Claudeの会話をアーカイブ・eDiscoveryに回す — RelativityOneとSmarshの連携
Claude Enterpriseの会話をRelativityOne・Smarsh・Theta Lakeなどの収集製品へ渡す流れと、集まる範囲、保持設定との関係をまとめます。
Claude Enterpriseの会話をアーカイブや電子証拠開示(eDiscovery)に回すには、Compliance APIに対応した収集製品を間に挟みます。Anthropicの一覧には、RelativityOne、Smarsh、Theta Lakeのほか、Proofpoint、Mimecast、Hadrius、Shieldなどが載っています。どの製品も、取りに行く先はCompliance APIです。
自前でAPIを叩くコードを書く必要はなく、組織側の作業は「APIを有効にする」「アクセスキーを作る」「製品に渡す」の3つです。この記事では、その順序と、収集される範囲、保持設定との関係を順に見ます。
収集製品はCompliance APIから何を取るのか
Compliance APIはClaude Enterprise向けに、claude.aiのチャット・アップロードファイル・プロジェクトの内容を返します。CoworkやClaude Codeのセッション内容、Microsoft 365アドイン(Excel・Word・PowerPoint・Outlook)とClaude Scienceのセッション内容(ベータ)、ログインや管理操作を含むActivity Feedも対象です。
アーカイブ製品が会話の記録として使うのは、主にこのうちチャットとファイルです。Compliance APIそのものの仕組みはClaude Compliance APIとはで扱っています。
注意が要るのはClaude Platform(旧Console側)の組織です。こちらで取れるのはActivity Feedだけで、プロンプトとモデル応答の内容はCompliance API経由では取得できません。会話を記録として残したい対象がAPI経由のワークロードなら、この連携では目的を満たせません。
収集製品の位置づけ(Anthropicの一覧の記述から)
必要になったときに取りに行く型
法務・コンプライアンス・セキュリティのチームが、Claude Enterpriseのデータを元のシステムから直接収集します。収集したデータはマッピング・保全・処理され、レビュー可能な形式に変換されます。
取り込んで保管し続ける型
Smarsh Captureは、Claude Enterpriseのやり取りを監視し保持します。Hadriusは、SEC・FINRA規制下の事業者向けに、会話を記録保存用のアーカイブへ取り込みます。Shieldは、金融機関向けの長期保管とeDiscoveryの層を謳っています。
この分け方は、各社の紹介文の書きぶりから読み取った整理で、製品の正式な分類ではありません。実際の動作(常時取り込みか、収集ジョブごとか)は、導入前に各社のドキュメントで確かめる前提です。
連携を始める前に決まっていること
連携の入口は、どの製品でも同じです。
Claude側で済ませる準備
- 1
Primary OwnerがCompliance APIを有効にする
有効化できるのは組織のPrimary Ownerだけです。Organization settingsのAPIの画面で切り替えます。親組織にリンクされている場合は、親組織のPrimary Ownerが有効にし、設定は配下のすべての組織に及びます。
- 2
アクセスキーを作る
同じ画面の「+Create key」からキーを作ります。Primary Ownerはリンク済みの全組織をカバーするキーを、Ownerは自分の組織に限ったキーを作れます。Adminにはこの画面が見えません。
- 3
収集製品に渡す
キーと組織IDを製品の設定画面に入力します。RelativityOneの場合は次の節のとおりです。
キーの種類は取り違えやすい点です。RelativityOneのドキュメントは、AdminキーやAPIの標準キーでは足りず、チャット・ファイル・アーティファクトの内容を取れるのはCompliance access keyだけだと明記しています。キーのスコープの選び方はCompliance APIのセットアップとアクセスキー作成にまとめてあります。
Compliance APIはClaude EnterpriseプランとClaude Platformの顧客向けです。RelativityOneのコネクタは、さらにClaude Enterpriseのアカウントを必須としています。
RelativityOneで収集元を作る手順
RelativityOneのCollectは、Claudeを収集元(データソース)の種類として持っています。作成から収集条件の指定までの流れは次のとおりです。
RelativityOne(aiR)側の設定
- 1
Collection Adminを開く
「New Collection Source Instance」を押します。
- 2
名前・種類・設定を入れる
Nameに一意の名前を付け、TypeでClaudeを選びます。SettingsにはAPI KeyとOrganization IDの2つを入力します。
- 3
保存して接続を検証する
Saveを押すと、Relativityがパラメーターと接続を検証します。値が正しく検証されたときだけ、データソースが保存されます。
- 4
収集ジョブで条件を指定する
収集ジョブの作成画面で、Created DateまたはUpdated Dateのフィルターを設定します。Start Dateの指定が必須です。
API Keyの欄に入れる値は、Anthropicから組織に提供されたキーです。同じキーを、複数のClaudeデータソースの設定に使い回せます。
Claudeの組織が複数あるときは、組織ごとにデータソースを分けて作ります。後で見分けられるよう、名前を分かりやすく付けるよう勧められています。
日付フィルターはすべてUTC基準です。Created Dateで2026年1月1日から2026年12月31日を指定すると、その期間のプロンプトと応答がまとめて収集されます。日本時間で期間を切る場合は、9時間のずれを見込んでおきます。
収集されるデータと見え方
RelativityOneで収集できるのは、会話(プロンプトと応答を時系列順)、アーティファクト(AIが生成した文書やコード)、ファイル(ユーザーがアップロードしたものとアシスタントが生成したもの)、メタデータの4種類です。
