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税理士の顧問契約書をClaudeで点検 — 税理士法の業務範囲と付随業務の線引き

税理士の顧問契約書をClaudeで点検 — 税理士法の業務範囲と付随業務の線引き

顧問契約書の業務一覧を税理士法2条の区分に振り分け、記帳代行・給与計算などの付随業務と他士業の独占業務との境目をClaudeで洗い出す手順。報酬・責任範囲・守秘の抜けまで。

税理士事務所の顧問契約書を、税理士法2条の区分に当てて点検する作業は、Claudeに任せやすい部類です。契約書の「業務内容」欄に並ぶ項目を一行ずつ条文の区分に振り分け、区分のどこにも入らない行や、他の士業の領分に触れそうな行を拾わせます。

この記事では、条文の区分表、Claudeへの指示文、出力の読み方、報酬・責任範囲・守秘などの条項の抜けの洗い方を順に示します。契約書の最終判断は税理士本人と、必要なら所属税理士会・弁護士の確認事項です。ここで作るのは、その前段の下調べ用の点検表です。

業務一覧を税理士法2条の区分に振り分けると何が見えるか

顧問契約書の「業務内容」には、決算申告、月次の記帳、年末調整、給与計算、経営相談などが一列に並びがちです。この一列は、法律の上では性格の違う3種類が混ざっています。

  1. 税理士法2条1項の業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)
  2. 同条2項の付随業務(財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他の財務に関する事務)
  3. 税理士法の外にある業務(他の法律で別の資格者に認められているもの)

どの行がどれかを契約書の側で言い分けられていないと、報酬の根拠も責任の範囲も曖昧なままになります。振り分けは機械的に近い作業なので、Claudeに一次案を作らせ、人が条文で確かめる流れが向いています。

条文の区分表 — 2条1項・2項・3項と、2条の2の位置

税理士法2条の骨組みは次のとおりです。条文は他人の求めに応じて行うことを前提にしています。

区分条文中身
税務代理条文2条1項1号中身申告等について代理・代行すること、税務官公署への主張・陳述を代理・代行すること
税務書類の作成条文2条1項2号中身税務官公署に提出する申告書・申請書・請求書・不服申立書などの作成
税務相談条文2条1項3号中身申告等や申告書等の作成に関し、課税標準等の計算に関する事項について相談に応じること
付随業務条文2条2項中身税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を行うこと
補助者としての従事条文2条3項中身他の税理士・税理士法人の補助者として上記の業務に従事すること

2条と2条の2をまとめて「業務区分」と呼ぶ説明も見かけますが、2条の2は区分表の続きではありません。2条の2は、租税に関する事項について、裁判所で弁護士である訴訟代理人とともに補佐人として出頭し陳述できる、という規定です。顧問契約書の業務一覧を振り分ける表には、2条1項から3項までを使います。補佐人としての出廷を契約に含める事務所なら、別の行として2条の2に当てます。

2項には条件が2つ付いています。1つは「税理士の名称を用いて」「税理士業務に付随して」行うこと。もう1つは、但し書きの「他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない」です。顧問契約書の線引きで一番効くのは、この但し書きです。

記帳代行や給与計算は付随業務に入るのか

記帳代行は、2条2項に「会計帳簿の記帳の代行」と明記されています。財務書類の作成も同じ項に挙がっています。契約書に「月次の記帳代行」「決算書の作成」と書くこと自体は、条文の文言に沿っています。

一方で、条文は「税理士業務に付随して」と書いています。記帳代行だけを単独で請ける契約が、この付随性の文言にどう当たるかは、条文だけでは読み切れません。契約書上は決算・申告業務とセットで受ける形になっているか、Claudeの点検表に「単独受任の行」として拾わせておき、所属する税理士会の見解で詰めるのが安全です。

給与計算は、別の注意が要ります。社会保険労務士(社労士)の根拠法である社労士法は、2条1項で次の事務を社労士の業務として挙げています。

  • 労働・社会保険の諸法令に基づく申請書等の作成(1号)と、その提出手続の代行(1号の2)
  • 労働・社会保険の諸法令に基づく帳簿書類(申請書等を除く)の作成(2号)
  • 労務管理その他の労働に関する事項の相談・指導(3号)

27条は、社労士でない者が他人の求めに応じ報酬を得て、1号から2号までの事務を業として行うことを禁じています。ただし書きで、他の法律に別段の定めがある場合と、政令で定める業務に付随して行う場合は除かれます。その政令にあたる社労士法の施行令2条は、公認会計士法2条2項の業務と、税理士法2条1項に規定する業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を挙げています。税理士法2条2項の付随業務は、この列挙に入っていません。別表第一には労働基準法も挙がっています。

