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Claude for Educationを大学に導入する利用ポリシー — 文科省通知が土台

Claude for Educationを大学に導入する利用ポリシー — 文科省通知が土台

文部科学省「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて」の論点整理を、大学がClaude for Educationの利用ポリシーを策定する際の骨格として読み替える方法をまとめます。

文科省の大学向け通知は、なぜClaude利用ポリシー策定に使えるのか

日本の大学がClaude for Educationを導入するときの学内ポリシーは、文科省の通知を骨格にすると作りやすくなります。通知は3つの利活用場面と5つの留意点を示しています。ポリシーではこのうち成績評価・機密情報・公開時の著作権の3章に、自校の事情を書き込みます。

プランの内容や対象機関はClaude for Educationとはにあります。ここでは導入時の学内ポリシーの作り方を扱います。

文部科学省は2023年7月13日、「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて」を事務連絡として周知しました。宛先は国公立の大学法人や、大学を設置する地方公共団体・学校設置会社の担当課、学校法人の担当課、国立高専の機構の担当課です。令和4年11月に公開されたChatGPTは、公開から2か月で月間ユーザーが1億人を突破しました。多くの大学・高専が独自の指針づくりを進めていた時期にあたります。

この通知は、特定のサービスを勧めも禁じもしません。「それぞれの教育の実態等に応じ、今後の状況変化を踏まえて指針等の内容を見直すことも含め、主体的に対応いただくことが重要」というのが立場です。サービス名として挙がるのはChatGPTだけで、Claudeへの言及はありません。通知は文章生成AI、特にChatGPT等を念頭に置いたと明記しています。

つまりこれは自校の指針を作るための論点リストです。Claude for Educationの学内ポリシーを白紙から書くより、この論点に自校の事情を当てはめるほうが抜け漏れを減らせます。小中高は別の文書が扱っており、小中高向けの文科省ガイドラインver2.0とは対象が異なります。

通知は、3つの政府文書と並べて読める

政府はこれまで「人間中心のAI社会原則」(平成31年3月29日に統合イノベーション戦略推進会議が決定)等で、AIに対する基本戦略・基本理念を示してきました。別紙の本文と脚注は、先行する3つの政府文書を引いています。ポリシー文書に根拠を書き込むときの出典の手がかりになります。

あゆみ

通知につながる政府側の動き

  1. 2023年5月8日デジタル社会推進会議の幹事会申合せ

    「ChatGPT等の生成AIの業務利用に関する申し合わせ」です。通知の脚注は、約款型外部サービスでは必要十分なセキュリティ要件を満たすことが一般に困難なため、原則として要機密情報を扱えないとする部分を引いています。

  2. 2023年5月26日AI戦略会議の論点整理

    「AIに関する暫定的な論点整理」です。AIの懸念やリスクへの対応とバランスを取りながら進める、という基本線を置きました。

  3. 2023年6月2日個人情報保護委員会の注意喚起

    「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」です。通知は個人情報保護法の関連で、この文書を参照するよう脚注で示しています。

  4. 2023年7月13日大学・高専向けの通知

    有識者と数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム拠点校の協力を得て、各大学の既存の指針等も踏まえ、場面例と留意点をまとめました。

3つの利活用場面と5つの留意点を、Claude導入ポリシーの目次にする

通知は、利活用が想定される場面例と、検討時に留意すべき観点の2本立てです。場面例の側は次のように読み替えられます。

通知が示す利活用場面Claudeでの対応例
学生による主体的な学びの補助・支援(ブレインストーミング、論点の洗い出し、情報収集、文章校正、翻訳やプログラミングの補助等)Claudeでの対応例レポート作成の壁打ち・下調べへのClaude利用を許可する範囲の明確化
学生が生成AIを使いこなすための教育(原理の理解、プロンプトの工夫、出力の検証、技術的限界の体験)Claudeでの対応例情報リテラシー科目でのClaude for Education活用
教員による教材開発や効果的・効率的な事務運営への利活用Claudeでの対応例教員がClaudeで教材のたたき台や事務文書を作成する運用ルール

