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Claudeで倫理審査の申請書を下書きする — 個人情報の扱いの点検まで

Claudeで倫理審査の申請書を下書きする — 個人情報の扱いの点検まで

人を対象とする生命科学・医学系研究の倫理審査で、研究計画書からClaudeに申請書の下書きを作らせ、指針の記載事項で抜けを点検する手順。被験者データは入れず計画だけを渡す線引きも示します。

倫理審査の申請書は、研究計画書の内容を機関の書式に移し替える作業が大半です。この移し替えと、記載の抜けの点検はClaudeに任せられます。ただし渡すのは研究計画の文章だけで、被験者のデータや同意書の実物は渡しません。この線引きを先に決めておくと、下書きを速く作りながら個人情報の扱いも崩さずに済みます。

この記事は、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(以下、指針)に沿った研究を想定します。指針が定める研究計画書の記載事項を点検の物差しにして、下書きの作り方、個人情報の欄の見直し方、同意説明文書との突き合わせ方を順に扱います。

計画だけを渡し、被験者に関わるものは渡さない

指針の対象は、人を対象とする生命科学・医学系研究です。日本の研究者等が実施する研究、または日本国内で実施する研究が該当します。法令に基づいて実施される研究などは対象外で、迷う場合は指針の適用範囲の条文と所属機関の倫理審査事務局に当たります。

Claudeに渡してよいものと、渡さないものを先に分けます。

区分具体例扱い
渡してよい具体例研究の目的・意義、方法、期間、対象者の選定方針、評価項目扱いそのまま入力
加工して渡す具体例倫理審査委員会からの指摘文、共同研究機関の名称や担当者名扱い固有名を役割名(「A病院」「研究責任者」)に置き換える
渡さない具体例被験者の氏名・診療情報・検査値、同意書の署名済みの実物、面談記録、識別できる症例の記述扱い入力しない

「個人情報の扱い」の欄を書くために個人情報が要るわけではありません。この欄に書くのは、取得する項目、加工の有無、保管と廃棄の方法といった設計です。設計は計画の段階で文章にできるので、データそのものを見せる理由がありません。

指針が求める研究計画書の項目を、Claudeに任せる範囲で仕分ける

指針の第7は、研究計画書に原則として記載する事項を①から㉕まで25項目で挙げています。倫理審査委員会の意見を受けて研究機関の長が許可した事項は、この限りではありません。25項目のうち、Claudeが力を発揮する項目と、人が事実を入れる項目は分かれます。

仕分け項目(番号は指針第7)Claudeの役割
文章化と整合の確認項目(番号は指針第7)③目的及び意義、④方法及び期間、⑤対象者の選定方針、⑥科学的合理性の根拠、⑨負担・リスク・利益と最小化策Claudeの役割下書き、論理の飛びの指摘
設計を言語化項目(番号は指針第7)⑦同意を受ける手続等、⑧個人情報等の取扱い、⑩保管及び廃棄、⑬情報公開、⑭結果等の取扱いClaudeの役割項目ごとの書き分け案、抜けの指摘
事実は人が入れる項目(番号は指針第7)②実施体制、⑪機関の長への報告、⑫利益相反、⑮相談窓口、⑲経済的負担・謝礼、㉓業務委託Claudeの役割欄の見出しと書式の整備だけ
該当する場合のみ項目(番号は指針第7)⑯代諾者、⑰アセント、⑳重篤な有害事象、㉑補償、㉒研究後の医療、㉔将来の研究、㉕モニタリング・監査Claudeの役割該当の有無を質問して漏れを防ぐ

