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来期予算の部門別要求をClaude for Excelで集約し前年実績比を点検する

来期予算の部門別要求をClaude for Excelで集約し前年実績比を点検する

部門ごとに書式の違う来期予算の要求Excelを、共通様式に寄せて1枚に集約し、前年実績比の大きい科目だけに説明を求める手順。点検ルールの式と質問リストの作り方を、数値例つきで書きます。

来期予算の編成で手間がかかるのは、計算そのものより「各部門から届いた要求を、同じ物差しで並べる」ところです。営業部は千円単位、製造部は円単位、管理部は科目名が少し違う。合計を出しても、前年より大きく増えた科目がどこにあるのかがすぐには見えません。

この記事では、部門別の要求Excelを共通様式に寄せて1枚に集約し、前年実績比が大きい科目だけに説明を求める流れを、Claude for Excelで進める手順として書きます。主役は集約表の数式と点検ルールで、Claudeには取り込みの下ごしらえと、質問リストの下書きを任せます。

なお、期中の予算と実績の差を月ごとに見る作業は月次予実対比レポートの差異分析に手順があります。ここで扱うのは、期が始まる前の「要求」の段階です。

動かせる環境と、予算ファイルを預ける前の確認

Claude for Excelは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで使えます。動作するExcelは、Excel on the web、Microsoft 365契約のWindows版(ビルド16.0.13127.20296以降)、Mac版(バージョン16.46以降、ビルド21011600以降)です。

Excel 2016・2019の永続ライセンスやボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。経理部門のパソコンに買い切り版が残っているときは、先にここを見ておきます。

予算の要求額は、社外に出したくない数字の代表です。データの扱いは、使う前に次の4点を押さえておきます。

  • 入力と出力は、受領または生成から30日以内にバックエンドで削除される(例外あり)
  • チャット履歴はブラウザ内(IndexedDB)に保存され、Anthropicのサーバーには保存されない
  • 組織が設定したデータ保持期間の設定は引き継がれない
  • アドインの利用はEnterpriseの監査ログに含まれない(Compliance APIを有効にした組織では、セッションが対象に入る)

保持期間まで自社の規程で縛っている会社は、情報システム部門と先に話をしておくと安全です。端末側の履歴は、アドインの設定の「Chat history」から「Delete all」で消せます。

部門に配る様式を先に1つに固定する

集約作業の7割は、様式で決まります。部門が自由な書式で返してくると、取り込みのたびにClaudeへ「この列は何か」を説明することになります。逆に、配る時点で列を固定してしまえば、集約表の数式は一度書くだけで済みます。

配る様式の列は、次の5つに絞ります。

列内容記入する人
A内容科目コード記入する人経理が事前に入力
B内容科目名記入する人経理が事前に入力
C内容前年実績(千円)記入する人経理が事前に入力
D内容来期要求(千円)記入する人部門
E内容増減の理由記入する人部門

C列の前年実績は、部門に入力させません。経理が会計システムから出した数字を先に入れて配ります。部門が前年の数字を自分で書くと、集約した時点で前年の基準が部門ごとにずれます。

科目コードを持たせるのも同じ理由です。科目名の「旅費交通費」と「旅費・交通費」は、人間には同じでも、SUMIFSでは別物として扱われます。コードで引けば、表記の揺れに影響されません。

単位は千円に固定し、様式の見出しにも書いておきます。円で記入された行が混ざる事故は、取り込みよりも前の段階で防ぐほうが確実です。

永続的な指示に点検の約束事を置く

アドインのサイドバーの設定に「Instructions」欄があります。ここに書いた内容は、Excelでのすべての会話に適用されます。PowerPointやWordの指示とは別に保たれます。

予算編成のブックでは、表記と、Claudeにやらせない作業を先に書いておきます。例えば次のような形です。

このブックは来期予算の部門別要求を集約するためのものです。
- 金額の単位は千円。桁区切りを付ける。
- 要求_で始まるシートの値は書き換えない。加工は集約シートで行う。
- 科目コードで突合する。科目名の一致では突合しない。
- 点検で要説明になった行について、増減の理由を推測で書かない。
  部門の記入(E列)が空欄なら「理由の記入なし」と書く。
- 既存のセルを上書きするときは、先にどのセルをどう変えるか示す。

