Claude APIのBrowser use toolとは — Computer useとの使い分け
Browser use toolはAnthropic製のクライアントツールセットで、Webページの操作に特化しています。Computer use toolとの使い分け基準と31のメンバーツールの全体像をまとめます。
Browser use toolは、Claudeに自分のアプリが動かすブラウザ上でのWebページ操作を許可する、Anthropic製のクライアントツールセットです。tools配列にbrowser_toolset_20260801を1エントリ追加するだけで、ページの構造を読み取り、クリックやフォーム入力までこなす31個のメンバーツールが使えるようになります。似た名前のComputer use toolとは対象範囲が異なり、どちらを選ぶかはタスクがWebページの中で完結するか、デスクトップ全体に及ぶかで決まります。
Browser use toolとは何か
Browser use toolは、Claudeがアクセシビリティツリーとスクリーンショットの両方を使ってWebページを操作できるようにするツールです。ナビゲーション・要素の読み取り・クリックやフォーム入力・タブ管理までを、1つのツールセット定義でまとめて提供します。
呼び出しの実行環境は完全に自分のアプリケーション側にあります。Anthropicが返すのはtool_useブロックだけで、実際にブラウザを操作するコードは自分で用意した「executor」が担います。この構造はComputer use toolと同じで、Anthropic側では何も実行されません。Computer use toolを自前実装する場合の骨格はComputer Useツールを自前実装する最小構成で扱っています。
対応モデルはclaude-fable-5-1 / claude-mythos-5-1 / claude-fable-5 / claude-mythos-5 / claude-opus-5 / claude-sonnet-5 / claude-opus-4-8の7つです。プラットフォームはClaude APIとGoogle Cloudの2つに限られ、Claude Platform on AWS・Amazon Bedrock・Microsoft Foundryでは今のところ使えません。Claude Managed Agentsでも利用できないと明記されています。
リクエストと結果のやり取りはどう進むか
最小構成のリクエストは、tools配列にbrowser_toolset_20260801を1つ加えるだけです。
curl https://api.anthropic.com/v1/messages \
-H "content-type: application/json" \
-H "x-api-key: $ANTHROPIC_API_KEY" \
-H "anthropic-version: 2023-06-01" \
-d '{
"model": "claude-opus-5",
"max_tokens": 2048,
"tools": [{"type": "browser_toolset_20260801"}],
"messages": [
{"role": "user", "content": "example.comを開いて概要を教えて"}
]
}'Browser use toolの呼び出しは、Computer use toolと同じtool_use/tool_resultの往復で進みます。Claudeが返す各tool_useブロックは、メンバー名をnameに、"toolset_name": "browser"を添えて返ってきます。アプリケーション側は同じtoolset_nameを付けたtool_resultをメンバーの数だけ返し、1つでも応答が欠けると次のリクエストが拒否されます。
1回のターンでClaudeが複数のメンバー呼び出しを返すこともあります。これは「バッチアクション」と呼ばれ、クリックしてから文字を入力し、Enterキーを押すといった一連の操作を1ターンにまとめて実行できます。バッチは記載順に実行され、途中で1つが失敗すると、それより後の呼び出しはすべて「未実行」として扱われる決まりです。呼び出しのたびにスクリーンショットを返す必要はなく、Claudeはscreenshot・read_page・get_page_textのいずれかで区切りよく状況を確認します。
Computer use toolとの使い分け基準
公式ドキュメントが示す判断基準はシンプルです。タスクがWebページの中で完結し、ページがJavaScriptでコンテンツを組み立てている場合はBrowser use toolを選びます。デスクトップ全体を必要とするタスクには、スクリーンショットと座標だけで動くComputer use toolを使います。
両者の最大の違いは、Claudeがページの要素をどう認識するかです。Computer use toolはスクリーンショットと座標だけで画面を操作しますが、Browser use toolはread_pageやfindが返す要素参照(ref_2のような識別子)も使えます。参照はレイアウトのずれに強く、座標だけでは掴みにくい小さなボタンやリンクも扱えます。一方で仮想化された一覧やcanvas描画のUIなど、アクセシビリティツリーが使えないページでは、Browser use toolも座標クリックにフォールバックします。
プラットフォームの対応状況にも差があります。Claude Platform on AWS・Amazon Bedrock・Microsoft Foundryで使えるのは、本記事が扱う最新版computer_toolset_20260801ではなく、旧バージョンのcomputer_20251124のみです。Claude APIとGoogle Cloud以外のプラットフォームは、いまのところ以前のベータツールバージョンにとどまっています。Browser use toolはClaude APIとGoogle Cloudのみで、他のプラットフォームには来ていません。マルチクラウド展開を前提にするなら、この差がツール選定に直接影響します。
両方を同時にtools配列へ宣言することもできます。ブラウザの中の操作はBrowser use tool、そこから出てデスクトップ側の操作が必要になった瞬間だけComputer use toolに任せる、という組み合わせ方です。screenshotやkeyのように同じ名前のメンバーが両方にありますが、toolset_nameがbrowserかcomputerかでClaudeの呼び出し先は区別されるため、名前の衝突を気にする必要はありません。
Browser use toolとComputer use toolの違いを一覧で確認する
| 観点 | Browser use tool | Computer use tool |
|---|---|---|
| 対象範囲 | Browser use toolWebページの中で完結する操作 | Computer use toolデスクトップ全体(ネイティブアプリ含む) |
| ツールセット名 | Browser use toolbrowser_toolset_20260801 | Computer use toolcomputer_toolset_20260801 |
