Coworkのスクリーンショットに映る個人情報とその対策
Computer Useは画面を操作するためにスクリーンショットを撮り続けます。許可したアプリに映る情報は個人情報を含めてすべてClaudeに見えます。
CoworkのComputer Useは、画面の状態を把握するためにスクリーンショットを撮りながら動作します。この仕組み上、許可したアプリの画面に映っているものは、個人情報や機密文書を含めてすべてClaudeから見える状態になります。承認は「どのアプリを触ってよいか」の単位で行われ、その画面に何が映っているかまでは選べません。Pro・Maxプランのリサーチプレビューで、macOS版・Windows版のClaude Desktopアプリから、CoworkとClaude Codeで使えます。Team・Enterpriseプランは対象外です。
Computer Useが画面を見る理由
Computer Useは、Coworkがタスクを処理する3段階の手段のうち最後の手段です。Claudeはまずコネクタ(Gmail・Google Driveなど接続済みのサービス)を使い、次にデスクトップアプリ内蔵ブラウザやClaude in Chromeを使い、どちらも使えない場合にだけ画面を直接操作します。社内の独自ダッシュボードや、コネクタが用意されていない専用ツールを操作する場面が主な出番です。
画面を直接操作するには、今どこに何が表示されているかをClaudeが把握する必要があります。そのための手段がスクリーンショットです。Claudeは許可されたアプリの画面を撮影し、その画像を手がかりにカーソルを動かし、クリックし、テキストを入力します。人間がマウスとキーボードで操作するのと同じ経路をたどるため、コネクタのようにAPI越しに必要なデータだけを取得する仕組みとは根本的に異なります。
Computer Useは、対象の機器の電源さえ入っていれば、ユーザーが席を外していても動き続けます。物理的なマシンでの作業であれば、離席中も処理は止まりません。画面が見られる時間は、ユーザーが横で見ている間だけに限られません。
「アプリの許可」と「画面の中身」は別の話
Claudeは各アプリケーションへのアクセス前に必ず許可を求めます。プロンプトが表示され、ユーザーが承認して初めてClaudeはそのアプリを操作できます。ここまでは他のCowork機能と同じ、都度確認の仕組みです。
ただし、許可の単位は「このアプリを触ってよいか」であって、「この画面のどの部分を見せるか」ではありません。一度アプリへのアクセスを許可すると、Claudeはそのアプリの画面に表示されているものすべてを、個人情報や機微な文書を含めて見ることになります。承認ダイアログでアプリ単位の許可を出した後は、画面の中身を選んで隠す手段は用意されていません。銀行アプリの残高、顧客リストの氏名、社内チャットの機密のやり取りなど、その瞬間に画面に映っているものはすべて対象です。
この点は、コネクタのツール権限(常に許可・要承認・ブロック)のように操作の種類ごとに承認を細かく分けられる仕組みとは性格が違います。コネクタ側の承認設計についてはCowork常に許可がグレーアウトする原因と直し方で扱っていますが、Computer Useはアプリ単位の許可を出した時点で、そのアプリの画面全体が見える範囲に入ります。
Computer Useを動かすには、対象のコンピューターが起動していて、Claude Desktopアプリが開いている必要があります。裏を返せば、アプリを閉じない限りセッションは動き続け、その間は許可した範囲の画面が撮影され続けるということです。作業を終えたら、次のタスクを頼むまでComputer Useのトグル自体をオフに戻しておくと、意図しない時間帯まで画面が見える状態を防げます。
Computer Useには他のCowork機能にある区切りがない
Coworkのコード実行やコネクタ経由の認証情報の扱いには、隔離された環境を挟む設計があります。その仕組みについては、Claude Coworkのデータ取得の仕組みで詳しく解説しています。
一方でComputer Useは、Claudeとユーザーのアプリケーションの間にサンドボックスを挟みません。Claudeはデスクトップ、アプリ、ブラウザを直接操作します。クリックし、入力し、画面を移動する経路そのものに、コード実行のような隔離の区切りはありません。プロンプトインジェクションへの対策として、システムは操作のたびに不審な兆候をスキャンし、新しいアプリへのアクセス前には改めて許可を求めます。ただしこの検知はまだ発展途上で、攻撃の手口も変化し続けているため、過信は禁物です。
実務でできる対策
画面全体が見える前提に立つと、対策の方向は絞られます。
