Claudeで稟議書をテンプレート化し過去の稟議を参照させる方法
稟議書は種類ごとに必要項目や承認ルートが異なります。Claudeに項目を整理させてテンプレート化し、過去の稟議をProjectsに登録して参照させながら起案する手順をまとめます。
Claudeで稟議書をテンプレート化するとは
Claudeで稟議書をテンプレート化するとは、稟議の種類ごとに必要な記載項目を洗い出し、Claudeに一貫したフォーマットとして出力させる使い方です。あわせて過去に承認された稟議書をClaudeに参照させれば、新規の起案でも表現や粒度を過去の実績とそろえられます。
この作業はSaaSの承認システムを導入しなくても、claude.aiのチャット画面だけで完結します。すでにkickflowなどのワークフローシステムを使っていて、Coworkの承認モードから稟議チケットの確認・要約・通知までを自動化したい場合は、kickflow Cowork連携で稟議承認フローを自動化するで別途扱っています。本記事は特定のSaaSに依存せず、稟議書という書式・慣行そのものをClaudeにテンプレート化させる手順に絞ります。
始める前に確認すること
Claudeのプロジェクト機能(Projects)は、Free・Pro・Max・Team・Enterpriseのいずれのプランでも使えます。ただしFreeプランはプロジェクトの作成数が5件までに制限されるため、稟議の種類ごとにプロジェクトを分けたい場合は上限に注意が必要です。プロジェクトの「ナレッジ」欄にアップロードした文書は、同じプロジェクト内のどの会話からも参照されます。
作業を始める前に、次の3点をそろえておくとテンプレート化がスムーズに進みます。
- 過去に承認された稟議書のサンプル(できれば種類ごとに1〜2件)
- 社内の稟議規程や決裁権限表(金額基準・承認ルートが明文化されているもの)
- 稟議書に記載する金額や取引先名など、社外秘情報の扱いに関する社内ルール
稟議書には金額や取引先名など機密性の高い情報が含まれます。過去の稟議書をClaudeに読み込ませる前に、自社のデータ取り扱いルールで問題がないかを確認してください。
メモリーが有効なプランでは、プロジェクトごとに専用のメモリーが保たれ、非プロジェクトのチャットとは分かれます。金額や取引先名を残したくない会話は、最初のメッセージを送る前に「+」メニューで「Memory」をオフにできます。オフで始めた会話は、プロジェクトのメモリーを使わず、追加もしません。メモリーはFree・Pro・Maxでは既定でオンで、Team・Enterpriseではオーナーが有効にしたときに使えます。
ステップ1: 稟議の種類ごとに必要項目を洗い出す
稟議書は1つのフォーマットに統一されているわけではなく、案件の性質によって記載すべき項目が変わります。物品購入・契約締結・採用・接待交際・押印のように用途が分かれ、それぞれ承認ルートも異なります。まずは自社で扱う稟議の種類を洗い出し、種類ごとの必須項目を示します。
| 稟議の種類 | 主な記載項目 | 特に重要な追加項目 |
|---|---|---|
| 購買稟議 | 主な記載項目起案日・部署・件名・購入品目・数量・金額・発注先・購入理由 | 特に重要な追加項目見積書などの添付資料 |
| 契約稟議 | 主な記載項目契約先・契約期間・契約金額・契約目的・契約内容の概要 | 特に重要な追加項目想定されるリスクと対応策 |
| 採用稟議 | 主な記載項目募集職種・採用人数・雇用形態・報酬条件・採用理由 | 特に重要な追加項目期待される効果 |
| 接待交際稟議 | 主な記載項目交際相手・目的・日時・場所・予算 | 特に重要な追加項目支払い方法、過去の取引実績 |
| 捺印稟議 | 主な記載項目押印対象の文書名・契約先・契約金額・押印箇所 | 特に重要な追加項目リスクの有無、法務確認の状況 |
どの項目を残すべきかは自社の稟議規程によって変わります。この表は出発点として使い、社内の決裁権限表と突き合わせて過不足を調整します。稟議と決裁がそもそも別の手続きであることや、案件の重要度に応じて起案書の形式をどう判断するかは稟議と決裁の違いをClaudeに整理させる方法で扱っています。
ステップ2: Claudeにテンプレートを生成させるプロンプトを書く
項目を洗い出したら、Claudeに具体的なプロンプトを渡してテンプレートの形にします。項目名だけを渡すと一般的な稟議書の体裁で返ってきますが、自社の決裁ルールや承認者の役職名まで含めて指示すると、そのまま使えるテンプレートに近づきます。
以下の項目を含む購買稟議書のテンプレートをMarkdown表で作成してください。
必須項目: 起案日、起案者部署、起案者氏名、件名、購入品目名、
