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Claudeで保険の苦情を分類し、再発防止の管理簿に集計する手順

Claudeで保険の苦情を分類し、再発防止の管理簿に集計する手順

苦情対応記録をClaudeで類型に分け、原因と再発防止策の列を持つ管理簿と集計表に整える手順です。保険会社向け監督指針の着眼点を列に写し、人が決める線も示します。

苦情対応の記録は、1件ずつ読めば経緯が分かります。ところが月末に「今月は何が多かったか」「何を直したか」を問われると、自由記述のメモを読み返して数え直すことになりがちです。Claudeに任せやすいのは、この読み返しと仕分けの部分です。

方法は3段に分かれます。まず記録から個人を特定する情報を外し、次に類型・原因・再発防止の列を持つ管理簿へ仕分けさせ、最後に集計表を作らせます。原因の判断と再発防止策の決定は、人の仕事として残します。

保険会社向けの総合的な監督指針は、苦情等の内容と対処結果を記録・保存し、分析して再発防止に使う態勢を着眼点に挙げています。本記事はこの着眼点を管理簿の列に写す形で組み立てました。

管理簿の列は監督指針の着眼点から決める

管理簿の列を思いつきで決めると、集計しても再発防止に結びつきません。保険会社向けの総合的な監督指針のII-4-3-2-2には、苦情等対処に関する内部管理態勢の主な着眼点が並んでいます。そこから記録に残すべき項目が読み取れます。

着眼点(監督指針の記述)管理簿の列
苦情等及びその対処結果等が類型化の上で報告される管理簿の列類型(大分類・小分類)
苦情等の内容と対処結果を適切かつ正確に記録・保存する管理簿の列申出内容の要約・対処結果
解決に向けた進捗管理で長期未済案件を防ぐ管理簿の列受付日・状態・経過日数
外部機関が介在して対処したものも記録する管理簿の列外部機関の関与の有無
委託先・保険代理店に関する苦情等を漏れなく把握する管理簿の列申出の経路(直接・代理店経由)
分析結果を再発防止策・未然防止策に活用する管理簿の列原因区分・再発防止策・担当

6行目の「原因区分」が、集計を再発防止につなげる要の列です。監督指針は、苦情等が多発している場合に、まず社内規則等の営業店への周知・徹底状況を確認し、実施態勢面の原因と問題点を検証する流れを置いています。原因区分には「規則の周知不足」「規則そのものの不備」「個別の説明ミス」のような、態勢面の切り口を用意すると、この流れに乗せやすくなります。

苦情と紛争を無理に切り分けない

分類で迷いやすいのが、苦情なのか紛争なのかという線引きです。監督指針は、苦情と紛争の区別は相対的で相互に連続性があるとし、申出を形式的に「苦情」「紛争」に切り分けて個別に対処するのではなく、両者の連続性を勘案して対処することを求めています。

管理簿では「苦情/紛争」の二択列を作らず、類型と、外部機関(指定ADR機関など)への持ち込みの有無を別々の列に持たせるほうが自然です。Claudeに「これは紛争か」と判定させる設計は避けます。

手順1: 記録から個人を特定する情報を外す

苦情対応記録には、氏名、証券番号、病歴、事故の状況といった情報が含まれます。Claudeへ渡す前に、これらを置き換えます。監督指針も、苦情等対処にあたって個人情報を法令・ガイドラインに沿って適切に取り扱う態勢を求めており、保険会社の外へ記録を出す判断は社内のルールが先です。

ここで確認しておきたいのが、使っているプランです。Claude.aiの個人向けプラン(Free・Pro・Max)では、モデル改善の設定を許可した場合などにチャットが学習に使われます。ただしIncognitoチャットは、設定を有効にしていても学習に使われません。法人向けのClaude for WorkやAPIは別の扱いで、確認先は別の資料です。どのプランで何ができるかを決めるのは情報管理の担当部署であり、本記事の手順はその許可が出た範囲で使う前提です。

置き換えは、次のような形にそろえると後の集計が楽になります。

元の情報置き換え後
契約者名置き換え後契約者A(記録内で同一人物は同じ記号)
証券番号・申込番号置き換え後削除し、社内の受付番号だけ残す
住所・電話番号・メール置き換え後削除
病名・事故の詳細置き換え後「健康状態に関する告知事項」「事故の状況」のように分類語へ
担当者名置き換え後担当部署名

受付番号は残します。集計後に「この件を詳しく見たい」となったとき、人が元の記録へ戻れなくなるからです。

落とし穴

置き換え漏れは Claude に探させても防げない

個人情報の見落としをClaudeに点検させる運用は、置き換えの代わりになりません。点検を通っても、渡した時点で記録は外に出ています。置き換えは渡す前に、社内の手元で終わらせます。

