新事業進出補助金の事業計画書をClaudeで審査項目に沿って点検する手順
中小企業新事業進出促進補助金の事業計画書を、公募要領の審査項目と補助対象要件に沿ってClaudeで点検する手順。新規性の書き方、数値要件の検算、任せない範囲まで。
新事業進出補助金(正式名称は中小企業新事業進出促進補助金)の事業計画書は、公募要領の審査項目が問う答えが揃っているかで見られます。Claudeに公募要領と自社の計画書を渡し、項目ごとに「答えが書かれているか」「根拠が付いているか」を洗わせると、提出前に弱い箇所を拾えます。
この補助金の計画書には、他の補助金にない難所があります。新規事業が自社にとって「新しい」ことを、製品と市場の両面で書き分ける部分です。点検の中心もここに置きます。
事務局のサイトには「本補助金の公募は終了しております」と表示され、新規の受付は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」までと案内されています。この記事は第4回の公募要領(公募期間は2026年3月27日から6月19日)を例に書きます。次の補助金へ応募するときは、その公募要領に差し替えて、物差しの表を作り直すところから始めてください。
点検に使う資料は4つ
Claudeに渡す資料は、事務局のサイトで入手できるものです。
- 公募要領(PDF)。審査項目は「10.審査項目」、補助対象事業の要件は「5.補助対象事業の要件」にあります
- 新事業進出指針の手引き。製品等の新規性要件と、評価が低くなる例の考え方が載っています
- 事業計画テンプレート。第4回は2026年5月18日更新版が公開されています
- 自社の事業計画書の下書き
公募要領は第4回の1.0版で59ページあります。Projectsの知識に置くファイルは1ファイル30MBまでです。チャットに直接添付する場合は、1ファイル500MBまで、1回のチャットで20ファイルまでです。100ページ以下のPDFは、図表も読み取られます。要領は余裕で収まります。
テンプレートは申請書そのものではなく、事業計画を書く型です。電子申請システムへの入力に使う画面インポート用のフォーマットも別に配られているので、計画書の本文だけでなく、収益計画の表も点検対象に加えます。
書面審査の7項目を物差しにする
第4回の書面審査は、7つの審査項目と、加点・減点の項目で構成されています。事業計画書の点検は、この項目に計画書の記述を対応させる作業です。
| 審査項目 | 問われていること | 弱くなりやすい箇所 |
|---|---|---|
| 適格性 | 問われていること対象者・対象事業の要件を満たすか。高い目標値と実現可能性があるか | 弱くなりやすい箇所目標値が基準値ぎりぎりで、根拠の説明がない |
| 新市場性・高付加価値性 | 問われていることジャンルの普及度が低いか(選択制で、高付加価値化・高価格化でも可) | 弱くなりやすい箇所「新しい」とだけ書き、客観的なデータがない |
| 有望度 | 問われていること市場規模と成長性。競合との差別化 | 弱くなりやすい箇所競合が自社の知る範囲に偏る |
| 実現可能性 | 問われていること課題の検証、資金調達、経費の妥当性、実施体制 | 弱くなりやすい箇所経費の内容と事業内容がつながらない |
| 公的補助の必要性 | 問われていること国が補助する理由。自社単独では容易でないこと | 弱くなりやすい箇所「補助がなくても実施できる」と読めてしまう |
| 政策面 | 問われていること市場成長分野への進出、デジタル技術の活用、地域への波及 | 弱くなりやすい箇所一般論で終わる |
| 大規模な賃上げ計画の妥当性 | 問われていること賃上げ特例を希望する場合のみ | 弱くなりやすい箇所一時的な賃上げに見える |
新市場性・高付加価値性は、普及度・認知度が低い分野に進出する方式(①)か、同じ分野で高水準の高付加価値化・高価格化を図る方式(②)のどちらかを選びます。計画書がどちらを選んでいるか、選んだ側の問いに答えているかを、最初に確かめます。
事業計画書の記載項目を審査項目に当てる
事務局が示す計画書の記載内容は、11の大項目で構成されています。既存事業の内容、補助事業の具体的取組、現状分析、新市場性・高付加価値性、有望度、実現可能性、公的補助の必要性、政策面、補助対象の予定経費、収益計画などです。
ここで効くのは、審査項目と記載項目の対応表をClaudeに作らせることです。対応が取れていない審査項目は、そのまま記述の抜けです。
知識の公募要領「10-1 書面審査」の審査項目と、添付の事業計画書の見出しを対応づけた表を作ってください。
- 列は「審査項目」「審査の問い」「計画書の該当箇所(見出しと引用)」「判定」
- 判定は「記載あり」「記載はあるが根拠が弱い」「記載なし」のいずれか
- 対応する箇所が複数あるときは、すべて挙げてください
- 公募要領にない観点は、補って書かないでください返ってきた表は、そのまま修正の作業リストになります。引用が付いているので、指摘の出所を手元の計画書で確かめられます。
新事業進出要件は文面で先に洗う
補助対象要件の1つめは、新事業進出指針に示された「新事業進出」に該当することです。公募要領は次の3つに分けています。
新事業進出要件の3つの要素
製品等の新規性
