ClaudeのScholar Sidekickコネクタで、DOIから投稿先の書式に参考文献を整える
Scholar Sidekickコネクタは、DOIやPMIDを10,000超のCSLスタイルに変換し、BibTeXやRISにも書き出します。投稿規定に合わせて参考文献を整える手順と、整形後の点検を解説します。
Scholar Sidekickコネクタで参考文献の何が片づくか
Scholar Sidekickは、DOIやPMIDといった論文の識別子から書誌情報を引き、指定した引用スタイルの文字列に整えるコネクタです。論文を投稿するとき、雑誌ごとに参考文献の書式が違う作業を肩代わりします。
手書きの整形は、著者名の略し方、巻号の区切り、DOIの付け方で必ずぶれます。識別子から機械的に組み立てれば、同じ入力は同じ出力になります。Claudeに「この書式で」と頼むだけで、変換の部分はコネクタ側が受け持つ流れです。
コネクタディレクトリの説明では、次の範囲を扱います。
ディレクトリに書かれた対応範囲
引用スタイル
10,000超
CSLスタイル
書き出し形式
9種
BibTeXやRISなど
ツール
6つ
ディレクトリの掲載数
ディレクトリに載るツールは次の6つです。
| ツール | 役割 |
|---|---|
resolveIdentifier | 役割識別子を書誌情報に解決する |
formatCitation | 役割指定のスタイルで引用文字列にする |
exportCitation | 役割BibTeXやRISなどの形式に書き出す |
checkRetraction | 役割撤回・訂正・懸念表明の有無を調べる |
checkOpenAccess | 役割オープンアクセスの状況と合法な全文URLを返す |
verifyCitation | 役割引用したタイトルが識別子の先の論文と合うかを照合する |
提供元のGitHubリポジトリは、これに加えてauditBibliographyを7つ目のツールとして挙げています。参考文献一覧を丸ごと渡し、1件ずつの照合と撤回の確認を1回で行うツールで、1回の上限は25件です。ディレクトリの一覧には出ていないため、自分の環境でツールが見えるかは接続後に確かめてください。
対応する識別子は、DOI、PMID、PMCID、ISBN、arXiv ID、ISSN、NASA ADSのbibcode、WHO IRISのURLです。医学系のPMIDから物理・天文系のarXivまで、投稿先の分野をまたいで1つの依頼にまとめられます。
接続の前に知っておくこと
ディレクトリのページには「Anthropic verified」の表示があり、追加時期は2026年8月です。提供元はScholar Sidekick自身で、ドキュメント、サポート、プライバシーポリシーへのリンクが付いています。
接続の操作は他のコネクタと同じです。設定画面かコネクタディレクトリでScholar Sidekickを選び、「Connect」を押して案内に従います。Team・Enterpriseプランでは、OwnerかPrimary Ownerが先に組織で有効にし、そのうえで各メンバーが自分で認証します。
認証や料金の条件は、ディレクトリのページには書かれていません。提供元のリポジトリには、鍵なしの匿名利用ができ、利用回数に上限のある無料枠があると記されています。無料のAPIキーを足すと上限が上がる、という説明です。ただし、ディレクトリ経由の接続がこの匿名枠と同じ扱いかどうかは、どのページにも書かれていません。大量に回す前に、少数の識別子で動かして挙動を見てください。
ディレクトリのページは、開発元を信頼できるときだけ使うよう注意を促しています。外部のサービスに渡すのは、識別子の一覧だけに絞るのが無難です。未発表の原稿の本文まで貼る必要はありません。
提供元のリポジトリは、7つのツールがすべて読み取り専用だと明記しています。書き込みや削除をするツールは無く、Claudeに任せて困るのは「整形結果が期待と違う」ことだけです。
識別子を貼って、投稿先のスタイルに変換する
最短の手順は3段階です。
識別子から整形済みの参考文献一覧まで
- 1
投稿規定でスタイル名を確かめる
投稿規定(Instructions for Authors)に、Vancouver、APA、AMAなどの指定があるかを見ます。雑誌独自の書式名だけが書かれているときは、手順の後半で扱うCSLスタイルのIDを探します。
- 2
識別子を集める
論文のDOIやPMIDを1行に1つ、またはカンマ区切りで並べます。種類が混ざっていても構いません。
- 3
スタイルを指定して頼む
識別子の一覧とスタイル名を渡し、整形を頼みます。
依頼文は次の形で足ります。識別子は提供元の例にある実在のものです。
Scholar Sidekickを使って、次の識別子を Vancouver スタイルの
