Claudeコネクタの権限は監査ログで追える?Teamは不可
コネクタの権限を変えた記録はCompliance APIのmcp_tool_policy_updatedに残りますが、ツールの呼び出しは監査ログに出ず、Enterpriseでは会話取得APIで追えます。残る範囲を切り分けます。
Teamプランには監査ログがありません。監査ログのエクスポートとCompliance APIはEnterprise限定です。Teamで追えるのは接続先システム側のログだけになります。
そのうえで、コネクタの権限まわりで記録が残るのは「設定を変えた」ほうです。Team・Enterpriseのオーナーは接続先ごとに読み取り/書き込みを縛れます。Enterpriseなら、その変更はCompliance APIのActivity Feedに mcp_tool_policy_updated として残ります。一方で、監査ログのエクスポートに並ぶイベントにコネクタの名前は出てきません。ツールの呼び出しそのものは、Enterpriseならチャット取得やセッション記録のAPIで、入力と結果まで追えます。
権限設定は組織全体で何を縛るのか
Team・Enterpriseプランのオーナーは、「Customize」>「Connectors」で接続先を選び、「Tool permissions」を開きます。権限は読み取り専用のツールと書き込み・削除系のツールなどに分類され、カテゴリごと、またはツール単位で「Always allow」「Needs approval」「Blocked」を選べます。
設定は組織全体に効き、メンバーが自分の分だけ緩めることはできません。メールの検索・要約は許可し、送信は禁止する。Driveのファイル閲覧は許可し、作成・編集は禁止する。Linearの課題閲覧は許可し、新規作成やステータス変更は禁止する。これが公式の例です。設定画面でつまずきやすい点はClaude Connectorsの権限設定でよくある失敗と対策にあります。
どちらかが締まっていれば操作は止まる
Claude側のTool permissions
「Blocked」にすれば、接続先でユーザーが編集者権限を持っていても操作はClaudeの手前で止まります。「Always allow」にしても接続先の権限は増えません。
接続先システムの権限
Google Driveで閲覧者なら、Claude側で編集を許可していても編集は反映されません。Claudeの設定は、この権限の内側でしか働きません。
この二重構造から、設計の順序が決まります。
権限を決める順序
- 1
接続先の権限を先に固める
誰がどの操作を実行できるかを、接続先システム側で決めます。
- 2
Claude側で開放範囲を絞る
接続先の権限のうち、コネクタ経由の操作として開けておく範囲をTool permissionsで決めます。
- 3
確認が要る操作を分ける
取り消しにくい書き込みは「Needs approval」に置きます。
書き込み系ツールが多いMCPサーバーでも同じ発想です。Nomad MCPサーバーでジョブとクラスタ状態を監視させるは、ACLトークン側を先に絞る例です。読み取り専用から始める考え方は業務SaaS連携は読み取り専用アクセスから始める理由に詳しく、個別のコネクタでの運用例はClaude Customer.io連携の使い方にあります。
権限を変えた記録は、どこで追えるのか
追えるのはCompliance APIのActivity Feedです。活動の種類に mcp_tool_policy_updated(MCPツールの権限制限が設定または解除された)があり、記録には次の項目が付きます。
mcp_server_nameとmcp_server_id: どの接続先かtool_name: どのツールか。サーバー全体の既定値を変えたときは*が入るmax_permission: 新しい上限。値はallow/ask/blocked、制限を外したときはnullactorとcreated_at: 誰がいつ変えたか
max_permission の allow / ask / blocked は、設定画面の「Always allow」「Needs approval」「Blocked」の順に並びます。「誰が、いつ、どのサーバーの何を、どの上限に変えたか」までが1件で分かります。
HIPAA構成が置く組織全体のブロックを解除したときは、action に reenabled が入ります。ほかの制限変更では未設定です。attestations には safe_for_phi のような法的承諾も載るので、再有効化と承諾の記録が同じイベントで残ります。
権限まわりの周辺操作にもイベントがあります。
| イベント | 記録される操作 |
|---|---|
mcp_server_created / mcp_server_deleted | 記録される操作組織へのMCPサーバーの追加・削除 |
