Claudeでイベントの収支報告を作る — 予算差異の説明から協賛社報告書まで
予算と実績の差を科目ごとにClaude for Excelで説明させ、同じ数字から協賛社向けの報告書を起こす手順です。特典の履行表、未達の書き方、渡してよい数字の線引きまで、架空のイベントの数字で示します。
イベントの収支報告は、実行委員会向けと協賛社向けで読み手が違っても、元にする数字は同じです。Claude for Excelに予算と実績を並べたブックを読ませれば、科目ごとの差異に理由の案を付け、同じブックの数字から協賛社向けの報告書の下書きまで進められます。
この記事では、架空の地域フェスの数字で、ブックの組み方、差異の説明の頼み方、特典の履行表、報告書へのつなぎ方、使えない場面を順に示します。
収支報告と協賛社報告書は同じ数字から作る
実行委員会に出す収支報告は「予算より何円ずれたか」に答える文書です。協賛社に出す報告書は「出した協賛金で約束の特典がどこまで実現したか」に答える文書です。問いは違いますが、金額も来場者数も同じ表から引けます。
別々のファイルで作ると、報告書側の来場者数が収支側とずれる事故が起きます。数字の出どころを1冊のブックに固定し、そこから2つの文書を起こす形にすると、ずれはセルの参照を追うだけで見つかります。
Claude for Excelは、開いているブックについて質問すると、答えにセル単位の根拠が付きます。付いた根拠のセルをクリックすると、該当のセルへ移動できます。「この差異の数字はどこから来たか」を後から追える点が、報告書づくりと相性の良い部分です。
ブックの組み方 — 4つのシートに分ける
シートは次の4つに分けます。列の名前は例です。
| シート | 主な列 | 役割 |
|---|---|---|
| 予算 | 主な列科目、予算額、前提(単価×数量) | 役割承認された予算の固定 |
| 実績 | 主な列科目、実績額、支払先、備考 | 役割支払いごとの記録と備考 |
| 協賛 | 主な列協賛社、協賛金、約束した特典、実績 | 役割特典の履行状況 |
| 指標 | 主な列有料来場者数、想定来場者数、SNS投稿数など | 役割報告書に出す実績の数 |
備考列に理由の素材を書いておくことが肝です。Claudeはブックに書かれたことしか根拠にできないので、「雨天でテントを追加した」という事実が備考になければ、差異の理由は憶測になります。
収入側の例を示します。以下は架空のイベントの数字です。
| 科目 | 予算 | 実績 | 差 |
|---|---|---|---|
| 参加費 | 予算600,000 | 実績540,000 | 差-60,000 |
| 協賛金 | 予算1,000,000 | 実績1,100,000 | 差+100,000 |
| 物販 | 予算150,000 | 実績132,000 | 差-18,000 |
| 収入計 | 予算1,750,000 | 実績1,772,000 | 差+22,000 |
支出側は次のとおりです。
| 科目 | 予算 | 実績 | 差 |
|---|---|---|---|
| 会場費 | 予算400,000 | 実績420,000 | 差+20,000 |
| 設営・機材 | 予算300,000 | 実績365,000 | 差+65,000 |
| 広報 | 予算200,000 | 実績150,000 | 差-50,000 |
| 出演・運営謝礼 | 予算250,000 | 実績250,000 | 差0 |
| 保険・雑費 | 予算100,000 | 実績87,000 | 差-13,000 |
| 予備費 | 予算100,000 | 実績0 | 差-100,000 |
| 支出計 | 予算1,350,000 | 実績1,272,000 | 差-78,000 |
収支は予算の400,000円に対して実績が500,000円、差は+100,000円です。収入の増減(+22,000円)と支出の減少(78,000円)を足すと、この差になります。
予算対実績の差異をClaudeに説明させる
差異の説明は、先に計算を済ませてから頼むのが安全です。差の列は、Excelの式で出しておきます。
差額 =実績額-予算額
差異率 =IF(予算額=0,"",差額/予算額)そのうえで、Claude for Excelに次のように頼みます。
「予算」「実績」シートを科目ごとに突き合わせて、
