Coworkで資料作成を進める手順 — 構成案から下書き・図表・仕上げまで工程別の指示文と素材の渡し方
Coworkに資料作成を任せるときの工程分解。構成案・下書き・図表・仕上げのどこまでを任せ、どこを手元に残すか。工程ごとの指示文の型と素材ファイルの渡し方を扱います。
資料作成をCoworkに丸ごと投げると、たいてい期待外れになります。効くのは工程を分けたときです。構成案・下書き・素材の整形まではエージェントが速く、スライドの体裁と数字の裏取りは手元に残る。この線引きを最初に決めておくと、出てきた成果物を捨てる回数が減ります。
「10枚のスライドを作って」と頼むより、「1スライド1見出しの構成メモを、想定読者と枚数と含めたい要素を指定して」と頼むほうが、結果的に完成が早くなります。理由は工程ごとに必要な情報が違うからです。
資料作成の4工程とCoworkの守備範囲
資料は4つの工程に分かれます。工程ごとに、任せて成立する部分と手元に残る部分がはっきり分かれます。
| 工程 | 任せられること | 手元に残ること |
|---|---|---|
| 構成 | 任せられること見出し出し、枚数配分、抜けの指摘 | 手元に残ること訴求点の決定、順序の最終判断 |
| 下書き | 任せられること各スライドの本文、話者ノート | 手元に残ること社内事情との整合、言い回しの調整 |
| 図表 | 任せられること表・箇条書きへの構造化、素材の整形 | 手元に残ること数値の出典確認、グラフの設計 |
| 仕上げ | 任せられることファイル名の統一、体裁チェックの洗い出し | 手元に残ることレイアウト、配色、最終的な体裁 |
分け方の要点は、判断の責任が伴う工程を手元に残すところにあります。構成の骨組みを出すのは機械的な作業ですが、「この提案でどこを一番押すか」は資料を出す人の判断です。同じように、表への構造化は任せられても、その数字がどこから来たかの確認は任せきれません。
資料の種類によって、どの工程が重いかも変わります。社内説明資料は構成の抜けが致命傷になりやすく、構成の工程に時間を割く価値があります。提案書は下書きの言い回しが相手との関係に直結するため、下書きを叩き台としてしか使わない前提で進めるほうが安全です。定例の報告資料はほぼ図表の工程が本体で、構成は前回のものを流用できます。同じ「資料作成」でも、任せる比率はここで変わります。
Coworkそのものの機能構成や対応プランから確認したい場合は、Coworkの全機能と料金を1本にまとめたガイドが全体像にあたります。
工程1: 構成案は制約を先に渡す
構成案の質は、渡した制約の量でほぼ決まります。テーマだけを渡すと一般論の目次が返り、読者・枚数・含めたい要素・トーンを渡すと使える骨組みが返ります。
{新しい経費精算フローの社内展開} について、説明資料の構成案を作ってください。
- 形式: 1スライド1見出しの構成メモ(Markdown)
- 枚数: タイトル + 12枚
- 想定読者: 経理以外の一般社員。ITの前提知識はばらつきがある
- 前提: 切替は9月、旧フローは10月末で停止
- 各スライドに、見出し・入れる要素・話す想定時間を書いてください
- 構成上の抜けや、読者がつまずきそうな箇所があれば最後に指摘してください最後の1行が効きます。構成案を出させるだけでなく、抜けの指摘を同時に頼むと、自分では思い付かなかった論点が拾えます。「切替後の問い合わせ窓口が入っていない」「旧データの扱いに触れていない」といった指摘は、抜けを探す依頼を添えると拾いやすくなります。
枚数を指定しないと、分量がぶれやすくなります。持ち時間が決まっている説明なら、枚数ではなく「20分で話し切れる分量」と書く方法もあります。時間から逆算させると、1枚あたりの情報量まで含めて調整されます。
そのまま流用できる依頼文をお探しなら、業務別に整えたCoworkの業務テンプレート12選に資料作成向けのプロンプト例があります。導入したばかりで最初の1本から始めたい方は、非エンジニア向けのセットアップと初日の使い方が入口として近いです。
工程2: 下書きはトーンと分量を数字で縛る
構成が固まったら、各スライドの本文を書かせます。ここでの失敗は、抽象度がそろわないことに集中します。1枚目は具体的なのに5枚目から一般論になる、という現象です。
先ほどの構成案の3〜7枚目について、本文を書いてください。
- 各スライド: 箇条書き3〜4行、1行は40字以内
- 話者ノート: 各スライド150字程度、口語で
- トーン: 敬体。専門用語は初出で一文の補足を付ける
- 数字を入れる箇所は [要確認] と明記し、こちらで埋めます
- 前提が足りずに書けない箇所は、書かずに質問として返してください「数字は[要確認]と明記」と「書けない箇所は質問で返す」の2つを入れておくと、それらしい数字で埋められた下書きが返ってくる事態を避けられます。埋められた数字より、空欄と質問のほうが手戻りが少ないためです。
