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補助金の交付要綱案と審査チェックリストをClaudeで作る手順 — 条文参照の点検まで

補助金の交付要綱案と審査チェックリストをClaudeで作る手順 — 条文参照の点検まで

補助金等適正化法の条文を根拠に、交付要綱の構成案と申請審査のチェックリストをClaudeのProjectsで作り、条文番号の取り違えを点検する手順。自治体単独の補助金との線引きも示します。

補助金の交付要綱は、申請から返還までの流れを順番に並べた文書です。その流れの骨格は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)の章立てとほぼ重なります。

Claudeには、この法律の条文を根拠にした要綱の構成案、申請審査のチェックリスト、そして条文番号の取り違えの点検を任せられます。交付の可否や要件の線引きを決めるのは、これまでどおり担当職員と決裁権者です。

この記事では、条文と要綱の章を対応させる表から始めて、Projectsの設定、3種類のプロンプト、人間が確かめる箇所までを手順にします。補助金を受け取る側の仕訳は補助金の経理処理と圧縮記帳をClaudeで整理する手順が扱っていて、ここでは交付する側の文書を作ります。

要綱の章立ては、適正化法の条文の順に並べられる

補助金適正化法は、全6章で構成されています。第一章が総則、第二章が交付の申請及び決定、第三章が補助事業等の遂行等、第四章が補助金等の返還等、第五章が雑則、第六章が罰則です。要綱に必要な項目は、この順にほぼ対応します。

要綱の章対応する条文要綱に書く中身自治体側で決める事項
目的・定義対応する条文第1条・第2条要綱に書く中身目的、補助金・補助事業等・補助事業者等の定義自治体側で決める事項対象とする事業の範囲
交付申請対応する条文第5条要綱に書く中身申請書の記載事項と添付書類、提出時期自治体側で決める事項様式、受付期間
審査・交付決定対応する条文第6条要綱に書く中身審査の観点、標準的な処理期間、申請内容の修正自治体側で決める事項審査体制、期間の日数
交付の条件対応する条文第7条要綱に書く中身経費の配分変更・内容変更・中止廃止の承認、未完了時の報告、収益納付自治体側で決める事項軽微な変更の範囲
決定の通知・取下げ対応する条文第8条・第9条要綱に書く中身通知の内容、取下げができる期日自治体側で決める事項期日の日数
事情変更による取消対応する条文第10条要綱に書く中身取消・変更ができる場合自治体側で決める事項事務の手順
遂行・状況報告・命令対応する条文第11条〜第13条要綱に書く中身他用途使用の禁止、報告の時期、遂行命令・一時停止自治体側で決める事項報告の頻度
実績報告・額の確定・是正対応する条文第14条〜第16条要綱に書く中身実績報告書、確定の通知、是正命令自治体側で決める事項添付書類
取消・返還・加算金対応する条文第17条〜第21条要綱に書く中身取消事由、返還命令、加算金・延滞金、他の補助金の一時停止自治体側で決める事項免除の基準
財産処分・検査対応する条文第22条・第23条要綱に書く中身財産処分の承認、立入検査自治体側で決める事項対象財産の範囲

表の右端の列は、条文が「各省各庁の長の定めるところにより」と委ねている部分です。第5条の添付書類、第12条の報告の方法、第14条の実績報告の添付書類がこれにあたります。要綱で具体的に書く余地が大きいのは、こうした委任の箇所です。

適正化法が直接当てはまる補助金と、そうでない補助金

条文を根拠に書く前に、手元の補助金が適正化法の対象かを切り分けます。ここを飛ばすと、存在しない義務を要綱に書くことになります。

第2条の定義では、「補助金等」は国が国以外の者に対して交付する補助金、負担金、利子補給金などです。自治体が自らの財源で出す単独事業の補助金は、この定義の外にあります。そうした補助金の根拠は、自治体の条例や補助金交付規則に置かれるのが通常で、手元の規則の条番号を確認するのは職員の仕事です。

一方、国の補助金を財源に自治体が事業者へ交付する場合は、同条第4項の「間接補助金等」にあたり得ます。国以外の者が相当の反対給付を受けずに交付する給付金で、補助金等を直接又は間接に財源の全部又は一部とし、交付の目的に従って交付するもの、という定義です。この場合、第17条第2項は、間接補助金等を受けた事業者が他の用途への使用などをしたとき、国が補助事業者等(この場合は自治体)に対して補助金等の交付決定の取消しをできると定めています。事業者への要綱に取消しと返還の条項を置く理由は、ここにあります。

