Claudeでイベント当日の運営マニュアルと想定問答を作る — 持ち場別に1枚へ
進行表・会場図・緊急連絡先をClaude Projectsに置き、受付・誘導・落とし物・体調不良の持ち場別に1枚へ切り出して、想定問答まで揃える手順を示します。
イベント当日、スタッフ全員が運営マニュアルを頭から読んでいる前提では現場は回りません。受付係が知りたいのは受付のこと、誘導係が知りたいのは動線のことです。進行表、会場図、緊急連絡先を一冊にまとめた資料は、手が離せない場面でページを探している間に、次の来場者が来てしまいます。
Claudeは、この「一冊を持ち場別の1枚に切り出す」作業と、各持ち場に飛んでくる質問の想定問答づくりに向いています。元資料をProjectsに置いておけば、前日に進行が変わっても同じ土台から作り直せます。この記事では、受付・誘導・落とし物・体調不良の4つの持ち場を例に、切り出しから当日の配り方までを順に説明します。
持ち場別の1枚に何を載せるか
持ち場別の1枚は、元のマニュアルの要約ではありません。その持ち場のスタッフが、立ったまま30秒で判断できる材料だけを残したものです。
| 持ち場 | 1枚に載せるもの | 載せないもの |
|---|---|---|
| 受付 | 1枚に載せるもの開場時刻、受付の流れ、名簿にない人への対応、問い合わせ先 | 載せないもの全体の進行表の細部 |
| 誘導 | 1枚に載せるもの動線、立ち位置、満員時の止め方、迷子・車いすの対応窓口 | 載せないもの受付の手順 |
| 落とし物 | 1枚に載せるもの預かりの記録方法、保管場所、引き渡しの確認、終了後の扱い | 載せないもの開演中の進行 |
| 体調不良 | 1枚に載せるもの声をかける順番、救護担当への連絡先、本部への報告項目 | 載せないもの医療的な判断 |
載せない項目を決めるのが、切り出しの肝です。全部載せると、1枚が元の一冊と変わらなくなります。
各持ち場の1枚には、必ず次の3点を入れます。
- 起きたらまず何をするか(最初の一手)
- 自分で決めてよい範囲と、本部に聞く範囲の境目
- 本部への連絡先と、連絡するときに伝える項目
体調不良の1枚で言えば、スタッフがするのは声かけと救護担当への連絡までです。症状の見立てや薬の案内は、書かせません。これは医療の専門家が判断する領域で、Claudeの下書きに任せない線です。
Projectsに置く資料と、置かない資料
Projectsは、独立したチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースです。知識に置いたファイルは、そのプロジェクトのすべてのチャットで文脈として使われます。イベント当日までの準備期間に何度も質問を重ねても、資料を貼り直さずに済みます。
置くのは次の資料です。
- 進行表(開場から撤収までの時刻と担当)
- 会場図の説明文(図そのものではなく、文章にしたもの)
- 緊急連絡先一覧(本部、救護、会場管理者、警備など)
- 運営方針(入場できない場合の対応、写真撮影の可否、返金の扱い)
- 過去の同種イベントの反省メモ
ファイル名に版が分かる語を入れておくと、指示で名指ししやすくなります。
進行表_第3版_1030時点.xlsx
会場図_文章版_ホールA.docx
緊急連絡先_本部と救護.docx
運営方針_受付と返金.docx注意したいのは、プロジェクトのファイルが「文字の抽出のみ」で読まれる点です。ヘルプでは、プロジェクトのファイルは1ファイル30MBまで、内容はテキスト抽出のみ(マルチモーダルPDFを除く)と説明されています。非PDFの文書に埋め込まれた画像は、Claudeには読み取れません。
会場図はまさにこの罠に当たります。図の画像を貼っただけでは、動線も立ち位置もClaudeには渡りません。「入口A→受付→ロビー→ホール入口」のように、順路を文章で書いた文書を別に用意して置きます。
PDFの扱いも覚えておきます。100ページ以下のPDFは文章と図表などの視覚要素の両方が分析され、101〜1000ページでは文章のみになります。大部の会場使用規則は、運営に関わる章だけを抜き出して置くほうが読み落としを減らせます。XLSXの進行表を置くには、コード実行とファイル作成を有効にしておく必要があります。
置かないものも決めます。参加者名簿、来場者の連絡先、出演者の個人携帯番号は、持ち場別の1枚づくりには要りません。個人情報を入力してよいかは、主催団体の規程と所属組織の判断が先です。置かないと決めた情報が必要な場面は、「名簿で本部に確認する」という手順で書きます。
