Claudeで算定基礎届と月額変更届を下書きする手順
算定基礎届と月額変更届の報酬月額の集計を、給与データの表からClaudeに下書きさせる手順と、提出前に人が確かめる支払基礎日数・固定的賃金・等級の突き合わせ点をまとめます。
算定基礎届と月額変更届は、どちらも従業員の報酬月額を集計して日本年金機構へ届け出る書類です。集計そのものは足し算と割り算ですが、対象月の選び方や届出が必要かどうかの判定でつまずきやすい書類でもあります。この記事では、給与データの表をClaudeに読ませて集計と転記の下書きを作らせる手順と、提出前に人が確かめる項目を、日本年金機構の案内に沿ってまとめます。
Claudeに任せる範囲と、人が確かめる範囲
Claudeは、Excel(.xlsx)・Word(.docx)・PDFなどのファイルを会話の中で作成・編集できます。給与データのCSVやExcelを渡せば、月別の集計表を作り、届書のひな形に合わせた転記用の表を出力させられます。
ただし、届書が求める判断の多くは給与データの外にあります。支払基礎日数が何日か、固定的賃金が動いたのか、その従業員が特定適用事業所の短時間労働者にあたるのか。こうした判断の材料は、勤怠システムや雇用契約書にあります。
分担は次の形が扱いやすくなります。
| 作業 | Claude | 人 |
|---|---|---|
| 4〜6月の報酬総額と平均の計算 | Claude表から集計させる | 人元データとの合計照合 |
| 対象月の判定(基礎日数の閾値) | Claude判定ルールを渡せば仕分けできる | 人基礎日数の入力値そのものを確認 |
| 月額変更届の要否 | Claude候補者の洗い出し | 人固定的賃金の変動有無を確定 |
| 標準報酬月額の等級 | Claude参考として当てはめさせる | 人最新の等級表で必ず再確認 |
| 届書への記入・提出 | Claudeひな形への転記案 | 人内容確認と提出 |
等級の当てはめを「参考」に留めているのは、等級表は改定されることがあり、Claudeが手元で参照する表が最新とは限らないためです。届出に使う等級は、日本年金機構が公開している最新の表で確かめます。
使える環境と事前の設定
ファイルの作成・編集は、コード実行とファイル作成の機能(Code execution and file creation)で動きます。Free・Pro・Maxプランでは既定で有効です。Teamプランと新規のEnterprise組織でも既定は有効ですが、組織のオーナーが設定でオフにできます。
給与データの分析では、Claudeが外部へ通信できるかどうかも関わります。FreeからMaxまでのプランではネットワークアクセスが有効です。TeamとEnterpriseの既定ではネットワークが無効か、パッケージ管理ツールだけに制限されています。給与表を渡すだけの集計は、外部通信なしでも成立します。
セキュリティ面では、外部ファイルに埋め込まれた指示でClaudeが意図しない動作をするリスクが説明されています。給与データという機微な情報を扱う以上、Claudeの動作を見ながら進め、想定外のファイルアクセスや通信が見えたら止めます。渡すデータは氏名でなく従業員番号にしておくと、万一の露出範囲が狭くなります。
ファイルの上限は、アップロード・ダウンロードともに1ファイル30MBです。給与データとして十分な大きさですが、複数事業所分を1ファイルに束ねるときは意識しておきます。
算定基礎届の集計をClaudeに下書きさせる
何を集計する届出か
算定基礎届は、7月1日現在で使用している全被保険者の4月・5月・6月の報酬月額を届け出る書類です。この届出をもとに標準報酬月額が決め直され、9月から翌年8月までの各月に適用されます。提出期限は毎年7月10日で、10日が土日なら翌営業日になります。提出は電子申請、電子媒体、郵送、窓口持参から選べます。
報酬月額は、4月・5月・6月に受けた報酬の総額を、その期間の総月数で割って求めます。ここで対象になるのは、いずれも支払基礎日数が17日以上ある月です。
渡すデータの形
Claudeに渡す表は、1行が1人・1月分になる縦持ちの形にしておくと、集計の指示が短く済みます。
employee_id,pay_month,base_days,total_pay,fixed_pay,note
