設計受託契約の書面と重要事項説明をClaudeで点検する手順 — 建築士法の記載事項
設計受託契約には、契約前の重要事項説明書面、契約書面、契約後の交付書面の3種類があります。建築士法24条の7・24条の8と22条の3の3の記載事項をClaudeで突き合わせる手順です。
建築士事務所が設計や工事監理を受けるとき、建築士法は書面を3回に分けて求めます。契約前の重要事項説明の書面、契約締結時の契約書面、契約後に遅滞なく渡す書面です。記載事項は似ていますが、同じではありません。この手順では、Claudeに書面の種別を先に判定させ、条文の項目と突き合わせて抜けを洗い出します。
設計受託契約の書面は3種類あり、渡す時期が違う
設計または工事監理の委託を受ける契約を、建築士法は「設計受託契約」「工事監理の受託契約」と呼びます(22条の3の2)。当事者は対等な立場の合意に基づいて公正な契約を結ぶこと、信義に従って誠実に履行することが原則として置かれています。
この契約まわりの書面は、時系列で並べると3つです。
設計受託契約に関わる書面の流れ
- 契約前重要事項説明(24条の7)
管理建築士その他の建築士が、記載事項を書いた書面を建築主に交付して説明します。説明の際は建築士免許証または免許証明書の提示も必要です。
- 契約締結時契約書面の相互交付(22条の3の3)
延べ面積が300平方メートルを超える建築物の新築が対象です。当事者が署名または記名押印をして、書面を相互に交付します。
- 契約後書面の交付(24条の8)
契約を締結したとき、事務所の開設者が遅滞なく委託者へ交付します。契約書面を相互交付した場合は適用されません。
点検でつまずきやすいのは、この3つを1つの「契約書」として扱ってしまう点です。重要事項説明の書面に契約年月日は書けません。契約前に作る書面だからです。逆に、契約後に渡す書面には、契約前の説明で使った項目が引き継がれます。どの書面を点検しているのかをClaudeに最初に答えさせる設計にすると、項目の当てはめ違いが減ります。
記載事項は書面ごとに範囲が違う
3つの書面の記載事項は、条文を読み比べると次のようになります。重要事項説明は項目が少なく、契約書面と契約後の書面は同じ範囲です。
| 項目 | 重要事項説明(24条の7) | 契約書面(22条の3の3) | 契約後の書面(24条の8) |
|---|---|---|---|
| 設計図書の種類(設計)、照合方法と報告方法(工事監理) | 重要事項説明(24条の7)要 | 契約書面(22条の3の3)要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
| 従事する建築士の氏名と資格の別 | 重要事項説明(24条の7)要 | 契約書面(22条の3の3)要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
| 報酬の額と支払の時期 | 重要事項説明(24条の7)要 | 契約書面(22条の3の3)要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
| 契約の解除に関する事項 | 重要事項説明(24条の7)要 | 契約書面(22条の3の3)要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
| 事務所の名称・所在地・開設者・建築物の概要など | 重要事項説明(24条の7)要 | 契約書面(22条の3の3)要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
| 設計・工事監理の実施の期間 | 重要事項説明(24条の7)不要 | 契約書面(22条の3の3)要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
| 設計・工事監理の種類、内容及び方法 | 重要事項説明(24条の7)不要 | 契約書面(22条の3の3)要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