最後から2つ目の行が、この作業の肝です。増減の理由は、部門しか知らない事実です。Claudeが「市況の影響でしょう」と補った文章が質問リストに混ざると、部門に聞く意味がなくなります。

取り込みと集約のブックを組む

ブックのシート構成は、要求シートを部門数だけ、集約シートを1枚にします。

手順

集約ブックができるまでの流れ

  1. 1

    返ってきた要求を値だけ貼る

    部門別の要求シート(要求_営業、要求_製造、要求_管理)に、返送された様式のA〜E列を値で貼ります。数式や外部リンクは持ち込みません。

  2. 2

    Claudeに様式の崩れを探させる

    列のずれ、円単位の混入、コードの欠落や重複を、集約の前に洗い出します。

  3. 3

    集約シートで科目コードごとに合算する

    部門ごとの要求額を横に並べ、全社の前年実績と来期要求を出します。

  4. 4

    前年実績比の点検ルールを当てる

    率と額の2条件で、説明を求める行に印を付けます。

  5. 5

    印の付いた行から質問リストを作る

    部門ごとに、聞く項目を1枚にまとめます。

手順2の依頼は、範囲と判定の基準を具体的に書きます。

「要求_営業、要求_製造、要求_管理のA列からE列を確認してください。①A列のコードが空欄または重複している行、②D列の数値が前年実績(C列)の100倍以上または100分の1以下で、円単位が混ざっている疑いのある行、③科目名が集約シートの同じコードの科目名と違う行を、シート名と行番号つきで一覧にしてください。まだ何も書き換えないでください」

「何も書き換えない」と添えるのは、この段階が点検だからです。Claude for Excelは、既存データを上書きする前に警告を出します。それでも依頼文のほうで範囲を絞っておくほうが、意図しない書き換えを減らせます。

集約シートの数式

集約シートの列は、A科目コード、B科目名、C〜E各部門の来期要求、F来期要求の全社計、G前年実績の全社計、H差額、I前年比、J点検とします。2行目の式は次のとおりです。

C2 営業: =SUMIFS(要求_営業!$D:$D, 要求_営業!$A:$A, $A2)
D2 製造: =SUMIFS(要求_製造!$D:$D, 要求_製造!$A:$A, $A2)
E2 管理: =SUMIFS(要求_管理!$D:$D, 要求_管理!$A:$A, $A2)
F2 要求計: =SUM(C2:E2)
G2 前年実績: =SUMIFS(要求_営業!$C:$C, 要求_営業!$A:$A, $A2)
          +SUMIFS(要求_製造!$C:$C, 要求_製造!$A:$A, $A2)
          +SUMIFS(要求_管理!$C:$C, 要求_管理!$A:$A, $A2)
H2 差額: =F2-G2
I2 前年比: =IF(G2=0, "", H2/G2)

G列は、様式の作り方で式が変わります。前年実績を部門別の数字で配った場合は、上の式のとおり3部門を足します。前年実績に全社値を入れて配った場合は、3部門を足すと同じ値が3回数えられるので、会計システムの全社値を貼るか、1つの要求シートだけを参照します。

集約が終わったら、検算を2つ置きます。

  • 各要求シートのD列の合計と、集約シートの部門列の合計が一致するか。差が出るときは、集約表にない科目コードが要求シートにあります
  • 前年実績の全社計が、会計システムの前年実績と一致するか。これは数式でなく、人が目で突き合わせます

要求シートに小計や合計の行が混ざっていると、SUMIFSは科目コードの空欄を無視しますが、手計算の合計は二重になります。様式の段階で小計行を入れさせないのが確実です。

前年実績比の点検ルールは「率と額」の2条件にする

前年比だけで点検の対象を決めると、金額の小さい科目が大量に引っかかります。通信費が1,200千円から1,800千円になれば前年比は+50%ですが、600千円の増加です。逆に、額だけで決めると、人件費のような大きな科目の数%の増加が毎回出てきて、本当に聞くべき科目が埋もれます。