参考文献一覧に整えてください。入力順を保ち、
解決できなかった識別子があれば一覧の末尾に理由つきで挙げてください。
10.1056/NEJMoa2033700
PMID:30049270
ISBN:97801928540871行ごとにDOIやPMIDを書くだけで、種類の判別はコネクタが行います。ツール側の仕様では、複数の識別子はカンマか改行で区切ります。
整形の結果は、全体で1つの文字列として返ります。提供元のREST APIの説明では、1件ごとの「整形済み」フィールドは無く、解決できなかった識別子は件数と警告として別に返ります。次は、そのドキュメントに載っているVancouver形式の応答例(10.1038/nphys1170)です。
Aspelmeyer M. Measured measurement. Nature Phys. 2009;5(1):11-12. doi:10.1038/nphys1170.あなたの環境で同じ文字列が返るとは限りません。形のイメージとして読んでください。
スタイルIDの早見表
スタイルは、よく使う名前なら別名でも通ります。提供元のリポジトリは、harvardと頼むとharvard-cite-them-rightに解決される例を挙げています。次の表は、同じリポジトリが載せている主なスタイルのキーワードです。
| スタイル | キーワード |
|---|---|
| Vancouver | キーワードvancouver |
| APA(第7版) | キーワードapa |
| AMA | キーワードama |
| IEEE | キーワードieee |
| CSE | キーワードcse |
| Chicago(著者年方式) | キーワードchicago-author-date |
| Harvard | キーワードharvard-cite-them-right |
| MLA | キーワードmodern-language-association |
| Nature | キーワードnature |
| BMJ | キーワードbmj |
| Lancet | キーワードthe-lancet |
Vancouver、AMA、APA、IEEE、CSEの5つは、提供元が個別に作り込んだ組み込みの整形です。それ以外はCSLのスタイル定義で整形します。どのIDで整形されたかは、後述する出力末尾のメタデータに残ります。
投稿先の雑誌名がそのままスタイルになっていることも多くあります。上の表のNature、BMJ、Lancetはその例です。雑誌固有の書式が必要なときは、CSLスタイルのリポジトリでその雑誌のIDを探し、依頼文にIDを書きます。
スタイルは the-lancet を使ってください。
同じ識別子を APA でも整形して、末尾の著者名の数え方の違いを比べさせてください。2つのスタイルで出力させて比べると、著者名を何人まで書くか、略称にピリオドを付けるかといった差が見えます。投稿規定の記載例と並べれば、スタイル選びの間違いに早く気づけます。
書き出し形式で文献管理ソフトに渡す
整形した文字列を原稿に貼るだけでなく、文献管理ソフトに取り込みたい場面もあります。exportCitationは、次の形式に書き出します。
- BibTeX
- RIS
- CSL JSON
- EndNote(XMLとRefer)
- RefWorks
- MEDLINE
- Zotero RDF
- CSV
- プレーンテキスト
LaTeXで原稿を書くならBibTeX、ZoteroやEndNoteに取り込むならRISやZotero RDFが入口になります。提供元の依頼例には、「Natureスタイルで参考文献一覧を作り、最後に.bibファイルを出して」という書き方があります。
次の識別子を解決して、BibTeX形式で出力してください。
キーは「第一著者の姓+年」にそろえ、重複があれば1件にまとめてください。
PMID:30049270
arXiv:2301.08745
10.1038/s41586-021-03819-21つの依頼で「解決→整形→書き出し」を続けて行わせることもできます。提供元はこの連鎖を想定した使い方として紹介しています。
Claude Codeで原稿リポジトリに組み込む
LaTeXやMarkdownで原稿をリポジトリ管理しているなら、Claude Code側にも同じサーバーを足せます。提供元のリポジトリが示す追加コマンドは次のとおりです。
claude mcp add scholar-sidekick -- \
npx -y scholar-sidekick-mcp@latestこの方法はローカルでnpxを走らせるサーバーで、ディレクトリのコネクタとは別の経路です。鍵なしで動き、上限を上げたいときは無料のキーを環境変数SCHOLAR_API_KEYに設定します。