Claudeに作らせる前に、補助金を次の3つのどれかに分けておくと、後の工程が楽になります。

  • 国の補助金等を自治体が直接受けて事業を行うもの(自治体が補助事業者等)
  • 国の補助金等を財源に、自治体が事業者などへ交付するもの(間接補助金等)
  • 自治体の自主財源のみで交付するもの(適正化法の対象外)

分類によって、チェックリストの「根拠」欄に入れる中身が変わります。後述のプロンプトでは、根拠の区分を明示させます。

材料とProjectsの設定

Claudeに渡す材料は、適正化法の条文、自治体の補助金交付規則(条例)、過去の要綱、様式の項目一覧です。申請書の実物や申請者の個人情報は入れず、様式の項目名だけを渡す形にすると、入力可否の判断が簡単になります。情報の線引きは自治体職員の生成AI利用と総務省ガイドラインで整理しています。

Claudeの作業場所には、Projectsを使います。Projectsは、独立した作業スペースに、チャット履歴と知識ベース(文書、テキスト、コードなど)を持たせる機能で、無料アカウントを含む全ユーザーが使えます。無料アカウントで作れるプロジェクトは最大5つです。有料プランでは、知識ベースが文脈の上限に近づくと、RAGモードが有効になり、容量を最大10倍まで広げられます。

現行のProjectsとは別に、新しい版のProjects(ベータ)が、Claude Codeを使う一部のProとMaxの利用者から順に展開されています。チャットとCoworkの既存のプロジェクトは、これまでどおり動きます。この記事の手順は、知識ベースとプロジェクトの指示を使う現行の形を前提にしています。

条文のテキストは、e-Govの法令検索から取れます。法令APIを使うと、条文の本文をJSONで取得できます。

curl -s "https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/330AC0000000179\
?response_format=json&law_full_text_format=json" \
  -o tekiseika-ho.json

取得したJSONは入れ子の構造なので、テキスト化してからProjectsにアップロードします。次の短いスクリプトで、条のタイトルと本文の文字列だけを取り出せます。

python3 -I - <<'EOF'
import json
d = json.load(open("tekiseika-ho.json"))
out = []
def txt(n):
    if isinstance(n, str): return n
    if isinstance(n, list): return "".join(txt(x) for x in n)
    if isinstance(n, dict): return txt(n.get("children", []))
    return ""
def walk(n):
    if isinstance(n, dict):
        if n.get("tag") in ("ArticleTitle", "ChapterTitle"):
            out.append("\n" + txt(n) + " ")
        elif n.get("tag") in ("ArticleCaption", "ParagraphNum", "Sentence"):
            out.append(txt(n))
        else:
            for c in n.get("children", []): walk(c)
    elif isinstance(n, list):
        for c in n: walk(c)
walk(d["law_full_text"])
open("tekiseika-ho.txt", "w").write("".join(out))
EOF

出力されたtekiseika-ho.txtには、本則の第一条から第三十三条に続けて、附則の各条が連なります。附則にも「第一条」「第二条」といった条番号があり、本則の同じ番号と重なります。知識ベースに入れる前に附則を削るか、見出しに「附則」と付けておかないと、次の点検工程で本則と附則の取り違えが起きます。

プロジェクトの指示には、条文の扱いを決めておきます。次の文面は、そのまま貼れる形の例です。

あなたは自治体の補助金担当職員を補助する。
- 条文を引用するときは、知識ベースの本文に書かれた条・項・号だけを使う
- 知識ベースに無い条文、他の法令、通知、判例は引用しない。思い出せても書かない
- 出力の各項目に「根拠区分」を付ける。区分は次の3つ
  (A) 適正化法の条文(条・項まで書く)
  (B) 自治体の補助金交付規則・条例(担当者が条番号を記入。空欄で出す)
  (C) 根拠なし(担当者の判断が必要)
- 条文に書かれていない数値(期間・日数・金額・割合)は作らず「要設定」と書く

数値を作らせない指示が、この後の工程で効きます。要綱には期日や日数が多く、Claudeが「それらしい」日数を埋めると、読み手には条文由来の数字に見えてしまうためです。