製造する製品等が、事業者自身にとって新規性を持つことです。既存製品の製造量を増やすだけ、過去に作っていた製品の再製造、製造方法の変更だけの場合は、該当しない例に挙げられています。
市場の新規性
既存事業の対象になっていなかったニーズや属性の顧客層を相手にする市場であることです。既存製品と同じ市場、既存市場の一部だけ、商圏が違うだけの場合は、該当しない例です。
新事業売上高
事業計画期間の最終年度に、新製品等の売上高が応募申請時の総売上高の10%、または付加価値額が総付加価値額の15%を占める見込みであることです。
新事業売上高には例外があります。直近の事業年度の売上高が10億円以上で、新事業を行う事業部門の売上高が3億円以上のときは、比べる相手がその事業部門の売上高または付加価値額になります。
さらに減点項目に、手引きの「評価が低くなる例」があります。容易に製造できる新製品等、既存製品に容易な改変を加えたもの、既存製品を単に組み合わせたものです。要件を満たしていても、減点側に落ちる書き方が混じっていないかを見ます。
添付の事業計画書の「新規事業の内容・目的」と「新市場性・高付加価値性」の記述を、次の観点で点検してください。
1. 製品等の新規性: 既存製品の増産、再製造、製造方法の変更だけに読める文がないか。あれば引用
2. 市場の新規性: 既存の顧客層と同じに読める記述がないか。新しい顧客の属性が書かれているか
3. 評価が低くなる例: 「容易な改変」「単なる組み合わせ」と読まれうる記述がないか
4. 新事業売上高: 最終年度の売上高(または付加価値額)が総額の10%(または15%)に届く数字が収益計画にあるか
各観点で、該当する箇所を引用し、足りない情報の種類だけを書いてください。文案は不要です。4番の数字は、収益計画の表と本文の記述が食い違いやすい箇所です。「新事業が全体の何%か」は、Claudeに式を見せさせて、手元の表計算で再計算します。
数値要件は式ごと検算させる
補助対象要件のうち、数値で決まるものは3つです。計画書の表を検算する価値がいちばん高い部分でもあります。
第4回公募要領の数値要件
付加価値額の年平均成長率
4.0%以上
事業者全体で、最終年度に目標値を達成
一人当たり給与支給総額の年平均成長率
3.5%以上
未達の場合は補助金返還の対象
事業場内の最低賃金
地域別最低賃金+30円以上
毎年。未達の場合は補助金返還の対象
付加価値額は、営業利益・人件費・減価償却費を足したものです。事務局のよくあるご質問は、既存事業も含めた事業者全体の付加価値額が最終年度に目標値へ届く必要がある、と答えています。新事業だけの付加価値額ではありません。比較の基準になるのは、補助事業の実施期間の終了時点を含む決算年度の値です。
年平均成長率は複利で計算します。基準年度の付加価値額が8,500万円(営業利益1,200万円、人件費6,800万円、減価償却費500万円)の会社なら、4.0%の成長を満たす最終年度の目標値は次のとおりです。数値は説明のための仮の例です。
| 事業計画期間 | 最終年度の付加価値額の下限 |
|---|---|
| 3年 | 最終年度の付加価値額の下限約9,561万円(8,500万円×1.04の3乗) |
| 5年 | 最終年度の付加価値額の下限約1億342万円(8,500万円×1.04の5乗) |
一人当たり給与支給総額の定義にも注意が要ります。給料・賃金・賞与は含み、役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は含みません。算出に入れる従業員は、基準年度と各事業年度に全月分の給与を受けた人です。パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算して人数を数えます。
添付の収益計画の表から、次を検算してください。
- 付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費 で計算し直し、表の値と一致するか
- 付加価値額の年平均成長率(複利)が、基準年度から最終年度まで4.0%以上か
- 一人当たり給与支給総額(役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金を除く)の年平均成長率が3.5%以上か
- 計算式と途中の値をすべて見せてください「途中の値をすべて見せる」ことが肝心です。返ってきた数字は表計算ソフトで再計算してください。Claudeの検算は、定義の取り違いや単位の食い違いを見つける用途に絞ると安全です。
目標値は、基準値より高く設定すると審査で評価されます。ただし賃上げ要件は、設定した目標値に届かなければ、基準値以上の賃上げをしても要件を満たしません。よくあるご質問にもそう書かれています。目標値を高くするほど返還のリスクも増える点は、計画書の数字を決める前に自社で判断する部分です。
Projectsに資料を置いて依頼する
同じ資料を毎回貼り直すより、ClaudeのProjectsに置くほうが手間が減ります。Projectsは、ファイルを知識として持たせ、指示を固定できる作業スペースです。無料アカウントでも使えますが、作れるのは5つまでです。有料プランでは、知識が上限に近づくと自動でRAGに切り替わり、容量が最大10倍まで広がります。RAGの挙動はClaude ProjectsのRAG検索の仕組みで詳しく扱っています。