- そもそもトグルをオフのままにする。Computer UseはClaude Desktopの最新版を前提に、Settings > Generalにあるトグルで個別にオンにする仕様で、既定では動きません。使わない期間はオフに戻しておくと、意図しない時間帯の撮影を防げます
- 機密情報を含むアプリやファイルは、Computer Useを始める前に閉じます。銀行・医療・法務など機微度の高いアプリは、そもそも許可対象に含めません
- アプリのブロックリストを自分で設定します。使わせたくないアプリをあらかじめブロックリストに追加しておけば、Claudeからのアクセス要求は自動的に拒否されます
- 複雑な多段階の作業より、まず調査や整理のような単純なタスクから試します。想定外の操作が起きたときに気づきやすくなります
- 指示文を具体的にします。曖昧な指示は、意図しないアプリへの遷移や操作につながりやすくなります
- 作業中は画面から離れません。少なくとも導入初期は、Claudeの操作を横で確認しながら進めます
投資・証券口座、医療記録、契約書のような他人の個人情報を含むアプリでの利用は、公式ガイドでも明確に非推奨とされています。
許可した範囲の外へ操作が波及することがある
Computer Useは許可したアプリしか操作できませんが、操作の結果は許可の外へはみ出すことがあります。たとえばメールアプリでリンクをクリックすると、Chromeへのアクセスを許可していなくても、そのリンクはChromeで開きます。システム側はClaudeがそのChromeウィンドウの中身を見えないようにする対策を講じていますが、リンクが開くこと自体は止められません。
許可したアプリの中で完結しているはずの操作が、意図しないアプリの起動につながりうるということです。画面が見える範囲は「許可したアプリ」を起点に考えるべきですが、起点から外へ波及する経路は残っています。
Computer Use以外の経路でも画面は見える
Coworkにはブラウザを介して動く経路もあります。Claude Desktop内蔵ブラウザやClaude in Chromeのサイドパネル経由でセッションを実行する場合、Claudeはログイン済みのページを含めて、開いているページの内容を読み取れます。これはComputer Useのスクリーンショットとは別の経路ですが、見えている情報の範囲という点では同じ注意が必要です。どの経路を使っているかに関わらず、機密情報が表示されたページやアプリは、Claudeに触らせる前に閉じておくのが安全です。
見た情報がそのままメモリーに残るわけではない
Cowork in the cloudは、チャットで使っているメモリー機能を共有します。過去のやり取りから「どう仕事を進める人か」を踏まえて動き出せる仕組みです。ただし、健康情報のように機微とみなされる話題は、設定で「Include sensitive topics in memory」をオンにしない限り既定では保存されません。政府発行のID番号・犯罪歴・金融口座番号・在留資格に関する情報は、この設定に関わらず一切保存されない対象です。
つまり、Computer Useが画面から読み取った情報がそのまま記憶として書き残されるわけではなく、記憶の可否は別の設定とルールに従います。画面に映る情報の広さ(本稿の主題)と、記憶として残る情報の狭さは別の話です。記憶した内容は、いつでも確認・編集・削除できます。
「隔離された実行環境」と「見えている画面」は別の安全境界
Coworkは「クラウド上の隔離環境で動く」という説明がよく前面に出ます。この説明は主にコード実行やネットワークアクセスの隔離を指しており、Computer Useが画面から読み取れる情報の範囲とは別の話です。隔離環境は、Claudeが暴走したコードでホスト側のシステムに触れないための境界であり、許可したアプリの画面に何が映っているかという境界とは独立に機能します。Computer Useを安全に使うということは、後者の境界を自分の手で管理するという意味になります。アプリ単位の許可を出す前に、その画面に何が映るかを一度思い浮かべる習慣が、有効な対策の一つになります。
まとめ
Computer Useは画面を操作するためにスクリーンショットを撮影し、許可したアプリに映っているものはすべてClaudeに見えます。承認の単位はアプリ全体で、画面の中身を選んで隠す手段はありません。他のCowork機能にあるサンドボックスの区切りもComputer Useには及ばないため、機密情報を含むアプリは事前に閉じる、ブロックリストで到達範囲を絞る、単純なタスクから試す、という対策を自分で設計する必要があります。Pro・Maxプランのリサーチプレビューとして提供されており、Team・Enterpriseプランは対象外です。