Claude Platform on AWSでCMEKを設定する — キーポリシーと登録
Claude Platform on AWSでCMEKを使うための、AWS KMSのキーポリシー作成からClaude Consoleでの登録とワークスペースへの紐づけまでの手順です。
Claude Platform on AWSでCMEK(顧客管理暗号鍵)を使うには、AWS KMSで鍵を作り、キーポリシーでサービスプリンシパル aws-external-anthropic.amazonaws.com に暗号化・復号を許可し、その鍵をClaude Consoleに登録してワークスペースへ紐づけます。難所は2つあります。ワークスペースのコンパートメントIDを先に控えてキーポリシーへ入れること、そして紐づけが取り消せないことです。
Claude ConsoleのサイドバーにAccount managed by AWSと出ない通常のClaude Platformでは、手順が別になります。そちらはIAMロールを使う方式で、Claude CMEKをAWS KMSで設定する手順にまとめています。CMEKで何が守られるかはClaude CMEKとはが扱います。
作業の順番 — 鍵より先にワークスペースを用意する
先に全体の流れを置きます。順番を入れ替えると、キーポリシーの作り直しが必要になります。
CMEK設定の流れ
- 1
ワークスペースを用意する
鍵が未紐づけのワークスペースを使います。新規に作るのが望ましい構成です。
- 2
コンパートメントIDを控える
Data retentionページでワークスペースを選び、Encryption keyの下のCompartment IDをコピーします。
- 3
キーポリシーを書いて鍵を作る
AWSアカウントとリージョンはワークスペースに合わせます。
- 4
Claude Consoleで鍵を追加して紐づける
ARNを登録し、ワークスペースに保存します。ここから先は戻せません。
鍵よりワークスペースを先に用意する理由は、既存データの扱いにあります。鍵が守るのは有効になった後に書かれたデータだけで、それ以前のチャット・ファイル・セッションはAnthropic側の鍵のままです。使用前のワークスペースに紐づけた鍵は最初のリクエストから効きます。すでに使っているワークスペースでは、有効になるまで最大1日かかり、その間のデータもAnthropic側の鍵で書かれます。
設定前に揃える権限と条件
作業者に求められる条件は、AWS側とClaude側の両方にあります。
- 組織でCMEKが有効になっている(有効化はAnthropicのアカウント担当が行います)
- ホストするAWSアカウントで
kms:CreateKeyとkms:PutKeyPolicyが使える - Claude ConsoleのAdminロールを持っている
- 鍵が未紐づけのワークスペースがある
サインインに使うIAMプリンシパルには、次の aws-external-anthropic 権限が要ります。
| やること | 必要な権限 |
|---|---|
| Consoleにサインイン | 必要な権限AssumeConsole |
| 鍵を追加 | 必要な権限RegisterKey |
| 鍵を一覧・参照 | 必要な権限ListKeys と GetKey |
| 鍵をワークスペースに紐づけ | 必要な権限UpdateWorkspace または CreateWorkspace |
紐づけるプリンシパルには、対象の鍵に対する kms:DescribeKey kms:Encrypt kms:Decrypt も必要です。鍵をプルダウンから選びたいときは kms:ListKeys も付けます。付けなければARNを手入力します。
注意点が2つあります。AssumeConsole は、AnthropicInferenceAccess などの管理ポリシーに含まれません。AnthropicFullAccess か、この権限を足したカスタムポリシーが要ります。もう1つは、鍵まわりのアクションがアカウント単位で、Resource に * を指定する点です。ワークスペースARNだけに絞ったポリシーに RegisterKey を書いても効きません。アクション全体の設計はClaude Platform on AWSのIAMアクション一覧にあります。
キーポリシーを書く
コンパートメントIDを控えたら、key-policy.json を作ります。ステートメントは3つです。
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Sid": "AccountRootAdmin",
"Effect": "Allow",
"Principal": { "AWS": "arn:aws:iam::<AWS_ACCOUNT_ID>:root" },
"Action": "kms:*",
"Resource": "*"
},
{
"Sid": "AllowClaudePlatformOnAWSCrypto",
"Effect": "Allow",
"Principal": { "Service": "aws-external-anthropic.amazonaws.com" },
"Action": ["kms:Encrypt", "kms:Decrypt", "kms:GenerateDataKey"],