つまり、顧問契約書に「給与計算」と一言で書いても、その中身が賃金の金額計算にとどまるのか、賃金台帳のような帳簿書類の作成や、社会保険の届出書の作成・提出まで含むのかで、税理士法2条2項の但し書きに触れる度合いが変わりえます。賃金台帳の作成のように社労士法2条1項2号に当たりうる事務は、施行令が除外しているのが税理士法2条1項の業務だけである以上、付随業務の名目では受けにくい、というのが条文の並びからの読みです。個別の事務がどちらに当たるかは、契約書の文言ごとに所属の税理士会や社労士に確かめる領域です。契約書の側でできるのは、「給与計算」を作業の単位まで分解して書き、社保・労保の手続は提携社労士へ、と範囲を切っておくことです。Claudeにはこの分解を手伝わせます。

Claudeに渡す材料と指示文

渡す材料は3つです。

  1. 契約書の「業務内容」「報酬」「責任」「守秘」「再委託」「解約」の条項本文
  2. 上の区分表(2条1項・2項・3項と2条の2)
  3. 2条2項但し書きの趣旨(他の法律で制限されている事務は付随業務に入らない)

顧問先の名前や金額は、点検に不要です。契約書の雛形そのものか、固有名詞を伏せたコピーを使います。守秘義務との関係は税理士のClaude利用と守秘義務で扱っています。事務所の雛形を渡す場合も、顧問先ごとの特約欄は空にしておくと扱いが楽です。

指示文は次のような形です。

あなたは税理士事務所の契約書点検の補助者です。
添付の顧問契約書(条項本文)と、税理士法2条の区分表を渡します。
 
やること:
1. 「業務内容」条項の項目を1行ずつ取り出し、次のどれに当たるか
   を判定してください。
   A: 2条1項(税務代理/税務書類の作成/税務相談のどれか)
   B: 2条2項(付随業務)
   C: 他の法律で別の資格者の業務とされている可能性がある
   D: どれにも当たらない、または書き方が曖昧で判定できない
2. 判定の根拠として、契約書の文言をそのまま引用し、
   当てた条文の号まで書いてください。
3. C と D は理由を1文で書き、人が確認すべき点を挙げてください。
4. 法律上の最終判断は行わないでください。「当たる可能性がある」
   「書き方が曖昧」という言い方に留めてください。
 
出力は表にしてください。列は、契約書の文言/区分/根拠の条文/
確認すべき点の4列です。

4の指定が大事です。Claudeに適法・違法を言い切らせると、渡した条文の範囲を超えた断定が混ざります。区分と根拠の対応づけだけをさせ、グレーな行は「人が確認」の列に回させます。

出力の読み方 — 表の形と、人が確かめる箇所

Claudeの返し方は毎回少しずつ変わります。以下は形のイメージで、実際の出力ではありません。

契約書の文言区分根拠の条文確認すべき点
法人税・消費税の確定申告書の作成と提出代行区分A根拠の条文2条1項1号・2号確認すべき点提出代行の権限を示す書面の準備(30条)
毎月の会計帳簿の記帳代行区分B根拠の条文2条2項確認すべき点単独受任でないか。決算・申告と一体の契約か
毎月の給与計算および社会保険手続区分C根拠の条文2条2項但し書き/社労士法2条1項・27条確認すべき点賃金台帳の作成や届出書の作成・提出を含むか
経営全般に関する助言区分D根拠の条文該当なし確認すべき点税務相談(2条1項3号)に収まる範囲か、範囲外か

この表を受け取ったら、人が確かめるのは次の3点です。

  • 引用の一致: 「契約書の文言」列が、元の条項の文言と一字一句同じか。要約に書き換えられていたら、その行は信用しません
  • 条文番号の実在: 「根拠の条文」列の号が、手元の条文の号と合っているか。これはe-Govの法令検索で数分で確かめられます
  • CとDの行: ここが本題です。Claudeが「可能性がある」と書いた行は、契約書を直すか、提携先を明記するか、所属会に問い合わせるかを人が決めます

条文の貼り付け元は、e-Govの法令データです。法令の条文テキストを渡す際は、2条の全文と、社労士法2条・27条を指示文と一緒に貼ると、Claudeが記憶から条文を再構成する余地が減ります。

条項の抜けを洗う — 報酬・責任範囲・守秘ほか

業務範囲の振り分けが済んだら、同じ契約書に対して、条項ごとの抜けを洗わせます。税理士法に「契約書にこう書かなければならない」という書式の定めがあるわけではありません。ここでの観点は、税理士法の義務規定と業務範囲の区分から、契約書の側で手当てしておくと食い違いが減る点を引いたものです。