そこで、率と額の両方を満たす行だけを「要説明」にします。ここでは次の基準を例に使います。会社の規模で数値は変わるので、基準そのものは経理の側で決めてください。

  • 前年比が+20%以上
  • 差額が+3,000千円以上
  • 前年実績が0の新規科目は、率が計算できないので、来期要求が3,000千円以上のとき拾う

J列の式は、新規科目の扱いまで含めて次のように書きます。

J2: =IF(G2=0,
       IF(F2>=3000, "新規・要説明", ""),
       IF(AND(H2/G2>=0.2, H2>=3000), "要説明", ""))

I列は前年実績が0のとき空文字を返す式ですが、このI列を点検式で参照するのは避けます。Excelでは文字列が数値より大きいと判定されるため、I2>=0.2が空文字や「新規」のような文字列でも真になり、少額の新規科目まで一律に要説明へ入ってしまいます。J列でG2=0の分岐を先に置いているのは、この回避のためです。

ルールは書いた時点で固定しておき、あとから「この行は出したくない」と個別に外さないようにします。外し始めると、部門から「あの科目は外れたのに、うちはなぜ」と言われたときに説明できません。

数値例 — 3部門・9行を集約して要説明を拾う

ここからは、架空の数値例です。製造業の3部門が、それぞれ3科目を要求したとします。単位は千円です。

部門科目前年実績来期要求差額前年比
営業科目人件費前年実績48,000来期要求50,400差額+2,400前年比+5.0%
営業科目広告宣伝費前年実績12,000来期要求18,000差額+6,000前年比+50.0%
営業科目旅費交通費前年実績6,000来期要求6,300差額+300前年比+5.0%
製造科目外注費前年実績30,000来期要求33,000差額+3,000前年比+10.0%
製造科目消耗品費前年実績4,000来期要求4,100差額+100前年比+2.5%
製造科目修繕費前年実績8,000来期要求14,000差額+6,000前年比+75.0%
管理科目システム利用料前年実績5,000来期要求9,500差額+4,500前年比+90.0%
管理科目通信費前年実績1,200来期要求1,800差額+600前年比+50.0%
管理科目人件費前年実績20,000来期要求20,000差額0前年比0.0%

部門ごとの合計は、営業が66,000から74,700(+8,700、+13.2%)、製造が42,000から51,100(+9,100、+21.7%)、管理が26,200から31,300(+5,100、+19.5%)です。全社では134,200から157,100へ、22,900の増加、前年比+17.1%になります。

全社の+17.1%だけを見ても、どこを聞けばよいかは分かりません。点検ルールを当てると、次のようになります。

数値例

点検ルールで分かれた行

  • 要説明の3行

    営業の広告宣伝費(+50.0%、+6,000)、製造の修繕費(+75.0%、+6,000)、管理のシステム利用料(+90.0%、+4,500)です。率と額の両方が基準を超えています。

  • 率だけで外れた行

    通信費は+50.0%と率は高いものの、増加は600で額の基準に届きません。聞かずに済む科目です。

  • 額だけで外れた行

    外注費は増加が3,000と額の基準ぴったりですが、前年比は+10.0%で率の基準に届きません。基準の境目にあるので、一覧の注記に残す候補です。

要説明の3行を合わせた増加は16,500で、全社の増加22,900の約72%(16,500÷22,900)に当たります。9行のうち3行に質問を絞れば、増加額の7割強を説明してもらえる計算です。基準を満たさなかった行の増加は、合計で6,400になります。

部門への質問リストを作らせる

印の付いた行ができたら、Claudeに質問リストの下書きを頼みます。ここでも、理由を作らせないことが前提です。

「集約シートのJ列が『要説明』または『新規・要説明』の行を、部門ごとに分けて質問リストにしてください。各行について、科目名、前年実績、来期要求、差額、前年比を示し、部門のE列に記入があればそれを引用してください。E列が空欄なら『理由の記入なし』と書き、こちらで理由を補わないでください。質問は『何が変わったのか』『一時的か恒常的か』『前年に含まれていなかった要因は何か』の3つの型から選んでください」

質問の型を3つに絞っているのは、部門ごとに質問の観点がばらつくのを防ぐためです。実際に部門へ送る前に、人の目で一度読みます。Claude for Excelの回答にはセル単位の出典が付き、クリックでそのセルへ移れます。質問に添えた数字が元のセルと合っているかは、この出典で辿れます。

