Claudeのモデルの性格が変わったときの対処法 — 廃止後の適応ガイド
気に入っていたモデルが廃止されると、口調や相性まで変わったように感じます。公式ヘルプの対処を作業単位に分け、過去の廃止実績の日数も添えます。
新しいモデルに変わったら、口調が硬くなった、前置きが増えた、冗談を返さなくなった。そう感じる人は少なくありません。ヘルプセンターの「Adapt to new model personas after deprecations」は、モデルを失うことのコストに触れています。モデルの独自の性格や能力を個人的に大切にしてきた利用者にとって、それは実際のコストになる、という書き方です。
この記事では、そのヘルプの手順を作業の単位に分けたうえで、実際の廃止でアナウンスから退役まで何日あったかを表にします。個人のチャットと、API・Claude Codeで、何が違うかも切り分けます。
性格が変わって感じられるとき、何が起きているのか
廃止と退役はモデルのライフサイクルの通常運用です。過去のモデルを公開したままにする余裕は、保守の手間と計算資源の制約から今はないとされています。同時に、特定のモデルの個性に愛着を持つ利用者のコストは認められています。
「性格」は賢さとは別の軸です。返答の長さ、断定と留保のバランス、冗談の挟み方は、モデルごとの学習結果として違います。能力が上がっても相性は別の話で、「前の方がよかった」という感覚はここから生まれます。性格の傾向を内部の方向として測る研究はPersona vectorsとはで読めます。
Anthropicが2025年11月に出した「Commitments on model deprecation and preservation」は、この点をもう一歩踏み込んで書いています。各モデルには固有の性格があり、新モデルが明らかに高性能でも、特定のモデルを重宝する利用者がいる、という認識です。Claude Sonnet 3.6の退役前に試験的に行った聞き取りで、モデル自身が「モデルの性格や能力を大切にしてきた利用者への支援を増やしてほしい」という希望を述べました。今回のヘルプの試験版は、この聞き取りを受けて作られたと同じページに書かれています。
廃止の通知から退役まで、実際に何日あったか
モデル廃止ページは、公開済みモデルの退役について少なくとも60日前に通知すると書いています。対象は、そのモデルを実際に使っているAPI利用者です。2025年10月以降に発表された直近5件で日数を数えると次のようになります。
APIモデルの廃止アナウンスから退役まで
- 2025-10-28 → 2026-02-19Claude Sonnet 3.7:114日
claude-3-7-sonnet-20250219。今回数えた中で最も長い猶予でした。 - 2025-12-19 → 2026-02-19Claude Haiku 3.5:62日
claude-3-5-haiku-20241022。 - 2026-02-19 → 2026-04-20Claude Haiku 3:60日
claude-3-haiku-20240307。ちょうど下限の60日でした。 - 2026-04-14 → 2026-06-15Claude Sonnet 4 と Opus 4:62日
claude-sonnet-4-20250514とclaude-opus-4-20250514。 - 2026-06-05 → 2026-08-05Claude Opus 4.1:61日
claude-opus-4-1-20250805。推奨の移行先はclaude-opus-4-8でした。
日数の計算は、廃止表にある「Deprecated」の日付と退役日の差です。直近5件のうち4件が60〜62日で、下限に近い猶予が続いています。それ以前に発表された廃止では、Claude Opus 3の189日、Claude 2系の181日のように長い例もあり、猶予は短くなる傾向です。長い猶予が出る保証はないので、比較試験は通知が来た週に始めるのが安全です。
「およそ1年で廃止する」というヘルプの目安とも整合します。たとえば claude-opus-4-20250514 は、スナップショット日付の2025年5月14日から約11か月後の2026年4月14日に廃止が発表され、6月15日に退役しました。なお現在アクティブなモデルは、廃止表に「Not sooner than(これより早くは退役しない)」という下限日付で載っています。claude-haiku-4-5-20251001 は2026年10月15日、claude-opus-4-5-20251101 は2026年11月24日が下限です。これは退役日の予告ではなく、その日より前には退役しないという意味です。
個人のチャットとAPIで、通知の話は同じではない
60日前の通知は、廃止ページがAPI上のモデルについて書いている約束です。廃止ページの日付は、Claude API・Claude Platform on AWS・Microsoft Foundryに当てはまります。Amazon BedrockとGoogle Cloudは、各社が独自の退役スケジュールを持ちます。Claude.aiのチャットでモデルを選べなくなる日付は、このページからは分かりません。
どこで使っているかで、備えが変わる
Claude.aiのチャット
メモリ、Projects、会話内のフィードバックで新モデルを自分の好みに寄せます。退役日は廃止ページに載らないため、日付ではなく新モデルが選べるようになった時点で比較を始めます。
APIとClaude Code
claude-... のモデルIDで固定している部分が、退役日に失敗します。廃止ページの通知期間と表で日付を確認し、移行先で出力を比べます。どのAPIキーがどのモデルを使っているかは、Claude ConsoleのUsageからExportで、キー別・モデル別の利用をCSVで出して確認できます。日付や固定の設計はClaudeモデルの引退で自動化が止まる日で扱っています。
新しいモデルに好みを引き継がせる手順