資料を置いて点検を始めるまで
- 1
Projectを作る
「新事業進出補助金 第4回」のように、公募回が分かる名前にします。
- 2
知識に資料を追加する
公募要領、手引き、テンプレート、下書きを入れます。下書きを直したら古い版は消して入れ替えます。
- 3
プロジェクト指示を書く
点検役としての立ち位置と、してはならないことを固定します。文面は下のとおりです。
- 4
審査項目ごとに依頼する
7項目をまとめて頼まず、1項目ずつ点検させると指摘が具体的になります。
プロジェクト指示の例を示します。自社の事情に合わせて書き換えてください。
あなたは、中小企業新事業進出促進補助金の事業計画書を提出前に点検する査読者です。
- 判定の物差しは、知識に入っている公募要領「5 補助対象事業の要件」と「10 審査項目」だけです。
- 計画書の各主張について、根拠(数値・資料名・調査方法)が書かれている箇所を引用してください。
根拠が無い主張は「根拠なし」と表示してください。
- 採択の可否や点数は予測しないでください。
- 計画書に無い事実、公募要領に無い要件を補って書かないでください。
- 書き直し案は、私が求めたときだけ出してください。引用を条件にすると、指摘の出所を後から確かめられます。書き直し案を最初から求めると、計画書にない顧客数や市場規模が混ざる危険があります。
加点・減点は履歴と証憑の突き合わせで洗う
加点項目は、パートナーシップ構築宣言、くるみん、えるぼし、アトツギ甲子園、健康経営優良法人(認定制度)など9つの区分が事務局の審査概要に並びます。公募要領には、地域別最低賃金や事業場内の最低賃金の引上げに係る加点も載っています。加点は応募締切日時点で満たしている必要があります。
文章で稼ぐ項目ではないので、Claudeには評価でなく突き合わせを任せます。
知識の公募要領から、加点項目の一覧と要件の基準日を表にしてください。
次に、私が貼る自社の認定・宣言の取得状況と照らし、各項目を「要件を満たす見込み」「基準日に届かない可能性」「証憑が不足」に分けてください。減点項目には、過去の補助金の履歴で決まるものがあります。賃上げ加点を受けて採択されたのに要件を達成できなかった場合、新事業進出補助金・事業再構築の補助金・ものづくり補助金の事業化段階が3段階以下の場合などです。該当するかは自社の履歴で決まるので、履歴を渡して照合させます。
申請前に確かめる要件
計画書の本文以外にも、申請の前提になる要件があります。事務局のサイトは、一般事業主の行動計画の策定・公表とGビズIDプライムの取得を、応募申請の前に確認するよう案内しています。行動計画の公表手続きには1〜2週間ほどかかる、とも書かれています。
公募要領の要件チェックにも、Claudeは使えます。「補助対象者の要件を表にして、自社の状況と照らし、満たさない可能性のある項目を挙げて」と頼めば、見落としを拾えます。従業員が0名の事業者は対象外、日本国内に本社と補助事業の実施場所があることが必要、といった条件が、よくあるご質問に答えとして載っています。
Claudeに任せない範囲
便利な反面、任せてはいけない領域もはっきりしています。
- 事業計画は申請者自身が作る。よくあるご質問は、委任状があっても代理作成は認められず、申請者は事業計画の作成・実行・成果目標の達成に責任を持つと答えています
- 口頭審査は申請事業者自身が受ける。計画書の作成支援者や経営コンサルタント、社外顧問の対応や同席は一切認められず、認められた場合は不採択になることがあります。計画書の中身を自分の言葉で説明できる状態にしておく必要があります
- 採択結果の理由開示と異議申立ては受け付けられていない。提出後に直せないので、点検は提出前に尽きます
- 数値は返還と結びつく。賃上げ要件の未達は、補助金交付額に未達成率を乗じた額の返還につながります
点検で出た指摘に対して、「それらしい数字」を足して埋めるのがいちばん危険です。顧客の声も市場規模も、根拠のある資料から持ってくる必要があります。Claudeが途中で数字を補ってきたら、計画書に入れる前に出典を尋ねます。
つまずきやすい点
- 公募回が違う資料を混ぜる: 公募要領は回ごとに公表されます。知識から前の回のPDFを外し、該当回のものだけにします
- 引用の出所が曖昧: 公募要領か手引きか計画書か分からない指摘は、使う前に元の箇所を開いて確かめます
- 付加価値額を新事業だけで計算する: 要件の対象は事業者全体です
- 自社の機微な情報を貼る: 決算書や従業員の給与は機微な情報です。入力してよい範囲は、社内の情報管理ルールで先に決めます
まとめ
この補助金の計画書で崩れやすいのは、新規性の書き分けと、数値の定義の取り違いです。Claudeは、計画書を「採択される文章」に変える道具ではなく、審査項目が問う答えの抜けを見つける査読役として使うと安定します。
引用付きで根拠の有無を判定させ、数値は式ごと検算させる。この2つを固定すれば、提出前に直すべき箇所が絞れます。同じ型は別の補助金にも使えます。審査項目の構成が違う補助金への当てはめ方はものづくり補助金の事業計画書をClaudeで点検する手順にあり、採択後に受け取った補助金の仕訳は補助金の経理処理と圧縮記帳の整理にまとめています。