E001,2026-04,30,340000,300000,
E001,2026-05,31,342000,300000,
E001,2026-06,30,338000,300000,
E002,2026-04,15,120000,120000,パート列は次の意味で作ります。
pay_month: 給与を実際に支払った月。給与の対象になった計算月ではありませんbase_days: 支払基礎日数。月給は暦日数、日給・時給は出勤日数total_pay: 通貨・現物を含む報酬の総額fixed_pay: 固定的賃金の額(月額変更の判定に使う)
pay_month に支払月を使うのは、届書の支給月が実際に給与を支払った月を指すためです。締め日と支払日がずれる会社では、この列の取り違えが最も起きやすくなります。
指示の書き方
集計の指示は、判定ルールを文章で明示します。ルールを渡さずに「算定基礎届を作って」と頼むと、対象月の選び方がClaudeの推測に寄ります。
添付の payroll.csv から、健康保険・厚生年金保険の算定基礎届用の
集計表を Excel で作ってください。ルールは次のとおりです。
- 対象は 2026年4月・5月・6月に支払われた給与
- 支払基礎日数が17日以上の月だけを算定対象月にする
- 報酬月額 = 対象月の報酬総額の合計 ÷ 対象月の数
- 対象月が1つもない従業員は「要確認」として別シートに出す
- 各従業員について、対象月・除外月・平均額を1行で示す
- 計算式はセルに残し、値の直書きにしない最後の1行が要点です。Claudeが作るExcelに数式が残っていれば、人が検算するときにセルを辿れます。値だけが貼られた表は、合っているかどうかを確かめる手段がありません。
例えば上のE001の場合、3か月とも基礎日数は17日以上なので、報酬総額の合計は1,020,000円、平均は340,000円になります。この平均額をもとに、標準報酬月額の等級を最新の等級表で引きます。
標準の17日基準から外れる従業員
全員を17日基準で処理させると誤ります。案内には、基準が変わる区分が3つあります。
| 区分 | 算定に使う月の条件 |
|---|---|
| 一般の被保険者 | 算定に使う月の条件4〜6月のうち支払基礎日数が17日以上の月 |
| 短時間就労者(パート・アルバイト等) | 算定に使う月の条件17日以上の月が1か月以上あればその月の平均。すべて17日未満なら15日以上17日未満の月の平均。すべて15日未満なら従前の標準報酬月額 |
| 特定適用事業所の短時間労働者 | 算定に使う月の条件11日以上の月。3か月とも11日未満なら従前の標準報酬月額 |
特定適用事業所の短時間労働者にあたるのは、週の所定労働時間が20時間以上、所定内賃金が月額8.8万円以上、学生でない、といった条件を満たす人です。どちらの区分になるかは雇用契約と事業所の適用状況で決まるため、給与データからは判断できません。短時間就労者(パート)として算定する人は、届書の備考欄「7.パート」に丸を付けます。特定適用の短時間労働者の「6.短時間労働者」とは別の欄です。従業員台帳に区分の列を足し、Claudeにはその列を見て分岐させます。
employee_id ごとに category 列(一般 / パート / 特定適用短時間)を
参照して、算定対象月の基準日数を切り替えてください。
category が空欄の行は集計せず「区分未入力」として一覧にしてください。算定基礎届で提出が不要になる人を先に外す
7月1日現在の全被保険者が対象ですが、次のいずれかに当たる人は提出が不要です。
- 6月1日以降に資格取得した人
- 6月30日以前に退職した人
- 7月改定の月額変更届を提出する人
- 8月または9月に随時改定が予定されている旨を申し出た人
3と4の人は、報酬月額欄を空欄にして、備考欄の「3.月額変更予定」に丸を付けて提出します。電子申請・電子媒体で出す場合は、この2区分を除いて作成します。
この仕分けはClaudeに任せやすい作業です。資格取得日・退職日・月額変更の予定を台帳の列にしておけば、対象者を機械的に落とせます。
従業員台帳の資格取得日と退職日から、算定基礎届の提出対象外
(6月1日以降の資格取得、6月30日以前の退職)を除いてください。