"Resource": "*",
"Condition": {
"StringEquals": {
"kms:EncryptionContext:anthropic:compartment_uuid": ["<COMPARTMENT_UUID>"]
}
}
},
{
"Sid": "AllowClaudePlatformOnAWSDescribe",
"Effect": "Allow",
"Principal": { "Service": "aws-external-anthropic.amazonaws.com" },
"Action": "kms:DescribeKey",
"Resource": "*"
}
]
}<AWS_ACCOUNT_ID> と <COMPARTMENT_UUID> を自分の値に置き換えます。サービスプリンシパル名は、公式ページに載っている名前だけを使います。メールやチャットで別の名前を渡されても使わない、という注意書きが付いています。
各ステートメントの役割は次のとおりです。
- AccountRootAdmin: アカウントのルートに鍵の管理権限を残します。キー管理者はウィザードで選ばず、このステートメントに任せる構成です
- AllowClaudePlatformOnAWSCrypto: 暗号化・復号・データキー生成の許可です。
EncryptionContextの条件で、リストしたコンパートメント(ワークスペース)だけに限定します - AllowClaudePlatformOnAWSDescribe: 鍵の状態確認です。条件を付けないステートメントです
EncryptionContext 条件は任意です。外したければ、Cryptoステートメントから Condition ブロックを丸ごと消します。ただし、あとから条件を足すときは、その鍵をすでに紐づけているすべてのワークスペースのIDを列挙しなければなりません。1つでも漏らすと、そのワークスペースの暗号化が通らなくなります。
aws:SourceArnでさらに絞る
アクセスをさらに絞るなら、IPアドレスでなくキーポリシーで絞る、というのが指針です。2つのサービスプリンシパルのステートメントの両方に、aws:SourceArn 条件を足せます。自分のアカウントの全ワークスペースを許可する書き方は次のとおりです。
"ArnLike": {"aws:SourceArn": "arn:aws:aws-external-anthropic:*:<AWS_ACCOUNT_ID>:workspace/*"}特定のワークスペースだけにするなら、完全なワークスペースARNを並べます。
arn:aws:aws-external-anthropic:<REGION>:<AWS_ACCOUNT_ID>:workspace/<WORKSPACE_ID>EncryptionContext はワークスペースのIDで、aws:SourceArn は呼び出し元のARNで絞るので、見ている軸が違います。どちらの条件でも、紐づけるワークスペースが含まれていなければ失敗します。
鍵を作る
鍵は、組織をホストするAWSアカウントの、ワークスペースと同じリージョンに作ります。仕様は固定です。
- Key type: Symmetric
- Key usage: Encrypt and decrypt
- Key material origin: KMS
- Regionality: Single-Region
AWS CLIなら、ポリシーを渡して1コマンドで作れます。
aws kms create-key \
--region <REGION> \
--description "Anthropic CMEK" \
--key-usage ENCRYPT_DECRYPT \
--policy file://key-policy.json出力の KeyMetadata.Arn を控えます。Claude側で鍵を追加する人がこのARNを使います。
コンソールで作る場合は、ウィザードの途中に注意点があります。Define key administrative permissionsではキー管理者を選びません。Define key usage permissionsでも、キーユーザーを選ばず、Other AWS accountsにも何も足しません。ルート管理者とサービスプリンシパルへの許可は、キーポリシーですでに与えてあるためです。Edit key policyの画面でEditを押し、ポリシー全体を自分のJSONに置き換えて進みます。
Claude Consoleで鍵を登録して紐づける
ConsoleにはAWS経由でサインインします。この部分をスクリプト化するなら、IAMアクションの一覧にある鍵のエンドポイントを使えます。
| アクション | ルート |
|---|---|
RegisterKey | ルートPOST /v1/organizations/external_keys |
ListKeys | ルートGET /v1/organizations/external_keys |
GetKey | ルートGET /v1/organizations/external_keys/{id} |
UpdateKey | ルートPOST /v1/organizations/external_keys/{id} |