次に、リポジトリのCLAUDE.mdに参考文献のルールを書きます。投稿先が決まっている原稿では、毎回スタイルを指定する手間を省けます。次は書き方の一例です。
## 参考文献
- 参考文献は、識別子(DOI・PMID)からScholar Sidekickの
formatCitationで生成する。手で書き直さない。
- 投稿先のスタイルは vancouver。
- 一覧は refs/identifiers.txt に1行1識別子で置き、
生成結果は refs/references.bib に書き出す。
- 識別子が解決できなかったときは、推測で補わず一覧に残す。「手で書き直さない」の一行が効きます。Claudeが記憶から巻号やページを補うと、見た目は整っても事実が違う参考文献になるためです。生成はコネクタに任せ、生成物の差分だけを人が見る運用にできます。
整形後に点検すること
変換が終わっても、そのまま提出はしません。次の3点を見ます。
出力末尾のメタデータを読む
整形・書き出しの応答には、formatter、styleUsed、requestId、warningsのメタデータが付きます。formatterは組み込み(builtin)かCSL(csl)かを示し、styleUsedは別名が解決された後の正式なスタイルIDです。warningsには、代替の整形が使われたときや、指定したスタイルが別のスタイルの従属版だったときの内容が入ります。
依頼したスタイルとstyleUsedが違っていたら、投稿規定の書式からずれていないかを確かめてください。
撤回とオープンアクセスを調べる
checkRetractionは、Crossrefの更新情報(Retraction Watch由来)から、撤回、訂正、懸念表明を返します。checkOpenAccessは、Unpaywallをもとに、オープンアクセスの区分と合法な全文のURLを返します。
どちらも、1回の呼び出しで識別子は1つです。参考文献が30本あれば30回呼ぶことになるため、一覧全体を調べたいときはauditBibliography(25件まで)が向きます。引用してはいけない撤回論文を載せる事故を、投稿前に防げます。
引用したタイトルが本物かを照合する
verifyCitationは、原稿に書いたタイトルを、識別子の先にある実際の論文のタイトルと突き合わせます。結果は、一致(matched)、不一致(mismatch)、曖昧(ambiguous)、見つからない(not_found)の4種類です。
提供元は、実在のDOIに実在しないタイトルを組み合わせる偽の引用が起こりうるとして、この照合を用意しています。識別子を解決するだけでは、DOIが実在する限り見つけられないパターンです。生成AIが書いた下書きの参考文献を整えるときほど、整形の前にこの照合を通す価値があります。
本文中の引用と末尾の一覧が対応しているか、引用した主張が原論文にあるかの点検は、別の作業です。卒論の手順はClaudeで卒論の参考文献と本文引用を点検する手順にまとめています。
つまずきやすい点
- 識別子が解決されない: 書式の揺れより、そもそも識別子が無い資料が原因のことがあります。報告書や学位論文など、DOIもPMIDも持たない資料は、手で書誌情報を入力して書式を整える範囲になります
- 整形の結果が投稿規定と合わない: APAは第7版が指定されているように、スタイルには版の違いがあり得ます。規定の記載例と1件ずつ照らし、ずれる箇所だけ指示を足すのが早道です
- 撤回の確認が1件ずつになる:
checkRetractionは1識別子ずつです。一覧ならばauditBibliographyを使います - TeamでConnectが押せない: Ownerが組織でコネクタを有効にしていない可能性があります。有効化と個人の認証は別の操作です
- 論文の中身まで読みたい: 整形の対象は書誌情報で、論文の本文は読みません。全文を扱う手順は英語論文PDFをClaudeで読む方法が入口です
識別子の集め方は、文献を探す段階で変わります。Wiley刊行誌から探すならWiley Scholar Gatewayコネクタ、生物医学ならPubMedコネクタ(使い方)がDOIやPMIDを返します。被引用や参考文献のつながりから読む順を決めるには、OpenAlex APIを使う手順が使えます。
まとめ
Scholar Sidekickは、探す道具ではなく、探し終わった文献を揃える道具です。識別子を渡し、投稿先のスタイルを1語で指定すれば、書式の差は機械が埋めます。
運用のコツは3つに絞れます。手で書き直さず生成に任せること、styleUsedで意図したスタイルかを見ること、投稿前に撤回とタイトルの照合を通すことです。この3点が揃えば、参考文献の整形は、判断が要る作業から確認だけの作業に変わります。