Freeプランではプロジェクトは5つまでです。大会や公演ごとにプロジェクトを分けるなら、終わったイベントのプロジェクトは整理して使い回します。
指示文で守らせること
プロジェクトの指示文は、そのプロジェクトのすべてのチャットに効きます。ヘルプでは、指示文は「Set project instructions」から書いて保存すると説明されています。運営マニュアルでは、次の4点を最低限書いておきます。
あなたはイベント運営の補助役です。
- プロジェクト知識の資料だけを根拠にします。
- 資料にない時刻・連絡先・判断は書かず「資料に記載なし」と書きます。
- 医療・法律・警察に関わる判断はせず、連絡先への取り次ぎまでを書きます。
- 持ち場別シートは、最初の一手・自分で決める範囲・本部に聞く範囲・連絡先の順に書きます。「資料に記載なし」と書かせる行が一番効きます。この行がないと、緊急連絡先の電話番号のような数字まで、もっともらしく補われてしまうおそれがあります。指示文を書いても、資料にない内容を書かない保証はありません。出力は必ず資料と突き合わせます。
プロジェクトを作るときに付ける名前と説明は、Claudeからは参照できません。イベントの日付や会場名は、名前ではなく指示文か資料に書きます。
持ち場別の1枚を作る手順
元資料から持ち場別シートを作る流れ
- 1
元資料の矛盾を先に洗う
進行表と運営方針を読ませ、時刻や担当の食い違いを一覧にさせます。持ち場別に切り出す前に直しておかないと、食い違いが4枚に増えて配られます。
- 2
持ち場を1つずつ頼む
4つの持ち場をまとめて頼まず、1チャットに1持ち場にします。ひとつずつ見直せるので、載せない項目の取捨選択も指示しやすくなります。
- 3
資料にない項目を洗う
シートの各行に、根拠となる資料名と章・節を添えさせます。根拠が付かない行は、担当者が補うか、削る行です。
- 4
確定版を知識に戻す
確定した1枚は、ファイルとして保存してプロジェクトの知識に入れ直します。ヘルプには、プロジェクト内のチャット同士で文脈は共有されず、知識ベースに追加した情報だけが共有されると書かれています。
最初の頼み方の例です。
プロジェクト知識の進行表・会場図(文章版)・運営方針をもとに、
受付係向けの1枚を作ってください。
- A4で1枚に収まる量にします。
- 先頭に「最初の一手」を3行以内で書きます。
- 自分で決めてよい範囲と、本部に聞く範囲を分けます。
- 各行の末尾に根拠の資料名と節を括弧で付けます。
- 資料にない項目は「資料に記載なし」と書きます。たとえば受付係の1枚は、次のような形になります(書式の一例で、実際の出力ではありません)。
【受付係】
最初の一手
1. 名簿を確認する(氏名の読み上げはしない)
2. 見つからなければ、受付横の本部席へ案内する
3. 待機列が20人を超えたら、誘導係に連絡する
自分で決めてよいこと
・名札・資料の配布、体温計の案内
本部に聞くこと
・名簿にない人の入場可否、返金の希望
連絡先
・本部:内線1(電話番号は資料の連絡先一覧を転記)この例の「20人」や「内線1」は書式を示すための仮の値です。実際のシートでは、必ず自分の資料から転記させ、元の数字と照らします。
想定問答は「来場者の質問」と「スタッフの迷い」の二本立てにする
イベントの想定問答には、2種類あります。ひとつは来場者からの質問です。「トイレはどこか」「途中で出入りできるか」「写真を撮ってよいか」といった、各持ち場に必ず来る質問を指します。もうひとつはスタッフ側の迷いで、「名簿にない人が来たらどうするか」「落とし物が貴重品だったらどうするか」のように、持ち場の判断を問う質問です。
両方を、同じ形式で作らせます。
受付係の1枚と運営方針をもとに、想定問答を作ってください。
次の2つに分けます。
A. 来場者からの質問(10問まで)
B. スタッフが迷う場面(5問まで)
各問に、答え・根拠の資料名と節・本部に聞くか(はい/いいえ)を付けます。
資料に答えがない問いは、答えの欄を「資料に記載なし」にします。件数の上限を指定すると、質より数を追う出力を避けられます。実際の問い合わせ件数は主催者のほうがよく知っています。過去の問い合わせ記録があれば、知識に置いて「頻度の高い質問を優先して」と頼むと、現場に近づきます。
見るべき行は、「資料に記載なし」と「本部に聞く」が付いた問いです。ここに並ぶのは、前日までに主催者が答えを決めておく項目です。決められないものは、「その場では答えず、本部へ取り次ぐ」という答えを決めておきます。当日の現場で最も困るのは、答えがないことではなく、スタッフごとに答えが違うことだからです。