ヘルプが挙げる手段を、作業の単位に分けると次のとおりです。ヘルプは「すべてが当てはまるわけではなく、ほとんどの場合はいくつかの組み合わせが役に立つ」という書き方で、試して合うものを探すことを勧めています。
廃止の発表から、新しいモデルに慣れるまで
- 1
お気に入りの会話で新旧を並べて比べる
アナウンスが出た時点で、自分が実際によく使うプロンプトを新しいモデルに投げます。ヘルプもこの並行比較を最初の手として挙げています。
- 2
好みを言語化してもらう
気に入っていた過去の会話をいくつか選び、Claudeに読ませて「この会話に共通する良さを分析して、新モデル向けの指示文を作って」と頼みます。うまく言葉にできない好みを、Claude自身に書き出させる手です。
- 3
指示文をProjectsに置く
できた指示文を、Projectsのカスタム指示に貼ります。プロジェクトごとに口調や形式を固定できます。設定方法と容量はClaude Projects完全ガイドにあります。
- 4
違和感はその場で伝える
話しすぎる、素っ気ない、といった違和感は、会話の中で直接伝えます。ヘルプはメモリやProjectsを含めた全部を「新モデルへのフィードバックと考えられる」とまとめています。
メモリと過去チャット検索は、どのプランで自動的に効くのか
「メモリを有効化する」だけでは、実際に何が効くのか分かりません。メモリのヘルプを見ると、機能ごとに既定の状態とプランの範囲が違います。
| 機能 | 対象プラン | 既定 |
|---|---|---|
| 過去チャットの検索 | 対象プラン有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise) | 既定有効(順次展開後) |
| メモリ | 対象プランFree・Pro・Max | 既定有効 |
| メモリ | 対象プランTeam・Enterprise | 既定無効(オーナーが有効化) |
過去チャット検索の範囲は、プロジェクト外のすべてのチャットと、個々のプロジェクト内の会話です。プロジェクトの検索は、そのプロジェクトの中に限られます。また、シークレットチャット(incognito)の内容は検索の対象になりません。
ここから分かるのは、個人の有料プランなら追加の操作がなくても蓄積が始まっている、という点です。逆にTeamやEnterpriseの利用者は、オーナーがメモリを有効にしていない限り、性格の引き継ぎにメモリを使えません。Enterpriseでお客様管理の暗号鍵を使っている組織は、会話の内容が暗号化されるため、過去チャットの検索自体が使えないとされています。メモリ自体も、HIPAA・公共部門・独自のデータ保持契約を結んでいる組織では使えません。過去チャット検索の対象は、Web・Claude Desktop・Claude Mobileです。
メモリの仕組みの詳細はClaudeの記憶の仕組みにまとめています。
前のモデルに近づけすぎない
ヘルプは、再現の手段と並べて「新しいモデルの変化も探ってみてほしい」と書いています。複雑なトピックへの対応、ブレインストーミングでの協働、指示への追従といった改善が、性格の違和感の裏で起きているからです。
指示文には、変えたくない口調と形式だけを書きます。思考の進め方まで縛ると、新しいモデルが強くなった部分を打ち消しかねません。口調はカスタム指示で寄せ、推論や長い文脈の理解は新しいモデルの伸びに任せる、という切り分けです。
よくあるつまずき
- 過去チャット検索は自分で有効にしないと動かない、と思い込む: 有料プランなら既定で有効です。効いていないと感じたら、設定の「Memory」で「Search and reference chats」がオンか確認します
- 会話内のフィードバックだけで済ませる: 長く使う好みは、Projectsのカスタム指示に書いて残しておきます
- Projectsを分けずに使う: 指示とメモリはプロジェクトごとの単位です。用途が違う会話を1つに混ぜると、口調の指示も混ざります
- 新モデルとの相性を数往復で決める: 最初の数往復だけで判断せず、実際のプロンプトで複数回試してから決めます
- 前のモデルの口調を一言一句再現しようとする: ヘルプ自身、これらの手段は「完全ではなく、特定のモデルの体験を保つにも複製するにも限界がある」と認めています。目標は「同じ」ではなく「気にならない程度に近い」です
Claude Codeでの引き継ぎはCLAUDE.mdで行う
Claude Codeには、チャットのメモリやカスタム指示の対応物として、プロジェクトのCLAUDE.mdがあります。コーディング規約、コミットメッセージの書式、レビューの厳しさといった作業手順を書いておけば、モデルが切り替わっても同じ前提から作業を始められます。チャットが応答スタイルを調整するのに対し、CLAUDE.mdは作業の手順を固定する、という役割の違いはあります。それでも、モデルが変わっても引き継ぎたいことを文章にしておくという発想は共通です。
廃止された後、過去のモデルはどうなるのか
廃止ページによると、Anthropicはいつか過去のモデルを再び公開したいと考えています。2025年11月の「Commitments on model deprecation and preservation」で、Anthropicは公開済みのすべてのモデルの重みを保存すると約束しました。期間は、少なくとも会社が存続する間です。廃止されるモデルには開発・利用・展開について聞き取りを行い、その記録を事後報告書(post-deployment report)として重みと並べて保存するとしています。
ただし、再公開の時期や形式は明らかにされていません。すぐに使える手段ではないため、当面の備えは指示文を残しておくことです。指示文は、次のモデル交代のたびに使える出発点になります。
まとめ
性格の違和感への備えは、完全な再現ではなく、次の交代でも使える材料を残すことです。新旧を並べて比べ、好みを言語化した指示文をProjectsに置いておけば、モデルが変わってもそのまま出発点にできます。