差額の絶対値が1万円以上の科目を一覧にしてください。
各科目に、備考列に書かれている事実だけを根拠に
差異の理由を1文で付けてください。
備考に根拠がない科目は、理由を推測せず
「備考なし・担当者に確認」と書いてください。
根拠にしたセルの番地も添えてください。最後の指定が大事です。「備考に無いことは書かない」と縛っておくと、理由の欄が「確認が必要な項目」と「備考から言える項目」に分かれます。
このブックの場合、整理の結果は次の3つになります。
- 設営・機材 +65,000円: 備考に「雨天対応でテント4張を追加」とあれば、その事実を理由にできる
- 参加費 -60,000円: 有料来場者数が想定の1,200人に対し1,080人。120人×500円で、差額と一致する
- 広報 -50,000円: SNS広告の一部を取りやめた、という備考があれば理由にできる。来場者減との関係は、このブックの数字だけでは言えない
三つ目が落とし穴です。広報費を削った時期と来場者が減った事実が並んでいても、因果をClaudeに言わせてはいけません。「関係があるかもしれない」と書くか、「関係は確認できていない」とする判断は人が持ちます。
予備費の扱いを先に決める
この例では、予備費100,000円が全額未使用で、支出計の差(-78,000円)を大きく押し下げています。予備費を除くと、予算1,250,000円に対して実績1,272,000円で、支出は22,000円の超過です。「支出が7万8千円下回った」とだけ書くと、運営がうまく絞ったように読めてしまいます。
予備費の差は別の行に分けて見せる、と依頼文に書いておきます。
支出の差異は、予備費を含む合計と、予備費を除く合計の
両方を出してください。数量差と単価差に分ける
参加費の差は、数量(来場者数)の差と単価の差に分けると説明が短くなります。単価500円が計画どおりなら、差のすべてが数量要因です。「単価×数量」を予算シートの前提列に持たせておけば、次のような依頼で分解できます。
参加費の差額を、数量要因と単価要因に分けてください。
予算の前提列と指標シートの数を使い、
計算式をセルに入れて残してください。計算式をセルに残させるのは、翌年の担当者が同じ見方で比べられるようにするためです。式の関係を保ったまま値を変えられるのが、このアドインの得意な動きです。
協賛社向けの報告書に必要な材料を協賛シートで揃える
協賛社が知りたいのは、支出の細目より、約束された特典が実現したかです。協賛シートに「約束」と「実績」を並べます。
| 協賛社 | 協賛金 | 特典 | 約束 | 実績 |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 協賛金500,000 | 特典ブース出展 | 約束1ブース | 実績1ブース |
| A社 | 協賛金500,000 | 特典ステージ告知 | 約束3回 | 実績3回 |
| B社 | 協賛金300,000 | 特典パンフレット広告 | 約束1面 | 実績1面 |
| B社 | 協賛金300,000 | 特典SNS投稿 | 約束4回 | 実績3回 |
| C社 | 協賛金200,000 | 特典ロゴ掲載(会場掲示) | 約束1か所 | 実績1か所 |
| D社 | 協賛金100,000 | 特典ロゴ掲載(Webページ) | 約束1か所 | 実績1か所 |
協賛金の合計は500,000+300,000+200,000+100,000で1,100,000円となり、収入表の協賛金と合います。Claudeには、この合計の一致の確認も頼めます。
「協賛」シートの協賛金の合計が、
「実績」シートの協賛金の実績額と一致するか確認してください。
一致しない場合は、差額と考えられる行を挙げてください。B社のSNS投稿は、4回の約束に対して3回です。未達は報告書で隠さず、事実として書きます。依頼文では「約束と実績に差がある特典は、冒頭の要約に未達として明記し、理由と代替の提案を空欄で用意する」と指定すると、理由を人が埋める形の下書きになります。理由をClaudeが創作する余地を残さないための指定です。
Wordの報告書へつなぐ
報告書は、ExcelからWordへ数字を渡して作れます。Claude for ExcelはWordやPowerPointのアドインと文脈を共有でき、1つの会話から開いているブックと文書の両方を扱えます。