| 契約の年月日、契約の相手方の氏名または名称 | 重要事項説明(24条の7)不要 | 契約書面(22条の3の3)不要 | 契約後の書面(24条の8)要 |
左端の5行は共通です。差が出るのは下の3行で、重要事項説明の書面には実施の期間や設計の内容・方法の記載が求められていません。条文の構造は次のとおりです。
- 24条の7第1項は、1号から5号までを法律本文に置き、6号で「国土交通省令で定める事項」を足しています。省令にあたる建築士法の施行規則22条の2の2は、その内容を17条の38の1号から6号までと定めています。
- 22条の3の3第1項の6号も省令事項です。こちらは17条の38の全8号(実施の期間、設計または工事監理の種類・内容・方法を含む)が対象です。
- 24条の8第1項は、1号で22条の3の3第1項各号の事項を引き、2号で省令の追加事項を置きます。追加は規則22条の3が定める契約の年月日と相手方の氏名または名称です。
省令の6項目(17条の38の1号から6号)は、次のとおりです。
- 建築士事務所の名称・所在地と、一級・二級・木造の別
- 開設者の氏名(法人なら名称と代表者の氏名)
- 対象となる建築物の概要
- 業務に従事する建築士の登録番号
- 業務に従事する建築設備士がいる場合はその氏名
- 設計または工事監理の一部を委託する場合は、その概要と受託者の氏名または名称、事務所の名称・所在地
法の1号から5号と合わせると、重要事項説明の記載事項は11号分になります。ただし「従事する建築士の氏名と資格の別」には、構造設計一級建築士や設備設計一級建築士である場合はその旨まで含まれます。1つの号に複数の要素が入っているので、点検では号ではなく要素の単位に割って見るほうが漏れません。
24条の8の書面が不要になる条件を最初に確かめる
契約後の書面で多い誤解が、「契約書があれば24条の8の書面は別に要らない」あるいはその逆です。条文は、もう少し細かい分岐になっています。
22条の3の3第5項は、当事者が同条第1項の書面を相互に交付した場合、24条の8第1項を適用しないと定めています。電磁的方法で提供し、書面を交付したものとみなされる場合も含みます。つまり、次の分岐になります。
契約後の書面が必要かどうかの切り分け
- Q延べ面積が300平方メートルを超える建築物の新築ですか?(増築・改築・大規模の修繕または模様替は、その部分を新築とみなします)答えが22条の3の3の対象外です。契約締結後に24条の8の書面を交付します。答えがはい
対象です。次の問いへ進みます。
- Q契約の締結時に、22条の3の3第1項の事項を書面に書いて署名または記名押印し、相互に交付しましたか?答えが24条の8の書面が必要です。契約後、遅滞なく交付します。答えがはい
交付済みです。次の結論になります。
24条の8の書面は不要です
22条の3の3第5項により、24条の8第1項は適用されません。契約書面の側に、すべての項目が揃っているかが点検の焦点になります。
規模と新築・増築の別は、Claudeに契約書から読み取らせる項目にもできますが、判定の根拠は条文のとおり延べ面積です。契約書に延べ面積の記載がなければ、読み取れない旨を返させて人が埋めます。
重要事項説明のほうは、この分岐の外にあります。24条の7には延べ面積の条件がなく、設計受託契約または工事監理の受託契約を建築主と結ぼうとするときは、書面を交付して説明させることが条文の文言です。300平方メートル以下の小規模な案件でも、契約前の説明書面は点検の対象に入ります。
点検にかける材料と、先に人が決めておくこと
Claudeに渡す材料は、案件ごとに次の3点です。
点検の入力を揃える順序
- 1
条文のテキストを用意する
建築士法22条の3の3、24条の7、24条の8と、建築士法の施行規則17条の38、22条の2の2、22条の3をテキストで保存します。条文は改正されるので、判定の根拠は貼り付けたテキストに限ると指示文で明示します。
- 2
点検対象の書面を用意する
