Claudeでかかりつけ薬剤師の同意取得と要件を点検する — 令和8年度改定後
かかりつけ薬剤師指導料の廃止後、同意取得の記録は手帳のコピーと薬剤服用歴で残します。患者ごとの同意の欠けと、薬剤師ごとの勤務・研修の要件を、匿名の一覧にしてClaudeに突き合わせさせる手順です。
令和8年度改定で、かかりつけ薬剤師の同意点検は何が変わったか
かかりつけ薬剤師指導料(76点)は、令和8年度の調剤報酬改定で削除されました。かかりつけ薬剤師が行う指導は、服薬管理指導料の「イ」として算定します。1の「イ」が45点、2の「イ」が59点で、「ロ」(かかりつけ薬剤師以外が行う場合)と点数は同じです。
点数が同じになっても、点検の手間は減りません。「イ」を算定する根拠は、患者が選んだ特定の薬剤師と、その薬剤師を選んだ旨の同意です。同意の記録が欠けた患者に「イ」を付け続けると、算定の根拠そのものがなくなります。
ここで気をつけたいのは、記録の形です。厚生労働省の「保険調剤の理解のために(令和8年度)」には、「同意書」という語が出てきません。同意取得の記録として書かれているのは、次の3つです。
- 患者の手帳に、必要事項と「かかりつけ」の文字を記入する
- その記入ページのコピー等を、薬局で保管する
- 患者の薬剤服用歴等に、同意を得た旨を記載する
つまり「同意書の有無」を数える点検では足りません。手帳のコピーと薬歴の記載が、患者ごとに揃っているかを見る点検に組み替える必要があります。この記事では、その組み替えをClaudeにやらせる手順を扱います。
Claudeに任せるのは、一覧の突き合わせと、欠けの洗い出しです。算定の可否、届出の要否、患者への説明は、薬剤師と管理薬剤師が担います。
点検の物差しになる要件を先に書き出す
Claudeに渡す前に、点検の基準を一覧にしておきます。基準をClaudeの記憶に任せると、旧制度の要件が混ざります。厚生労働省の改定概要と留意事項通知から、点検に使う項目を抜き出すと次のとおりです。
患者ごとの同意で見る項目
説明した人が同意を得ている
算定しようとする保険薬剤師本人が、かかりつけ薬剤師の業務内容、持つことの意義、役割を説明したうえで、患者またはその家族等から同意を得ます。
手帳とコピーと薬歴が揃う
手帳に「かかりつけ」の文字を記入し、記入ページのコピー等を薬局で保管し、薬剤服用歴等に同意を得た旨を記載します。
同意は複数回の来局のあとで取る
同意取得は、薬局に複数回来局している患者に行います。同意を得た後は、そのときの処方箋受付から算定できます。
1人の患者に1か所・1人まで
1人の患者について、算定できるのは1か所の保険薬局の1人の薬剤師だけです。同一月内は、同じ薬局の同じ薬剤師で算定します。
薬剤師の側にも要件があります。改定概要のスライドが挙げる、かかりつけ薬剤師として指導等を行う保険薬剤師の要件は、次の5つをすべて満たすことです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勤務経験 | 内容届出時点で、保険薬剤師として保険薬局に3年以上の勤務経験がある(保険医療機関の薬剤師としての経験が1年以上あれば、1年を上限に含められる) |
| 勤務時間 | 内容当該薬局に週31時間以上勤務している(育児休業・介護休業等の措置で所定労働時間が短縮された場合は、週24時間以上かつ週4日以上) |
| 在籍期間 | 内容届出時点で、当該薬局に継続して6か月以上在籍している(休業から同じ薬局に復職する場合は、休業前の期間を合算できる) |
| 研修認定 | 内容薬剤師の認定制度を認証する機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得している |
| 地域活動 | 内容医療に係る地域活動の取組に参画している |
同じスライドには、薬局側の要件も並んでいます。週31時間以上勤務する保険薬剤師が継続的に在籍し、その期間が平均して1年以上あること、または管理薬剤師が当該薬局に継続して3年以上在籍していること。そして、会話が他の患者に聞こえないよう、パーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、プライバシーに配慮していることです。