Excelの数字を協賛社報告書にするまで
- 1
アドインを入れて設定を開く
Excel用とWord用のClaudeアドインを入れ、それぞれの設定で「Let Claude work across files」をオンにします。ProとMaxのプランでは初期状態でオン、TeamとEnterpriseのプランでは初期状態でオフです。切り替えは端末ごとなので、使う端末ごとに行います。
- 2
報告用のブックを分ける
協賛社に出してよい数字だけを入れた「報告用」シートを作り、そのシートだけのコピーのブックを開きます。実績シートの支払先や備考まで協賛社に見せる必要はありません。
- 3
Wordに下書きを作らせる
報告用ブックの数字から、Wordに構成案と本文の下書きを作らせます。数字の横に、元のセルの番地を残させます。
- 4
数字を人の目で突き合わせる
報告書の数字をブックの数字と1つずつ照合し、未達の理由と今後の対応を人が書き足します。
Word側の依頼文は、たとえば次のようにします。
開いている「報告用」ブックの数字をもとに、
協賛社向けの報告書を書いてください。
構成は、開催概要、来場者数、協賛特典の履行状況、
今後に向けた予定の順です。
履行状況は協賛社ごとに表にして、
未達の特典は表の下に事実だけを書いてください。
数字には、報告用ブックの元の番地を括弧で添えてください。協賛社ごとに出し分けるときは、「A社向け」と指定して該当の行だけを使わせます。B社の特典の話をA社の報告書に混ぜないためです。
渡してよい数字を先に決める
収支の全体像を協賛社に見せるかどうかは、実行委員会の判断です。協賛金の総額、他の協賛社の名前、謝礼の額は、出さない前提で運用するのが無難です。報告用シートを別に切ると、渡す範囲がシートの中身そのもので決まり、依頼文で「これは書かないで」と縛る手間が減ります。
使えない場面と注意点
Claude for Excelは、次の用途には向かないと案内されています。
- 人の確認を通さない、そのままの顧客向け成果物
- 検証なしの、監査に関わる計算
- 適切な管理がない、機微な情報や規制対象のデータを含むモデル
協賛社報告書はまさに「外部に出す成果物」です。Claudeの出した文章も数字も、人の確認を経てから渡します。
そのほか、イベントの収支で引っかかりやすい点を挙げます。
- 対応環境: ExcelのWindows版、Mac版、Web版で動きます。2016と2019の永続版やボリュームライセンス、iPad、Androidでは動きません。委員会の担当者が使う環境を先に確かめます
- 対応外の機能: データテーブルとマクロ(VBA)は扱えません。既存の収支ブックにマクロの集計が入っている場合、その部分は手で残します
- 外から届いたファイル: 協賛社や業者から受け取ったファイルには、隠れた指示が仕込まれている場合があります。受け取った見積書や請求書は、信頼できる自分のブックへ数字だけ写してから読ませます
- 個人情報: 来場者名簿や出演者の連絡先は収支の説明に要りません。入れないブックで作業します
- 履歴の扱い: 会話履歴はブラウザ内に保存され、Anthropicのサーバーには保存されず、端末間で同期されません。引き継ぐ内容は、備考列とブックの中に残します
実績の備考が空のまま頼むと、すべての科目が「担当者に確認」になります。使い始める前に、支払いごとの備考を埋めておくことが一番の準備です。
小さなイベントの経理との関係
イベントの収支は、日々の記帳の延長にあります。請求書から収支の表を組む流れはClaude中小企業経理ガイドにまとめています。決済事業者からの入金と売上の差を、手数料と締め日で説明する方法はキャッシュレスの入金突合の手順で扱っています。
予算そのものを「助成金が減った場合」のように複数の前提で組みたい場合は、予算シナリオを並べて比較する方法が先になります。参加登録をSalesforceで管理している団体なら、Blackthorn Eventsとの連携で来場者の数字を会話から引く道もあります。
まとめ
収支報告も協賛社報告書も、1冊のブックから引いた数字なら食い違いが起きません。差異の理由は備考に根拠のあるものだけをClaudeに書かせ、根拠のないものは「確認」として人に戻します。協賛社に渡す数字は報告用シートで先に絞り、未達の特典は事実のまま載せて、最後の照合は人の目で行います。