重要事項説明書、設計受託契約書(または重要事項説明書の案)、契約後に交付する書面のうち、手元にあるものをPDFまたはWordで渡します。
- 3
案件の条件を人が書く
延べ面積、新築か増築・改築か、設計のみか工事監理を含むか、一部を他の事務所へ委託するかを短い文で書きます。
アップロードの仕様はヘルプセンターに載っています。チャットでは1ファイル500MBまで、1チャット最大20ファイルです。PDFは100ページ以下なら文字に加えて図表や画像も解析され、101から1000ページは文字のみの処理になります。設計受託契約書と説明書面なら、数ページから数十ページに収まる分量です。
条文のテキストはProjectに置くと便利です。Projectのファイルは1ファイル30MBまでで、取り込みは基本的にテキスト抽出です。案件ごとに条文を貼り直す手間が消え、指示文も固定できます。
契約書には、建築主の氏名・住所のほか、報酬の額や設計の対象地が書かれています。点検で必要なのは「記載があるか」であり、個人名そのものではありません。氏名は「建築主A」のような仮名に置き換え、住所は番地以下を伏せたうえで、記載があることは分かる形で渡します。口座番号のように点検に使わない情報は黒塗りで構いません。
3区分で判定させる指示文の組み方
「抜けを探して」と頼むだけでは、書面の種別が曖昧なまま項目の当てはめがずれます。種別の判定と条件の確認を手順の前半に固定し、判定を3区分に絞ると、返ってくる内容が条文に揃います。37条書面の点検でも使う型で、宅建業法37条書面の点検手順と同じ考え方です。
- 記載あり: 書面に該当する記載があり、条文の項目を満たしている
- 抜け: 点検対象の書面の種別で必要な項目なのに、記載が見当たらない
- 要確認: 記載の有無を書面だけで決められない。案件の条件や別の書類を見る必要がある
次の指示文は、Projectの指示欄に置く雛形です。
あなたは建築士法の設計受託契約まわりの書面の点検補助です。
添付の条文テキストだけを判定の根拠にしてください。
入力:
- 案件の条件(延べ面積、新築/増築/改築、設計/工事監理、一部委託の有無)
- 点検する書面のPDF
手順:
1. 書面の種別を次のどれかに判定する。
(a) 契約前の重要事項説明書面(24条の7)
(b) 契約書面(22条の3の3)
(c) 契約後に交付する書面(24条の8)
判定の根拠となる文言を書面から引用する。決められなければ、
種別を推測せず「種別不明」と返して止まる。
2. 種別に応じた項目を、条文の号と施行規則の号ごとに要素へ割る。
例: 「建築士の氏名」「資格の別」「構造/設備設計一級の旨」。
3. 各要素について、書面の該当箇所を原文のまま引用する。
該当が無ければ「なし」と書く。
仮名や伏せ字は「記載あり」として扱う。
4. 判定は「記載あり」「抜け」「要確認」の3区分のみ。
5. (c) の場合は、案件の条件から22条の3の3の書面を
相互交付済みかどうかを「要確認」に必ず入れる。
6. 表で出力する。列は 条文 / 要素 / 判定 / 書面の引用。
禁止:
- 条文に無い項目を追加しない。
- 報酬額の妥当性や契約条件の有利不利を評価しない。
- 法的な結論を断定しない。手順の1番で止まる指示を入れているのが肝です。重要事項説明の書面を契約書面として点検すると、実施の期間や設計の内容・方法が「抜け」と出ますが、これは種別の取り違えから生じた偽の指摘です。種別が決まらないまま先へ進ませない設計にすると、偽の指摘が表に混ざりません。
返ってくる表の読み方
契約前の重要事項説明の書面を点検した結果は、次のような形になります。数値や文言は説明用の仮のものです。
| 条文 | 要素 | 判定 | 書面の引用 |
|---|---|---|---|
| 24条の7第1項1号 | 要素作成する設計図書の種類 | 判定記載あり | 書面の引用「基本設計図書、実施設計図書」 |
| 24条の7第1項3号 | 要素構造設計一級建築士である旨 | 判定要確認 | 書面の引用なし(案件の建築物が構造設計一級の関与対象か不明) |