通知はここで「利活用可否の検討」を求めています。利活用が可能な場面だけでなく、利活用不可とする場面と、そこで反した行為があったときの措置まで含めて、学生と教職員に適切に示すことが望ましい、という書き方です。ポリシーの条文を「許可リスト」だけで終えると、この半分が欠けます。通知の別紙は、個々の教育の目的・内容を踏まえて可否を検討するよう求めており、可否を一律に決める書き方ではありません。

もう1つ、場面例の末尾には、利活用の取組事例と、そこで生じた懸念事項を教職員間で共有する、という一文があります。ポリシーを作って終わりにせず、運用で見つかった知見を戻す経路が最初から想定されています。通知は、指針の見直しに加えてFD・SD等の組織的な研修(教職員向けの研修)も含めた対応を各大学に期待しています。

留意点は5つで、そのまま章立てに使えます。

章立て

留意点5つとポリシーの章

  • 1. 学修活動と成績評価

    学生への明記の書式と、評価方法の組み立てを決める章です。

  • 2. 技術的限界

    出力を学生にどう確認させるかを決める章です。

  • 3. 機密・個人情報

    入力してよい情報の線引きを決める章です。

  • 4. 著作権

    公開物の確認を誰が担うかを決める章です。

  • 5. AIの基礎知識の理解

    AIに関する科目の改善の進め方を決める章です。

成績評価は、通知がもっとも具体的な対応を挙げる論点

5つの留意点のうち、通知が対応策まで具体的に書いているのが成績評価です。通知は「大学・高専における学修は学生が主体的に学ぶことが本質である」と置き、生成AIの出力をそのまま用いるなど学生自らの手によらずに成果物を作ることを「一般に不適切」としています。

対応として挙がるのは次の3点です。

  • 利活用した旨と、生成AIの種類・箇所等を学生に明記させる
  • 小テストや口述試験を併用するなど、評価方法を工夫する
  • AIが生成した文章かを判定するツールを使う場合でも、その結果を過信しない

通知は判定ツールの利用そのものを否定していません。使うなら結果を過信しないこと、という注意です。ポリシーに「ツールで疑わしいと出たら不合格」のような条文を置く場合、この一文と緊張関係になります。

さらに通知は「生成AIの種類(有料版か無料版か)により、成果物に差が生まれ得ることにも留意」と述べています。Claude for Educationのような教育機関向けの環境と、個人が無料で使えるプランとで、学生間に不公平が出ないかという論点は、この一文が根拠になります。

技術的限界の章は、確認の手順まで書き込む

技術的限界の記述は、仕組みの説明から入ります。大規模言語モデルを使う生成AIは、基本的に、ある語句の次に使われる可能性が確率的にもっとも高い語句を出力して文章を作ります。そのため、内容に虚偽やバイアスが含まれる可能性があります。

通知が求める対応は、インターネット検索等と同様に、出力された内容の確認と裏付けを行うことです。ポリシーに「出力を鵜呑みにしない」と書くだけでは、この求めに応えたことになりません。確認の対象(引用元、数値、人名・文献名)と、確認した記録の残し方を、成績評価の章で求める「利活用の明記」と合わせて書く形が考えられます。

機密情報・個人情報とオプトアウトは、ポリシーの技術的な章になる

機密情報の論点で、通知は2つの参照先を挙げています。各大学・高専の情報セキュリティに関する指針と、個人情報保護法です。特に教職員が生成AIを利活用する際は、この2つを踏まえた対応が必要だと書いています。

一般的な留意点としては、機密情報や個人情報を安易に生成AIに入力することを避ける、という線です。上の年表の5月8日の申合せに照らして、自校のClaudeの契約形態がこの区分のどこに当たるかを、情報セキュリティ部門と詰める作業が、この章の実質になります。教員が研究計画調書の作成にClaudeを使う場合の自己責任条件は、科研費の申請書に生成AIを使っても大丈夫かで扱っています。

