Claudeで避難所運営マニュアルを作成する手順 — 内閣府ガイドラインを施設別に具体化
内閣府の避難所運営ガイドラインと施設の図面・備蓄一覧をClaudeのプロジェクトに入れ、受付・居住区割り・要配慮者対応を施設ごとのマニュアルに落とす手順です。抜け漏れの照合表つき。
全施設共通のガイドラインを、施設ごとの手順書に落とす作業
内閣府(防災担当)の避難所運営ガイドライン(チェックリスト)は、市町村が避難所運営の業務を19項目に整理した文書です。令和6年12月に改定されています。ただし、これは全国の市町村向けの共通版です。体育館の何階に受付を置くか、どの教室を要配慮者に充てるかは、施設ごとに自分たちで決めるしかありません。
この「決める前の下ごしらえ」にClaudeが向いています。ガイドライン、施設の図面、備蓄一覧を渡し、施設ごとのマニュアル案を作らせます。人が決めるのは、案の中の「要確認」を現地で潰す部分だけになります。
この記事の手順は次の流れです。
施設別マニュアルを作る流れ
- 1
プロジェクトを作る
ガイドラインと共通の指示文を入れる「入れ物」を用意します。
- 2
施設の資料を整える
図面は文字に直し、備蓄一覧は表にして渡します。
- 3
章立てを固定して下書きさせる
ガイドラインの項目番号を章の見出しに残します。
- 4
照合表で抜けを洗う
ガイドラインの項目と、マニュアルの記述を突き合わせます。
- 5
現地確認で要確認を消す
数字と固有名詞は人が埋めます。
手順1: ガイドラインをプロジェクトの知識に入れる
同じ文書を施設ごとに何度も添付し直すのは手間なので、プロジェクトを使います。プロジェクトは、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースです。文書や指示を置いておくと、プロジェクト内のすべてのチャットが参照します。無料アカウントを含む全ユーザーが使えますが、無料では作れるのは5つまでです。
入れる文書は内閣府の「避難所の生活環境対策」ページから取ります。このページには、マニュアルの骨格になる文書が並んでいます。
| 文書 | 使いどころ |
|---|---|
| 避難所運営のガイドライン(チェックリスト)(令和6年12月改定) | 使いどころ章立ての骨格。受付・レイアウト・要配慮者の各業務 |
| 避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン(令和6年12月改定) | 使いどころトイレの章。必要数の算定シート(Excel)が別添 |
| 福祉避難所の確保・運営ガイドライン(令和3年5月改定) | 使いどころ要配慮者の受け入れ先との役割分担 |
| 避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針(令和6年12月改定) | 使いどころ各ガイドラインの上位にある考え方 |
最初の1本はガイドライン(チェックリスト)だけで足ります。3.3MBのPDFで、プロジェクトのファイルの上限(1ファイル30MB)に収まります。トイレのガイドラインは2.5MBです。複数の文書を入れて回答が散らかるようなら、章ごとに使う文書を指示文に書いておきます。
プロジェクトの知識が文脈の上限に近づくと、有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)ではRAGモードが自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。無料プランにはこの拡張がありません。ガイドラインは3.3MBのPDFなので、複数の文書を足していく使い方では、この拡張の有無が効いてきます。
プロジェクトの指示文に書くこと
プロジェクトの指示文は、全チャットに効きます。ここに「根拠の出し方」と「分からないときの扱い」を固定します。次は、そのまま貼れる形に整えた例です。
あなたは市町村の防災担当を補助する立場で、避難所運営マニュアルの案を作る。
- 根拠は、このプロジェクトに入っている内閣府のガイドラインとする。
記述ごとに、対応するガイドラインの項目番号(例: 対策項目3-5)を括弧で添える。
- 施設の面積、収容人数、部屋の名前、連絡先、担当者名は、私が渡した資料に
書かれているものだけを使う。資料にない値は推測せず「要確認」と書く。
- 避難者の名簿や個人名は扱わない。様式の項目名だけを示す。
- 出力は「章 → 誰が → いつ → 何をする」の順に並べる。指示文の2点目が肝です。数字を推測で埋められた文書は、読み手に正しく見えるぶん危険です。「要確認」と書かせておけば、現地確認の作業リストにそのまま使えます。