| 24条の7第1項4号 | 要素報酬の支払の時期 | 判定抜け | 書面の引用「報酬の額」のみ記載 |
| 規則17条の38第6号 | 要素一部委託の概要 | 判定要確認 | 書面の引用なし(案件の条件に一部委託の記載なし) |
読み方は行ごとに違います。
「抜け」の行は、書面に項目が見当たらないという指摘です。上の例のように「額」と「時期」が1つの号に入っている項目は、片方だけ書かれていることが少なくありません。要素に割って見る指示が効くのはこの場面です。
「要確認」の行は、書面と案件の条件を突き合わせて人が決める行です。構造設計一級建築士の旨は、該当する資格者が従事する場合にだけ記載が要ります。一部委託の概要も、委託しない案件なら不要です。Claudeは案件の条件にない事実を補えないので、条件の側が薄いと「要確認」が増えます。
要確認の件数が多いときは、案件の条件を詳しく書き直してから再度かけます。判定の根拠になる事実を人が足す工程と考えると、手順が整理できます。
点検では決まらないこと
書面の記載漏れの点検と、条文が求める行為の履行とは別のものです。次の事項は書面を点検しても決まりません。
- 管理建築士等が実際に説明したか。24条の7は書面の交付だけでなく説明を求めています
- 説明の際に、建築士免許証または免許証明書を提示したか(24条の7第2項)
- 電磁的方法で書面に代える場合の、相手方の承諾の有無。24条の7第3項、22条の3の3第4項、24条の8第2項が、それぞれ相手方の承諾を前提にしています
- 契約の内容を変更したとき、変更内容を書面に書いて交付したか。22条の3の3第2項は、第1項各号に該当する事項を変更するときを対象にしています
- 24条の8の書面に、開設者の記名押印または署名があるか(規則22条の3第2項)。これは書面の体裁にあたるので、PDFのスキャンから読み取れる場合もあります
電磁的方法で書面に代える場合、規則は出力して書面にできることと、改変を防止または確認できる措置を求めています。点検の対象にしたい場合は、条文テキストに規則の該当条(22条の2の3、17条の39、22条の4)も加えて、指示文の項目に足します。
報酬の額は、書面に書いてあるかどうかを見るだけです。22条の3の4は、契約を結ぼうとする者に、25条の報酬基準に準拠した委託代金で契約するよう努めることを求めていますが、これは努力義務で、書面の記載事項の判定とは別の問題です。Claudeには額が妥当かを評価させません。指示文の禁止事項に入れてあるのは、そのためです。
抜けがあったときに条文が定めていること
書面の記載事項に抜けがあるとき、条文の効果は次のとおりです。
建築士法26条2項1号は、開設者が22条の3の3第1項から第4項まで、または24条の2から24条の8までの規定に違反したとき、都道府県知事が戒告、1年以内の事務所閉鎖の命令、または事務所の登録の取消しをできると定めています。重要事項説明も契約後の書面も、この監督処分の対象に含まれます。
24条の7第2項(免許証の提示)に違反した場合は、43条1号により10万円以下の過料の対象です。
実務では、この点検は書面を取り交わす前の最終確認に置くのが自然です。契約後に抜けが見つかると、書面の作り直しと交付がもう一度必要になるからです。
まとめ
設計受託契約の書面は、渡す時期で記載事項が変わります。重要事項説明は項目が少なく、契約書面と契約後の書面は実施の期間や設計の内容・方法まで求められ、契約後の書面にだけ契約年月日と相手方の氏名が加わります。点検をClaudeに任せる場合は、種別の判定を最初に置き、決められなければ止める設計にします。
記名や責任の所在にあたる論点は、建築士がClaudeでAIレビューしても記名の責任は消えない理由にあります。書面の項目を突き合わせる作業は、条文との照合を機械的に済ませる準備作業にとどまり、説明の実施や承諾の取得は人が行う行為として残ります。書面を条文に当てはめる点検は、管理受託契約の重要事項説明書の点検手順や追加工事の見積と変更契約書の点検手順でも扱っています。