質問リストは、たとえば次のような形になります。以下は数値例の広告宣伝費に対する、例示の形です。

【営業部】広告宣伝費
前年実績 12,000千円 → 来期要求 18,000千円(+6,000千円、+50.0%)
部門の記入(E列): 理由の記入なし
質問:
 1. 増える6,000千円の内訳は何か。
 2. 一時的な施策か、来期以降も続く費用か。
 3. 前年に含まれていなかった契約や施策はあるか。

質問を受けた部門が答えを書き込んだら、それを集約シートの別の列に入れておくと、次の査定会議の資料としてそのまま使えます。

つまずきやすい点

落とし穴

前年「実績」が通期見込みになっている

予算の要求は、期が終わる前に出すのが普通です。そのため、前年の欄に入っているのが確定した実績でなく、下半期の見込みを足した通期見込みであることがあります。見込みを基準にした前年比は、期末の確定で動きます。様式の見出しに「確定」か「見込み」かを書いて、基準をそろえます。

落とし穴

部門をまたぐ費用の配賦が変わっている

本社費用の配賦方法が変わると、部門ごとの前年比が大きく動きます。実際の費用は変わっていなくても、営業部の要求だけが増えて見えます。全社計では相殺されるので、部門別の前年比がおかしいと感じたら、全社計の同じ科目の前年比を先に見ます。

落とし穴

返送ファイルに隠れた行や外部リンクがある

部門から返ってきたファイルを、そのまま集約ブックにコピーしないようにします。非表示の行、他のブックへのリンク、コメントに書かれた文章は、集約表の合計に影響したり、アドインに読み込まれたりします。Claude for Excelの説明には、外部由来のファイルには隠れた指示が含まれ得るという注意があります。値だけを貼る運用にしておけば、持ち込まれるのは数字と文字だけで済みます。

この作業に向かない場面と、人が見る箇所

Claude for Excelの説明では、次の用途に勧めないと書かれています。

  • 人の確認がないまま、最終的な成果物として出す用途
  • 検算なしで監査に関わる計算を任せる用途
  • 機微な情報や規制の対象となる情報を、適切な管理なしに扱う用途

また、データテーブル、マクロとVBAの操作には対応していません。予算の様式にマクロを仕込んでいる会社は、その部分をClaudeに触らせない前提で作ります。

予算編成に当てはめると、人が見る箇所は3つです。第一に、点検ルールの率と額の基準。第二に、部門に返す質問の最終版。第三に、集約表の合計と会計システムの前年実績との突合です。この3つは、Claudeが下書きした後でも、人が決める作業として残します。

作業の進め方は、まず信頼できるコピーのブックで試すのが安全です。公式の注意書きにも、広い範囲を編集させる前に信頼できるコピーで始めるとあります。

類似の作業との使い分け

予算に絡む作業は似たものが多いので、隣の記事との境目を示します。

やりたいこと向く記事
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期中の予算と実績の差を、月ごとに追う向く記事月次予実対比レポートの差異分析
複数拠点の予算を月次で並べて比べる向く記事Cowork決算データ統合による拠点別の予算比較
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設備投資の案件ごとにNPVや回収期間を出す向く記事設備投資のNPV・IRR・回収期間

投資案件の予算は、経常的な科目とは点検の物差しが違います。設備投資の要求は、前年比でなく案件ごとの採算で見るため、別の表に分けておくほうが集約表の点検ルールが素直に働きます。

まとめ

部門別の予算要求の集約は、様式を固定して科目コードで引く、前年比と差額の2条件で聞く行を絞る、理由は部門に書かせる、の3点で成り立ちます。Claudeに任せるのは、様式の崩れの洗い出しと質問リストの下書きまでです。

率だけで拾うと小さな科目が増え、額だけで拾うと大きな科目が毎回出る。数値例では、9行のうち3行に絞ると全社の増加の約7割が説明の対象になりました。この比率は科目の構成で変わるので、自社の前年データで基準を試し、翌年も同じ基準で見られるように固定しておくと、年ごとの比較ができます。

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