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Claudeで原稿の表記ゆれを検出して統一する — 用字用語表をProjectsに置く手順

Claudeで原稿の表記ゆれを検出して統一する — 用字用語表をProjectsに置く手順

用字用語表をClaude Projectsに置き、著者原稿の漢字・かな、送り仮名、外来語表記の揺れを表にして拾う手順です。表の作り方と検収のしかたまで扱います。

著者から届いた原稿に「サーバ」と「サーバー」、「行なう」と「行う」、「ください」と「下さい」が混ざっている。編集者が赤を入れる作業のうち、いちばん地味で、いちばん時間を食うのがこの表記ゆれです。

出版の現場には、たいてい用字用語表があります。どちらに統一するかは、すでに決まっているわけです。足りないのは、その表を原稿に当てて揺れを漏れなく拾う手間です。Claude Projectsに用字用語表を置き、原稿ごとに「揺れの一覧表」を出させると、この手間を減らせます。

この記事は、出版社や編集プロダクションの編集者、社内報や広報誌の担当者に向けた手順です。表を自分で運用する前提で、表の書き方、Projectsへの置き方、依頼文、出てきた表の検収までを順に扱います。開発者がMarkdownの文書を保存のたびに自動で校正する方法はClaude Codeでtextlintを使う手順にあります。

原稿で揺れやすい表記の型

用字用語表で決める項目は組織ごとに違いますが、原稿の揺れは次のような型に分かれます。

型揺れの例表に書く内容
漢字とかな揺れの例「分かる」と「判る」、「出来る」と「できる」表に書く内容どちらを採るか
送り仮名揺れの例「行なう」と「行う」、「取り扱い」と「取扱い」表に書く内容採用する送り方
外来語の長音揺れの例「サーバ」と「サーバー」、「ユーザ」と「ユーザー」表に書く内容長音を付けるかどうか
数字揺れの例「3人」と「三人」、「1,000」と「1000」表に書く内容算用数字と漢数字の使い分け
記号・半角全角揺れの例「(」の全角と半角、「~」と「〜」表に書く内容使う字種

どの型も、辞書を引けば正誤が決まる話ではありません。「どちらも誤りではないが、この本ではこちら」という自社の取り決めです。だから、Claudeに一般的な正しさを判定させるのではなく、自社の表を物差しとして渡す必要があります。

Claudeが使える形に用字用語表を書き直す

紙やPDFの用字用語表は、Claudeに渡す前に一度作り直すと精度が安定します。ポイントは、1行に1つの判断だけを書くことと、例外を条件つきで書くことです。

採用表記 | 不採用表記 | 種別 | 備考
サーバー | サーバ | 外来語の長音 | 長音を付ける。製品名は原表記に従う
ユーザー | ユーザ | 外来語の長音 | 長音を付ける
行う | 行なう | 送り仮名 | 「行い」「行って」も同じ方針
分かる | 判る | 漢字とかな | 「判断」「判明」など別語は対象外
できる | 出来る | 漢字とかな | 「出来事」「出来上がる」は漢字のまま
ください | 下さい | 漢字とかな | 補助動詞はかな。「手紙を下さる」は対象外

備考欄が肝心です。「できる」を一律に置き換える指示では、「出来事」まで壊れます。例外になる語を備考に書いておくと、Claudeはその語を揺れとして拾わず、「表の対象外」として扱いやすくなります。

表の形式は、表計算ソフトでもテキストでも構いません。XLSXを上げるにはコード実行とファイル作成の有効化が必要なので、迷ったらTXTかDOCX、CSVが手軽です。アップロードできるのは、PDF、DOCX、CSV、TXT、HTML、ODT、RTF、EPUB、JSONなどです。

Projectsに用字用語表と指示文を置く

ここからは画面の手順です。Projectsは、独立したチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースで、無料アカウントでも使えます。無料で作れるプロジェクトは5つまでです。

