Cowork Sales pluginの使い方 — account-researchで商談前調査を自動化する
Sales pluginのaccount-research・call-summaryと、Legal pluginの/briefの使い方をAnthropic自身の公式チュートリアルから解説します。
Cowork Sales pluginとは何か
Claude Coworkの製品ページ(claude.com/product/cowork)は、商談前にアカウントを調べる作業をCoworkに任せる事例を動画で公開しています。キャプションは「See how Anthropic uses Claude Cowork to research any account before the first call(初回コール前に、AnthropicがどうClaude Coworkでアカウントを調べているかをご覧ください)」で、Anthropic自身がCoworkでアカウント調査をしていると明記されています。この動画自体が営業向けのSales plugin活用チュートリアルへ誘導する内容であることも、営業チームでの利用を裏づけています。この動画のLearn moreリンク先が、Academyの実践チュートリアルです。
チュートリアルは、アカウントエグゼクティブの「Brittney」という人物像を通して手順を解説します。型は単純です。初回コールの前にアカウントの現状をまとめ、コールの後にその記録を残す。この2段構成を支えるのがSales pluginで、account-researchスキルとcall-summaryコマンドが最初から組み込まれています。プラグインがスキル・接続アプリ・サブエージェントを1セットで配布する仕組みであることはCowork公式プラグイン3種を試すで扱った通りで、Sales pluginも同じ設計に乗っています。
Cowork営業活用としては、提案書と見積もりの下書き(Cowork営業で提案書と見積もりの下書きをどこまで任せるか)や失注理由の分析(Coworkで営業の失注理由を分析する)をすでに扱ってきました。商談の前後を挟むアカウント調査とフォローアップは、Sales pluginで初めて公式に仕組み化された領域です。
Sales pluginはプラグインディレクトリの「Browse plugins」から見つかります。導入直後からaccount-researchスキルとcall-summaryコマンドが並んで入っており、追加の設定なしにどちらも呼び出せる状態になります。Sales pluginに入っている全コマンド・全スキルの一覧と、Claude Codeでの導入手順はClaude部門別プラグインの使い方にまとめています。本稿は、そのうち商談の前後を挟むaccount-researchとcall-summaryを、Academyの実践チュートリアルに沿って運用手順まで追います。
account-researchスキルで商談前のアカウント調査を任せる
セットアップは3段階です。「Customize → Plugins」でSales pluginを開いて導入すると、account-researchスキルが最初から入った状態になります。「Customize → Connectors」で、スキルが読みに行くツールをつなぎます。CRM・データウェアハウス・通話録音・メール・チャット・Web検索が対象です。最後にCoworkのチャットバーで、Claudeが読み書きできる作業フォルダを選びます。ブリーフはこのフォルダに溜まり、そのままアカウントの履歴になります。
3点が整ったら、自社向けにスキルを調整するようClaudeへ依頼します。
Customize the account-research skill from the Sales plugin for my company.
My accounts are [the kind of customers I sell to] — ask me about my CRM
and data sources, the signals that matter for my deals, and the brief
format I read fastest.Claudeは読みに行くツール・重視する信号・ブリーフの体裁を対話で確認し、スキルを書き換えます。既に知っているアカウントで一度試し、抜けている点を伝えて直す。この往復を挟むほど、2周目以降の精度が上がります。
セットアップが済めば、初回コール当日は自然な依頼文だけで足ります。account-researchはコマンドではなくスキルとして組み込まれているため、Claude部門別プラグインの使い方が説明する通り、明示的なコマンド入力ではなく話しかけるだけで自動的に発動します。
[アカウント名]について、初回コール前のブリーフを作って
(Put together a pre-call brief on [the account name])Claudeは接続済みの全ソースを一度に読み、支出の推移・関係者マップ・導入済み製品・進行中の商談・押さえておくべきリスク信号を1本のブリーフに書き出し、作業フォルダへ保存します。コールに入る前の時間が、状況把握ではなく戦略を考える時間に変わります。
call-summaryコマンドで商談後のフォローアップまで任せる
コールが終わったら、同じCoworkセッションに戻ります。account-researchで読み込んだアカウントの文脈がまだ残っているため、通話の文字起こしを渡すだけでフォローアップに進めます。call-summaryはaccount-researchと違い、スラッシュで明示的に呼び出すコマンドとして提供されています。
/call-summary [the account name]Claudeは文字起こしから3種類の成果物を作ります。作業フォルダに保存されるアクションアイテムのチェックリスト、アカウントチャンネル向けの要点と担当者を整理したチーム向けメッセージ、自分の言葉のトーンで書かれた顧客向けフォローアップの下書きです。ここもaccount-researchと同じで、自社の送り方に合わせてカスタマイズしてから使うのが前提になっています。
