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日本政策金融公庫の創業計画書をClaudeで下書きし、返済込みの収支を検算する

日本政策金融公庫の創業計画書をClaudeで下書きし、返済込みの収支を検算する

日本政策金融公庫の創業計画書を、自分の事実をもとにClaudeで下書きし、事業の見通しと借入返済がつじつま合うかを月別に検算する手順。公庫の記入例の数字で確かめます。

公庫(日本公庫の国民生活事業)の創業計画書は、Claudeに丸ごと書かせるより、書く順番と検算をClaudeに手伝わせるほうが安定します。創業の動機や経歴は本人にしか書けない事実です。一方で「売上の根拠が式になっているか」「返済を引いても手元に残るか」は、機械的に確かめられます。

この記事は後者に重点を置きます。公庫の書式の項目に沿って事業の見通しを組み、借入返済を含む月次の収支がつじつま合うかを、公庫の記入例の数字で検算します。

創業計画書のどこをClaudeに任せ、どこを自分で書くか

創業計画書は、新たに事業を始める人が事業計画などを記入する公庫の書式です。提出は借入申込書に添える形で、書式には「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」という注記があります。書式を埋めること自体が目的ではなく、面談で見通しを説明するための資料です。

書式は10の項目でできています。ここをClaudeの得意不得意で分けると、次のようになります。

項目内容Claudeの役割
1創業の動機内容目的・動機Claudeの役割本人の言葉を整える程度に留める
2経営者の略歴等内容担当業務・役職・技能Claudeの役割箇条書きのメモから年表に整える
3取扱商品・サービス内容内容、単価、強み、ターゲットClaudeの役割抜けの指摘と下書き
4〜5従業員、取引先内容人数、回収・支払条件Claudeの役割条件の矛盾の指摘
7お借入の状況内容代表者の既存借入Claudeの役割年間返済額の合計を検算
8必要な資金と調達方法内容設備・運転資金と調達Claudeの役割左右の合計が合うかを検算
9事業の見通し内容月平均の売上・原価・経費・利益Claudeの役割根拠の式の整理と検算
10自由記述欄内容アピール、悩みClaudeの役割下書き

1の動機と2の略歴は、面談で必ず深掘りされる箇所です。Claudeが整えた文章を本人が説明できない状態は避けたいので、ここは自分の言葉で書いたメモを渡し、順序の入れ替えと誤字の確認だけに使います。

下書きの前に渡す材料を決める

下書きの質は、渡す事実の量で決まります。Claudeに何も渡さずに「創業計画書を書いて」と頼むと、それらしい数字が入った文章が返ります。その数字は根拠のない作文です。

公庫のセルフチェックリストにも、商品・サービスの項目に「誰に、何を、いくらで販売するか記載していますか?」という確認があります。この問いに答えられる材料を先にそろえます。

  • 経歴: 勤務先名だけでなく、担当業務・役職・身につけた技能
  • 商品・サービス: 単価、受注の単位、提供のしかた
  • 売上の根拠: 席数、回転数、営業日数、受注契約書の有無など、掛け算の元になる数字
  • お金: 設備の見積書、自己資金の額、借りたい額と返済期間
  • 固定費: 家賃、人件費、既存の借入の年間返済額

Claudeのプロジェクトには資料を置け、プロジェクトの指示で振る舞いを固定できます。創業計画書のように何度も書き直す書類は、プロジェクトにまとめておくと、毎回の貼り直しが減ります。指示には次のような内容を入れます。

あなたは創業計画書の下書きを手伝う編集者です。
- 私が渡した事実と数字だけを使い、渡していない数字は作らない。
- 不足している情報は、文章に埋めず「要確認」として最後に質問で返す。
- 金額の単位は万円。計算は途中式をすべて見せる。
- 面談で説明できなくなる表現(断定的な将来予測、根拠のない市場規模)は避ける。

「渡していない数字は作らない」の一文は小さく見えて効きます。競合の数や市場規模を勝手に補う癖を、最初に止められるからです。補われた数字は文章になじんでしまい、後から見分けにくくなります。

事業の見通し欄は「根拠の式」から組む

創業計画書の「事業の見通し(月平均)」は、創業当初と、1年後または軌道に乗った後の2列に、売上高・売上原価・経費・利益を書く欄です。欄の右側には「売上高、売上原価(仕入高)、経費を計算された根拠をご記入ください」と書かれています。公庫が見ているのは金額そのものより、金額が出てきた式です。

公庫の月別収支計画書の記入例(飲食店)では、この根拠が次のように書かれています。

  • 昼: 900円×25席×0.8回転×26日で46万円
  • 夜(月〜木): 4,500円×25席×0.6回転×18日で121万円
  • 夜(金・土): 4,500円×25席×0.9回転×8日で81万円
  • 合計: 46+121+81=248万円