手順1: 要綱案を条文つきで作らせる

最初のプロンプトでは、上の表を骨格として渡し、章ごとに条項案と根拠区分を出させます。

上の対応表を骨格に、補助金交付要綱の条項案を作ってください。
- 補助金の種別: 国の補助金等を財源に、自治体が事業者へ交付する(間接補助金等)
- 章ごとに「条項案」「根拠区分(A/B/C)」「根拠条文(A の場合は条・項)」を表にする
- 委任されている事項(様式・期日・添付書類)は本文を作らず「要設定」と書く
- 最後に、条文が定めていないのに条項案に入れた項目があれば列挙する

最後の1行が重要です。Claudeに自分の出力の余計な部分を自己申告させる指示で、条文を超えた義務を要綱に混ぜていないかを確認する入口になります。

出力で最初に見るのは、第7条の扱いです。同条第1項は、交付の決定をする場合に、目的を達成するため必要があるときは次の事項について条件を付けるものとすると定めています。経費の配分の変更(軽微なものを除く)の承認、契約など経費の使用方法に関する事項、内容の変更(軽微なものを除く)の承認、中止・廃止の承認、予定期間内に完了しない場合や遂行が困難になった場合の報告と指示です。要綱の「交付の条件」の条項案に、この5つがどう反映されたかを突き合わせます。

また、同条第2項は、補助事業等の完了により相当の収益が生ずると認められる場合に、交付の目的に反しない範囲で、補助金の全部または一部に相当する額の納付を条件にできると定めています。収益納付の条項は、事業の性質によって要否が分かれる項目で、Claudeが一律に入れていないか確認が要ります。

条件の付け方には限度もあります。第7条第4項は、交付決定に付ける条件は公正なものであり、目的の達成に必要な限度を超えて不当に干渉するものであってはならないと定めています。Claudeが「念のため」で足した条項は、この限度に照らして職員が削ります。

手順2: 申請審査のチェックリストを作らせる

審査の観点は、第6条第1項が示しています。申請があったときは、書類等の審査と必要に応じた現地調査等により、次の3点を調べます。

  • 申請に係る補助金等の交付が、法令及び予算で定めるところに違反しないか
  • 補助事業等の目的及び内容が適正か
  • 金額の算定に誤りがないか

3つ目の末尾は「等」で終わっていて、この3点以外の観点も調べ得る書き方です。チェックリストは、この3点を大項目として組み、自治体の規則や要綱に置く要件を小項目にぶら下げる形にします。

大項目(第6条第1項)小項目の例根拠区分の目安
法令及び予算に違反しないか小項目の例交付要件の充足、対象経費の区分、予算の範囲内か根拠区分の目安要綱(B・C)が中心
目的及び内容が適正か小項目の例申請書の目的と事業内容の整合、実施期間の妥当性根拠区分の目安第5条の記載事項(A)
金額の算定に誤りがないか小項目の例経費の内訳と合計の一致、対象外経費の混入根拠区分の目安第5条の経費記載(A)と要綱

小項目を作らせるプロンプトは、次の形にします。

第6条第1項の3つの観点を大項目にして、申請審査のチェックリストを作ってください。
- 各項目は「確認する書類」「確認する内容」「判断(適/否/要照会)」の列を持たせる
- 根拠区分は A/B/C で付け、A は条・項まで書く
- 第5条の申請書の記載事項に対応する項目を必ず含める
- 現地調査が必要になりそうな項目に印を付ける

第6条第2項と第3項は、チェックリストとは別に、運用の注意として押さえます。第2項は、申請が到達してから交付決定までに通常要する標準的な期間を定めて公表するよう努めると定めています。要綱に「標準処理期間」の項目を置く根拠にはなりますが、日数は自治体が決める事項です。第3項は、適正な交付のために必要があるときは、申請事項に修正を加えて決定できると定めていて、第4項は、その修正が補助事業等の遂行を不当に困難にしてはならないと続けます。「減額して決定する」運用を要綱に書くなら、この第4項の歯止めもセットで確認します。

手順3: 条文参照の取り違えを点検する

要綱案とチェックリストができたら、別のチャットで点検にかけます。同じチャットで続けると、先に出した出力に引きずられるためです。同じProjectsを使えば、条文の知識ベースとプロジェクトの指示は共有できます。