観点照らす条文契約書で確かめる点
業務の区分ごとの報酬照らす条文2条1項・2項契約書で確かめる点報酬が申告・記帳・給与計算などの区分ごとに分かれているか。付随業務だけ請ける場合の扱い
責任範囲照らす条文41条の3、36条契約書で確かめる点依頼者が提供した資料・事実の正しさの責任、不正を知った場合に是正を助言する旨
守秘照らす条文38条、54条契約書で確かめる点事務所の守秘義務と、補助者・使用人への義務の及び方。依頼者側の情報提供の範囲
補助者・提携先照らす条文2条3項、41条の2契約書で確かめる点補助者への監督と、社労士などへ業務を回す場合の提携先の明記
税務代理の委任照らす条文30条、31条契約書で確かめる点権限を示す書面の提出。不服申立ての取下げや代理人の選任は特別の委任が必要
帳簿・資料の保存照らす条文41条契約書で確かめる点事務所が作る帳簿の保存年数と、依頼者の原始資料の保管責任の区別
書面添付照らす条文33条の2契約書で確かめる点申告書に添付する書面の作成の有無と、そのための依頼者側の協力

この表を指示文に貼り、次のように続けます。

先ほどの業務区分の表とは別に、上の観点の表を使って、
契約書に次のどれがあるかを調べてください。
- 条項がある(該当条項番号と文言の引用)
- 条項はあるが範囲が曖昧(どこが曖昧か1文)
- 条項がない
「条項がない」ものについて、契約書に追加を促す文言案は出さず、
確認すべき論点だけを挙げてください。

文言案を出さない指定にしているのは、契約書の条項は税理士本人の責任で書くものだからです。論点の洗い出しにとどめると、Claudeの出力をそのまま貼り付ける事故を避けられます。

責任範囲の点検で拾わせたい2点

41条の3は、委嘱者が不正に租税を免れている事実などを知ったときに、直ちに是正を助言する義務を定めています。36条は、不正に租税を免れることにつき指示や相談に応じる行為を禁じています。顧問契約書に「依頼者の指示に従って処理する」といった包括的な文言があると、この2条文との緊張が出ます。指示文に「依頼者の指示に従う旨の文言があれば、その範囲を拾う」と一行足すと、拾い漏れが減ります。

守秘条項の点検で拾わせたい2点

38条は税理士本人、54条は使用人その他の従業者に守秘を課しています。契約書では、補助者として関わる人や外部の提携先まで守秘の義務が及ぶ書き方になっているかを見ます。Claude自体の利用について契約書に一行入れるかどうかは、顧問先との取り決めの問題で、条文が答えを出しているわけではありません。

契約書の書き方が原因で判定がぶれる3つの型

契約書の側に原因がある行は、Claudeも判定を外します。

  • 「その他付随する一切の業務」という包括条項: 2条2項に当たるのか、他の法律で制限される事務を含むのかが読み取れず、Dに回ります。含める事務を列挙するか、含めない事務を明記する書き方に直します
  • 「経営支援」「財務コンサルティング」のような名称: 税務相談(2条1項3号)の範囲に収まるのか、それを超えるのかが判断できません。業務の中身を動詞で書き直すと区分がつきます
  • 名義を使わせる書き方: 税理士でない者に自分の名義を使わせることは37条の2が禁じ、税理士でない者が税理士業務を行うことは52条が禁じています(52条違反には59条の罰則があります)。補助者に任せる業務が「補助者としての従事」(2条3項)に収まるかを、業務一覧の備考で確かめます

点検結果の使い方 — 契約書を直す前にやること

CとDに分類された行は、次の順に片づけると手戻りが少なくなります。

  1. 行ごとに、契約書の書き方を直すだけで済むか、業務そのものを切り出すかを決める
  2. 切り出す業務は、提携先(社労士など)の明記と、窓口の分担を決める
  3. 条文の読みに迷う行は、所属税理士会に照会する論点として残す
  4. 直した契約書を同じ指示文にもう一度通し、CとDの行が減ったことを確かめる

4のやり直しは、Claudeの出力を確認する最も手軽な方法です。同じ指示で、直した箇所だけ区分が変わっていれば、点検の再現性が確かめられます。顧問料の見直しを併せて行うなら、Claudeでカレンダーの稼働集計で稼働の実績から区分ごとの報酬を組み立てられます。

記帳代行の実務側、つまり仕訳のルール表の作り方は記帳代行の仕訳をClaudeで半自動化に、契約書と運用実態の突き合わせという点検の型は業務委託の偽装請負をClaudeで点検にあります。後者は税理士の契約ではなく業務委託一般の話ですが、「契約書の文言」と「実際の運用」を突き合わせる手順は共通です。

まとめ

顧問契約書の点検は、業務一覧を税理士法2条の区分(1項・2項)と他の法律の領分に振り分けることから始まります。区分への振り分けと条項の抜けの洗い出しはClaudeに向いていますが、適法かどうかの判断は渡しません。「当たる可能性がある」という出力を、人が条文と所属会の見解で確かめる前提で使います。

給与計算のように範囲が広がりやすい言葉は、契約書の側で作業の単位まで割ります。割った結果として切り出す業務が出たら、提携先を明記するところまでが契約書の仕事です。

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