Claudeには、まずこの形で式を書かせます。単価・席数・回転数・日数のどれかが渡されていなければ、質問で返すよう指示します。

次の事実から、創業当初の月間売上高の根拠を式で書いてください。
式の各項は私の入力のどれに当たるかを併記してください。
足りない項があれば、数字を補わず質問してください。
(以下、単価・席数・回転数・営業日数などを箇条書きで貼る)

式が出たら、原価と経費も同じ形にします。記入例では原価率35%を「勤務時の経験から」と書いており、人件費は従業員20万円、専従者10万円、アルバイト29万円の積み上げです。「経験から」「契約書あり」のように、数字の出どころを一言添えるのが公庫の記入例の型です。

もう一つの記入例(ソフトウェア開発業)でも、売上は「300万円/件×1件/月=300万円(受注契約書あり)」、原価率は外注費30%、人件費は代表45万円・役員30万円・従業員25万円で合計100万円と、式と出どころが並んでいます。

借入返済を含めて整合を検算する

ここからが検算です。創業計画書の事業の見通しにある「利益」は、売上高から売上原価と経費を引いた額です。ソフトウェア開発業の記入例には、この利益について「所得税等の税金や借入金の返済元金はここから支払われます」という注記があります。

つまり、利益の欄には元金返済がまだ引かれていません。経費に入るのは支払利息だけで、元金は利益から払う扱いです。ここが、返済込みで見ると見落としやすい点です。

検算は次の順で進めます。

  1. 売上高−売上原価−経費合計が、利益欄の金額と一致するか
  2. 経費合計が、人件費+家賃+支払利息+その他の和と一致するか
  3. 支払利息が、借入金×年利率÷12ヵ月になっているか
  4. 利益が、毎月の元金返済額を上回っているか
  5. 「軌道に乗った後」の列にも、同じ検算を繰り返す

3は月別収支計画書の記入例に書かれた算式です。ソフトウェア開発業の記入例では、500万円を2本(公庫と他の金融機関)借りる想定で、それぞれ「500万円×年○.○%÷12ヵ月」を足して月3万円と書いています。借入が複数あるときは、本数分を足す必要があります。

記入例の数字で試すと、検算は次のようになります。ソフトウェア開発業の記入例は、創業当初が売上300万円・原価90万円・経費198万円で利益12万円、軌道に乗った後が売上390万円・原価117万円・経費258万円で利益15万円です。どちらも式の上では合っています。一方、公庫からの借入の返済は「元金6万円×84回」と書かれています。月6万円の元金を払うと、手元に残るのは創業当初で6万円、軌道に乗った後で9万円です。

6万円×84回は504万円で、借入額の500万円とぴったりは一致しません。記入例は概数で書かれているため、自分の計画書では返済予定表の数字をそのまま使い、概算との差を説明できる状態にします。

月別に並べると赤字の山が見える

月平均の列だけでは、立ち上がりの数カ月が見えません。公庫には、月別の詳細な収支計画を作る場合に使う月別収支計画書があり、元金返済額の行があります。元金の据置期間中など返済がないときは0と記入する決まりです。

月別収支計画書の記入例(飲食店の想定で8月始まり)の数字を、利益から元金返済を引いた手残りの累計で並べ直すと、次のようになります。

月利益(万円)元金返済(万円)手残りの累計(万円)
8月利益(万円)-101元金返済(万円)0手残りの累計(万円)-101
9〜12月利益(万円)各-50元金返済(万円)0手残りの累計(万円)-151から -301
1月利益(万円)-50元金返済(万円)0手残りの累計(万円)-351
2月利益(万円)30元金返済(万円)10手残りの累計(万円)-331
7月利益(万円)30元金返済(万円)10手残りの累計(万円)-231

利益の合計は-171万円で、元金返済60万円を足すと-231万円です。赤字の山は1月の-351万円で、返済が始まる2月以降も累計は12カ月目も-231万円で赤字のままです。この記入例が自由記述として「創業にかかる自己資金とは別に貯蓄している預金で赤字を補てんする」と書いているのは、こうした累計の山を前提にした書き方といえます。

月次の検算は、Claudeに暗算させず、手元で実行できる形にします。次のスクリプトは、上の記入例の数字で検算する最小の例です。自分の計画書の数字に差し替えて使えます。

sales = [60,124,124,124,124,124,248,248,248,248,248,248]
cogs  = [30, 43, 43, 43, 43, 43, 87, 87, 87, 87, 87, 87]
cost  = [131] * 12
repay = [0] * 6 + [10] * 6
 
cum = 0
for m, (s, c, k, r) in enumerate(zip(sales, cogs, cost, repay), 1):
    profit = s - c - k
    cum += profit - r
    print(f"{m:2d}か月目 利益{profit:5d} 返済{r:3d} 累計{cum:5d}")
python3 check.py