mcp_server_updated | 記録される操作MCPサーバーの設定変更(mcp_server_url に変更時点の接続先のorigin) |
admin_connector_request_resolved | 記録される操作メンバーのコネクタ有効化リクエストへの承認・却下 |
org_connector_domain_guard_updated | 記録される操作コネクタを検証済みドメインに限る設定の変更 |
mcp_server_managed_auth_token_exchanged | 記録される操作エンタープライズ管理認可によるアクセストークン取得の成否 |
Cowork向けには org_cowork_mcp_always_allow_enabled / _disabled があります。有効にすると、変更を伴うコネクタツールをメンバーが一度承認すれば、以降の利用を自動で許可できます。無効なら使うたびに承認が要ります。読み取り専用のツールはこの設定の影響を受けません。
Activity Feedの使い方はCompliance API Activity Feedの使い方で扱っています。
ツールが実際に使われた記録は、どこにあるのか
監査ログのエクスポートには出ません。並ぶのは、サインイン方式、SSO接続の作成・削除、プロジェクトの作成・削除、会話の作成・削除・リネームなどです。entity_info の対象もaccount・invite・chat_project・chat_project_document・chat_conversation・file・sso_connectionの7種類で、コネクタは含まれません。「このユーザーがGmailで何を送った」を指す行は、この一覧からは作れません。
Activity Feedも同じです。並んでいるのは設定・認証・管理の操作で、ツール呼び出しを1件ずつ記録する種別は定義されていません。
Enterpriseでは、会話の中身を取る経路が別にあります。Compliance APIのチャット取得(GET /v1/compliance/apps/chats/{claude_chat_id}/messages)は、アシスタントのツール呼び出しを tool_use ブロックで返します。name(ツール名)、input(引数のJSON文字列)、integration_name、mcp_server_url(MCPサーバーのscheme・host・path)が付き、対応する tool_result にも integration_name、mcp_server_url、is_error が載ります。引数が長いと truncated が立ち、tool_use_input_max_chars で上限を変えられます。
CoworkやClaude Codeのセッションは、トランスクリプトのmessagesエンドポイント(/v1/compliance/apps/sessions/local/{session_id}/messages)が、ユーザーのプロンプト、アシスタントの文章、ツール呼び出し、ツール結果のテキスト部分を返します。ただしツール定義とMCPサーバーの構成は含まれません。ローカルセッションの記録は、Claudeに何を頼み何が返ったかを示すもので、端末上で何が起きたかではありません。どちらの経路も read:compliance_user_data の権限が要ります。ローカルセッションの記録にはマスキングがかからないため、機微な情報がそのまま入ります。
Claudeに渡った入力と返り値までは、Enterpriseなら追えます。接続先で実際に何が反映されたかは、接続先システムの操作ログが一次情報です。Google Workspaceの管理コンソールの監査ログ、Slackのアクセスログ、Linearのアクティビティ履歴がその例です。
公式ページ同士で、見える範囲が違う点にも注意が要ります。サポート記事「Access audit logs」のイベント一覧にはコネクタ関連が出てきません。ところがCompliance APIにはこの記事が「監査ログのイベントも含む」と書かれ、プラットフォーム側の活動種別には mcp_tool_policy_updated などが並びます。エクスポートのCSVだけを見て「コネクタの記録はない」と判断すると、権限変更の履歴を取りこぼします。
| 知りたいこと | 見る場所 |
|---|---|
| 権限の変更 | 見る場所Activity Feedの mcp_tool_policy_updated |
| サインイン・会話・ファイルの作成と削除 | 見る場所エクスポートのCSV(タイトルと本文は含まれず、IDだけ) |
| ツールへ渡した入力と返り値 | 見る場所チャット取得・セッション記録(Enterprise) |
| 接続先での実際の反映 | 見る場所接続先システムの操作ログ |
エクスポートとCompliance APIは、どちらを使うのか