分量の指定は、枚数ではなく行数と字数で書くほうが安定します。「簡潔に」は解釈の幅が広く、指示として弱いためです。同じ理由で、トーンも「丁寧に」ではなく「敬体」「社外向け」のように語で指定したほうが揺れません。
下書きをMarkdownで受け取ると、直したい箇所だけを選んで頼めます。該当のテキストをハイライトして「Edit with Claude」を押し、依頼を入力すると、その箇所がその場で編集されます。スレッドで「3枚目の2行目を」と説明する手間が要りません。
工程3: 図表は出典のあるものだけ作らせる
図表の工程では、手元の素材を渡して構造化させるやり方が中心になります。売上データのCSVから比較表を作る、議事録から論点の一覧を起こす、といった作業です。
一方、素材のない図表は作らせないほうが安全です。「市場規模の推移をグラフにして」と頼めば形にはなりますが、その数値の裏付けは資料を出す人が持つことになります。素材があるものだけを構造化の対象にし、無いものは「このスライドには外部データが要る」というメモで止める進め方があります。
構造化を頼むときは、出力する表の列を先に指定すると精度が上がります。「この議事録から論点を表にして」だけでは列の取り方が毎回変わりますが、「論点・現状・決まったこと・次のアクションの4列で」と書けば、複数の素材から同じ形の表が揃います。スライドに載せる前提なら、列は4つまでに抑えておくと流し込みで崩れません。
グラフそのものについては、表の形まで作らせて描画は手元のツールで行うほうが早い場面が多くあります。配色や軸の取り方は資料全体の体裁と揃える必要があり、そこは工程4の領域です。
工程4: 仕上げは体裁の最終判断を手元に残す
CoworkはPowerPointのファイル(.pptx)そのものも作れます。生成したスライドは、Claude for PowerPointでさらに編集できます。コード実行とファイル作成の機能で、Excel・PowerPoint・Word・PDFを書き出せるためです。構成メモと本文をMarkdownで固めてから流し込む進め方は、唯一の道ではありません。
出力先は、資料の使い道で選べます。
スライドの出力先は2通り
Coworkで.pptxを作る
構成と本文が固まったら、「この本文を.pptxにして」と頼みます。ダウンロードして手元のPowerPointで開き、レイアウトと配色を確認します。社外に送る、印刷する、といったファイル前提の用途に向きます。
Claude Slidesで作る
Claudeの成果物として、スライドをブラウザー上で作ります。自分で直すことも、Claudeに修正を頼むこともでき、リンクで共有するか書き出せます。ベータ提供で、有料プラン限定の機能です。Enterpriseでは、オーナーが有効にするまでオフになっています。
どちらを選んでも、レイアウト・配色・フォント・アニメーションの最終確認は人が持つ領域です。仕上げでCoworkに向くのは、体裁の洗い出しです。下書きのテキストに対しては、次のような依頼が機能します。
先ほどの本文について、以下を洗い出してください。修正はしないでください。
- 表記ゆれ(送り仮名・カタカナ表記・数字の全角半角)の一覧
- 1枚あたりの文字数が多すぎるスライドと、その削減案
- 補足なしで使われている専門用語
- 前後のスライドで主張が重複している箇所修正まで頼まず洗い出しで止めるのが要点です。指摘の一覧を見てから自分で直すほうが、全文を書き換えられるより速い場面が多くあります。書き換えを頼むと、直してほしくない箇所まで一緒に変わり、差分を確認する手間が増えます。
定例資料をどこまで自動で回すか
毎月同じ形式で作る資料は、工程1と工程2を定期実行に載せられます。スケジュール機能の頻度は、毎時・毎日・毎週・平日・手動から選びます。Claudeに相談しながら作る場合は、「毎週月曜の朝9時に」のように文章で伝えると、名前・スケジュール・指示内容の案が返り、「Schedule」を押すと登録されます。
素材の置き場所には落とし穴があります。スケジュール機能の公式ページには、スケジュールタスクは手元のフォルダーに結び付けられないという説明と、ローカルのファイルやアプリが要るタスクはローカルでしか動かないという説明が同居しています。Web・デスクトップ・モバイルの解説ページによれば、2026年10月6日からProとMaxの新規タスクがクラウドで動き、手元のファイルを使う定期タスクもクラウド側に移ります。その場合もデスクトップアプリを開いておく必要があります。同じ2026年10月6日に、Settings > Generalの「Only on your computer」オプションも削除されます。
