為には謙譲語、相手側の行為には尊敬語」と主語ごとに指定します。

  • 慇懃無礼

    「丁寧に」だけの依頼には上限がなく、どこまで丁寧にするかを決める材料が足りません。柔らかい丁寧さが狙いなら「丁寧すぎない、自然な丁寧語で」と上限も書きます。

相手から届いたメールに返信するとき

返信では、相手の文面そのものが格式の手がかりになります。届いたメールを依頼文に貼り、「この相手の格に合わせて返信してください」と添える方法です。公式ガイドは、指示・文脈・入力が混ざるプロンプトでは、それぞれを専用のタグで包むと取り違えが減ると説明しています。

次の<incoming_mail>は、取引先の担当者から届いたメールです。
この相手の文面の丁寧さに合わせて、日程変更を承諾する返信を書いてください。
自社の行為には謙譲語、相手の行為には尊敬語を使ってください。
 
<incoming_mail>
(届いたメールの本文をここに貼る)
</incoming_mail>

届いたメールの本文を読んで返信するのは人間でも自然な手順で、「相手の文面に合わせる」と指定すれば、読み手との関係を言葉で説明し切れない場合の代わりになります。ただし、相手が自分より上の立場か同格かは文面だけでは決まりません。「相手は取引先の部長」のように役職を一言添えておくと、格のずれを避けられます。返信が必要な相手が複数いるときは、それぞれの役職を並べて書きます。仕上がった文面は、そのまま送らずに「二重敬語や、自社と相手の行為の取り違えがないか見直してください」と別の依頼で点検させることもできます。

ネイティブらしい自然さを狙う追加の一手

Claudeの多言語対応に関する公式ドキュメントは、出力の自然さを高める工夫として、ネイティブスピーカーのような慣用的な言い回しを使うよう依頼する方法を挙げています。英語に限った話ではなく、日本語の敬語に当てはめるなら、「教科書的な敬語ではなく、実務でよく使われる自然な言い回しで」と付け加える使い方が考えられます。

さらに、入力と出力の言語を明示すると信頼性が上がること、文章は翻字ではなく原語の文字で渡すことも挙げています。英文メールを日本語の返信に直す依頼なら、「出力は日本語のビジネスメール」と書くだけでも指定になります。

また、文化的な文脈への配慮が翻訳以上に重要になる場面があるとも述べています。敬語は文法規則であると同時に、上下関係や社内外の距離感という文化的な文脈を反映する仕組みでもあります。読み手との関係性を具体的に伝えるという本記事の技術は、この「文化的文脈を明示する」という原則の日本語ビジネス文書における実践形と言えます。

敬語以外の丁寧さ — 美化語の扱い

敬語の3分類とは別に、「お茶」「ご飯」のように名詞に「お」「ご」を付けて上品さを添える美化語という分類もあります。ビジネス文書で美化語を過剰に使うと、かえって幼稚な印象や過度にへりくだった印象を与えることがあります。「お」「ご」は付けすぎないでください、と一言添えておけば、付けすぎの不自然さを指示の側で抑えられます。慶弔の手紙のようにビジネス文書とは別の言葉選びが要る文面はClaudeでお祝い・お悔やみの手紙文面を考えてもらう手順で扱っています。

期待どおりの敬語レベルにならないときの調整

指定した敬語レベルからずれた出力が返ってきたら、次の順で調整します。

手順

ずれたときの4つの調整

  1. 1

    読み手との関係を絞り込む

    「上司」ではなく「他部署の部長」「社外の取引先担当者」のように具体的にします。

  2. 2

    望む形を肯定形で明示する

    「敬語で」より「社外の取引先に送るので、ですます調で書く」「尊敬語は『おっしゃる』のように1回だけ使う」と、望む形を明示します。避けたい表現の例は補助として添えます。

  3. 3

    実例を1つ渡す

    目標の文体に近い過去の文章を渡し、「この文体に合わせてください」と伝えます。

  4. 4

    要素を分けて指定する

    全体の敬語レベルではなく、「文末はですます調」「相手の呼称は『御社』で統一」のように個別に指定します。

公式ガイドは、してほしくないことを並べるより、してほしいことを伝えるよう勧めています。Step 2はこの原則を敬語に当てはめたものです。

指示が伝わるかを同僚の目で確かめる

公式のプロンプト設計ガイドには「ゴールデンルール」として、依頼内容に詳しくない同僚にプロンプトを見せて、その通りに作業してもらう方法があります。同僚が戸惑うなら、Claudeも戸惑うという考え方です。「上司に丁寧なメールを」だけの依頼なら、同僚はどの上司か、どの程度の格式かを聞き返すはずで、その聞き返しが足りない情報の一覧になります。

足りない情報は、毎回思い出すより雛形に空欄として残しておくと抜けません。

【書き手】自分の役職・部署
【読み手】相手の役職と、自分との関係(上司・取引先・初対面など)
【文書の種類】社内メール / 議事録 / 稟議書など
【文体】ですます調 / だ・である調、尊敬語・謙譲語の使い方
【避けたい表現】二重敬語、過度な美化語、慇懃無礼な言い回し
【実例】あれば <example> で包んで貼る

文書の種類ごとに雛形を保存し、内容だけ差し替える運用にすれば、複数人で使う場合も文体のばらつきを抑えられます。

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