レビュー用の形式では、会話が親ドキュメントとして取り込まれます。アーティファクトとファイルは、子ドキュメントまたは添付として紐づきます。会話本文はRelativity Short Message Format(RSMF)に自動変換されます。
| メタデータ | 収集 |
|---|---|
| 会話ID・会話タイトル | 収集常に |
| ユーザーID・ユーザー名・メールアドレス | 収集常に |
| プロンプトと応答のタイムスタンプ | 収集常に |
| プロンプト本文・応答本文 | 収集常に |
| 編集履歴 | 収集ユーザーがプロンプトを編集して再実行した更新を記録 |
| 添付 | 収集ユーザーがアップロードしたファイルとClaudeが生成したファイル |
編集履歴まで取れる点は、証拠としては大きな意味があります。再実行の前後で何が書かれていたかを、後から並べて確認できます。
アクセスは読み取り専用で、Collect側がClaudeのデータを変更・削除することはありません。データはAnthropicのCompliance APIから直接取得されます。この性質は、収集元を改変していないことの説明(防御可能性)に使えます。
保持設定と収集できる範囲の関係
ここが連携で最も見落とされやすい点です。収集製品が取れるのは、収集の時点でAnthropic側にまだ残っている内容だけです。
RelativityOneのドキュメントは、収集結果を「現在の保持状態の反映であり、過去の全活動の再構成ではない」と説明しています。Claude Enterpriseは既定で会話内容を保持しますが、顧客が短い保持期間を設定できます。ユーザーまたは保持ポリシーで削除された会話・アーティファクトは、収集できません。
削除された会話については、Anthropicは内容を保持しませんが、会話が存在した記録は残すことがあるとされています。「記録の存在」と「内容」が別だという点は、説明の際に分けて伝える必要があります。
Anthropicの連携ガイドは、アーカイブの要否を次のように判断するよう示しています。
| 自社の条件 | 取るべき動き |
|---|---|
| 法的保全や監査の期間が、Activity Feedやセッション文字起こしの保持(6年)より長い | 取るべき動き取り込みのたびに自社アーカイブへ書き出す |
| コンテンツの保持ポリシーが、eDiscoveryの対象期間より短い | 取るべき動き保持期間が切れる前にチャットとファイルの内容を書き出す |
| ユーザーが削除したあとも保持する必要がある(リーガルホールドなど) | 取るべき動き取り込みのたびにチャット・ファイル・アーティファクトの内容を書き出す |
| DLP運用でハード削除を実行する可能性がある | 取るべき動き削除の前に対象内容を取得して保管する(復旧猶予はない) |
RelativityOneのように必要なときに収集する製品を使う場合、この表の「保持期間が切れる前」が実務上の締め切りになります。訴訟の見通しが立ってから動き出すと、短い保持設定の組織では対象期間の内容がすでに残っていない可能性があります。
そのため、保持期間を何日に設定するかは、アーカイブ設計と同時に決めます。設定手順はClaude Enterpriseのデータ保持期間を管理者がカスタム設定する手順にあり、内部統制の観点での整理はCompliance APIは内部統制の記録保存義務にどこまで応えるかにあります。
落とし穴
収集を始めた日より前の内容が、すでに消えている
保持を短く設定している組織で、紛争の発生後に収集を始めると、期間内のはずの会話が取れないことがあります。収集製品側の設定では取り戻せません。保持期間の設計か、取り込み型の製品での常時アーカイブで、事前に備える項目です。
製品を選ぶときの見方
挙げた製品のうち、Anthropicの一覧に載っている説明から言える違いは次のとおりです。
- RelativityOne: 法務・コンプライアンス・セキュリティのチームが、必要なときに元データを収集して、レビュー可能な形式にします
- Smarsh: Smarsh Captureとして、Claude Enterpriseのやり取りの監視と保持を担います。監査と規制対応のための記録を提供するとされています
- Theta Lake: 調査(Investigation)、分析(Analytics)、規制コンプライアンスの機能を、Claudeの会話にも適用します
- Hadrius・Shield: 金融規制下の事業者向けに、記録保存と監督、またはeDiscoveryの層を提供します
- Proofpoint・Mimecast: DLPや既存のガバナンス基盤に、Claudeの会話を加えます
すでに使っている基盤があれば、そこにClaudeを足す形が運用の負担を抑えられます。Anthropicの一覧は、MimecastのGovernance, Compliance & Insightsについて、メールやコラボレーションのデータと同じ体験にClaudeの会話を加えると説明しています。
設定手順のページは製品ごとに別です。Theta Lakeの手順は、ログインを求めるページの先にあります。契約前に手順を確かめたいときは、販売窓口に問い合わせる流れになります。
導入時に詰まりやすい点
- キーが違う: Adminキーや標準APIキーでは、会話の内容に届きません。Compliance access keyを用意します
- 組織が複数ある: Relativityではデータソースを組織ごとに作ります。1つのキーを共用できますが、組織IDは別です
- 開始日が空: RelativityのCollectionでは、Start Dateを入れないとデータソースの工程を完了できません
- 期間の読み違い: 日付はUTCです。日本時間の営業日で切ると、前後がはみ出します
- 取れる項目の想定違い: 収集されると明記されているのは、会話・アーティファクト・ファイル・メタデータの4種類です。それ以外の項目が出る前提で、レビュー工程を組まないようにします
法務での利用そのものの設計は、Claudeを法務で使うときの秘匿特権と守秘で扱っています。収集した会話を弁護士の確認にどう回すかは、そちらの前提と合わせて決めます。
まとめ
Claudeの会話の収集は、Compliance APIを有効にしてキーを作り、対応製品に渡すだけで始められます。難しいのは接続よりも、保持期間と収集のタイミングの組み合わせです。必要なときに収集する型なら保持期間が、常時取り込む型なら取り込み開始日が、証拠として残る範囲の起点になります。