広告の媒体費請求書を実績と突合する手順 — Claude for Excelで立替請求を検算
媒体から届く請求書、出稿実績、クライアントへの請求の三つをClaude for Excelで照合し、差額の出た案件だけを取り出す手順です。手数料率の違いと月またぎも扱います。
広告代理店の立替請求は、媒体から届いた請求書の金額、自社で持つ出稿実績、クライアントに出した請求の三つが同じ案件で食い違わないかを見る作業です。Claude for Excelなら、三つのデータを同じブックに置き、案件IDで合算して差額の列を作らせ、ずれた行だけを取り出せます。月末の締めで媒体費と手数料を見比べている運用担当・経理担当向けの手順です。
ここでは、シートの持ち方、月またぎの合わせ方、照合の式、5案件のサンプル、Claudeへの依頼文、使えない場面を順に示します。
広告代理店の立替請求で突き合わせる三つの数字
媒体費の立替請求で食い違いが出る場所は、三つの数字の間にあります。
| 数字 | 出どころ | 何を表すか |
|---|---|---|
| 出稿実績 | 出どころ配信レポート、運用台帳 | 何を表すかその月に実際に配信された媒体費 |
| 媒体請求額 | 出どころ媒体・配信プラットフォームの請求書 | 何を表すか代理店が媒体に支払う金額 |
| クライアント請求額 | 出どころ自社の請求データ | 何を表すか媒体費に手数料を載せて請求した金額 |
照合は二段で考えると迷いません。1段目は「出稿実績と媒体請求額が合っているか」で、媒体への支払い側の確認です。2段目は「出稿実績に手数料率を掛けた金額と、クライアント請求額が合っているか」で、請求側の確認です。出稿実績を軸に両側から挟むので、媒体請求とクライアント請求が互いに別の理由でずれていても、どちら側の問題かが分かります。
発注書・納品書・請求書の三点照合は、物の受け渡しを軸にした突合です。その手順はClaudeで発注書・納品書・請求書を三点照合する手順にまとめています。媒体費の突合は物の納品がなく、実績データが納品書の代わりになります。さらに、手数料率という掛け算の確認が加わる点が異なります。
Claude for Excelに任せる範囲
Claude for Excelは、開いているブックについて質問し、セル単位の根拠つきで答えるアドインです。Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使えます。数式の関係を保ったまま値を変える、エラーの原因をたどる、並べ替えやフィルターをかけるといった操作もできます。
媒体費の突合に当てはめると、分担は次のとおりです。
| 作業 | Claudeに任せる | 人が持つ |
|---|---|---|
| 照合用の式を組む | Claudeに任せる式の作成と説明 | 人が持つ手数料の計算方式の決定 |
| 全案件の差額を出す | Claudeに任せる全行の計算 | 人が持つ差額の原因の判断 |
| 差額行の仕分け | Claudeに任せる型ごとの分類案 | 人が持つ媒体・クライアントへの照会と合意 |
| クライアント請求データの確定 | Claudeに任せる下書きまで | 人が持つ提出前の確認 |
手数料が媒体費に対する率なのか、固定額なのか、段階制なのかは、クライアントとの契約で決まります。Claudeに推測させず、人が列として持たせます。
三つのシートと照合シートを組む
ブックには、データのシートを3枚、照合用のシートを1枚置きます。
| シート | 列(左から) |
|---|---|
| 出稿実績 | 列(左から)配信月、媒体、案件ID、出稿実績(税抜) |
| 媒体請求 | 列(左から)請求月、配信月、媒体、案件ID、請求額(税抜)、請求書番号 |
| クライアント請求 | 列(左から)請求対象月、案件ID、請求額(税抜) |
| 照合 | 列(左から)案件ID、媒体、手数料率、各シートの合算値、差額、判定 |
案件IDを3枚のシートで同じ書式にそろえることが前提です。媒体の請求書にはキャンペーン名が載っていても、自社の案件IDが無いことがあります。その場合は、請求書の明細から案件IDを引き当てる対応表を別シートに作り、人が目で確認してから使います。
税抜と税込を混ぜると、全行に一定の差が出ます。三枚とも税抜で持つと決めて、ヘッダーに書いておきます。
月またぎは配信月で合わせる
媒体の請求書は、配信した月の翌月以降に届くことがあります。請求書の発行月で合わせると、出稿実績に載っている案件が「媒体請求なし」に見えます。
対策は、媒体請求シートに請求月とは別に配信月の列を持たせ、照合では配信月で合算することです。請求書の明細に配信期間が載っていれば、そこから配信月を入れます。期間が月をまたぐ明細は、日割りで二つの月に分けるのか、開始月に寄せるのかを、契約の締め方に合わせて決めます。