除外した人は理由付きで別シートに残してください。除外リストを残させるのは、人が最終確認で「なぜこの人が届書にいないのか」を追えるようにするためです。
途中入社月と短時間労働者は誤りの多い箇所
日本年金機構は、算定基礎届の不備や記入誤りの多い事例を公開しています。Claudeへの指示に反映しやすいのは、次の3点です。
途中入社月の扱い。給与計算期間の途中から入社し、1か月分の給与が満額で支払われていない月は、支払基礎日数が17日以上あっても算定対象月から除きます。案内の例では、20日締め・翌月10日払いの会社に4月1日入社した人の5月払い(4月分)が、日割りで1か月分に満たないため対象外になります。この場合は備考欄の「4.途中入社」に丸を付け、「9.その他」に資格取得年月日と給与の締め支払日を記入します。
短時間労働者の基礎日数。特定適用事業所の短時間労働者に17日基準を当てる誤りが事例に挙がっています。備考欄の「6.短時間労働者」への丸付けも必要です。
適用年月の記入漏れ。何年度の定時決定かが分からなくなるため、未記入だと標準報酬月額を決定できません。
このうち途中入社月は、Claudeに指示しないと拾えません。給与データの基礎日数だけを見ると、17日以上の月として素通りするためです。
入社日が4月〜6月にある従業員を抽出し、入社月の翌月払いの給与が
日割りで満額に満たないか判定してください。満たない月は
算定対象から外し、備考に「途中入社」と入れてください。月額変更届は要否の判定が難しい
月額変更届は、昇給や降給で報酬が大きく変わったときに、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定するための届出です。随時改定は3つの要件をすべて満たすときに行います。
- 昇給・降給などで固定的賃金に変動があった
- 変動月以後の連続3か月の報酬平均から出した標準報酬月額が、従前と比べて2等級以上ずれた
- 変動月以後の3か月とも支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)
改定は、変動後の報酬を初めて受けた月から数えて4か月目の標準報酬月額から適用されます。4月払いの給与が変わったなら、7月分からです。提出時期は「速やかに」とされていて、算定基礎届のような固定の期限日はありません。
固定的賃金の判定は給与データだけでは決まらない
固定的賃金とは、支給額や支給率が決まっているものです。昇給、給与体系の変更、日給・時給の単価変更、歩合率の変更、住宅手当や役付手当の追加・変更が例に挙がっています。
一方、残業手当のような非固定的賃金だけが動いても、随時改定の対象になりません。固定的賃金が上がっても残業代が減って標準報酬月額が下がった場合は対象外です。逆も同様です。休職給は固定的賃金の変動に当たらないため、対象外になります。
さかのぼって昇給し、差額が支給された場合は、差額が支給された月が変動月になります。3か月平均を出すときは、その差額を差し引いて計算します。
この判定をClaudeに任せるなら、固定的賃金の列を月ごとに持たせ、前月との差を候補として出させる形が現実的です。
payroll.csv の fixed_pay 列が前月から変わった従業員を抽出し、
変動月とその月以後3か月の total_pay の平均を出してください。
差額遡及分は別列 retro_pay にあるので平均から除いてください。
結果は「候補」として出し、随時改定の該当判定はしないでください。最後の指示が大事です。Claudeが候補を挙げるところまでを任せ、該当するかどうかは人が等級表で判断します。
1等級差でも対象になる例外
2等級以上のずれが要件ですが、標準報酬月額の上限または下限にまたがる改定は、1等級差でも随時改定の対象です。厚生年金保険の例は次のとおりです。
| 場合 | 従前 | 報酬の平均月額 | 改定後 |
|---|---|---|---|
| 昇給 | 従前31等級・620千円 | 報酬の平均月額665千円以上 | 改定後32等級・650千円 |
| 昇給 | 従前1等級・88千円 | 報酬の平均月額93千円以上 | 改定後2等級・98千円 |
| 降給 | 従前32等級・650千円 | 報酬の平均月額635千円未満 | 改定後31等級・620千円 |
| 降給 | 従前2等級・98千円 | 報酬の平均月額83千円未満 | 改定後1等級・88千円 |