「事実は人が入れる」の行は、Claudeに書かせると体制や金額をそれらしく補ってしまう項目です。空欄のまま残し、人が埋めます。

手順: 計画書から申請書の下書きと抜けの点検まで

手順

下書きから点検までの流れ

  1. 1

    研究計画の概要を1つのテキストにまとめる

    目的、方法、期間、対象者の選定方針、取得する項目を、被験者のデータを含めずに書きます。固有名は役割名に置き換えます。

  2. 2

    指針の項目リストを物差しとして渡す

    第7の項目名を一覧にして、毎回同じ物差しで点検できるようにします。項目リストは手元の文書に保存して使い回します。

  3. 3

    申請書の欄ごとに下書きを作らせる

    所属機関の申請書の欄見出しをそのまま貼り、計画の概要から各欄の下書きを作らせます。計画に書かれていない事柄は、補わずに「記載なし」と返すよう指示します。

  4. 4

    個人情報と同意の欄を、リストと突き合わせて点検する

    下書きの⑦と⑧の欄を、次の2節の観点で見直します。

  5. 5

    人が事実を入れ、機関の手順に載せる

    実施体制、利益相反、相談窓口などは人が埋めます。最終版は倫理審査委員会の審査に提出します。

手順2で使う項目リストは、次のようなテキストで足ります。指針の項目名を短くしただけの形で、ファイルにしておけば再利用できます。

【研究計画書の記載事項チェックリスト】
1 研究の名称
2 研究の実施体制
3 研究の目的及び意義
4 研究の方法及び期間
5 研究対象者の選定方針
6 研究の科学的合理性の根拠
7 インフォームド・コンセントを受ける手続等
8 個人情報等の取扱い(加工方法、仮名加工情報・匿名加工情報の作成の有無)
9 負担、予測されるリスク及び利益、最小化策
10 試料・情報の保管及び廃棄の方法
…(以下、指針の項目を最後まで)

これは指針の表現を要約した作業用のリストです。提出する計画書の文言は、必ず指針本文で確かめてください。

個人情報の扱い欄を点検するプロンプト

⑧「個人情報等の取扱い」の欄は、「加工する場合にはその方法、仮名加工情報又は匿名加工情報を作成する場合にはその旨」まで書く項目です。書き漏れやすいのは、取得する情報の項目、加工の時期と担当、保管場所、廃棄の方法、外部へ提供する可能性の有無です。次のように頼むと、欄の抜けを項目単位で返させられます。

次は倫理審査申請書の「個人情報等の取扱い」欄の下書きです。
被験者のデータは含みません。
 
下書き:
(ここに欄の文章を貼る)
 
次の観点ごとに、下書きに「記載あり」「記載なし」「曖昧」のどれが
当てはまるかを表にし、記載がある場合は該当する文を引用してください。
1 取得する情報の項目
2 加工の有無と方法(仮名加工情報・匿名加工情報を作る場合はその旨)
3 加工と管理を担当する者
4 保管場所と保管期間
5 廃棄の方法
6 他の機関や外国にある者へ提供する可能性
下書きに書かれていない内容は補わず、「記載なし」としてください。

「引用を付けさせる」点が肝心です。Claudeの判定が下書きのどの文に基づくかが見えるので、人が原文に戻って確かめられます。

返ってきた表は、そのまま信じず、「記載なし」の行を人が計画に照らして埋めます。「記載あり」と判定された行でも、引用された文が実際にその観点を満たしているか目で確かめます。

仮名加工情報や匿名加工情報の取扱いは、指針上は個人情報保護法の関係規定に則って行うとされています。これらを作る計画があるなら、法律側の整理を先に済ませてから欄を書きます。

同意の欄を、説明事項の項目と突き合わせる

⑦の「同意を受ける手続等」と、被験者に渡す説明文書は、中身が食い違いやすい組です。指針は、同意を受ける際に研究対象者等へ説明すべき事項を原則として列挙しています。その中には、次のような、書き落としやすい事項が含まれます。

  • 同意した後でも、随時撤回できる旨(撤回に応じた措置が困難になる場合は、その旨と理由)
  • 同意しない、または撤回しても、不利益な取扱いを受けない旨
  • 研究対象者等の求めに応じて、研究計画書等を入手・閲覧できる旨と方法
  • 試料・情報の保管及び廃棄の方法
  • 将来の研究や他機関への提供の可能性がある場合は、その旨と、確認する方法

申請書の同意欄と説明文書の下書きの2つをClaudeに渡し、説明事項の項目リストとの対応表を作らせると、片方にしか書かれていない項目が見つかります。

前と後

同意の欄を点検する前と後

BEFORE

点検前の下書き

「研究への参加は自由意思で、同意書に署名をいただきます。」だけが書かれ、撤回と不利益取扱いに触れていない。

AFTER

項目リストと突き合わせた後

撤回できる旨、同意しなくても不利益がない旨、計画書の閲覧方法の3点が欄に加わる。撤回に応じられない場合の理由は、人が研究の実態に合わせて書く。

この例は、点検で何が変わるかを示すための模式的な例です。実際の文言は、研究の分類と、所属機関の同意説明文書の書式に合わせて決めます。

令和8年8月27日の改正指針は、12月1日に施行される

指針は令和8年8月27日に一部改正が告示され、令和8年12月1日に施行されます。施行日をまたぐ計画では、どちらの規定が適用されるかを倫理審査事務局に確かめます。経過措置として、現行指針などの規定で実施中の研究は、個人情報の保護に関する法令及びガイドラインの規定が遵守される場合に限り、なお従前の例によることができます。