それでも媒体請求が来ていない案件は残ります。この行は不一致ではなく「請求書待ち」として別に管理します。判定の列に専用の値を設けると、後で確認する一覧を作りやすくなります。
照合シートの式
照合シートの2行目には、次の式を入れます。対象月は $L$1 に入力する前提です。
D2: =SUMIFS(出稿実績!$D:$D,出稿実績!$C:$C,$A2,出稿実績!$A:$A,$L$1)
E2: =SUMIFS(媒体請求!$E:$E,媒体請求!$D:$D,$A2,媒体請求!$B:$B,$L$1)
F2: =E2-D2
G2: =ROUND(D2*(1+C2),0)
H2: =SUMIFS(クライアント請求!$C:$C,クライアント請求!$B:$B,$A2,クライアント請求!$A:$A,$L$1)
I2: =H2-G2
J2: =IF(AND(F2=0,I2=0),"一致",
IF(E2=0,"媒体請求書待ち",
IF(H2=0,"クライアント請求漏れ",
IF(F2<>0,"媒体請求と実績の差","手数料または金額の差"))))D列が出稿実績、E列が媒体請求の合算、F列が1段目の差額です。G列は出稿実績に手数料率を掛けた「あるべき請求額」で、H列の実際の請求額との差がI列に出ます。端数の処理は ROUND の桁で変えます。契約が切り捨てなら ROUNDDOWN にします。
判定の列は、上から順に当てはまったものを返します。1行に複数の原因が重なっているときは、最初に当たったものしか出ません。判定が「手数料または金額の差」になった行を人が開き、F列とI列を見て重なりを確かめます。
5案件のサンプルで差異の出方を見る
次の5案件で、手数料率15%の前提で照合します。数値は説明用の例で、実在の請求ではありません。単位は円、税抜です。
| 案件 | 出稿実績 | 媒体請求 | 媒体差 | あるべき請求 | 実際の請求 | 請求差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 検索A | 出稿実績1,000,000 | 媒体請求1,000,000 | 媒体差0 | あるべき請求1,150,000 | 実際の請求1,150,000 | 請求差0 |
| SNS-B | 出稿実績800,000 | 媒体請求824,000 | 媒体差+24,000 | あるべき請求920,000 | 実際の請求920,000 | 請求差0 |
| 動画C | 出稿実績500,000 | 媒体請求500,000 | 媒体差0 | あるべき請求575,000 | 実際の請求550,000 | 請求差−25,000 |
| 表示D | 出稿実績300,000 | 媒体請求0 | 媒体差−300,000 | あるべき請求345,000 | 実際の請求345,000 | 請求差0 |
| 検索E | 出稿実績200,000 | 媒体請求200,000 | 媒体差0 | あるべき請求230,000 | 実際の請求0 | 請求差−230,000 |
合計は、出稿実績が2,800,000円、媒体請求が2,524,000円、あるべき請求が3,220,000円、実際の請求が2,965,000円です。
- 検索A: 三つの数字が合う行です。
- SNS-B: 媒体の請求が実績より24,000円高い行です。クライアントには実績ベースで請求済みなので、このままだと差額分が代理店の持ち出しになります。媒体に明細を求め、実績側の取り込み漏れか、媒体側の過請求かを切り分けます
- 動画C: 請求額は550,000円で、実績の10%を載せた金額に見えます。契約の手数料率が15%なら、25,000円の請求不足です。この案件だけ別の率の契約なのかを、契約情報の列で確かめます
- 表示D: 媒体の請求書が届いていません。配信月が当月で請求書が翌月発行なら、月またぎの行です。判定は「媒体請求書待ち」になります
- 検索E: クライアント請求が0円です。請求データから抜けています
全体の差額は、請求側が合計で255,000円不足しています。ただし、件数で見ると不足は2案件に集中しています。差額の合計だけを見ると、動画Cのような小さな率の違いが検索Eの請求漏れに埋もれます。案件ごとの判定列で見るのはこのためです。
Claude for Excelへの依頼文を三段階に分ける
一度に全部を頼まず、式を組む、検算する、仕分けるの順に頼みます。
- 式を組ませる。「出稿実績・媒体請求・クライアント請求の3シートを、案件IDと配信月で照合シートに合算してください。手数料率は照合シートのC列にあります。式の前提を日本語で説明してください」
- 検算する。「動画C、表示Dの2行について、各列の値がどのシートのどのセルから来ているかを根拠つきで示してください」
- 仕分ける。「判定が『一致』でない行を抜き出し、媒体請求書待ち、請求漏れ、手数料の差、媒体請求と実績の差に分けてください。判断がつかない行は『要確認』にしてください」