手順2: 類型・原因・再発防止の列を持つ管理簿に仕分ける

置き換えた記録をCSVにしてClaudeに渡します。Claudeは、アップロードしたCSVやTSVを使ったデータ分析、Pythonスクリプトの作成、Excelファイルの作成ができます。この機能は「Code execution and file creation」の設定が有効なときに使えます。Free・Pro・Maxでは設定の「機能(Capabilities)」から切り替え、Team・Enterpriseでは組織の設定が基準になります。ファイルの上限は、アップロードもダウンロードも1ファイル30MBです。

先に渡すのは分類のルールです。プロジェクトを使う場合は、プロジェクトの指示に分類表を置くと毎回貼らずに済みます。プロジェクトには、資料を知識として置き、指示文で応答の方針を決められます。

次に示すのは、分類ルールの指示文の一例です。類型の語は社内の苦情区分に合わせて差し替えます。

あなたは保険会社の苦情管理担当の補助です。
添付の CSV は、個人情報を置き換えた苦情対応記録です。
1件ずつ、次の列を追加した CSV を返してください。
 
追加する列:
- 大分類: 募集・説明 / 保険金・給付金の支払 / 契約手続・事務 /
  サービス・応対 / 商品・料金 / その他 から1つ
- 小分類: 自由記述(10字以内)
- 申出の経路: 本文に書かれている範囲で 直接 / 代理店経由 / 不明
- 外部機関の関与: 本文に書かれている範囲で あり / なし / 不明
- 原因区分の候補: 規則の周知不足 / 規則の不備 /
  個別の説明・応対 / 事務処理ミス / 判断できない から1つ
- 根拠: 原因区分の候補を選んだ記述を、記録から10〜30字で抜き出す
 
ルール:
- 記録に書かれていないことは補わず「不明」「判断できない」にする
- 原因区分は「候補」であり、確定はしない
- 受付番号の列は変更しない

ポイントは3つあります。1つ目は、「不明」と「判断できない」を正規の答えとして認めること。これがないと、記録に書かれていない原因を推測で埋めてしまいます。2つ目は、原因区分を「候補」とし、根拠を記録から抜き出させること。根拠が空欄、または記録に見当たらない行は、人が見直す対象になります。3つ目は、受付番号を変更させないことです。

返ってきたCSVは、次の観点で人が抜き取り確認します。

  • 「根拠」の抜粋が、元の記録に実在するか
  • 大分類が、記録の主題と合っているか(複数の論点を含む記録は、主たる論点で1つに決める)
  • 「保険金・給付金の支払」に分類された件が、漏れなく拾われているか

最後の観点には理由があります。監督指針は、保険金等の不払いに関する苦情等について、不払いを決定した支払担当部門だけで対処せず、最終的にはコンプライアンス担当部門など他の部門で適切に対処されたかを検証する態勢を求めています。支払に関する苦情は、集計表でも他の類型と分けて見える形にしておくと、この検証に回しやすくなります。

手順3: 集計表を作らせ、再発防止の議題にする

管理簿ができたら、同じ会話で集計表を作らせます。ClaudeはExcelファイルを作れるので、シートを分けて出力させる形が扱いやすくなります。

管理簿 CSV から、Excel ファイルを作ってください。シートは3つです。
 
1. 類型別: 大分類 × 小分類ごとの件数と、全体に占める割合
2. 原因別: 原因区分の候補ごとの件数。「判断できない」は別枠で
3. 未済: 状態が未完了の件を、受付日の古い順に並べ、経過日数を付ける
 
各シートの先頭に、集計の対象期間と対象件数を書いてください。
元の件数と、各シートの合計が合うかも確かめて、合わない場合は理由を教えてください。

最後の一文が効きます。件数の突き合わせを依頼に含めておくと、分類の抜けや二重計上があったとき、数が合わないという形で表に出ます。Claudeが出す集計も人の確認が前提ですが、元の件数と合計が一致するかは、人が数分で確かめられる検査です。

見方

集計表を再発防止の議題にする見方

  • 類型が偏っているか

    特定の大分類に件数が集まっているときは、原因別シートと突き合わせます。集まり方が「規則の周知不足」に偏っていれば、規則の周知・徹底状況の点検から入る流れになります。

  • 経路が偏っているか

    代理店経由の申出が多い類型は、委託先・代理店に起因する可能性があります。監督指針は、委託先が行う委託業務に関する苦情等が、委託先から保険会社へ漏れなく報告される態勢を求めています。