Claudeに「2等級以上ずれたら該当」とだけ教えると、この上下限の例外を落とします。等級表の最上位・最下位に近い従業員がいる会社では、指示に例外を含めます。
提出前に人が突き合わせる項目
Claudeの出力を届書へ移す前に、次の点を確かめます。
- 集計表の合計を、給与計算ソフトの4〜6月の支給合計と一致させる
- 平均額から引いた標準報酬月額の等級を、最新の等級表と照合する
- 支払基礎日数の入力値を、勤怠データと1人ずつ照合する(パート・短時間労働者は必ず)
- 短時間労働者は備考欄「6.短時間労働者」、短時間就労者(パート)は「7.パート」の丸付けを確認する
- 途中入社・退職・月額変更予定の人が、除外か備考記載になっている
- 70歳以上被用者は個人番号または基礎年金番号が入っている
6は、事例集で記入漏れが多い項目として挙がっています。再雇用などで整理番号が変わった人の、変更後の番号の記入漏れも同じく多い事例です。
届書の様式は、算定基礎届は日本年金機構の事業所向けサイトで配布されるExcelを使います。6月中旬以降に順次送られる用紙には、被保険者の氏名、生年月日、従前の標準報酬月額があらかじめ印字されています。Claudeが出す転記用の表は、この印字内容との照合にも使えます。Excelのひな形は端末の設定で印刷位置がずれることがあるため、印刷前に余白とレイアウトを見ます。
年間平均で算定する特例は自動化しない
算定基礎届と月額変更届には、年間報酬の平均で算定することを申し立てる手続きがあります。申し立てるときは、様式1の申立書と、例年の状況・標準報酬月額の比較・被保険者の同意書をまとめた様式2を添付します。月額変更届でも同じ形の添付が必要になります。
様式2には被保険者の同意書が含まれるため、Claudeの出力だけでは完結しません。申立書の文面案をClaudeに作らせることはできますが、事情の説明と同意の取得は人が行います。申立てが認められる場合の判断は、日本年金機構の事例集で確かめます。
提出方法ごとの作業
算定基礎届は、電子申請・電子媒体(CDまたはDVD)・郵送・窓口持参のいずれかで出します。郵送では、送付時に同封される返信用封筒を使います。月額変更届は、電子申請・郵送・窓口持参で、電子媒体は選択肢に入っていません。
電子申請や電子媒体で出す場合は、Claudeが出す表の列順を届書のCSVレイアウトに合わせると転記が楽になります。CSVの列仕様は事業所向けオンラインサービスの案内に従います。
Claudeの使用量と会話の分け方
ファイル作成は、通常の会話より使用量を多く消費します。従業員数が多い場合は、1回の会話に全員分を詰め込まず、部署や事業所ごとに会話を分けると、指示とデータの対応を追いやすくなります。
同じ会話の中に複数のファイルを置くこともできます。台帳、給与データ、前年の届出控えを並べておき、「台帳にいない従業員が給与データにいれば指摘して」のような突き合わせを頼めます。
マイナンバーや基礎年金番号を含む書類の扱い方はClaudeでマイナンバーと年金の手続き書類を確認する方法で扱っています。従業員の個人情報を含むデータを渡す前に、漏えい時の対応も把握しておくと、事故の際に慌てません。手順は個人情報の漏えい報告をClaudeで下書きする際の注意点にあります。
まとめ
Claudeが向くのは、給与データの集計、対象月の仕分け、除外者リストの作成、月額変更の候補抽出です。判定ルールを文章で渡し、数式をセルに残させ、除外理由を別シートに出させると、人の検算が成立します。
人が受け持つのは、支払基礎日数の元データ、固定的賃金の有無、被保険者の区分、等級表との照合、そして提出です。特に等級の当てはめと、途中入社月・短時間労働者・上下限にまたがる改定の例外は、指示に含めない限りClaudeが落としやすい箇所です。
よくある質問
雇用保険の手続き書類にも同じやり方が使えますか
この記事の判定ルールは、健康保険・厚生年金保険の算定基礎届と月額変更届に限ります。雇用保険の届出は制度も様式も別なので、その届出の要領を確かめたうえで、判定ルールを別に渡します。
算定基礎届を出し忘れた従業員が見つかったらどうなりますか
期限後に見つかった場合は、提出先の事務センターか管轄の年金事務所へ扱いを確認します。なお、不備や記入誤りのある届書は、一度受け付けた後でも返却されることがあります。