Claude for Excelの回答には、クリックで該当セルへ移れる根拠が付きます。2番目の依頼で、式が取り違えたシートや列を引いていないかを見られます。
ブックを開くたびに前提を書き直さないために、アドインの設定画面にあるInstructionsの欄を使えます。そこに書いた内容は、Excelでの全部の会話に効きます。たとえば次のような固定ルールです。
金額はすべて税抜の円で、整数で表示する。
差額は「請求側の値 − 基準の値」で計算する。
手数料率はC列の値を使い、列に無い率を仮定しない。PowerPointやWordのInstructionsとは別で、Excelの中だけで効きます。同じ照合を毎月繰り返すなら、手順をSkillとして有効にしておく手もあります。有効にしたSkillは、作業内容に合うと自動で使われます。サイドバーで / を打つと、Excelで使えるSkillの一覧から直接呼び出せます。
落とし穴
手数料率を一つの値で一括適用すると、別契約の案件が全部ずれて見える
クライアントや案件ごとに手数料率が違うのに、照合シートのC列を一律にすると、率の違う案件が「手数料または金額の差」で並びます。率は契約ごとの列として持たせ、契約書の値をコピーして埋めます。特定の案件だけ差額が一定の割合で出ているなら、まず率の取り違えを疑います。
差異の型ごとに動く先を分ける
判定の列は、そのまま次に動く先の振り分けにも使えます。
| 判定 | 見え方 | 次の動き |
|---|---|---|
| 媒体請求書待ち | 見え方実績があり媒体請求が0 | 次の動き請求書の発行予定を媒体に確かめ、翌月分として別管理 |
| 媒体請求と実績の差 | 見え方1段目の差額が0でない | 次の動き媒体の請求明細と配信レポートを日別に比べる |
| 手数料または金額の差 | 見え方請求側の差額が0でない | 次の動き契約の手数料率と、請求データの媒体費の列を確かめる |
| クライアント請求漏れ | 見え方実績があり請求が0 | 次の動き請求データに案件を追加し、請求前に差し戻す |
媒体への照会は、「どの案件の、どの配信月の、どの金額が、実績といくら違うか」を行ごとに伝えます。広告媒体横断の配信実績を会話で取り出す方法は、ClaudeとFunnelを連携する方法にあります。実績の取り込み元が複数の媒体にまたがるなら、出稿実績シートの作成にも使えます。
請求書の金額を契約条件から再計算して差異を出す考え方は、別の業種でも共通です。船会社の請求を日数の数え方から再計算する例が、デマレージ請求を突合する手順にあります。運賃表と請求明細の突合は、運賃請求書を運賃表と突合する手順で扱っています。
使えない場面と注意点
- 外部のファイルをそのまま開かない: 媒体から届いたExcelの明細には、隠された指示が入っている可能性があります。Claude for Excelは、外部由来のファイルから情報の持ち出しやデータの改変に誘導される恐れがあります。値だけを自分の信頼できるブックに貼り付けて使います。危険な操作を提案されたときは確認を求められるので、確認画面を読み飛ばしません
- クライアントに出す書類は人が見る: 最終的なクライアント向けの成果物を、人の確認なしで出す使い方は推奨されていません。照合で出た請求データの修正案も、提出前に人が確認します
- 監査に使う計算は検証が前提: 監査で根拠になる計算も、検証なしの利用は推奨されない用途に挙げられています。サンプルの数行は電卓で再計算して合わせます
- VBAとマクロ、データテーブルは扱えない: 請求データの取り込みをマクロで自動化している場合は、その部分を人が行います
- 機密性の高いデータの扱い: Claude for Excelは、組織が設定したデータ保持期間の設定を引き継ぎません。クライアントの出稿額は取引上の機密なので、社内の取り扱い規程に沿って、渡す範囲を決めます
- 動作環境: Excelは、ウェブ版、Microsoft 365のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(16.46以降)で動きます。Excel 2016・2019の買い切り版、iPad、Androidでは動きません
広い範囲を編集させる前には、元のブックのコピーを取ります。既存のデータを上書きする前には、警告が出ます。長い会話は自動で新しい会話に圧縮されるため、照合の途中で前提がずれたと感じたら、判定列の定義をもう一度伝えます。
まとめ
媒体費の立替請求は、出稿実績を軸にして、媒体請求とクライアント請求を両側から照合すると、どちら側の問題かが分かります。式と差額の計算はClaude for Excelに任せ、手数料の計算方式、月またぎの扱い、差額の原因の判断は人が持ちます。判定列を「請求書待ち」「請求漏れ」「率の違い」のように型で分けておけば、翌月の締めでも同じブックと同じ依頼文を使い回せます。