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Claudeで士業事務所の業務マニュアルを共有 — 職員の質問に答えるProjectsの作り方

Claudeで士業事務所の業務マニュアルを共有 — 職員の質問に答えるProjectsの作り方

受付から報酬請求までの所内手順書をClaudeのProjectsに置き、職員の「この書類はどこに保管するか」に答えさせる手順です。共有範囲の決め方と、顧問先の情報を入れない線引きをまとめます。

士業事務所の所内手順書は、新人の職員が最初に迷う場所です。「委任状の控えはどこに綴じるか」「報酬の請求書は誰の確認を通すか」といった質問が、所長や先輩に何度も飛びます。手順書そのものはあっても、共有フォルダの奥にあって、探す前に人に聞くほうが早くなっています。

ClaudeのProjectsに所内マニュアルを置き、職員を招待すれば、質問に答える窓口をひとつ作れます。ただしこの使い方が成立するのは、共有機能のあるTeamまたはEnterpriseプランです。この記事では、置く資料の線引き、共有範囲の決め方、指示文、答えの確かめ方、運用で起きる落とし穴を順に説明します。

共有できるのはTeamとEnterpriseの組織アカウントだけ

プロジェクトの公開範囲と共有の機能は、TeamまたはEnterpriseプランの利用者向けです。Free・Pro・Maxの個人アカウントには共有の機能がありません。職員が各自の個人アカウントでマニュアルを配るやり方は、この記事の対象外です。

プランの違いはClaude Teamプランの導入ガイドにあります。顧問先の情報を扱う事務所でプランを分ける理由は、税理士のClaude利用と守秘義務で整理しました。

もうひとつ前提があります。公開範囲の選択肢は、組織の管理者がプロジェクト共有を許可している場合に限って出ます。管理者は共有そのものも、組織全体への公開(Public)も止められます。Enterpriseでは、役割ごとに止めることもできます。共有できないときは、管理者に相談することになります。

置く資料と置かない資料を先に分ける

Projectsの知識ベースに入れた内容は、招待された職員全員がチャットの中で参照できます。つまり「職員全員に見せてよい文書か」が、置く資料の基準になります。

区分例扱い
置く例受付から契約までの流れ、書類の保管ルール、報酬請求の手順、電話・来客の対応手順扱い版と改訂日をファイル名に入れる
置く例申請書の書き方メモ、チェックリスト、様式の記入例(架空の氏名・数値のもの)扱い実名が残っていないか確認してから
置かない例顧問先の名簿、個別案件の書類、報酬額が個別に載った請求データ扱い別の手段で管理する
置かない例職員の人事評価、給与、個人番号の写し扱いClaudeに渡す対象にしない

線引きの目安は、顧問先を特定できる情報が1つでも含まれるかどうかです。記入例の中に過去案件の氏名や金額が残っていることがよくあります。アップロードの前に、架空の値へ置き換えます。

守秘義務の面で何を確認するかは、弁護士の守秘義務とClaudeにまとめています。最終的な当てはめは、所属する会の見解と事務所の判断になります。

共有範囲を決める — Public・Private・2つの権限

プロジェクトの作成時に、公開範囲を2つから選びます。

くらべる

プロジェクトの公開範囲

組織全員

Public

組織の全員がプロジェクトを見て、使えます。組織タブの閲覧や検索から見つかります。

招待した人だけ

Private

招待したメンバーだけが使えます。既定では作成者だけが入れる状態です。

所内マニュアルなら、組織が事務所の職員だけで構成されている限り、Publicでも成り立ちます。ただし、アカウントを事務所の外の人(提携先の補助者など)と共有しているなら、Privateにして招待制にします。切り替えはどちらの向きでもいつでもでき、プロジェクトを開いて「Share」ボタンから「General access」を変えます。

招待したメンバーには、権限を2段階で付けます。

  • Can view:プロジェクトの内容・ナレッジ・指示を見て、その中でチャットできる。編集はできない
  • Can edit:指示とナレッジを編集でき、メンバー設定を更新できる

職員にはCan view、マニュアルの改訂を担う人(事務長や所長)にだけCan editを付ける形が基本です。全員にCan editを渡すと、誰かが誤って指示文を書き換えたり、ファイルを消したりできます。

メールアドレスの一覧を貼り付けて、まとめて招待することもできます。10人を超える事務所では、この方法が速くなります。Enterpriseでは、グループを指定して共有する機能がベータで提供されています。グループに入った人は自動で使えるようになり、抜けた人は使えなくなります。反映には最大5分かかります。

手順 — マニュアルを置いて職員を招待する

手順

所内マニュアルの窓口を作る流れ

  1. 1

    プロジェクトを作る

    Projectsで「New Project」を選び、名前と説明を付けます。名前と説明はClaudeには見えません。公開範囲は、迷ったらPrivateを選びます。

  2. 2

    マニュアルをナレッジに追加する

    知識ベースの「+」から、手順書のファイルを追加します。同じ手順が複数の文書に分かれている場合は、1つにまとめてから入れます。

  3. 3

    指示文を設定する

    「Set project instructions」に、答え方の決まりを書きます。次の節に例があります。

  4. 4

    職員を招待する

    「Share」ボタンから、名前かメールアドレスで職員を追加し、Can viewを選んで共有します。招待された職員にはメールが届き、自分のProjectsの「Shared with you」タブに出ます。

  5. 5

    自分でも職員の立場で質問してみる

    運用に出す前に、実際に出そうな質問を5〜10件投げて、答えを原本と照らします。

指示文に何を書くか — 所内ルールだけで答えさせる

指示文は、プロジェクトのすべてのチャットに効きます。所内マニュアルの窓口では、次の3点を決めます。マニュアルにない事項は推測させないこと、答えに根拠の文書名と見出しを付けさせること、顧問先の情報が質問に混ざったら止めさせることです。

