介護の重要事項説明書を運営規程の改定に合わせてClaudeで点検する手順
運営規程を改定したあと、重要事項説明書・利用契約書・掲示物に古い記載が残っていないかをClaudeのProjectsで点検する手順。条文上のつながり、改定箇所ごとの対照表、周知文の下書き、原本での裏取りまでを順にたどります。
重要事項説明書と運営規程は条文でつながっている
運営規程を改定したら、重要事項説明書も同じ内容に直す必要があります。この2つは、居宅サービスの運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)の中で、条文として結びついているためです。
訪問介護の場合、第8条は、サービスの提供開始にあたって、運営規程の概要と訪問介護員等の勤務の体制、その他サービスの選択に資する重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得ることを求めています。つまり重要事項説明書の中身は、運営規程が土台です。運営規程の側が変われば、説明書の側も追随しなければ食い違います。
Claudeに任せられるのは、改定前後の運営規程と手元の説明書を並べ、ずれている箇所を一覧にする作業です。直すかどうかの判断と、利用者への説明・同意は事業所の側が担います。
運営規程に何を書くかは第29条が定めています。訪問介護では次の8項目です。
運営規程の記載事項(訪問介護・第29条)
事業の目的と運営の方針
第1号。説明書の冒頭に書いた理念や方針の文言と揃えます。
従業者の職種・員数・職務の内容
第2号。説明書の職員体制の表と、人数や職種名が一致しているかを見ます。
営業日と営業時間
第3号。曜日、祝日、年末年始の扱いが両方で同じかが典型の確認点です。
サービスの内容と利用料その他の費用の額
第4号。説明書の料金表と、運営規程に書いた費用の項目がずれやすい箇所です。
通常の事業の実施地域
第5号。地域名の列挙と、交通費を請求する範囲の説明を揃えます。
緊急時の対応方法・虐待の防止措置・その他
第6号から第8号。連絡先や担当者名が絡むので、改定のたびに古くなりやすい部分です。
サービスの種類によって記載事項は変わります。たとえば通所介護の運営規程(第100条)には、これに加えて利用定員、サービス利用に当たっての留意事項、非常災害対策が入ります。点検に使うリストは、自分の事業所のサービス種別の条文から起こしてください。通所介護は第105条で第8条などを準用しており、説明書に運営規程の概要を載せる仕組みは訪問介護と同じです。
苦情の窓口は、第29条の列挙に独立した号がありません。第36条が窓口の設置を求めているため、運営規程のどこに書くかは事業所ごとに違います。運営規程、説明書、掲示物の3か所で窓口の名称と電話番号が揃っているかも、点検の対象に加えます。
改定で連動して直す書類を洗い出す
運営規程を直したとき、説明書だけを見直して終わる事業所は少なくありません。実際には、同じ内容を写した書類が複数あります。
| 書類・手続き | 根拠 | 改定時に見る点 |
|---|---|---|
| 重要事項説明書 | 根拠第8条 | 改定時に見る点運営規程の概要、勤務体制、料金が改定後と一致しているか |
| 利用契約書 | 根拠契約上の書類 | 改定時に見る点説明書と同じ料金・営業日・解約条件になっているか |
| 事業所内の掲示 | 根拠第32条第1項 | 改定時に見る点運営規程の概要や勤務体制の掲示が古いままでないか |
| ウェブサイト | 根拠第32条第3項 | 改定時に見る点掲載中の重要事項が改定後の内容になっているか |
| 変更の届出 | 根拠介護保険法第75条 | 改定時に見る点届出が必要な変更に当たるか、期限内に出したか |
第32条第2項は、重要事項を記載した書面を事業所に備え付け、いつでも関係者が自由に閲覧できる状態にすれば、掲示に代えられるとしています。また第3項は、原則として重要事項のウェブサイト掲載を求めています。この第3項には令和7年3月31日までの経過措置があり、その後は原則として義務です。説明書だけでなく、ウェブサイトの掲載内容も改定の点検に含めてください。
指定事業者の届出事項に変更があったときは、介護保険法第75条第1項により、10日以内に都道府県知事へ届け出ます。届出が必要な事項は厚生労働省令で決まっています。運営規程の変更が該当するかどうかは、指定権者の変更届の様式で確かめます。Claudeには判断させず、点検表に「届出の要否を指定権者に確認した日」の列を置くだけにします。
既存の利用者へ改定をどう伝え、同意をどう取り直すかについても触れておきます。第8条の文言は「提供の開始に際し」で、すでに利用中の人への再説明は条文に書かれていません。利用契約書の変更条項と、指定権者の案内に従って運用を決めます。
Projectsに置く資料を決める