チュートリアルは、この型が営業だけのものではないとも書いています。更新前に状況を確認したいカスタマーサクセス、初回商談前に相手を調べておきたいパートナーシップ担当、面接前に候補者を把握したいリクルーティング、デューデリジェンス前に対象企業を洗い出したい事業開発担当にも同じ流れが当てはまるとしています。会議の前に文脈を集め、後に記録を残す役割ならどこでも通用する設計だという説明です。
Legal pluginの/briefコマンドにも同じ設計が表れている
Anthropicが公開しているもう1本の動画は、法務チームの事例です。プロダクト担当の弁護士「Mark」が、1月に書いたレビューが今回の機能変更で再検討の対象になるかをSlackで聞かれる場面から始まります。この事例を支えるのはLegal pluginの/briefコマンドで、Cowork公式プラグイン3種を試すで扱った契約書レビュー機能とは別の使い方です。
/briefは2つのモードで動きます。1つは朝のスケジュール実行です。受信箱・タスク管理・チャットを読み、今日締め切りのもの・新着・急ぎのものを1本のメモにまとめます。
/schedule Every [weekday at 8am], read my [Gmail, issue tracker,
and Slack] and run /brief in daily mode to write a memo: what's
due today, what's new, and what's urgent.もう1つは質問が来たときのオンデマンド実行です。特定の疑問が浮かんだ時点で、その1問を渡すだけでスキルが過去のレビューを探し当てます。
/brief does [the new request] change our conclusion on
[the prior review]?返ってくるブリーフは、以前の結論・今回との違い・食い違う箇所を短く整理した内容です。各主張には引用元へのリンクが必ず付きます。ここがaccount-researchとの明確な違いです。account-researchは状況把握で完結しますが、/briefは根拠を検証できる形で答えを返す設計になっています。
回答をそのまま使う前に、引用元の一文を自分で読み、正しく引用されているかを確認する。判断を下すのは自分だという前提のもと、この確認がステップとして明記されています。確認が終われば、メッセージング接続アプリ経由で返信を下書きし、タスク管理接続アプリ経由でチケットを引用付きでクローズするところまで、1つの依頼にまとめられます。
チュートリアルは/briefの使い道も法務に閉じないとしています。前回の案内内容を確かめたいカスタマーサポート、どの評価が影響を受けるかを判定したいコンプライアンス、前回の予測で承認した前提を確かめたい財務、過去のインシデント対応と照らし合わせたいオンコールのエンジニアリングも同じ仕組みで恩恵を受けるとしています。ここでも軸になるのは「過去の判断を素早く参照する」という一点です。
収集は自動化し、判断は人に残す
account-researchと/briefは、扱う業務も出力の形も違います。それでも骨格は同じです。スキルを一度作り、定期実行かオンデマンド実行かを決め、出力には根拠を残し、行動する前に人が確認する。この4段階が両方に共通しています。
並べると違いも見えてきます。
| 観点 | account-research(Sales) | /brief(Legal) |
|---|---|---|
| 実行タイミング | account-research(Sales)コール前に都度 | /brief(Legal)朝のスケジュール実行 + 質問ごとの都度 |
| 読みに行く先 | account-research(Sales)CRM・データウェアハウス・通話録音・メール・チャット・Web | /brief(Legal)受信箱・タスク管理・チャット・レビューの保存先 |
| 出力の形 | account-research(Sales)1本のブリーフ(状況把握) | /brief(Legal)引用付きの回答(検証可能) |
| 後処理 | account-research(Sales)call-summaryで通話後のフォローアップ | /brief(Legal)接続アプリ経由で返信・チケットクローズ |
/briefだけが引用リンクを持つのは、扱う中身が「過去に下した判断」だからです。状況をまとめるだけのaccount-researchと違い、/briefは他人の意思決定の根拠として使われます。ここで確認を省くと、引用付きで返す設計そのものの意味が失われます。
この確認の工程は、Coworkのマーケティング活用チュートリアルが「discernment(見極め)」と呼ぶ習慣と同じものです。詳しくはCoworkでマーケティング運用のレビューを自己改善スキルで回すで扱っていますが、/briefの引用リンクは見極めを「読み返して確認する」という具体的な操作にまで落とし込んでいます。見極めを抽象論で終わらせない設計です。
Coworkの公式サイトは、このほかにも部門別の架空デモ依頼文を公開しており、そこから読み取れる4つのパターンはClaude Cowork活用事例にまとめています。あちらの題材は実在しない取引を模したデモです。一方、本記事で扱ったSales pluginとLegal pluginは、Anthropic自身が使っていると明記されたうえで、Academyの実践チュートリアルとして手順まで公開されている点が違います。
まとめ
Sales pluginのaccount-researchは商談前のアカウント調査、call-summaryは商談後のフォローアップを担います。Legal pluginの/briefは、朝のスケジュール実行と質問への即答という2つの使い方をこなします。扱う業務は違っても、スキル化・定期またはオンデマンドでの実行・根拠付きの出力・実行前の人の確認という骨格は共通です。Coworkに何を任せ、どこで人の判断を挟むか。この2つの公式ワークフローは、その線引きを考えるための具体的な手本になります。