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Anthropic Usage Policyの改定履歴 — 2024年と2025年の変更点

Anthropic Usage Policyの改定履歴 — 2024年と2025年の変更点

AnthropicのUsage Policy(旧Acceptable Use Policy)は2024年5月と2025年8月に大きく改定されました。改称の経緯、選挙関連規定の変化、エージェント利用への対応まで一次ソースで時系列に追います。

Usage Policyとは何か — 3層構造で運用される利用規範

Usage Policy(旧Acceptable Use Policy)は、AnthropicがClaudeとその関連製品を使ってよい範囲・使ってはいけない範囲を定めた規約です。適用対象は、認可された再販業者やパススルー経由を含め、Anthropicの製品へ入力を送れるすべての人です。Anthropicの安全対策チーム(Safeguards Team)がこの規約に基づいて検知・監視を行い、違反時にはアクセスの制限・停止・終了に踏み込む場合があると明記されています。

発効済みの改定は、2024年5月10日と2025年8月15日に発表された2回です。2024年は改称と高リスク用途の新設、2025年はサイバーセキュリティ条項の新設とエージェント利用への対応が中心でした。

2026年10月8日に新版が公表され、11月12日に発効します(Usage Policyの2026年改定)。以下は発効前の現行版の構成です。

現行の規約は3層構造です。

  • Universal Usage Standards: 全利用者・全用途に適用される基本ルール
  • High-Risk Use Case Requirements: 消費者向けで被害リスクが高い用途に、追加の安全対策を課す
  • Additional Use Case Guidelines: 消費者向けチャットボット・未成年者向け製品・エージェント利用・MCPサーバーに個別のガイダンスを与える

Universal Usage Standardsは、法令違反や重要インフラの破壊から性的コンテンツの生成まで、14項目の「してはいけないこと」に分かれています。規約自身が「技術と関連するリスクの進化に応じて更新する」と述べており、実際に2024年5月と2025年8月の2回、内容に踏み込んだ改定が発表されました。

あゆみ

Usage Policyの改定の流れ

  1. 2024年5月10日改定を発表 — Acceptable Use PolicyをUsage Policyに改称

    「Prohibited Uses」と「Prohibited Business Cases」を「Universal Usage Standards」に統合し、選挙関連と高リスク用途の規定を具体化しました。

  2. 2024年6月6日2024年の改定が発効
  3. 2025年8月15日2回目の改定を発表

    サイバーセキュリティとエージェント利用の条項を新設し、政治コンテンツの包括的な禁止を絞り込みました。

  4. 2025年9月15日2025年の改定が発効

    現行の規約ページに「Effective September 15, 2025」と表示されているのがこの版です。

2024年5月10日の改定 — Acceptable Use PolicyからUsage Policyへ

それまで「Acceptable Use Policy」と呼ばれていた規約が、この改定で「Usage Policy」に改称されました。名称変更だけでなく、構成も再編されています。以前は「Prohibited Uses」と「Prohibited Business Cases」の2セクションに分かれていました。企業にも個人にも同じルールが適用されることを示すため、これらが「Universal Usage Standards」という単一のガイドラインに統合されています。

追加された規定は主に5系統です。

  • 選挙関連の規定を明確化: 特定の候補者・政党・争点・立場を推進または支持する用途、投票や政治献金の勧誘、投票機を標的にする行為、票の集計・認定を妨害する行為を明示的に禁止に追加。選挙関連の誤情報を生成・拡散する用途も禁止対象に加わりました
  • 高リスク用途に追加要件: 医療判断や法務助言に関わるAPI連携を「高リスク用途」と定義し、追加の安全対策を義務付け
  • 未成年者向け利用の拡大: 消費者向け利用規約(Consumer Terms of Service)は18歳未満の利用を禁止したままです。APIを組み込んだ製品については、安全機能の実装と「AIを使っている」という開示を条件に、テスト対策や学習支援など未成年者向けの提供を認める方向に変わりました
  • 法執行機関の利用国を拡大: コールセンター支援や文書要約など、限定された用途に限り、法執行機関による利用を認める国の数を増やしました
  • プライバシー保護の明確化: 生体データから人種や信仰を推測する用途、尋問目的で感情を推測する認識システムの構築を明示的に禁止に追加。政府機関の代理として検閲対象コンテンツを分析・特定する用途も、製品の利用が認められているすべての国で禁止に追加