定例で回す資料の素材は、共有ドライブなどコネクター経由で取れる場所に置くと、手元のPCの状態に左右されません。
承認のかけ方は、モードで決まります。モードはチャット欄のモードセレクターからいつでも変えられます。
新しいClaude体験(メッセージ欄にChatとCoworkが出ないPro・Maxのアカウント)では、選べるのはAutoとManualの2つで、既定はManualです。次の3つは従来のCoworkの表示にあたります。TeamとEnterpriseでは、Autoを使えるかどうかを管理者が決めます。
従来のCoworkの承認モード
Manual(手動で承認)
操作ごとに一時停止して、許可か拒否を選びます。外部に出る資料に向きます。
Auto(自動で承認)
Claudeが各操作の安全性を確認し、危ないと判断したものを止めます。止まり続けると、操作ごとの確認に戻ります。確認が入る分、他のモードより使用量を多く消費します。
Skip(承認を省略)
確認なしで進み、自動のチェックも働きません。関わるファイルとコネクターを全面的に信頼できるときに限る設定です。
「生成は自動、共有は承認後」という分け方は、Manualモードで、メール送信などの書き込み系ツールを「承認が必要」にして作ります。Autoでは承認するかどうかをClaudeが判断し、Skipでは承認なしで通ります。定例実行は、素材の置き場所と出力形式が固定されている資料に向きます。毎回テーマも読者も変わる資料は、その都度の依頼に向きます。
素材ファイルの渡し方
素材の渡し方には経路が3つあります。どれを使うかで、承認の出方と再利用のしやすさが変わります。
素材を渡す3つの経路
ローカルフォルダー
手元の下書き、CSV、過去資料に向きます。接続したフォルダーだけが読み書きの対象です。
コネクター
共有ドライブ、メール、チケットに向きます。ツールごとに「常に許可」「承認が必要」「ブロック」を設定でき、承認の出方はモードと組み合わさって決まります。
会話への添付
単発で渡す1〜2ファイルに向きます。フォルダー接続とは別の経路です。
資料作成用のワーキングフォルダーを1つ切り、そこだけを許可する運用にすると、範囲が読みやすくなります。デスクトップ直下や書類フォルダー全体を許可すると、意図しないファイルまで参照範囲に入ります。権限設計の考え方にはCowork運用のベストプラクティスが踏み込んでいます。
渡し方でもう1つ効くのが、ファイルの指定の仕方です。「フォルダーの中の資料を見て」ではなく、パスかファイル名を指示文に直接書くほうが確実に読まれます。素材が複数あるときは、どのファイルが何にあたるかを1行ずつ書き添えておくと、参照先を取り違えたまま下書きが進む事故を避けられます。過去資料を参考として渡す場合は、「体裁の参考」なのか「内容を引き継ぐ」のかを明示すると、意図しない引き写しが減ります。
ローカルファイルの扱いは、実行の仕組みに由来します。
Coworkの処理はどこで動くか
Anthropic側のクラウド
コードやシェルコマンドは、Anthropicのサーバー上の隔離された環境で実行されます。セッションと成果物はClaudeアカウントに保存され、デスクトップ・Web・モバイルのどこからでも開けます。
手元のデスクトップアプリ
ローカルファイル、ブラウザー、コンピューター操作は、手元のClaude Desktopアプリを経由します。Webやモバイルから始めたセッションは、手元のフォルダーを読み書きできません。デスクトップで始めたセッションなら、アプリを開いている間だけ届きます。
使えるコネクターは、チャット欄の「+」メニューかCustomize > Connectorsで確認できます。
よくあるつまずき
- 社内事情とズレた背景が書かれる: 「なぜ変えるのか」のような理由付けは、渡していない情報を補って書かれることがあります。背景の段落は特に、事実確認を通してから外に出す形にします
- 素材を渡したのに参照されない: フォルダーの許可範囲に入っていない可能性があります。ファイル名の指定は前節のとおりです
- Webやスマホから頼むと手元の素材が読まれない: 前節の比較にある条件に当たっています。素材が手元にあるなら、デスクトップから始めます
- 毎回トーンが違う: 個別の指示文でトーンを書き続けるより、Global Instructionsに寄せるほうが安定します。設定先はSettings > Coworkで、新しいClaudeの体験ではSettings > Generalの「Instructions for Claude」です
まとめ
分かれ目は、素材と出力形式が固定できる資料かどうかです。固定できるなら定期実行とSkillsに載せ、毎回中身が変わるなら、工程ごとの依頼で進める形が合います。