手順

Projectsの準備

  1. 1

    プロジェクトを作る

    左側のメニューから「Projects」を開き、右上の「+ New Project」で作成します。

  2. 2

    用字用語表を知識に加える

    右側の知識ベースの「+」から、書き直した用字用語表をアップロードします。

  3. 3

    指示文を保存する

    「Set project instructions」に、揺れを拾うときの規則を書いて「Save instructions」を押します。

プロジェクトの名前と説明は、Claudeからは見えません。「用字用語表を適用する」といった役割は、名前ではなく指示文に書きます。

知識ベースに置いたものは、そのプロジェクトのすべてのチャットで使われます。一方で、プロジェクト内でもチャットどうしの文脈は共有されません。昨日のチャットで決めた例外は、表に書き足さない限り、今日のチャットには引き継がれません。

指示文の例です。

あなたは出版社の校正者を補助する編集アシスタントです。
プロジェクトの知識にある「用字用語表」を唯一の基準にして、
渡された原稿の表記ゆれを拾ってください。
 
1. 表の「不採用表記」に当たる語を、原稿から全件拾う。
2. 表の備考にある例外に当たる語は拾わず、「例外のため対象外」の欄に回す。
3. 表にない揺れ(同じ語の表記違い)は、「表にない候補」の欄に分けて出す。
   採用表記は決めず、原稿内で多い方を参考として示す。
4. 原稿の文を書き換えない。修正案は別の列に書く。
5. 引用符で囲まれた部分は、引用であることを明記して別に出す。

第4項が重要です。拾う作業と書き換える作業を分けておくと、修正が原稿に混ざったことに気づかないという事故を避けられます。第5項の引用は、著者が他者の文章を引いている場合、元の表記を変えられないためです。

ファイル名は、年と版が分かる形にします。RAGの公式ガイドも、分かりやすいファイル名がClaudeの検索を助けると説明しています。

2026_用字用語表_第3版.txt
2026_用字用語表_例外一覧.txt

原稿を渡して表記ゆれの一覧表を出させる

用字用語表を置いたら、原稿を渡します。ここで量の問題が出ます。

プロジェクトの知識ファイルは1つ30MBまで、数に上限はありませんが、内容の合計がClaudeのコンテキストウィンドウに収まる必要があります。有料プランでは、知識が上限に近づくとRAGが自動で働き、容量が最大10倍まで広がります。ただしRAGが働くと、Claudeは全文を読むのではなく、必要な箇所を検索して拾います。用字用語表と原稿が両方プロジェクトに入っているなら、検索の仕組みが原稿のどこを拾うかを、こちらでは細かく制御できません。仕組みの詳細はClaude ProjectsのRAG検索がいつ発動するかで扱っています。

そこで、揺れを拾いたい原稿は、プロジェクトの知識ではなく各チャットに直接添付します。チャットに添付できるのは1ファイル500MB、1チャット20ファイルまでです。それでも、数百ページの単行本を丸ごと渡すより、章ごとに分けるほうが漏れは減ります。PDFは100ページ以下なら図表も読み取り、101〜1000ページは文字だけの処理になります。表の中の表記ゆれを見たいときは、100ページ以下に区切って渡します。

依頼文の例です。

添付は第3章の原稿です。プロジェクトの用字用語表に従って、表記ゆれを拾ってください。
 
出力は次の3つの表にします。
表1(表の不採用表記): 原稿の語 / 採用表記 / 出現回数 / 最初の出現の前後の文
表2(例外のため対象外): 原稿の語 / 該当する備考 / 前後の文
表3(表にない候補): 揺れている語の組 / それぞれの出現回数 / 前後の文
 
出現位置は、PDFビューアで見えるページ番号で示してください。
原稿の文は書き換えないでください。

ページ番号を指定する理由は、紙面に印刷されたページ番号と、PDFビューアの通し番号が違うことがあるからです。Claudeに渡す側のルールとして、公式も「PDFのページを指すときは、ビューアに表示される番号を使う」ことを勧めています。

「出現回数」の列は、検収にも使います。次の節で触れます。

落とし穴

表1の「前後の文」が原稿と違っていたら、その行は信用しない

前後の文を出させる狙いは、編集者が原稿を検索して該当箇所を確かめやすくするためです。出てきた引用が原稿と1字でも違う場合、その行はClaudeが記憶で補った可能性があります。引用が原稿に実在するかを、行ごとに検索で確かめてください。