  • 未済が長引いていないか

    未済シートの上位は、進捗管理の対象です。長期未済案件を生まないことが着眼点に含まれるため、月次の議題では経過日数の長い件から見ます。

  • 判断できないが多くないか

    「判断できない」の割合が高いときは、記録の書き方に問題があります。原因が分かる項目を記録票に足す、という改善策になります。

再発防止策を書くのは人

集計表の次に「再発防止策案を出して」と頼むことはできます。ただ、出てくる案は一般論になりやすく、自社の規則や体制に紐づきません。使うなら、集計表と社内規則の該当箇所を一緒に渡し、「この原因区分に対して、規則のどの手続を見直す選択肢があるか」を選択肢として並べさせる使い方です。

監督指針は、苦情等対処の結果を業務運営に反映させる際、業務改善・再発防止などの措置を講じるかどうかの判断と、態勢の見直しについて、経営陣が指揮する態勢を求めています。判断は人が行い、Claudeの出力は検討の材料にとどめます。

Claudeに任せない判断

分類と集計は任せやすい一方、次の判断は管理簿の外で人が行います。

  • 外部機関(指定ADR機関など)から和解案や特別調停案が示された場合の、受諾の可否
  • 手続への応諾や資料提出を断る場合の判断。監督指針は、苦情・紛争の原因となった部署だけで安易に判断せず、組織として検討する態勢を求めています
  • 反社会的勢力による、苦情を装った圧力かどうかの見極め。通常の苦情と区別して関係部署に連絡する流れが定められています
  • 個別の紛争の法的な評価。監督指針は、顧客と保険会社の個別の紛争を、私法上の契約に係る問題として整理しています

管理簿の「その他」や「判断できない」に入れた件を、これらの判断の起点にしないよう、分類列とは別に「エスカレーション要否」の列を人が記入する運用にすると、役割が混ざりません。

保険代理店が使うときの注意

ここまでの着眼点は保険会社向けの監督指針に書かれたものです。保険代理店の義務は別立てで、保険業法では、一定規模以上の乗合の損害保険代理店(条文上は「特定大規模」の乗合代理店)に対して、保険募集の業務に係る苦情を受け付ける体制の整備と、苦情の処理に関する記録の作成・保存を内閣府令で定める措置として求めています(第二百九十四条の四)。

自社がこの類型に当たるかどうかは、法令の定める要件(複数の所属保険会社、手数料等の額)で決まります。当たらない代理店も、所属保険会社から苦情の報告様式や記録の保存期間を指定されていることがあります。管理簿の列は、所属保険会社の様式に合わせて足し引きします。

よくあるつまずき

落とし穴

分類が実行のたびにぶれる

同じ記録でも、実行のたびに小分類の表現が変わることがあります。小分類を自由記述にすると集計が割れるので、2回目以降は前回の小分類の一覧を渡し、「既存の小分類に当てはまる場合は、その語を使う」と指示します。

落とし穴

件数が多いと途中で抜ける

数百件を一度に渡すと、返ってくるCSVの行数が減ることがあります。件数を区切って渡し、返ってきた行数を人が数えます。手順3の件数突き合わせを、各区切りでも行います。

落とし穴

原因区分を確定扱いで集計する

「候補」のまま集計表に載せると、原因別シートが事実のように読まれます。抜き取り確認を終えた列だけを確定として、集計の対象に使います。

運用の流れ

手順

月次で回す流れ

  1. 1

    記録を置き換える

    社内で個人を特定する情報を外し、受付番号だけを残したCSVにします。

  2. 2

    Claude に仕分けさせる

    分類ルールの指示文とCSVを渡し、類型・原因区分の候補・根拠の列を追加させます。

  3. 3

    人が抜き取り確認する

    根拠の実在と分類の妥当性を見て、原因区分を確定します。

  4. 4

    集計表を作らせる

    類型別・原因別・未済の3シートを出力させ、件数の突き合わせまで行います。

  5. 5

    再発防止の議題にする

    偏りと未済を会議に出し、措置の判断は担当者と経営陣が行います。

研修の側では、苦情の応対そのものを練習する方法をClaudeでクレーム対応のロールプレイ研修にまとめています。製造業の顧客クレームを原因分析に結びつける流れは8D報告書の下書きが参考になります。募集時の説明に起因する苦情が多い場合は、意向把握・意向確認書面の下書きで書面側の記載を見直す手があります。管理表を条文の項目から組む考え方は、医療安全の管理指針を点検する記事と共通です。

まとめ

管理簿の価値は、列の設計で決まります。類型、原因区分、経路、外部機関の関与、状態という列を監督指針の着眼点から決めておけば、Claudeに任せる仕分けは機械的な作業になります。逆に、原因の確定、再発防止の措置、外部機関への対応は、Claudeの出力を材料に人と経営陣が決める領域です。

最初の月は、直近1か月分の数十件だけで試すのが現実的です。根拠の実在確認と件数の突き合わせを人が行い、ぶれが出る小分類を一覧で固定してから、対象を広げます。

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