2025年8月15日の改定 — エージェント利用への対応

2回目の大きな改定の前提には、Claude CodeやComputer Useのようなエージェント型ツールの広がりがあります。告知では、大規模な不正利用・マルウェア作成・サイバー攻撃といった新しいリスクに触れ、同社の脅威インテリジェンスレポート(2025年3月)を参照しています。

  • サイバーセキュリティとエージェント利用への対応: コンピューター・ネットワーク・インフラへの不正な侵害行為を禁止する条項を新設。システム所有者の同意を得た脆弱性発見のように、セキュリティを強化する用途は引き続き支援する立場です。エージェント利用の文脈で何が禁止に当たるかを示すヘルプセンター記事も公開されました(規約の置き換えではなく補足資料)
  • 政治コンテンツの規制を絞り込み: 次の節で、2024年の規定と並べて扱います
  • 法執行機関向け文言の整理: 以前の文言はバックオフィスツールや分析用途の例外が入り組み、許可される範囲が読み取りにくくなっていました。監視・追跡・プロファイリング・生体認証モニタリングを制限する立場は変えず、許可・禁止の範囲も変えていないと明記されています
  • 高リスク消費者向け用途の適用範囲を明確化: 追加要件は、モデルの出力が消費者に直接向けられる場合に適用され、企業間(B2B)のやり取りには適用されないことを明記

政治コンテンツの規定は、2回の改定でどう動いたか

選挙と政治に関する規定は、2回の改定のどちらでも書き換えられました。方向は逆です。2024年は禁止の定義を具体化し、2025年は包括的な禁止を、欺瞞と妨害を狙った禁止に置き換えています。

くらべる

政治コンテンツの規定の変化

定義を具体化

2024年5月の告知

ロビー活動と選挙運動の禁止は従来どおり維持しました。候補者・政党・争点・立場の推進、票や献金の勧誘、投票機の標的化、票の集計・認定の妨害、選挙法や候補者情報に関する虚偽情報の拡散を明示しました。

禁止の対象を絞り込み

2025年8月の告知

政策研究・市民教育・政治に関する文章作成まで制限されていたという利用者の声を受け、禁止を「民主的プロセスを欺く・妨害する用途」と「有権者・選挙運動の標的化」に絞りました。

現行の規約でこの領域にあたるのは、「Do Not Undermine Democratic Processes or Engage in Targeted Campaign Activities」という見出しの8項目です。個人のプロファイルに基づく投票・選挙運動の標的化、出所や規模を偽った人工的な政治運動、公職者や有権者への自動大量通信で人工的な出所を隠すこと、政治家の合成メディアを含む有権者を欺くコンテンツ、選挙や政策に関する虚偽情報、虚偽や捏造の情報を使ったロビー活動、投票・集計・認定の妨害、欺瞞や威圧による投票率の抑制が並びます。

この8項目でロビー活動が出てくるのは、虚偽や捏造の情報を使う場合の1項目だけです。この見出しの8項目に、特定の候補者・政党・争点の推進そのものを挙げる項目はありません。

現行の条文は、2024年の告知より言い回しが広い

2024年の告知文は要点の要約で、現行の規約ページは条文です。両者を並べると、告知では例示にとどまっていた項目が、条文では範囲を明示した形になっています。

項目2024年5月の告知現行の規約ページ
生体データ2024年5月の告知人種や信仰などの特性を推測する分析を禁止現行の規約ページ人種・政治的意見・労働組合への加入・宗教や哲学上の信条・性生活・性的指向を推測する生体分類システムを禁止
感情認識2024年5月の告知尋問などの用途で感情を推測する認識システムを禁止現行の規約ページ医療または安全上の理由を除き、人の感情を推測する感情認識システムを禁止
検閲2024年5月の告知政府機関の代理で検閲対象を分析・特定する用途を禁止現行の規約ページ同じ項目が刑事司法・監視の見出しの中に収まる

感情認識に「医療または安全上の理由を除く」という例外が付いている点は、告知の要約だけでは読み取れません。2024年の告知は「例えば尋問」と用途を絞って書いており、現行の条文は用途を絞らず原則禁止にして例外を置く構造です。このずれは、告知だけを読んで規約を理解した場合に誤解しやすい箇所です。

高リスク用途の要件は今、具体的に何を求めているか

2024年の改定で加わった「高リスク用途」の枠組みは、現行版では対象が7分野に整理されています。

  • 法務(法的解釈・助言)
  • 医療(診断・治療・メンタルヘルス。睡眠・ストレス・栄養・運動といった一般的なウェルネス助言は対象外)
  • 保険(引受・請求処理・保障判断)
  • 金融(投資助言・融資審査・与信判断)
  • 雇用と住宅(採否判断・書類選考・賃貸や住宅ローンの審査)
  • 学術試験・認定・入試(標準化テストや資格試験を運営する団体による採点・評価・順位付け)
  • メディアや報道目的で自動生成したコンテンツを外部公開する用途

