Claudeで技術士試験の記述式論文を対策する — 設問の種類別の添削観点と答案の守秘
技術士第二次試験の筆記は、必須科目も選択科目も記述式が中心です。設問の種類ごとに答案の点検観点を分け、課題・解決策・リスクの書き分けをClaudeに添削させる手順と、業務の秘密を貼らない線引きをまとめます。
技術士の第二次試験では、筆記は、必須科目も選択科目も記述式が中心です。Claudeは、その答案を設問の種類ごとの観点で点検する相手として使えます。点数を付けさせるのではなく、「どの段落が何を述べているか」を分類させ、課題・解決策・リスクの対応を表にさせるのが、この記事の練習法です。
あわせて、業務経歴や実務事例をClaudeに貼るときの線引きも扱います。技術士法には秘密保持の条文があり、論文の題材はそこに触れやすいからです。
筆記試験の形を先に押さえる
試験は技術士法で第一次と第二次に分かれ、第二次試験に合格した者が技術士となる資格を得ます。第二次試験の目的は、専門的学識と高等の専門的応用能力があるかを判定することです。
実施大綱によると、筆記試験の構成は次のとおりです。
21部門のうち20部門の筆記
必須科目
2時間
40点満点
選択科目(Ⅱ・Ⅲ)
3時間30分
60点満点(Ⅱ・Ⅲ各30点)
合否の基準
60%以上
必須・選択とも
筆記に合格した人だけが口頭試験に進みます。施行規則も、第二次試験は筆記と口頭の方法で行い、口頭は筆記の合格者について行うと定めています。
技術部門は21あり、選択科目は69あります。総合技術監理という部門だけは、必須科目が択一式と記述式、選択科目が他部門と同じ形式です。以降は、それ以外の20部門を前提に書きます。
合否決定基準に載っているのは得点率の線であって、答案の書き方の採点基準ではありません。Claudeの評価が本番の採点と合う保証はないため、評価の言葉は目安にもしません。
第一次試験との違いも、練習方法を分ける理由になります。第一次試験は筆記の方法で行われ、基礎的学識と、技術士の義務を定めた章の遵守に関する適性、専門的学識を判定します。知識を問う第一次の勉強法をそのまま持ち込むと、論理の組み立てを問う第二次の記述には足りません。
設問の種類で点検の観点を分ける
実施大綱は、問題の種類を3つに分けています。同じ「論文」でも、問われている能力が違えば答案の点検項目も変わります。次の表の右列は、大綱の語句を答案の要素に読み替えた練習用の整理です。
| 設問の種類 | 大綱での問われ方 | 答案で点検する要素 |
|---|---|---|
| 必須科目 | 大綱での問われ方技術部門全般の専門知識、応用能力、問題解決能力、課題遂行能力 | 答案で点検する要素自分の専門に寄りすぎず、部門全体の視野で書けているか |
| 選択科目Ⅱ | 大綱での問われ方選択科目の専門知識と応用能力 | 答案で点検する要素用語・原理・手法が正確か。適用できる条件を書いているか |
| 選択科目Ⅲ | 大綱での問われ方選択科目の問題解決能力と課題遂行能力 | 答案で点検する要素課題の抽出、解決策、解決策を進めたときに残るリスク |
依頼文には、どの種類の設問かを必ず書きます。種類を伝えないと、Claudeは文章全般の添削に流れ、「専門知識の正確さ」と「課題の組み立て」が混ざった指摘を返します。
答案を貼る前に、守秘の線を引く
実務事例を扱う設問の練習では、次のように加工してから貼ります。
- 顧客名、案件名、拠点名、設備の型番を一般名詞に置き換える
- 金額、工期、数量は、桁と比率が崩れない範囲で丸める
- 図面や仕様書の転記はせず、判断の流れだけを書く
- 加工後の文章を、勤務先に出しても問題ないか自分で読み返す
貼ってよい範囲を決めるのは自分です。Claudeに「これは秘密に当たりますか」と聞いても、勤務先の契約を知らないので判断できません。利用しているプランの入力データの扱いも、設定画面で自分で確かめておきます。
法は技術士に公共の安全や環境の保全などの公益を害さないよう努める責務も課しており、リスクの記述にこの視点が入っているかは、後で述べる点検項目の一つになります。
課題・解決策・リスクの書き分けを添削させる
選択科目Ⅲのように、課題と解決策を組み立てる設問を例にします。Claudeに「添削して」と頼むと、文章を整えた書き直し案が返り、自分の答案の構造の弱点が見えなくなります。そこで、書き直しを禁じ、分類と対応表だけを求めます。
最初に、Projectの指示欄(または会話の冒頭)に次の共通ルールを置きます。
あなたは技術士第二次試験の答案を点検する相手です。
- 点数や合否の予想は出さない
- 指摘は、答案の該当箇所を引用して書く
- 技術的な数値・基準・法令名は正誤を断定せず、「要確認」と印を付ける
- 私が書いていない事実や事例を足さない
- 書き直し案は、私が頼むまで出さない次に、答案を貼って分類を頼みます。
次の答案は、選択科目Ⅲ(問題解決能力・課題遂行能力)の設問に対するものです。
段落ごとに、次の4つのどれかに分類してください。
1. 背景・前提
2. 課題(何が問題か)
3. 解決策(何をするか)
4. リスクと対応(解決策を進めたときに残る問題とその手当て)
分類できない段落と、複数に混ざる段落は、引用して指摘してください。