技術的な対応として、通知は「生成AIの種類によっては、入力の内容を生成AIの学習に使用させない(オプトアウト)ことができる」と述べます。学習に使われない設定になっているかどうかは契約形態によって変わりうるため、ポリシー文書には契約ごとの事実を明記する意味があります。Anthropicのプライバシーセンターでは、Claude for WorkやAnthropic APIなどの商用製品への入力と出力は、既定ではモデルの学習に使わないとされています。Claude Free・Pro・Maxなどの個人向け製品は別の扱いで、設定が関わります。契約形態ごとの違いはClaude for Educationとは — 大学向けの教育機関プランにまとめています。個人契約のアカウントで学生の成績や個人情報を扱うことを禁じ、大学契約のアカウントへ一本化する運用は、この論点への直接の回答です。研究室単位でAPIを契約する場合も、同じ確認を対象に含める必要があります。

著作権の論点は、授業の範囲か公開かで分かれる

著作権の記述は短く、実務上の分岐点が1つにまとまっています。

くらべる

生成物の利用先で変わる扱い

許諾なしで可

授業の範囲内

著作権法第35条により、授業での複製や公衆送信は許諾なしにできます。AIが生成したものが既存の著作物と同一または類似だった場合でも、授業の範囲内なら利用できます。

許諾が必要

広く公開する場合

通知は、広くホームページに掲載することなどは著作権者の許諾が必要になる、と区別しています。

大学では、レポートや論文が学会発表や学外への公開につながりやすい点に注意が要ります。その場合、授業の範囲という前提が外れます。

通知の脚注は、侵害に当たるかの要件も補っています。類似性(創作的表現が同一または類似であること)と、依拠性(既存の著作物をもとに創作したこと)の両方が必要で、類似していない場合や、既存の著作物を知らず偶然に一致しただけの場合は侵害になりません。別の脚注では、著作物とは思想や感情を創作的に表現したものであり、単なるデータ(事実)やアイディア(作風・画風等)は含まれないとも述べています。

これを受けると、ポリシーの条文は「類似した出力を使わない」では足りません。公開物にClaudeの出力を使う場合、出力が既存の著作物と類似していないかを誰がいつ確認するかを決める必要があります。卒業論文や紀要論文なら、指導教員の確認工程に入れる案が考えられます。

「AIリテラシーの育成」は、利用ポリシーと別立てで扱う

5つ目の「AI等に関する基礎的な知識等の理解」は、利用ルールだけでは満たせません。通知は、学生等がAIの最新の動向、普及による可能性とリスク、倫理面やデータリテラシー等を含む、デジタル化社会に対応するための基礎的な知識・能力を理解・習得することが重要だとしています。AIに関する授業科目も、技術の進展や社会での活用状況を踏まえて適宜改善を図ることが重要だと続きます。

文科省は「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」と、全国9ブロックで活動する「数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム」の活用・参画も各大学に促しています。コンソーシアムは、生成AIを含む最新動向を踏まえたモデルカリキュラムや教材の開発・改善を担っています。その成果の普及展開も含め、通知は各大学に積極的な検討を求めています。通知が「使いこなす」教育を場面例に入れた根拠は、生成AIが今後さらに発展し、社会で当たり前に使われるようになることが想定される、という視座です。禁止だけで済ませる前提に立っていません。利用ルールの章とAIリテラシー教育の章を分けて置く設計は、通知の構成そのものに沿っています。

まとめ

Claude導入ポリシーを書く大学は、5つの章のうち成績評価・機密情報・公開時の著作権の3つに、契約形態や確認担当者といった自校の具体を書き込む必要があります。運用で出た知見を戻す改定の手順と研修の枠も、条文と一緒に決めておく形になります。

学生と教員向けの使い方はClaude for Educationの使い方、他大学の導入事例はClaude教育導入事例にまとめています。学内規程の作り方全般はデジタル庁の生成AIガイドラインをClaude社内規程に転用する記事のリスク4軸も参考になります。

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