手順2: 施設の資料をClaudeが読める形にする
次に、施設の側の資料を整えます。ここで差が出るのが図面です。
プロジェクトのファイルは原則としてテキスト抽出だけが行われます(マルチモーダルPDFを除く)。図面の線や寸法がそのまま読まれる前提にはできません。そこで、図面は次の2つに分けて渡します。
- 部屋ごとの面積・用途・階を並べた表(テキスト)
- 図面そのもの(個別のチャットに画像として添付。JPEG・PNG・GIF・WebPに対応)
チャットへの添付は1チャット20ファイルまで、画像は8000×8000ピクセルまでです。PDFは1000ページまで読めます。
部屋の表は、次のような形にします。数値は説明用の仮の例です。
施設名: 〇〇小学校(指定避難所)
| 部屋 | 階 | 面積(㎡) | 用途区分(案) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 体育館 | 1 | 600 | 居住 | 出入口は北側1か所と南側1か所 |
| 保健室 | 1 | 40 | 要確認 | |
| 図書室 | 2 | 80 | 要確認 | 階段のみ |
| 昇降口 | 1 | 50 | 受付 | |備蓄一覧も表にします。品目と数量、保管場所の3列があれば足ります。xlsxを直接アップロードする場合は、アカウントでコード実行とファイル作成を有効にする必要があります。有効にしていないときは、CSVに書き出して渡すほうが早く済みます。
避難者の名簿、要配慮者の個別の氏名、住所は渡しません。ガイドラインも受付や名簿の扱いについて、個人情報保護法・条例と災害時の安否確認を踏まえた訓練を求めています。マニュアルに必要なのは様式であって、個人の記録ではありません。
庁内で生成AIを使ってよい範囲の線引きは、自治体職員の生成AI利用と総務省ガイドラインで扱っています。LGWAN接続系の端末から使えるかは、LGWAN接続系からα'モデルでClaudeを使えるかに判断軸があります。
手順3: ガイドラインの項目番号を章立てに残す
下書きを頼むとき、一番効くのは章立ての指定です。ガイドラインは19の業務ごとに、チェックリストを「誰が」「いつ(準備・初動・応急・復旧)」「どのような仕事」で並べています。仕事には、その段階で最優先と想定されるものに◎、その他に○がついています。人手が足りないときの優先順位の目安として使えます。
ガイドライン自身も、このチェックリストを参考に市町村の特性や被害想定に合わせてマニュアルを策定してほしいと述べています。つまり、チェックリストを施設向けに書き直す作業そのものが、想定された使い方です。
施設別マニュアルで中心になるのは、次の3つの業務です。
施設別に具体化する3つの業務
受付と入退所(項目6)
避難者受付、人数の定期報告、入退所管理、レイアウトに沿った誘導。誰が受付に立つか、どの出入口を使うかは施設で決まります。
居住区割り(項目3の空間配置、項目12の寝床)
平時に空間配置図とレイアウト図を作る仕事が、準備段階の◎として並んでいます。
要配慮者対応(項目15、項目2)
配慮スペースの確保、段差の解消、見守り、福祉避難所への移動の検討があります。
下書きの依頼は、1回で全部頼まず、章ごとに分けます。受付の章の例です。
添付の「〇〇小学校 部屋の表」と備蓄一覧を使い、
ガイドラインの「避難所の運営サイクルの確立」の対策項目5(避難者受付、人数報告、
入退所管理、レイアウトに沿った誘導)を、この施設向けの手順に書き直してください。
条件:
- 手順は「発災後の時間帯(初動・応急)」「担当(施設管理者・避難所運営委員会)」
「やること」の表にする
- 各行にガイドラインの項目番号を添える
- 部屋は表にあるものだけ使う。出入口の数や動線は表にないので「要確認」とする期待するのは、一般論の言い換えではなく、この施設の部屋名が入った手順です。ただし「Claudeが必ず次の形で返す」とは言えません。返ってきた表のうち、部屋名と数字が資料の表と一致しているかを毎回見ます。
居住区割りは、収容人数の目安から逆算する
居住区割りで根拠になる数字が、1人あたりの居住スペースです。ガイドラインは、スフィア基準で1人当たり最低3.5㎡とされていることを挙げ、避難所の開設時からパーティションを設置して居住スペースを確保するよう述べています。
この数字を使うと、体育館の収容人数の目安を次のように出せます。数値は仮の例です。
居住に使える面積 400㎡ ÷ 3.5㎡ = 約114人体育館が600㎡でも、受付、通路、物資の置き場、配慮スペースを除いた残りが居住に使える面積です。Claudeには、この差し引きを項目ごとに書かせます。ただし差し引く面積は資料にないので、「要確認」にして現地で測ります。