Projectsは、資料(Project knowledge)と指示(Project instructions)を固定できる作業場です。無料アカウントを含む全ユーザーが使え、無料アカウントで作れるのは最大5つまでです。
置く資料は次の5種類に絞ります。
Projectsの準備
- 1
プロジェクトを作る
「Projects」から「+ New Project」を選び、「運営規程改定 点検」のように目的が分かる名前を付けます。
- 2
新旧の運営規程と現行の説明書を追加する
知識ベースの「+」から追加します。ファイル名には改定日を入れ、「運営規程_2026-10改定案」のように版を区別します。
- 3
利用契約書のひな形と条文の抜粋を追加する
契約書は署名済みの個別の書類でなく、ひな形だけを置きます。条文は第8条、第29条、第32条、第36条の該当部分を抜粋します。
- 4
点検表を追加する
次の節の形式で、項目ごとに1行を持つ表を置きます。
- 5
「Set project instructions」で約束事を保存する
出力形式と禁止事項を書いて「Save instructions」を押します。
落とし穴
プロジェクトの名前と説明欄はClaudeに見えない
プロジェクトを作るときの名前と説明は、Claudeには渡りません。「このプロジェクトでは営業日を最優先で見る」のような指示を説明欄に書いても効かないので、必ずProject instructionsか資料のほうに書きます。
条文の抜粋を資料に入れておくと、Claudeが「第8条は運営規程の概要の交付を求めている」といった根拠を、記憶ではなく手元の資料から引けるようになります。抜粋は、法令検索で取得した条文をそのまま貼ります。要約を貼ると、要約の誤りが点検に混ざります。
プロジェクト内でも、チャット同士の文脈は共有されません。点検の結果を次の改定に引き継ぎたいときは、結果の表を知識ベースに追加します。有料プランでは、資料の量がコンテキストウィンドウの上限に近づくと、検索ベースの方式(RAG)に自動で切り替わって容量が広がります。
点検表は「運営規程の1項目=1行」で作る
点検表は、運営規程の項目を行にして、説明書・契約書・掲示のどこに同じ内容があるかを列に置きます。次は書き方の例で、実際の項目は自分の事業所の運営規程から起こします。
項目ID,運営規程の条項,内容,説明書の該当箇所,契約書の該当箇所,掲示・Web,状態
R-03,営業日及び営業時間,月〜土 8:30-17:30,,,,未点検
R-04,利用料その他の費用,費用の額と徴収の条件,,,,未点検
R-05,通常の事業の実施地域,地域名と交通費の扱い,,,,未点検
R-06,緊急時等の対応方法,連絡先と担当者名,,,,未点検
C-01,苦情の窓口(第36条),窓口名と電話番号,,,,未点検「内容」の列には改定後の運営規程の内容を入れておきます。右の3列は空欄にしておき、Claudeに埋めさせます。「状態」の列は人が最後に書き込みます。AIに更新させると、確認していない行が確認済みに見えてしまうためです。
指示文と、改定箇所を出させるプロンプト
Project instructionsには、毎回変わらない約束を書きます。
あなたは介護事業所の書類整合の点検補助者です。
- 資料の点検表の行ごとに、重要事項説明書・利用契約書ひな形と突き合わせる。
- 各行に、根拠にした書類名と該当箇所(見出しや表の行)を必ず付ける。
- 書類に記載がない項目は「記載なし」と書き、推測で埋めない。
- 結果は「一致」「ずれあり」「要確認」の3段階で示す。適否の最終判断はしない。
- 氏名・住所・電話番号など個人が特定できる情報は出力に再掲しない。書類を渡す側のプロンプトは、改定の差分から入ると精度が上がります。
資料の「運営規程_改定前」と「運営規程_改定案」を比べて、
変更された項目を1行ずつ書き出してください。
そのうえで、変更された項目だけを対象に、重要事項説明書と
利用契約書ひな形の記載が改定案と一致しているかを表にしてください。改定箇所を先に確定させると、全項目を回すよりも根拠の取り違えが減ります。差分の一覧は、あとで周知文を書くときの元にもなります。
例えば次のような形の表が返ってくる想定です(出力例であり、実際の文言は資料と質問で変わります)。
| 項目ID | 判定 | 運営規程(改定案) | 説明書の記載 |
|---|---|---|---|
| R-03 | 判定ずれあり | 運営規程(改定案)土曜の営業時間を17:30まで | 説明書の記載土曜は17:00までと記載 |
| R-04 | 判定要確認 | 運営規程(改定案)交通費の請求範囲を改定 | 説明書の記載該当の説明が見当たらない |
| C-01 | 判定一致 | 運営規程(改定案)窓口名と番号が同じ | 説明書の記載同じ |