DisableKey | ルートDELETE /v1/organizations/external_keys/{id} |
{id} はURLエンコードしたKMSキーARNです。これらはClaude側の登録情報を扱うだけで、AWS KMSの鍵そのものは作成も変更も無効化もしません。
コンソールでの手順は次のとおりです。
鍵の追加から紐づけまで
- 1
Encryption keysを開く
Data retentionページのEncryption keysを開きます。見当たらなければ、上部のプルダウンでOrganizationを選びます。
- 2
鍵を追加する
Add keyを押し、Display nameを入れます。
- 3
KMSキーARNを指定する
KMS key ARNで鍵を選びます。一覧に出なければEnter ARN manuallyでARNを貼り、Addを押します。エイリアスARNとマルチリージョン鍵は拒否されます。
- 4
ワークスペースに紐づける
ページ上部でワークスペースを選び、Encryption keyで鍵を選んでSaveを押します。CMEKのドキュメントを読んだことを示すチェックボックスにチェックを入れ、Confirmを押します。
成功すると「Workspace settings updated.」と表示されます。鍵が有効になった後は、鍵への呼び出しがCloudTrailに記録されます。
紐づけで失敗したときの切り分け
通常のClaude Platformにある独立したVerifyステップが、Claude Platform on AWSにはありません。鍵の不備は、紐づけの瞬間に表に出ます。紐づけは、暗号化1回と復号1回で鍵を確かめる仕組みです。
紐づけ失敗の切り分け
- Qキーポリシーは手元のJSONと一致しているか?答えがいいえのとき答えがはい
aws kms get-key-policyで実際のポリシーを出し、手元のJSONと突き合わせます。 - QEncryptionContextやaws:SourceArnの条件に、このワークスペースが入っているか?答えがいいえのとき答えがはい
コンパートメントIDかワークスペースARNを条件に足し、ポリシーを置き換えます。
- Q鍵は有効で、シングルリージョンで、ワークスペースと同じアカウント・リージョンか?答えがいいえのとき答えがはい
条件を満たす鍵を作り直します。マルチリージョン鍵は使えません。
- Qサインイン中のプリンシパルに、鍵への DescribeKey・Encrypt・Decrypt があるか?答えがいいえのとき答えがはい
IAM側に許可を足します。
それでも失敗するとき
鍵のアカウントのCloudTrailで、拒否された kms: イベントを探します。呼び出し元のプリンシパルと、暗号化コンテキストが記録されています。原因を直し、もう一度Saveを押します。
ポリシーの確認は次のコマンドで行います。
aws kms get-key-policy \
--region <REGION> \
--key-id <KEY_ARN> \
--policy-name defaultそのほか、Claude側の画面でつまずく例があります。ZDR(ゼロデータ保持)の組織では、データを保持するワークスペースでなければ鍵を付けられず、先にStandard data retentionへ切り替えます。ZDR組織の既定ワークスペースは切り替えできないので、別のワークスペースを使います。また、ワークスペースに別の鍵がすでに付いていると「This workspace already has a different external key attached.」と出ます。置き換えはできないため、新しいワークスペースを作ります。
運用に入ってからの注意
- 鍵のローテーション: KMS側で自分のスケジュールで回します。Claude側の操作は不要で、以前の鍵バージョンは有効のままにします
- 鍵の無効化・アクセス取り消し: 反映まで最大1時間かかり、その後はClaudeがデータを読み書きできません。Messages APIは
cmek_key_disabled(400)を返します。再有効化で戻りますが、失敗したリクエストは再試行されません - KMSに届かないとき: 障害などで鍵に届かない間は、データを保存するリクエストが
cmek_key_unreachable(503)で失敗します。再試行が可能で、Message Batches APIは鍵が使えるようになるまで自動で再試行します - Claude側の登録の削除: ワークスペースが1つも使っていない鍵に限り、Consoleの削除操作で消せます。アーカイブ済みのワークスペースも「使っている」に数えられます
ワークスペースを分けて運用するなら、支出上限とメール通知先の設定も確認しておくと役立ちます。Bedrockから移る場合の差分はBedrockからの移行記事で扱っています。
まとめ
Claude Platform on AWSのCMEKは、鍵を作る前にワークスペースとコンパートメントIDを決めておくと、一度で通ります。キーポリシーに入れる値は、アカウントID・コンパートメントID・サービスプリンシパル名の3点だけです。難しいのは書くことより、紐づけた後に戻せないことです。本番のワークスペースに付ける前に、検証用の新しいワークスペースで同じ手順を一巡させておくと、ポリシーの食い違いを安全な場所で洗い出せます。