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公共調達でClaude等生成AIが適用対象外になる条件

公共調達でClaude等生成AIが適用対象外になる条件

デジタル庁の生成AI調達・利活用ガイドラインが定める適用対象外の範囲を、特定秘密・経済安保情報・機微情報の3区分で整理し、自治体・省庁担当者が調達可否を判断する初期スクリーニングに使える形でまとめます。

デジタル庁ガイドラインが定める適用対象外とは

公共調達でClaudeを含む生成AIサービスを検討する際、真っ先に確認すべきは「そもそもこのガイドラインの対象に自分たちのシステムが入るか」です。デジタル庁は2025年5月27日、デジタル社会推進会議の幹事会決定として「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を策定しました(クラウドサービス選定の観点は官公庁がClaudeを使うにはISMAP登録がどう関わるかを参照)。このガイドラインは政府情報システムのうち生成AIを構成要素とするシステムに適用されますが、一定の情報を扱うシステムを全部適用対象外と明記しています。

適用対象外となるのは次の3区分です。

除外区分根拠法令対象になる情報の例
特定秘密根拠法令特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)第3条第1項対象になる情報の例防衛・外交・スパイ活動防止・テロ防止の4分野で指定される特に秘匿を要する情報
経済安保上の重要情報根拠法令令和6年法律第27号(経済安全保障の情報保護制度を定める法律)第3条第1項に規定する指定情報対象になる情報の例重要インフラ・サプライチェーンなど、経済安全保障の観点で重要な情報
秘密文書相当の行政文書根拠法令行政文書の管理に関するガイドライン(内閣総理大臣の決定、平成23年4月1日)対象になる情報の例同ガイドラインで秘密文書としての取扱いを要すると定められる文書

この3区分に加えて、ガイドラインは「安全保障、公共の安全・秩序の維持といった機微な情報及び当該情報になり得る情報を扱う政府情報システム」についても、ガイドラインの全部を適用対象外としています。特定秘密のように指定制度がある情報だけでなく、指定前でも機微性が認められる情報を扱うシステムまで除外範囲に含めている点が実務上の注意点です。

なぜ「一部適用」ではなく「全部適用対象外」なのか

ガイドライン原文は「本ガイドラインの全部を適用対象外とする」という表現を、特定秘密等の区分と機微情報の区分の両方で繰り返し使っています。一部の条項だけを除外するのではなく、該当するシステムにはガイドラインそのものが及ばない、という設計です。

これは裏を返すと、防衛・安全保障領域の生成AI活用は別の枠組みで判断されることを意味します。省庁ごとの独自ルールや、防衛省・内閣官房が所管する情報セキュリティ基準がその受け皿です。自治体・省庁の調達担当者が「うちのシステムはガイドラインの対象外だから、Claudeのようなサービスを自由に導入してよい」と読むのは誤りです。対象外という結論が意味するのは、先進的AI利活用アドバイザリーボードへの報告やAI統括責任者(CAIO)の関与といった手続きが免除されることだけです。別途、より厳格な省庁内規程が適用される可能性は排除されません。

調達可否を判断する初期スクリーニングの手順

  1. 対象システムが「政府情報システム」に該当するか確認する(独立行政法人・指定法人は準拠が期待される対象、地方公共団体は参考にすることが期待される対象という位置づけの違いに注意)
  2. システムが扱う情報の中に、特定秘密・経済安保上の重要情報・秘密文書相当の行政文書が含まれるか棚卸しする
  3. 含まれない場合でも、安全保障・公共の安全秩序維持に関わる機微情報、またはそれに「なり得る」情報を扱っていないか確認する
  4. 上記いずれかに該当する場合、本ガイドラインは適用対象外。省庁独自のセキュリティ基準・調達規程の有無を別途確認する
  5. 該当しない場合、本ガイドラインが定める調達・利活用のルール(AI統括責任者の設置、高リスク利活用の考え方、ライフサイクル全体のリスク管理等)に沿って手続きを進める

この手順は、Claudeそのものの機能評価に入る前段階の「そもそも本ガイドラインの土俵に乗るか」というスクリーニングです。対象システムが除外区分に該当しないと確認できて初めて、ガイドライン本編が定める調達・開発運用・利活用の各段階のリスク管理要件の検討に進みます。

対象となる生成AIの範囲にも注意する

除外規定とは別に、ガイドラインは対象とする生成AIの技術的な範囲も限定しています。対象は「大規模言語モデル(LLM)を構成要素とするテキスト生成AI」です。テキストと画像の両方を生成するAIについては、テキスト生成の部分のみが対象になります。画像・動画生成AIや、より高度なタスクを実行するAIエージェント等は、本ガイドラインの対象外です。今後の利活用状況を踏まえ、適用範囲の拡充が検討される位置づけになっています。

Claude単体のテキスト生成機能を行政文書の作成支援などに使う場合は対象内です。一方でClaude Codeのようなエージェント型の活用を検討する場合は、この技術的な対象範囲の解釈を別途確認する必要があります。ガイドラインが将来アップデートされる際にエージェント型AIが対象へ加わるかどうかは、ガイドライン本文からは判断できません。

対象になった場合に発生する体制要件

除外に該当せずガイドラインの対象となった場合、各府省庁にはAI統括責任者(CAIO)の設置が求められます。CAIOは「デジタル統括責任者」または「副デジタル統括責任者」級の職員が想定されており、組織全体の生成AI利活用方針の策定・推進とリスク管理を統括します。加えて、政府全体では先進的AI利活用アドバイザリーボードの開催やAI相談窓口の運用、デジタル庁による統括監理下でのチェックといった体制が整備されています。調達担当者が単独で完結できる話ではなく、CAIOを通じた組織的な意思決定プロセスに乗せる前提で調達スケジュールを組む必要があります。