くらべる

改正で変わる、同意と審査の枠組み

改正指針

同意手続の整理

研究を「侵襲を伴う研究又は介入を行う研究」「試料を用いる研究」「試料を用いない研究」の3分類にし、リスクに応じた手続を定める。「文書IC」「口頭IC」「適切な同意」の用語は「IC」に統一される。

改正指針

審査の枠組み

侵襲・介入研究は通常審査を実施する。多機関共同研究は、侵襲・介入の場合は一の倫理審査委員会による一括審査が必須、その他の研究では原則になる。

改正は、既存情報を用いる研究の同意手続にも及びます。既存情報にも既存試料と同様の要件を適用し、原則としてオプトアウトを行う整理です。オプトアウトとは、対象者等に一定の事項を通知するか容易に知り得る状態に置き、原則として拒否できる機会を保障する方法を指します。

Claudeに点検させる場合、物差しとなる項目リストを、自分の研究が適用を受ける指針の版に合わせて作ります。改正指針の各規定の解釈は、今後ガイダンスを改訂して掲載するとされています。文部科学省のページでは、改正後のガイダンスの欄は「後日掲載」の表示です。解釈に迷う点は、通知に記載された3省の指針照会窓口でも受け付けています。

Claudeに入れる前に確かめる設定

個人向けプラン(Free・Pro・Max)では、チャットの内容を「Claudeの改善」に使うかどうかを、プライバシー設定で変えられます。サポート記事は、同意しているときは利用者IDからの切り離しなど複数の保護を行うと説明しています。一方で、健康記録や医療情報などの機微な個人情報は慎重に扱うよう勧めています。シークレットチャットは、設定が有効でも改善に使われません。ただし、安全性の分類器に検知された会話は、信頼性・安全性のモデルなどに使われる場合があります。

組織の契約や所属機関の情報管理規程によって、外部のAIサービスに入力してよい情報の範囲は決まっている場合があります。計画書の内容が未公開の研究情報にあたる場合は、その規程に照らしてから使います。個人情報の漏えいが起きた場合の報告の組み立ては、個人情報の漏えい報告をClaudeで下書きする際の注意点に整理しています。

つまずきやすい点

落とし穴

Claudeが体制や補償をそれらしく補ってしまう

実施体制、補償の有無、利益相反の状況は、計画に書かれていない限りClaudeは知りません。補って書かれると、審査委員会で矛盾が出ます。プロンプトに「書かれていない内容は補わない」と明記し、返答の中に事実が増えていないかを、元の計画と見比べます。

落とし穴

下書きの文章が、機関の書式の欄の趣旨と合わない

指針が定めるのは研究計画書の記載事項で、申請書の書式は機関ごとに用意されます。欄の見出しだけでなく、欄の記入上の注意書きも一緒に貼ると、欄の趣旨に沿った下書きになります。

落とし穴

同意説明文書を平易にすると、必要な事項まで削れる

読みやすさを求めて文言を短くすると、撤回や不利益取扱いのような必須の説明事項が消えることがあります。平易化した後で、説明事項の項目リストと照合し直します。同種の「入力を絞って下書きを作る」考え方は、通知表の所見文をClaudeで下書きするでも使っています。

まとめ

Claudeに任せるのは、計画の文章を申請書の欄に移すことと、指針の記載事項との差分を出すことです。実施体制や補償のような事実の記入、研究の分類の判断、倫理審査委員会への提出は人の仕事として残ります。被験者のデータを渡さなくても点検は成立するので、入力は計画の文章にとどめます。

施行が近づく改正指針では、同意手続と審査の枠組みが整理し直されます。点検用の項目リストは、研究が適用を受ける版の指針本文を見ながら更新し、解釈に迷う点は倫理審査事務局に尋ねます。

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