出てきた表を検収する

Claudeが出した表は、そのまま信じず、短い検収を挟みます。揺れ拾いは件数が多く、漏れても気づきにくい作業だからです。

検収は3段階で十分です。

  1. 表1の「出現回数」が大きい語を3つ選び、Wordなどの検索機能で原稿内の件数を数える。表の数字と合うかを見る
  2. 表1に出なかった語の中から、用字用語表の不採用表記を5つ選び、同じく原稿を検索する。出てこなければ、そもそも原稿にない。出てくれば、拾い漏れ
  3. 表2の「例外のため対象外」の行を全件読む。例外の適用が妥当かは、備考だけでは決まらない場面がある

2の「拾い漏れ」が見つかったら、その語を指定して「原稿内で『行なう』を全件拾い直してください」と依頼します。件数が大きく食い違うときは、原稿を小さく分けて同じ依頼をやり直します。

検収の目的は、Claudeの表を捨てることではなく、どこまでを信用できるかを把握することです。たとえば大量にある外来語の長音は、検索で件数が合えば、残りの章もそのまま任せやすくなります。

修正は人が行う

Claudeには、一覧表と修正案までを出させ、原稿への反映は編集者が行います。Wordの「検索と置換」で一括置換する前に、表3の候補と表2の例外を見ておきましょう。

「できる」の一括置換は、「出来事」「出来上がる」まで巻き込みやすい典型です。Claudeに原稿を書き換えさせる場合も、書き換え前後を対照した表を出させ、1件ずつ承認するほうが事故は少なくなります。

著者に戻すときは、表1から「著者への連絡用」の短い一覧を作れます。

表1から、著者に伝える一覧を作ってください。
列: 原稿の語 / 採用表記 / 理由(用字用語表の種別)。
同じ語は1行にまとめ、出現回数は括弧で添えてください。
著者に責任を問う書き方はせず、自社の取り決めとして伝える文面にしてください。

用字用語表を育てる

運用してみると、表にない揺れが毎回出ます。表3の候補のうち、自社で採否を決めたものは、用字用語表に書き足します。

  • 採用表記と不採用表記を決めて、表に1行足す
  • 例外が見つかったら、備考に書く
  • 版を上げて、ファイル名の版も変える

この更新を行うのは、編集長や校閲の責任者に絞るのが現実的です。Team・Enterpriseプランなら、プロジェクトを共有できます。編集者や外部の校正者には「Can view」を与えれば、内容の閲覧とチャットはできて、表の編集はできません。表を直せる「Can edit」は、責任者に限ります。共有を管理者が止めている組織では、この方法は使えません。

無料・Pro・Maxで個人利用するなら、共有はできないので、更新した表を各自のプロジェクトにアップロードし直す運用になります。版違いの表が混在しないよう、古い版はプロジェクトから削除します。

textlintとの使い分け

機械的に一致を見つけるだけなら、辞書ベースのツールのほうが速く、確実です。Markdownの原稿であれば、textlintのprhルールが同じ役割を果たします。この方法は、先に挙げたClaude Codeでtextlintを使う記事に書いています。

Claudeに任せる価値があるのは、辞書に載らない揺れの候補出し、例外の判断、著者への連絡文の作成といった、判断が絡む部分です。DOCXやPDFで届く原稿を扱う現場では、辞書ツールを使えないことが多く、その場合は今回の手順が出番になります。校正全般の使い分けはClaude文章作成ガイドも参考になります。

まとめ

用字用語表をClaudeに渡すだけでは、揺れは漏れなく拾えません。効くのは、表を「例外つきの1行1判断」に書き直すこと、表にない揺れを候補欄に分けること、出てきた表を件数の検算で検収することの3点です。拾う作業はClaudeに任せ、何を採用するかの判断は人に残すと、取り決めが勝手に増えずに済みます。

過去の発言録に照らして原稿の矛盾を点検する手順は、Claudeで社長挨拶の原稿を作る手順に近い形で書いています。

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