同じ「想定問答」でも、説明会や会見のように1人の登壇者が答える場面は別の型です。住民説明会の例はClaudeで住民説明会の想定問答と議事要旨を作るにあります。
当日スタッフにどう渡すか
作った1枚は、当日のスタッフに届いて初めて役に立ちます。渡し方は、組織のプランで変わります。
持ち場別シートの渡し方
Projectsの共有(Team・Enterprise)
プロジェクトを共有すると、スタッフは持ち場の質問をその場でClaudeに聞けます。共有できるのはTeamとEnterpriseのプランです。管理者が共有を止めている組織では使えません。
書き出して印刷・配布
ファイル作成を有効にすると、ClaudeでWord、PDF、Excelなどのファイルを作って保存できます。持ち場の腕章や台帳の横に貼る紙は、この形が堅実です。
共有する場合の権限は、2段階です。ヘルプでは、「Can view」は内容・知識・指示文を見てプロジェクト内でチャットできるが編集はできない、「Can edit」は指示文や知識を変更できる、と説明されています。当日のスタッフには「Can view」を渡し、「Can edit」は運営責任者に絞ります。当日の最中に知識が書き換わると、持ち場ごとに答えがずれるからです。
共有しても、各自のチャットは非公開のままです。持ち場の質問履歴が他のスタッフに見えることはありません。共有の設定は、プロジェクトの「Share」から招待します。メールアドレスの一覧を貼れば、まとめて追加もできます。
Free、Pro、Maxのプランにはプロジェクト共有がありません。この場合は印刷が主役になります。会場の電波が不安定な場合も、印刷した1枚を持ち場に置いておくのが無難です。Claudeを開けない場面でも、紙は読めます。
前日の変更と、終わった後の整理
イベントは前日まで動きます。出演順が入れ替わる、救護担当が変わる、出入口が工事で使えなくなる、といった変更は普通に起きます。
変更が出たら、まず元資料(進行表や連絡先一覧)を差し替えます。そのうえで、差し替えた資料を根拠に、影響のある持ち場の1枚を作り直させます。
進行表を第4版に差し替えました。第3版との差を一覧にして、
影響を受ける持ち場の1枚だけを作り直してください。
変更した行には「変更」と付けてください。「変更」の印を付けさせるのは、配り直すときの申し送りに使うためです。前日の差し替えで全員に同じ紙を回すより、変わった持ち場だけに「ここが変わりました」と渡すほうが、現場の混乱は小さくなります。
大きなファイルの検索や、知識が上限に近づいたときの挙動を知りたい場合は、Claude ProjectsのRAG検索はいつ発動する?を参照してください。
イベントが終わったら、プロジェクトを使い回すか整理するかを決めます。ヘルプによれば、アーカイブしても共有の権限やメンバーは外れません。当日のスタッフから閲覧権限を外したいときは、アーカイブではなく、共有設定で明示的にアクセスを外します。反省メモを新しい知識として足しておけば、次回の想定問答の精度が上がります。
つまずきやすい点
落とし穴
会場図の画像だけを置いて、誘導係の1枚が空になる
画像はテキスト抽出されないので、動線も立ち位置もClaudeには渡りません。順路を文章にした文書を別に作って置き、シートの各行にその節を根拠として添えさせます。
落とし穴
緊急連絡先が古いまま、体調不良の1枚に転記される
連絡先は、Claudeが作った文面のほうではなく、元の一覧と照合してください。前回のイベントから担当者が変わっていることが多い項目です。電話番号は主催者が現地で一度かけて確かめます。
落とし穴
「自分で決めてよい範囲」が広すぎる
下書きは、現場の裁量を広めに書くことがあります。返金、入場可否、退場の判断のように、金銭や安全に関わる項目は、本部に聞く側へ主催者が移します。
まとめ
持ち場別の1枚は、元のマニュアルを縮めたものではなく、判断の分かれ目だけを残したものです。資料を整え、「資料に記載なし」を明示させ、答えを決めきれない問いには「本部へ取り次ぐ」を答えとして与えておく。この3つが揃えば、スタッフごとに答えがずれる事態は減らせます。
同じ手順は、避難所の運営でも使えます。ガイドラインを施設別の手順書に落とす例はClaudeで避難所運営マニュアルを作成する手順に、できあがった手順書を多言語にする流れはClaudeで作業手順書を多言語化にあります。当日の質問に答えるプロジェクトを職員に共有する運用は、士業事務所の業務マニュアルを共有する例が参考になります。