区割りの章に、ガイドラインが挙げる注意も入れておきます。いったん「場所取り」が始まると再配置が難しいため、配慮が必要な方のスペースは事前に決めておくこと、世帯ごとのエリアは間仕切りで作り、防犯のため見通しを確保することです。
要配慮者の章は「受け入れ先」を決めて書かせる
要配慮者の章は、一般の避難所内に配慮スペースを置く場合と、福祉避難所へ移す場合に分けます。チェックリストには、福祉避難所や一般避難所の配慮スペースへの移動の検討と、移動手段の確保が別々の仕事として並んでいます。
施設別マニュアルでは、次の3点を明記させると実用になります。
- 配慮スペースにする部屋(部屋の表から選ぶ)
- 段差など、環境整備が要る箇所(現地確認の項目として「要確認」)
- 福祉避難所への移動を判断する人と、連絡先(自治体の資料から人が入れる)
連絡先と担当者名は、Claudeに作らせません。指示文で「資料にない値は要確認」としているのは、このためです。
手順4: 照合表で、ガイドラインとの抜けを洗う
下書きが揃ったら、抜け漏れを機械的に洗います。同じプロジェクトの別チャットで、次のように頼みます。
添付のマニュアル案と、プロジェクトのガイドライン(チェックリスト)を照合し、
次の表を作ってください。
| 項目番号 | ガイドラインの仕事 | マニュアル案の該当箇所 | 状態(記載あり/一部/なし) |
ガイドラインの対策項目1〜19のうち、施設の運営に関わるものだけを対象にし、
「状態」が「なし」の行は、理由を一言添えてください。「記載なし」の行は、抜けか、この施設には当てはまらない項目かのどちらかです。たとえばペットの受け入れは、ガイドラインに項目18があります。しかし、ペットを受け入れない施設ならマニュアルから外れても構いません。その判断は施設を管理する側が下します。
照合表の各行は、状態に応じて次のように扱います。
| 照合表の状態 | 人がやること |
|---|---|
| 記載あり | 人がやること項目番号と記述が合っているかを、数行だけ抜き取って読む |
| 一部 | 人がやること欠けている部分を書き足す。不足の中身は施設の資料で埋める |
| なし | 人がやること施設に当てはまらないなら理由を残す。当てはまるなら章を足す |
ガイドラインは、チェックリストの項目や仕事が市町村に当てはまらない場合や不足する場合は、適宜修正し補足して使うよう述べています。「なし」を無理に埋める必要はありません。
手順5: 「要確認」を現地で消す
最後に、マニュアル案に残った「要確認」を数えて、現地確認の作業表にします。
マニュアル案の「要確認」をすべて抜き出し、
「確認する人(施設管理者/防災担当/福祉担当)」「確認方法(測る/聞く/資料を探す)」
「どの章に反映するか」の3列の表にしてください。ガイドラインは、発災時に施設の構造被害、内部被害、危険箇所、備蓄品、ライフラインを確認するチェックシートを平時に作っておくことも求めています。同じ作業表に、これらのシート案の作成を足すのも一つの進め方です。
つまずきやすい点
プロジェクトの種類に注意が要ります。サポート記事によれば、プロジェクトには新しい版(ベータ)があり、Claude Codeを使うProとMaxの一部の購読者から段階的に提供されています。既存のチャットとCoworkのプロジェクトは、従来どおり動きます。この記事の手順は従来のプロジェクト(知識ベースと指示文を持つ形)を前提にしています。
もう一つは、プロジェクト内の文脈の共有です。プロジェクトの知識に追加していない情報は、チャットをまたいで引き継がれません。照合表を作ったチャットで決まったことは、次の施設で使えるように、知識ベースかプロジェクトの指示文に書き足します。
複数の担当者で運用するなら、Team・Enterpriseプランではプロジェクトを共有できます。権限は「閲覧可」と「編集可」に分かれます。ただし、管理者がプロジェクトの共有をオフにしている組織では共有できません。
家庭向けの防災計画は、Claudeで家庭の防災計画とチェックリストを作る方法で扱っています。資料を段階的に読み込ませて研修用スライドに変える作業は、Claudeで校内研修のスライドを作成する手順と同じ型です。
まとめ
ガイドラインを施設に当てはめる作業のうち、Claudeに任せられるのは「章立てに沿った下書き」と「抜けの照合」です。測ること、聞くこと、連絡先を入れることは人の仕事として残ります。指示文で「要確認」を徹底しておけば、その境目がマニュアルの上で見える形になります。
最初は、1つの施設の、受付の章だけを試す進め方が現実的です。章ごとの出来を見てから、居住区割りと要配慮者の章に広げます。