数量・金額、発注先、購入理由、添付資料、希望納期、支払予定日
承認ルート: 起案者 → 部門長 → 経理部 → 本部長(30万円以上はさらに社長決裁)
各項目には記入例ではなく、記入時の注意点を短く添えてください。生成された結果をそのまま使うのではなく、実際に過去の稟議書と見比べて、抜けている項目がないかを確認します。契約稟議・採用稟議など種類が変わるたびに同じプロンプトの必須項目部分だけを差し替えれば、種類別のテンプレート一式を短時間でそろえられます。
ステップ3: 過去の稟議書をClaudeに参照させる
テンプレートができたら、次は過去の稟議書を参照材料として登録します。方法は主に2つです。
過去稟議の渡し方は2通り
Projectsのナレッジに登録
承認済みの稟議書を種類ごとのプロジェクトに入れておくと、そのプロジェクトのどの会話からも参照されます。契約審査のプレイブックをProjectsに標準化する手順はClaude Projectsで法務レビューのプレイブックを標準化する方法にあり、稟議書以外の法務文書にも同じ考え方を使えます。Projects全般の使い方や容量上限はClaude Projects完全ガイドにまとまっています。
チャットに都度添付
過去の類似稟議のPDFやテキストをチャットに添付し、「この稟議書を参考に、以下の案件で同じ粒度の稟議書を作成してください」のように依頼します。プロジェクトを作らずに始められるので、稟議の型がまだ固まっていない案件でも試せます。
添付した過去の契約稟議書を参考に、以下の新規案件の
契約稟議書を作成してください。項目の並び順と記載の粒度は
添付ファイルに合わせてください。
案件名: 株式会社△△との保守委託契約
契約金額: 年間240万円(税抜)
契約期間: 2026年10月1日〜2027年9月30日
契約目的: 基幹システムの保守運用を外部委託し、社内工数を削減するこのように過去の稟議書を根拠として渡すことで、Claudeが独自に体裁を作り直すよりも、社内で通りやすい書き方に近づきます。
プロジェクトで稟議を扱うときに押さえる仕様
プロジェクトの挙動には、稟議の運用に直接響く点が3つあります。
1つ目は、プロジェクトに付ける名前と説明がClaudeには見えないことです。「購買稟議」という名前を付けても、Claudeはそれを知りません。稟議の種類や承認ルートといった前提は、「プロジェクト指示」に書いて初めて全会話に効きます。
2つ目は、同じプロジェクト内でも、会話をまたいで文脈が引き継がれないことです。ある会話で起案した稟議は、別の会話からは見えません。次回以降の参考にしたい確定版は、承認が下りた時点でナレッジに追加します。
3つ目は、過去稟議が増えたときの検索方式です。有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では、ナレッジがコンテキストウィンドウの上限に近づくとRAGモードに自動で切り替わり、容量が最大10倍に広がります。このモードでは、Claudeが「プロジェクトナレッジ検索ツール」で関連箇所だけを引いて答えます。
RAGが働く状況では、ファイル名と依頼文の書き方が検索の精度を左右します。公式ヘルプも、わかりやすいファイル名を付けることと、質問で文書名を指定することを勧めています。
契約稟議_保守委託_基幹システム_承認済み.pdf
購買稟議_PC更新_30万円未満_承認済み.pdf
採用稟議_経理職_中途_承認済み.pdf依頼文では「契約稟議_保守委託_基幹システム_承認済みを参考に」のように名前で指すと、複数の過去稟議が混ざる状況を避けやすくなります。
プロジェクト指示には、名前では伝わらない前提をまとめて書きます。次の例は購買稟議専用のプロジェクトを想定した書き方です。
このプロジェクトでは購買稟議書だけを扱います。
ナレッジの承認済み稟議書と同じ項目の順序・記載の粒度で起案してください。
金額は税抜で記載し、30万円以上の案件は承認ルートに社長決裁を含めてください。
ナレッジにない取引先名や金額は推測せず、「要確認」と書いて空欄にしてください。最後の一文は、数値の取り違えを防ぐための歯止めです。生成結果に「要確認」が残った箇所は、起案者が原本や見積書で埋めてから提出します。
承認ルートもテンプレートに含める
記載項目だけをテンプレート化しても、稟議書は完結しません。誰が承認し、どの条件で決裁者が変わるのかという承認ルートまで含めて初めて、実際に回覧できる形になります。金額基準で承認ルートを分岐させる会社では、たとえば少額の購入は部門長決裁、一定額を超えると本部長や社長の決裁が必要になる、といった具合です。
社内の決裁権限表がすでにある場合は、その内容もClaudeに渡してテンプレートに組み込みます。権限表が整備されていない、または古いままの場合は、テンプレート化とあわせて権限表自体を見直す機会にもなります。