「要確認」は、説明書に記載がないのか、Claudeが読み取れなかったのかを区別できない状態です。次の節の確認で人が切り分けます。
改定の周知文を下書きさせる
差分の一覧ができたら、利用者と家族に配る「改定のお知らせ」の下書きにつなげます。変更前後が並ぶ形にすると、読む側も何が変わったのかを追えます。
周知文に載せる変更前後の書き方
変更前の書き方
運営規程を改定しましたので、ご確認ください。詳しくは重要事項説明書をご覧ください。
変更後の書き方
2026年11月1日から、土曜日の営業時間が17時30分までになります。変わるのは土曜日の時間のみで、料金や平日の営業時間は変わりません。
Claudeへの依頼は、事実を限定して渡します。
先ほどの差分の一覧のうち、「ずれあり」を解消した後の改定内容だけを使って、
利用者・家族向けのお知らせを800字以内で下書きしてください。
- 変更前と変更後を対にして書く
- 適用開始日と問い合わせ窓口は【 】で空欄にする(私が入れます)
- 資料に書かれていない理由や経緯は書かない適用開始日と問い合わせ窓口を空欄にするのは、Claudeが日付や電話番号を創作しないようにするためです。下書きの数字は、運営規程の原本と見比べてから配布します。
出力は人が原本で裏取りする
Claudeの表は、点検の入口です。配布や届出の前に、次の3点は人が原本で確かめます。
- 「根拠」に書かれた箇所が、実際の書類にあること。
- 「記載なし」とされた項目が、別のページや別添資料に書かれていないこと。画像で貼った表は、文字として読み取られていない場合があります。
- 比べた書類の版が、改定案と現行で取り違えられていないこと。
利用者の個人情報は渡さない運用にします。説明書や契約書のひな形に氏名や住所が入っていないか、確認してから資料に追加します。署名済みの契約書や、利用者ごとの書類は点検の対象にしません。
Team・Enterpriseのプランでプロジェクトを共有するときは、権限を「Can view」(閲覧とチャットのみ)にしておくと、他の職員が資料や指示文を書き換える事故を防げます。「Can edit」を持つ人は、指示と資料の編集やメンバー設定の変更ができます。共有の可否は、管理者が機能をオフにしている場合があります。
点検が崩れやすい3つの場面
差分が荒れる原因
版が混ざる
改定前後の運営規程と説明書が同じ名前で残っていると、古い版と突き合わせてしまいます。ファイル名に改定日を入れ、不要になった版はプロジェクトから外します。
サービス種別が違う
訪問介護の条文でリストを作ると、通所介護の利用定員や非常災害対策が点検から抜けます。事業所のサービス種別の運営規程から項目を起こします。
項目が粗すぎる
「料金が一致している」のような広い項目は、Claudeも「要確認」しか返せません。基本料金、加算の自己負担、交通費など、行を分けて1項目に1つの条件を持たせます。
介護保険の算定にかかわる加算の届出書類は、介護の加算届・体制届をClaudeで下書きする書き方で扱っています。説明書の料金表を加算に合わせて直すときは、そちらの下書きとあわせて見比べます。
勤務体制の表を直した場合は、人員配置基準との突き合わせを先に済ませておくと、説明書の職員体制の欄が確定します。手順はClaudeで介護の勤務形態一覧表を人員配置基準と突き合わせる手順にあります。
任せる範囲と人が決める範囲
| 作業 | Claudeに任せる | 人が担う |
|---|---|---|
| 新旧の運営規程の差分抽出 | Claudeに任せる○ 変更項目の一覧化 | 人が担う変更が意図どおりかの確認 |
| 説明書・契約書との突き合わせ | Claudeに任せる○ ずれの一覧化 | 人が担う根拠箇所の原本確認 |
| 周知文の下書き | Claudeに任せる△ 事実が資料にある範囲 | 人が担う日付・窓口・料金の記入 |
| 変更届の要否 | Claudeに任せる× | 人が担う指定権者への確認 |
| 既存利用者への説明と同意 | Claudeに任せる× | 人が担う契約書の変更条項に沿った運用 |
重要事項説明書の整合は、運営指導で書類を確認されるときの前提にもなります。指導に向けた点検全体の流れは介護事業所の運営指導に向けて、Claudeで書類を自己点検する手順にまとめています。不動産の管理受託契約など、別業種の重要事項説明書には別の法定記載事項があるので、管理受託契約の重要事項説明書の点検とは分けて考えます。
まとめ
運営規程の改定で見落としやすいのは、説明書そのものより、同じ内容を写した契約書・掲示・ウェブサイトです。点検表を運営規程の項目単位で作り、改定箇所の差分を先に確定させると、Claudeが返す表の精度が上がります。
Claudeが出すのは「ずれの候補」までです。届出の要否と既存利用者への説明は指定権者と契約書に従い、配布前の数字は原本と見比べます。