ガイドラインは、生成AIの利活用を「行政目的の効率的・効果的な実現」から「AIの安全性の向上及び国際的な相互運用性の確保」まで、9項目の利益として整理しています。除外規定の判定はこの利益を追求する前段の関門であり、判定結果を記録しておくことが、後段のCAIO報告や監理チェックを円滑に進める前提になります。

除外に該当しない場合の次のハードル — 高リスク判定

除外区分に該当せずガイドラインの対象となった場合でも、すぐに調達を進められるわけではありません。ガイドラインはさらに「高リスクな生成AI利活用」という区分を設け、CAIOが企画担当者と連携してリスクレベルを判断する仕組みを設けています。判断には「高リスク判定シート」という別紙が使われ、次の4つのリスク軸に沿ってリスクレベル案を示す構成です。

リスク軸説明
A. 利用者の範囲・種別説明国民等が府省庁外で使う形のサービスは、政府職員等が府省庁内だけで使う場合よりリスクが高いと評価される。複数府省庁が横断的に利用する場合も影響範囲が広がるため同様に高リスク側に評価される
B. 生成AI利活用業務の性格説明国民の基本的権利・安全、機微な政策分野、人間の生命・身体・財産、資格が求められる業務など、過失が重大な影響を及ぼしうる業務での利活用はリスクが高いと評価される
C. 要機密情報や個人情報の学習等の有無説明機密性2情報や個人情報が生成AIシステムに保存・学習される場合はリスクが高く、取り扱っても保存・学習されない場合、取り扱わない場合の順にリスクが下がる
D. 出力結果の政府職員による判断を経た利活用説明生成AIの出力結果を政府職員が判断せずそのまま業務に使う設計はリスクが高く、職員が適切さを判断した上で利活用する設計はリスクが下がる

Claudeを国民向けの窓口業務(チャットボット等)で使う計画は軸Aで、庁内の文書作成支援だけに使う計画に比べてリスクが高く評価されます。単一の軸だけで判定が決まるわけではなく、高リスク判定シートは4軸の設問への回答を組み合わせて判定する構成です。

高リスクに該当する可能性が高いとCAIOが判断した場合は、先進的AI利活用アドバイザリーボードへの報告が必要です。該当しないと判断した場合でも、必要に応じてデジタル庁に相談できる仕組みが用意されています。除外規定のスクリーニングを通過したプロジェクトは、この高リスク判定を次のチェックポイントとして織り込んでおくと、調達スケジュールの見通しが立てやすくなります。

自治体への適用関係

本ガイドラインは政府情報システムを直接の対象としていますが、地方公共団体については「必要に応じ、参考とされることを期待する」という位置づけにとどまります。独立行政法人・指定法人には準拠した取組が期待される一方、自治体には法的な準拠義務も期待の強さも一段弱い書きぶりです。

自治体の調達担当者は、本ガイドラインを直接の適用規範として読むより、参考モデルとして使う方が実務的です。除外規定の考え方や体制整備の枠組みを自団体の情報セキュリティ規程と照らし合わせ、独自にどこまで取り込むかを判断する余地が残されています。

同じデジタル庁ガイドラインは、政府機関以外にも参照されています。リスク判定の4軸を民間企業のClaude社内規程作りに転用する読み方は、デジタル庁の生成AIガイドラインをClaude社内規程に転用するで扱っています。本記事の「行政機関自身の調達可否」とは読者層が異なるので、併読で全体像がつかめます。米国政府機関向けのFedRAMP High・IL5対応など、日本以外の公共セクターでの導入事情は官公庁のClaude導入ガイドにまとまっています。

よくある質問

除外区分に該当するかの判定は誰が行うか

ガイドライン本文は判定主体を明示的に一者に限定していません。実務上は、システムを所管する各府省庁がAI統括責任者(CAIO)の関与のもとで判定し、必要に応じてデジタル庁の統括監理下でのチェックを経る運用になると考えられます。判定結果の記録を残しておくことが、後日の説明責任につながります。

除外規定に該当した場合、Claudeの利用自体が禁止されるのか

いいえ。除外規定はあくまで「本ガイドラインの適用対象外」を意味するものであり、Claudeを含む生成AIの利用そのものを一律に禁止するものではありません。防衛・安全保障領域で生成AIを使うかどうかは、各省庁が所管する別の情報セキュリティ基準・規程の枠組みで個別に判断されます。

除外規定は今後見直される可能性があるか

ガイドライン自体が、対象とする生成AIの技術的範囲について「利活用状況、国内外のルールの整備状況等を踏まえ、必要に応じ、適用範囲等の拡充を検討する」と明記しています。適用対象外の3区分そのものは根拠法令に基づく制度的な線引きのため短期的には変わりにくい一方、対象システムの範囲や高リスク判定の運用は改定される余地があります。調達担当者は、稟議のたびにガイドラインの最新版を確認する運用にしておくのが安全です。

まとめ

Claudeを含む生成AIの公共調達では、機能評価やコスト比較の前に「特定秘密」「経済安保上の重要情報」「秘密文書相当の行政文書」「安全保障・公共の安全秩序維持に関わる機微情報」という4つの除外条件をまず確認する必要があります。いずれかに該当すればガイドラインは全部適用対象外となり、判断の枠組みは省庁独自の規程に移ります。該当しない場合も、対象となる生成AIの技術範囲(テキスト生成AIに限定)とCAIOを中心とした体制整備の要件が前提になるため、調達担当者は初期スクリーニングの結果を、その後の手続き設計に直結させる形で記録しておくことが重要です。

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