先ほど作成した購買稟議書テンプレートに、
以下の承認ルートを条件分岐として追記してください。
・10万円未満: 起案者 → 部門長
・10万円以上30万円未満: 起案者 → 部門長 → 経理部
・30万円以上: 起案者 → 部門長 → 経理部 → 本部長 → 社長
テンプレートの末尾に、金額に応じてどの承認ルートを
たどるかが一目で分かる一覧を追加してください。種類ごとにテンプレートと承認ルートをセットで整備しておくと、起案者は毎回ルートを確認する手間が減り、承認者側も「このルートで正しいか」を都度判断する負担が軽くなります。
チームでテンプレートを共有するときの権限
Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトを組織内のメンバーと共有できます。プロジェクト名の右にある「Share project」ボタンから、名前やメールアドレスで個別に追加するか、メールアドレスのリストを貼って一括で追加し、権限を選んで「Share」で招待します。
共有時に選ぶ2つの権限
Can view
プロジェクトの内容・ナレッジ・指示を見て、プロジェクト内でチャットできます。編集はできません。
Can edit
プロジェクト指示とナレッジを変更し、メンバー設定を更新できます。プロジェクトに貢献する側の権限です。
稟議のテンプレートや承認ルートを総務・経理が管理している会社では、管理担当にCan edit、起案者にCan viewを割り当てる分け方が考えられます。起案者は同じテンプレートを使って自分の会話で起案でき、テンプレート本体は管理担当だけが更新する運用になります。
共有できないときは、オーナーが組織のプロジェクト共有をオフにしている可能性があります。オフのときは新しいユーザーやグループへ共有できず、すでにある共有はそのまま残ります。共有されたプロジェクトは、プロジェクトページの「Your projects」「Organization」「Shared with you」の3つのタブのどれかに出ます。
よくあるつまずき
過去稟議の金額や日付をClaudeが取り違える
複数の過去稟議を同時に参照させると、金額や日付を別の案件のものと混同することがあります。金額・契約期間・数量など数値が絡む項目は、生成結果を必ず添付元の原本と突き合わせて確認します。
テンプレートの見出し順が毎回微妙にブレる
同じプロンプトを使っても、会話ごとに見出しの順番や項目の粒度が少しずつ変わることがあります。Projectsの「プロジェクト指示」に出力フォーマットを固定で書いておくと、毎回同じ順序でテンプレートが生成されやすくなります。
Freeプランで種類ごとにプロジェクトを分けきれない
Freeプランのプロジェクトは5件までです。ステップ1の表にある購買・契約・採用・接待交際・捺印の5種類を別々に作ると、それだけで上限に届きます。共通項目だけを扱うプロジェクトを足す余地はないため、種類を絞るか、共通項目を各プロジェクト指示に重ねて書く形になります。
承認判断そのものをClaudeに委ねてしまう
Claudeが作れるのはあくまで稟議書という文書の下書きです。金額の妥当性やリスクの許容度を判断するのは、規程上の決裁権限を持つ人物の役割であり、その判断をClaudeの出力に置き換えることはできません。
種類ごとのテンプレートが少しずつ食い違っていく
購買・契約・採用など複数のテンプレートを別々の会話で作ると、起案日や起案者部署のような共通項目の書き方が種類ごとに微妙にズレていくことがあります。共通項目だけを先にひとつのプロジェクト指示としてまとめておき、種類固有の項目だけを追加する形で作ると、テンプレート間の表記ゆれを防ぎやすくなります。
よくある質問
Claude Codeからでも同じことができますか
できます。過去の稟議書をテキストやMarkdownにしてローカルに保存しておけば、Claude Codeに読み込ませてテンプレート生成と参照ができます。CLIでの作業に慣れているならClaude Codeから、そうでなければclaude.aiのチャット画面から始めるほうが手軽です。
生成したテンプレートに法的な不備がないかまで確認できますか
Claudeが確認できるのは記載項目の過不足や体裁の一貫性までです。契約稟議書のリスク条項や捺印稟議書の押印箇所の妥当性など、法的な観点でのチェックは別途法務部門に依頼する必要があります。
まとめ
稟議書のテンプレート化は、種類ごとの必須項目と承認ルートをプロンプトに落とすところが出発点です。繰り返し起案する種類は承認済みの稟議をプロジェクトに置き、金額・日付・取引先名は原本と突き合わせてから提出してください。