2024年の告知が例に挙げていたのは医療判断と法務助言だけで、現行の規約ページは7分野の一覧を持っています。規約ページの冒頭は、この枠組みを「消費者向けで被害リスクが高い特定の用途」に適用すると説明します。2025年の改定は枠組みを作り直さず、「出力が消費者に直接向く場合に適用し、企業間のやり取りには適用しない」という線引きを明確にしました。

対象の用途では、2つの安全対策が義務付けられています。

  • human-in-the-loop: 個人や消費者に直接影響する助言・推奨・主観的判断を提供する場合、その分野の有資格者が公開・確定の前に内容か判断をレビューします。内容の正確さと適切さの責任は、利用者かその組織が負います
  • 開示: モデルの出力を個人や消費者に直接見せる場合、助言・判断・推奨をAIの助けで作っていることを開示します。タイミングは少なくとも各セッションの冒頭です

自社サービスにClaudeを組み込むとき、規約のどこに当たるか

高リスク用途の要件は、該当しなければ何も課されないわけではありません。規約は、高リスクかどうかにかかわらず順守が求められる用途を「Additional Use Case Guidelines」として別に定めています。自社の製品に当てはめるなら、次の順で見ていきます。

手順

Claudeを組み込んだ製品が当たる規約の項目

  1. 1

    出力は消費者や個人に直接見せるか

    見せない企業間のやり取りなら、高リスク用途の追加要件の対象外です(2025年の改定で明記)。見せるなら、次の手順へ進みます。

  2. 2

    7分野のどれかに入るか

    法務・医療・保険・金融・雇用と住宅・学術試験・メディアのいずれかに当たるなら、human-in-the-loopと開示が必要です。医療のうち一般的なウェルネス助言は対象外です。

  3. 3

    チャットボットやAIエージェントか

    消費者向けのチャットボットは、外部向けや対話型のAIエージェントを含め、相手が人間でなくAIであることを少なくとも各チャットセッションの冒頭で開示します。この義務は高リスク用途かどうかに関係しません。

  4. 4

    未成年者が直接使うか

    APIを組み込んだ製品を未成年者が直接操作できるなら、ヘルプセンターに別途定められたガイドラインが適用されます。規約は、年齢にかかわらず18歳未満を未成年者として扱います。

  5. 5

    エージェントやMCPサーバーか

    エージェント利用も通常のUsage Policyの対象で、禁止例はヘルプセンター記事にあります。Connector Directoryに載せるMCPサーバーは、Directory Policyへの準拠も求められます。

2回の改定は、何を優先する方向に動いたか

2024年は禁止事項を具体的に広げ、高リスク用途という新しいカテゴリーも加えた回でした。2025年はサイバーセキュリティとエージェント利用で条項を足しながら、政治コンテンツでは禁止の範囲を狭めています。

規約を厳しくする一方向ではなく、正当な用途を萎縮させていた部分を見直す判断が入っているわけです。法執行機関向けの文言については、Anthropic自身が「許可されるものと禁止されるものは変わらない」と述べており、この項目は運用上の分かりやすさの改善です。告知が挙げる変更のうち、禁止範囲が動いたのはサイバーセキュリティの新設条項と、政治コンテンツの絞り込みの2点でした。

違反したときに何が起きるか

Usage Policyへの違反が分かると、Anthropicはアクセスの制限・一時停止・終了のいずれかを行う場合があります。入力が規約に違反する場合には、モデルの出力をブロックしたり修正したりする対応も取り得ると規約に書かれています。出力が不正確・偏っている・有害だと感じたときの連絡先は、usersafety@anthropic.comか、製品内の「report issues」(サムズダウンのボタンなど)です。

Claude Codeで実際に応答が拒否される場面の挙動と対処は、「Usage Policy refusal」とはで扱っています。自社の業務で独自のAI利用方針を作る手順は、社内のAI利用方針をClaudeで作成する手順にあります。

まとめ

自社サービスへの影響は、告知の要約ではなく条文で決まります。感情認識の例外のように、条文のほうが範囲を細かく定めている項目があるため、組み込む前に該当する見出しを直接読むのが確実です。規約の価値観や優先順位の背景は、Claudeの憲法(Constitution)とは何かで扱っています。

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