Claudeには、このスクリプトの入力を自分の数字に直す作業と、出力の読み取りを任せます。累計の最小値が自己資金と運転資金の合計に収まっているか、返済が始まる月に利益が返済額を上回っているかを、結果の数字を引用させて確認します。数字の計算そのものは表計算ソフトやスクリプトで再計算し、Claudeの文章上の計算を最終値として採用しないのが安全です。この考え方はものづくり補助金の事業計画書の点検でも同じです。

Excelで月次の表を持っている場合は、Claude for Excelに数式の整合を見せる方法もあります。Claude for Excelは有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)向けの機能です。週次の資金繰りに応用した手順は資金繰り表の週次更新にまとめています。

検算で見つかりやすいずれ

創業計画書は項目が多く、項目間の数字が一致しているかは自分では気づきにくいものです。Claudeに「矛盾を探す」役を与えると、次のようなずれを拾えます。

  • 資金の左右: 「必要な資金」の合計と「調達の方法」の合計が合っていない。8番の欄は設備資金と運転資金を足した合計が、自己資金・親族等からの借入・公庫・他の金融機関の合計と釣り合う形で書きます
  • 返済の二重計上: 経費の中に元金返済を入れてしまい、利益欄が実際より低く出ている。支払利息は経費、元金は利益から払う、という分け方を確認します
  • 利息の漏れ: 借入が複数あるのに、月の支払利息に1本分しか入っていない
  • 人件費の範囲: 個人営業の場合、事業主分の人件費は経費に含めない扱いです(書式の注記)。専従者の給与は人件費に入れる記入例になっています
  • 既存借入との重複: 7番の代表者のお借入(住宅ローン、車、カードなど)の年間返済額が、事業の返済余力の説明から抜けている
  • 軌道に乗った後の根拠: 創業当初の1.3倍など、倍率だけで根拠が書かれていない。記入例には「勤務時の経験から」と添えてあります

プロンプトは「矛盾を探す」「合計を再計算する」と目的を一つに絞ります。下書きと検算を同じ依頼で頼むと、Claudeが検算の途中で数字を整えてしまうことがあるので、依頼は分けます。

次の創業計画書の数字を検算してください。文章の修正はしません。
1) 必要な資金の合計と、調達の合計を別々に再計算して、差を出す
2) 事業の見通しの利益=売上高−売上原価−経費合計を、両方の列で再計算する
3) 公庫からの借入の月の元金返済額を、利益から引いた残りを出す
各計算は途中式を書き、私の入力のどこから取った数字かを併記する。
入力に無い数字は使わず、足りなければ質問する。

出力に含まれる数字は、入力のどの値かを答えさせて、必ず自分の目で突き合わせます。Claudeが入力にない数字を持ち込む失敗は、文章の流れの中では気づきにくいからです。

面談前にセルフチェックリストで見直す

公庫は創業計画書のセルフチェックリストを公開しています。見直しの観点は、創業の動機、経営者の略歴、商品・サービス、取引先・取引関係等、必要な資金、調達方法、事業の見通し、全体の見直しの8つです。

事業の見通しには、「計算根拠をもって売上高や売上原価の予測を立てていますか?」「経費に漏れがないか検討していますか?」「利益から借入の返済が可能な収支計画となっていますか?」という3つの問いがあります。調達方法には「自己資金が少なく、借入依存の資金調達計画になっていませんか?」という問いがあります。必要な資金では、事業開始後の運転資金(半年程度の赤字補てん資金など)の検討も問われます。

このリストをそのままClaudeに渡し、計画書の各項目について「根拠のある記述」「根拠が弱い記述」「記載なし」の三つに分けさせると、面談前に直す優先順位がつきます。ただし、判定の基準は公庫のチェックの問いであって、融資の可否の予測ではありません。審査の結果をClaudeに言い当てさせることはできません。

使うときの注意点

  • 書式は更新されます。公庫の書式ダウンロードのページから、その時点の書式を取り直します。記入例の数字は業種ごとの例で、自分の数字ではありません
  • 融資の申込み方法(インターネット申込や必要書類)は、公庫の事業資金のページで案内されています。詳しい記載方法の問い合わせは、事業資金相談ダイヤルか最寄りの支店です
  • 個人情報や取引先名を含む資料を渡すときは、プランの設定とデータの扱いを確認します。取引先名は「A社」のように置き換えても検算はできます
  • 業績や市場規模の数字を、Claudeの出力から計画書に直接写さない。根拠は自分で出典を確かめた資料から持ってきます

まとめ

創業計画書のClaude活用は、文章を作らせるより、根拠の式を並べる、矛盾を探す、返済を引いた手残りを月ごとに出す、の三つが実務的です。公庫の記入例どおりに利益の欄だけを見ていると、元金返済と立ち上がりの赤字の山が見えません。月別に累計を出す検算を一度通しておくと、面談で「赤字の期間をどう耐えるか」と聞かれたときに、自分の数字で答えられます。

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