そのうえで、課題と解決策が1対1で対応しているかを表にしてください。1回の練習の流れ
- 1
自分で解く
過去問題を、本番と同じ時間配分で自分の力だけで解きます。選択科目はⅡとⅢを合わせて3時間30分なので、設問ごとの時間配分は自分で決めておきます。
- 2
答案を打ち込んで分類させる
答案を貼り、上の依頼文で段落の分類と対応表を作らせます。
- 3
対応表のずれを読む
解決策のない課題、課題のない解決策、リスクの欄が空の解決策を探します。ここが書き直しの出発点です。
- 4
自分の手で書き直す
指摘された箇所だけを、自分の言葉で直します。Claudeの文章を写すと、本番で再現できません。
- 5
「要確認」の印を一次資料で潰す
数値や基準の印は、規格・指針・教科書など手元の資料で確かめます。確かめられないものは答案に使いません。
過去問題は、日本技術士会のサイトの「過去問題(第二次試験)」に掲載されています。部門・選択科目を自分の受験区分に合わせて選びます。
リスクの欄は、Claudeに別の角度から出させる
リスクは、自分の答案の中では書き落としやすい部分です。分類が済んだら、次の依頼で自分の記述と突き合わせます。
上の答案の解決策それぞれについて、
「この解決策を実施したときに新たに生じうる問題」を、
技術面・運用面・公共の安全や環境への影響の3つの観点で挙げてください。
答案にすでに書かれているものには「記載あり」と付けてください。返ってきた項目は、答案に足す材料ではなく、抜けの探索結果です。設問の条件や制約に関係のない項目まで盛り込むと、論点が散ります。採用するかどうかは、設問文と照らして自分で決めます。
設問文の指示を先に分解させる
答案の添削より前に、設問文そのものの読み違いを潰す練習が効きます。記述式では、設問が複数の指示を重ねて出すことがあり、1つ落とすだけで答案全体の構造が崩れます。
次の設問文を、答えるべき指示ごとに番号を振って分解してください。
- 設問が求めている行為(抽出する、提案する、評価する など)
- 設問が置いている条件・制約・立場
- 字数や項目数の指定
解釈が分かれる箇所は、解釈を2通り挙げるだけにして、どちらかを選ばないでください。分解の結果は、自分が答案の冒頭で組み立てた骨子と見比べます。骨子に入っていない指示があれば、それが落としていた要求です。
試験で不正の手段を用いた者には、技術士法第9条により、合格の取り消しや受験の禁止の処分を受けることがあります。この練習は、あくまで自分の答案を書く力を鍛えるために使います。
口頭試験の材料として答案を読み直す
実施大綱は、口頭試験を筆記の記述式答案と業務経歴を踏まえて行い、筆記の繰り返しにならないよう留意するとしています。試問時間は20分で、10分程度の延長もありえます。試問事項は「技術士としての実務能力」と「技術士としての取組姿勢」の2つです。
合否決定基準では、この2つが次の項目に分かれます。
- 実務能力: マネジメント、評価、コミュニケーション、リーダーシップ
- 取組姿勢: 技術者倫理、継続研さん
いずれも60%以上の得点が求められます。筆記が終わった後に、自分の答案を材料にした深掘りを練習できます。
この答案を書いた人に、口頭試験の試験官が質問するとしたら何を聞きますか。
上記の「実務能力」と「取組姿勢」の項目に沿って、各項目から2問ずつ、
答案の記述を引用したうえで挙げてください。回答例は不要です。質問に自分の声で答える練習は、Claudeに採点させず、答えた内容を文字にして見直す形で進めます。継続研さんは、技術士に資質向上の努力義務が課されていることと対応する項目です。
任せない範囲と、つまずきやすい点
落とし穴
Claudeの指摘をそのまま採点だと受け取る
合否の基準は得点率であり、Claudeの「よく書けています」は本番の得点と対応しません。使うのは構造の抜けの発見までにとどめ、評価の言葉は無視します。
- 設問の種類を伝えない。必須科目とⅢを同じ観点で点検すると、指摘が的外れになる
- 部門・選択科目の専門的な正誤をClaudeに預ける。誤った数値を自信ありげに書く場合があるため、「要確認」の印を必ず付けさせ、一次資料で確かめる
- 書き直し案を答案にそのまま使う。再現できない文章は、本番で書けない
- 答案用紙の字数や行数の指定を依頼文に入れない。分類の結果が、実際の分量と合わなくなる
- 業務の固有情報を加工せずに貼る。前述の線引きを練習の段階から守る
- 試験制度の記憶を依頼文に入れる。受験資格・日程・配点は実施案内と実施大綱で確かめてから使う
技術士試験は、受験資格に実務経験の年数が必要な試験です。ほかの資格の勉強法は、資格試験の学習モードの使い方や、簿記・FPなどの資格勉強にまとめています。論文系の試験で同じ分類の練習をする例は、公認会計士試験の論文式と、国家公務員試験の論文にもあります。
まとめ
記述式の答案練習では、Claudeに点数と書き直しを求めず、設問の種類に合わせた分類と対応表を作らせます。選択科目Ⅲなら、課題と解決策が1対1か、リスクが解決策ごとに書かれているかを見ます。
業務の秘密は貼らず、加工した文章だけを使います。「要確認」の印を付けた数値は、一次資料で自分が確かめます。口頭試験は筆記の答案を踏まえるため、練習で分類した答案がそのまま次の材料になります。