次は、書き方の一例です。

あなたは当事務所の所内手順を案内する窓口です。
- 回答はこのプロジェクトのナレッジにある文書だけを根拠にします。
- 答えの末尾に、根拠にした文書名と見出しを書きます。
- ナレッジに書かれていない手順は「マニュアルに記載がありません。
  所長または事務長に確認してください」と答え、推測しません。
- 質問に顧問先の氏名、案件番号、金額が含まれていたら、
  回答の前に「顧問先の情報は入力しないでください」と伝え、
  その情報を使わずに一般的な手順だけを答えます。
- 法令の解釈や個別案件の判断は答えません。

指示文で顧問先の情報を止めても、入力そのものを防げるわけではありません。入力した時点で、その内容はチャットに残ります。ですから、指示文はあくまで職員への注意喚起で、線引きの本体は所内規程と研修になります。

答えの確かめ方 — 質問の型ごとに見る

窓口を出す前の試験では、質問の型を分けて確かめると抜けが見えます。

質問の型質問の例確かめる点
置き場所質問の例この書類の控えはどこに保管するか確かめる点保管場所の名称が原本と一致するか
担当・承認質問の例請求書は誰の確認を経て発行するか確かめる点承認者の順序が抜けていないか
例外処理質問の例依頼者が書類を持参しなかった場合は確かめる点マニュアルにない例外を作り出していないか
マニュアル外質問の例他事務所の取扱いは確かめる点記載がない旨を答えるか

特に見るのは、最後の2つです。マニュアルにない質問に、もっともらしい手順を返してきたら、指示文の「推測しない」の書き方を強めます。答えに付いた根拠の見出しが原本に存在するかも、サンプルで確かめます。

文書が長くなると、知識ベースがコンテキストの上限に近づきます。有料プランでは自動でRAGモードが有効になり、容量が最大10倍に広がります。この仕組みはClaude ProjectsのRAG検索の仕組みに詳しく書きました。RAGで検索される文書では、見出しの付け方が検索の当たりやすさに効くので、章立てが整ったマニュアルほど扱いやすくなります。

共有してから起きること — 運用の落とし穴

落とし穴

質問のチャットは、共有してもメンバーに見えない

プロジェクトがPublicでも、その中の各自のチャットは非公開です。チャットを共有するには、本人が「Share」から共有リンクを作ります。つまり、職員の質問履歴を所長が一覧する用途には、この仕組みは使えません。どんな質問が多いかを知りたいときは、職員に共有してもらうか、質問の集まる項目を別の方法で集めます。

運用に入ってから迷いやすい点を、公式の説明に沿って並べます。

  • ナレッジはメンバーと共有される:プロジェクトを共有すると、知識ベースも一緒に共有されます。
  • 管理者が共有をオフにすると:すでに共有された職員はそのまま使えますが、新しい追加はできません。Publicのプロジェクトは、Privateに戻ります。Publicだけで全員に見せていた場合、職員は使えなくなります。
  • アーカイブしても共有は消えない:メンバーも権限も保たれ、元に戻せば全部復元されます。アクセスを断つには、アーカイブの前後に共有設定から本人を外します。
  • 退職者の扱い:共有メニューでその人のロールを開き、「Remove access」を選びます。外されると、プロジェクトの中身には入れなくなります。外せるのはCan editの権限を持つメンバーです。

メンバーを外す権限については、公式ヘルプの説明に差があります。共有の公開範囲のページは「Can editのメンバーが外せる」とし、プロジェクトの作成・管理のページは「プロジェクトの作成者が外せる」と書いています。事務所では、退職の手続きに含める担当者を決めて、実際にその人の画面で外せることを確かめておくのが確実です。

もうひとつ、メモリーにも触れておきます。プロジェクトには専用のメモリーがあり、そのプロジェクトのチャットでは、ほかのプロジェクトのメモリーは使われません。所内マニュアルの窓口では、個人のメモリーが回答に混ざるのを避けたい場合、プロジェクトのページで「Use account memory」をオフにできます。

マニュアルの更新をどう回すか

窓口の信頼は、古い手順を答えないことで決まります。更新の担当を、ファイルの置き場所の管理と同じ人に固定します。

  1. 手順書を改訂したら、Can editを持つ担当者が古いファイルを削除して、新しいファイルを追加する
  2. ファイル名に改訂日を入れ、指示文の「根拠の文書名を書く」で、職員が版を見分けられるようにする
  3. 改訂の連絡は、これまでどおり所内の通知で行う

プロジェクトの知識ベースはチャット間で自動共有されません。チャットの中で職員がアップロードしたファイルは、そのチャットだけで使われます。窓口に載せたい資料は、Can editの担当者が知識ベースに追加します。

複数の型式の資料を窓口にする別の例は、設備の取扱説明書・保守マニュアルを問い合わせ窓口にする手順にあります。Projectsと他社のGPT機能との共有範囲の違いは、Claude ProjectsとChatGPT GPTsの違いで比べています。

まとめ

所内マニュアルの窓口は、Team・Enterpriseの共有プロジェクトで作ります。職員にはCan view、改訂担当にだけCan editを渡し、顧問先の情報は知識ベースにも質問にも入れない運用にします。指示文は注意喚起の役割で、守秘の線引きは所内規程と研修が担います。出す前には、置き場所・承認・例外・マニュアル外の4種類の質問で答えを原本と照らし、退職時の削除担当を決めておきます。

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