| メンバーツール数 | Browser use tool31個(既定27・オプション4) | Computer use tool17個 |
| 要素の認識方法 | Browser use tool要素参照 + 座標(併用) | Computer use tool座標のみ |
| 対応プラットフォーム | Browser use toolClaude API・Google Cloud | Computer use tool上記2つ(AWS・Bedrock・Foundryは旧バージョンのみベータ提供) |
| 定義オーバーヘッド目安 | Browser use tool約6,600トークン | Computer use tool約4,500トークン |
Webページを読むだけで操作は不要なら、Browser use toolより軽いツールもあります。ソースを指定して読ませるならWeb fetch tool、Web検索で情報源を探すならWeb search toolが候補です。どちらもAPI側が実行するサーバーツールで、ブラウザを自分で用意する必要がありません。
31のメンバーツールの全体像
Browser use toolのメンバーツールは7つのグループに分かれます。既定で有効なのは27個で、javascript_exec・file_upload・read_console・read_networkの4個は既定で無効になっています。
| グループ | 個数 | 代表的なメンバー |
|---|---|---|
| ナビゲーションと取得 | 個数3 | 代表的なメンバーnavigate、screenshot、zoom |
| ポインター操作 | 個数12 | 代表的なメンバーleft_click、hover、scroll、scroll_to |
| キーボードとタイミング | 個数4 | 代表的なメンバーtype、key、hold_key、wait |
| ページ読み取り | 個数3 | 代表的なメンバーread_page、find、get_page_text |
| フォームとファイル | 個数2 | 代表的なメンバーform_input、file_upload(既定無効) |
| 診断とスクリプト実行 | 個数3 | 代表的なメンバーread_console・read_network・javascript_exec(いずれも既定無効) |
| タブ管理 | 個数4 | 代表的なメンバーnew_tab、list_tabs、switch_tab、close_tab |
read_pageはページのアクセシビリティツリーをテキストで返し、各要素に[ref_2]のような参照が付きます。findは「検索ボックス」のような自然言語の説明で要素を探し、最大20件を同じ形式で返します。
導入前に確認しておきたい3点
Browser use toolを組み込む前に、公式ドキュメントが独立した節を割いて説明している論点が3つあります。
- セキュリティ: Claudeが読むページの内容はすべて信頼できない入力として扱う必要があります。プロンプトインジェクションのリスクがあり、Anthropicは自動分類器で検知し、Claudeに指示の出所を確認させる追加の防御層を用意しています。
- 座標とターゲット指定: 座標はビューポート基準のピクセル値で、デスクトップの座標系とは別物です。要素参照と座標のどちらを使うかはClaude自身が状況に応じて選びます。座標のスケーリングでつまずきやすい点はComputer Useの座標ズレを直すスケーリング計算式にまとめています。
- 料金: 既定のメンバーツールを宣言すると、リクエストあたり約6,600入力トークンのオーバーヘッドが加わります(Sonnet 5では約6,670)。オプションの4メンバーをすべて有効にすると約880トークン増えます。画面キャプチャやページテキストの結果は、それぞれ画像入力・テキスト入力として別途課金されます。
制限事項
Browser use toolには次の制約があります。ストリーミング時、各メンバーのinputは分割されず1つのinput_json_deltaとしてまとめて届きます。仮想化された一覧やcanvas描画のページでは要素参照が安定しないことがあり、その場合はスクリーンショットと座標クリックにフォールバックします。read_consoleとread_networkは自分のブラウザ自動化基盤が対応していない限り情報を返せません。レイテンシ・視覚認識の精度・プロンプトインジェクションのリスクといった一般的なエージェントの制約は、Computer use toolと共通です。
Browser use toolはどこに位置づく機能か
Browser use toolは、サーバー側が完結して実行するWeb fetch tool・Web search toolと、座標だけで画面全体を操作するComputer use toolの中間に位置します。読むだけで済むならサーバーツール、Webページの中で操作まで必要ならBrowser use tool、デスクトップアプリやOS全体の操作が要るならComputer use toolという順で選ぶと迷いにくくなります。似た優先順位はプロダクト側にも見られ、Coworkが手段を選ぶ優先順位でもブラウザ操作は画面操作より先に試される手段として位置づけられています。
用途別の使い分け早見表
| 用途 | おすすめのツール | 理由 |
|---|---|---|
| 指定したURLの内容を読むだけ | おすすめのツールWeb fetch tool | 理由実行はAPI側が担い、ブラウザの用意が不要 |
| Web検索で情報源を探す | おすすめのツールWeb search tool | 理由サーバーツールとして動き、ブラウザ操作を伴わない |
| フォーム入力やクリックなどWebページ内の操作 | おすすめのツールBrowser use tool | 理由要素参照が使え、JavaScript描画のページにも強い |
| デスクトップアプリの操作やOS全体の操作 | おすすめのツールComputer use tool | 理由座標ベースでブラウザの外まで操作できる |
| AWS・Bedrock・Foundry上でのブラウザ相当の操作 | おすすめのツールComputer use tool(旧バージョンのベータのみ) | 理由Browser use toolも最新Computer use toolもClaude API・Google Cloud限定のため |
要素参照という仕組みを新たに持ち込んだ点は、単なる機能追加以上の意味を持ちます。座標だけに頼るComputer use toolは、ページのレイアウトが変わるたびにクリック位置がずれるリスクを抱えていました。アクセシビリティツリーの参照を軸にすることで、Webページというドメインに限っては、その脆さを避けられる設計になっています。
まとめ
Browser use toolは、browser_toolset_20260801を1つ宣言するだけで31個のメンバーツールが使えるようになる、Anthropic製のクライアントツールセットです。要素参照と座標を併用できる点が、座標だけに頼るComputer use toolとの一番の違いです。対応プラットフォームがClaude APIとGoogle Cloudに限られる点だけは、導入前に見落とさないよう確認しておく価値があります。