監査ログの取得経路は2つあります。「Export logs」ボタンは、Organization Owner・Primary Ownerが「Organization settings」>「Data and Privacy」から実行します。過去180日分がまとめられ、依頼したオーナーにメールでダウンロードリンクが届きます。リンクの有効期限は24時間で、集計に時間がかかるため届くまで間が空くことがあります。
もう一方がCompliance APIです。Enterpriseプラン(Public Sector組織を除く)が対象で、Primary Ownerだけが「Organization settings」>「API」で有効化できます。キーは同じページの「+Create key」から作ります。Primary Ownerは連結された全組織を横断するキーを、Ownerは自組織に限ったキーを作れます。Ownerにはページが見えますが有効化のトグルは見えず、Adminにはページ自体が表示されません。
Claude Consoleで作るAdmin APIキーでも、Activity Feedは取得できます。ただし対象はClaude Console組織で、Activity Feed以外の取得には使えません。キーに read:compliance_activities の権限が付くのは、作成時点でCompliance APIが有効だった場合に限ります。
Console側でCompliance APIを無効にしている間は、組織のアクティビティイベントが記録されません。その間の記録はあとから復元できないので、権限変更の履歴にも空白ができます。
顧客管理鍵(CMEK)を使うEnterprise組織では、「Export logs」ボタンが使えません。この場合の監査ログはCompliance API経由で取ります。
Compliance APIが対象にする範囲には線があります。
- 対象: Claude、Cowork(Claude・Claude Desktop・Claude Mobile経由)、Claude Code(CLIとClaude Desktop経由)
- ベータ対応: Microsoft 365アドイン(Excel・Word・PowerPoint・Outlook)、Claude Science
- 対象外: Claude Codeのクラウドセッション、Claude Platform経由のClaude Code、ほかのMicrosoft 365アプリ、Amazon BedrockやGoogle Vertex AI上のセッション
Teamプランの監査ログはどこまで使えるのか
| 手段 | Team | Enterprise |
|---|---|---|
| コネクタのTool permissions | Team◯ | Enterprise◯ |
| 「Export logs」(180日分) | Team× | Enterprise◯(CMEK利用時は不可) |
| Compliance APIのActivity Feed | Team× | Enterprise◯(Public Sector除く) |
Teamプランで組めるのはTool permissionsまでです。権限を変えた履歴も、ツール呼び出しの内容も、Compliance APIが無いためClaude側からは引けません。そのためTeamでは接続先システムのログが唯一の記録になり、保持期間とエクスポート手順を先に確かめておく必要があります。
Enterpriseは、設定の履歴に加えて、会話内のツール呼び出しもAPIで取れます。自組織の状況に当てはめるなら、次のように分かれます。
- 設定の変更履歴だけが必要(棚卸し・内部統制の証跡): EnterpriseのActivity Feedで足ります
- 「Claudeが何を渡し、何を受け取ったか」を示す必要がある: Enterpriseならチャット取得・セッション記録で足ります。Teamは接続先のログが前提です
- 接続先で実際に何が反映されたかを示す必要がある: プランを問わず、接続先のログの保持が前提です
- 組織でCMEKを使っている: エクスポートボタンは使えないので、Compliance APIの取得経路を先に用意します
業務データを扱う判断全体は業務データ漏洩対策チェックリスト — Claudeへの共有可否を8項目で判断にあります。Enterprise組織の監査ログの全体像はClaude監査ログの見方 — Enterprise組織の変更履歴を追跡するにまとめています。
まとめ
会話内容を取得できる権限(read:compliance_user_data)は、組織内のチャットとセッション記録に残ったツールの入力と結果に届きます。この権限を誰に持たせるかと、接続先ログの保持期間をどう合わせるかを、権限設定と同じ表で決めておくと、監査の要求が来たときに追える範囲を答えられます。