取り違えが起きやすい組み合わせを、先に表にしておきます。

取り違えやすい組違い
第10条 と 第17条違い第10条は交付決定後の事情変更で、取消しは天災地変などの場合に限られる。第17条は補助事業者等の違反による取消し
第12条 と 第14条違い第12条は遂行状況の報告。第14条は完了時(廃止の承認時を含む)の実績報告
第15条 と 第16条違い第15条は成果が決定に適合するときの額の確定。第16条は適合しないときの是正命令
第9条 と 第10条違い第9条は申請者側の取下げ(通知受領後、各省各庁の長の定める期日まで)。第10条は行政側の取消し・変更
第18条 と 第19条違い第18条は返還命令。第19条は加算金・延滞金で、割合は年10.95パーセント
第22条 と 第23条違い第22条は財産処分の制限(承認が必要)。第23条は報告徴収と立入検査

第10条第2項は、交付決定の取消しができる場合を、天災地変その他の事情変更で補助事業等の全部または一部を継続する必要がなくなった場合などに限っています。事業者の違反による取消しと混ぜて書くと、条文の趣旨と逆の要綱になります。

点検用のプロンプトは、要綱案の条項ごとに「引用した条文が本当にその内容を定めているか」を確かめさせる形です。

次の要綱案の各条項について、根拠として挙げた条・項が、知識ベースの本文でその内容を
定めているかを点検してください。
- 判定は「一致」「条文に書かれていない」「別の条・項の内容」のいずれか
- 「別の条・項の内容」の場合は、正しい条・項を本文から探して書く
- 「本則」と「附則」を取り違えていないかも判定する
- 判定の根拠として、本文の該当箇所を15字以内の抜粋で付ける
結果は表で出し、「一致」以外を上に並べてください。

抜粋を付けさせる指示は、Claudeの判定が本文に基づいているかを職員が目で追うための仕掛けです。抜粋が空だったり、本文に見つからなかったりした行は、そのまま差し戻しの対象になります。

加算金と延滞金の割合については、点検の例外的な扱いが要ります。第19条は、返還を命ぜられたときの加算金について、補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95パーセントの割合で計算する旨を定めています。要綱に割合を数字で書き写すと、法改正のたびに要綱が古くなる可能性があります。条文を参照する書き方にとどめるか、数字を書くなら参照した条文の時点を決裁資料に残すかを、自治体の文書管理に合わせて選びます。

取消しと返還の条項は、罰則との距離も確かめる

要綱の最後に置く不正受給への対応では、取消し・返還の条項と罰則の関係を混同しないようにします。偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者について、第29条は5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科と定めています。補助金等の他の用途への使用は、第30条が3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科です。

これらは法律が直接定める刑事罰です。要綱は取消し(第17条)と返還命令(第18条)の手続きを定める文書で、刑事罰の内容を要綱側で書き換えることはできません。Claudeが要綱案に罰則を書き足していたら、条文の引用にとどめるか、削ります。

第21条の2も、条項案に反映します。交付決定の取消し、遂行や一時停止の命令、是正のための措置の命令をするときは、補助事業者等に理由を示さなければなりません。取消通知の様式に「理由」欄を設ける根拠になります。

人間が確かめること

Claudeの出力は、次の順で確かめます。

手順

職員が確かめる順序

  1. 1

    対象の分類を確定する

    3つの分類のどれかを決め、根拠区分が合っているかを見ます。

  2. 2

    根拠区分Bの空欄を埋める

    自治体の規則の条番号は、担当者が自分で記入します。

  3. 3

    「要設定」を決める

    日数、期日、添付書類、軽微な変更の範囲を、庁内の基準で決めます。

  4. 4

    条文と突き合わせる

    点検表の「一致」の行も、最低でも第7条、第17条、第18条の3か所は条文原文と照らします。

  5. 5

    法務担当の確認にかける

    要綱の制定や改正は、庁内の審査手続きに乗せます。

なお、自治体の職員が使う環境が、庁内ネットワークの分離方式によって制約を受けることがあります。LGWAN接続系から使えるかの判断軸は、LGWAN接続系からα'モデルでClaudeを使えるかにまとめています。同じ審査項目の組み方を調達側で使う例は、入札仕様書と総合評価の審査項目案をClaudeで作る手順が参考になります。

まとめ

交付要綱は、条文の順に章を並べ、委任されている箇所だけを自治体が埋める構造で組めます。Claudeに任せる範囲は、骨格の展開、チェックリストの下書き、条文参照の点検です。

線引きの難所は2か所あります。ひとつは、補助金が適正化法の対象か、自治体の規則だけで動くものかの区分です。もうひとつは、数値と日数をClaudeに作らせないことです。この2点を指示に入れておけば、出力の見直しは「要設定」の穴埋めと、条文原文との突き合わせに絞れます。

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