要件の文言は、告示と通知が正です。この一覧は点検の足がかりであり、最終の確認は原文で行います。
Projectsに基準と記入ルールを置く
基準が決まったら、ClaudeのProjectsに置きます。Projectsは、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースです。ドキュメントや文脈をアップロードしておくと、そのプロジェクト内のチャットで、Claudeが背景として使います。プロジェクトごとに指示(プロジェクト指示)も設定できます。
置くものは、次の2種類に絞ります。
- 上の要件一覧(改定概要と留意事項通知の該当部分を、そのまま貼ったもの)
- プロジェクト指示(出力の形と、やってはいけないこと)
患者の氏名、生年月日、住所は、ProjectsにもチャットにもClaudeに渡しません。患者は薬局内だけで引ける管理番号(A-001のような記号)に置き換えます。管理番号と氏名の対応表は、薬局のシステム側に残します。
プロジェクト指示は、たとえば次のように書きます。
あなたは薬局の管理薬剤師の補助役です。
基準は、このプロジェクトに置いた「要件一覧」だけを使います。
旧制度(かかりつけ薬剤師指導料)の要件を、記憶から補ってはいけません。
渡された一覧の各行について、次の3項目を「あり」「なし」「不明」で判定します。
1. 手帳への記入ページのコピーの保管
2. 薬剤服用歴等への同意取得の記載
3. 同意日が、複数回の来局のあとになっている
判定の根拠は、一覧のセルの値をそのまま引用して書きます。
一覧にない情報は「不明」とし、推測で埋めません。
算定してよいかどうかは、結論として述べません。指示の最後の1行が要です。Claudeが「算定できます」と書き始めると、点検の結果が、そのまま算定の根拠のように読まれてしまいます。
プロジェクトの知識が大きくなっても、有料プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)では、Retrieval Augmented Generation(RAG)で容量が最大10倍まで広がります。要件一覧は小さいので、容量が足りなくなる心配は、まずありません。Freeプランで作れるプロジェクトは5つまでです。
患者ごとの同意の欠けを匿名一覧で洗う
点検の対象は、服薬管理指導料の「イ」を算定している患者です。薬局のシステムから、次の列だけを書き出します。
| 管理番号 | かかりつけ薬剤師 | 同意日 | 手帳コピー保管 | 薬歴の同意記載 | 直近の算定区分 |
|---|---|---|---|---|---|
| A-001 | かかりつけ薬剤師薬剤師P | 同意日2026-04-12 | 手帳コピー保管有 | 薬歴の同意記載有 | 直近の算定区分1のイ |
| A-002 | かかりつけ薬剤師薬剤師P | 同意日2026-05-03 | 手帳コピー保管有 | 薬歴の同意記載無 | 直近の算定区分2のイ |
| A-003 | かかりつけ薬剤師薬剤師Q | 同意日(空欄) | 手帳コピー保管無 | 薬歴の同意記載無 | 直近の算定区分1のイ |
(列構成を示すための架空の例です。)
この表をClaudeに貼り、プロジェクト指示に従って判定させます。返事の見出しは、たとえば次のような形で受け取れます。以下は出力の形の例であり、Claudeが実際に返す文面そのものではありません。
A-002: 手帳コピー保管=あり(「有」)、薬歴の同意記載=なし(「無」)、
同意日の前後の来局=不明(来局履歴の列がない)
A-003: 手帳コピー保管=なし(「無」)、薬歴の同意記載=なし(「無」)、
同意日=不明(空欄)ここで、Claudeに期待するのは仕分けまでです。A-002の薬歴の記載が本当に抜けているのか、システム上は別の欄に書いてあるのかは、薬剤師が原本で確かめます。
来局履歴の列を足しておくと、「複数回来局したあとで同意を取ったか」も判定の対象にできます。同意日より前の来局が1回以下の患者は、一覧の上で目立たせられます。
薬剤師ごとの要件を、届出の前に突き合わせる
薬剤師の側の点検は、人数が少ない分、表も小さくなります。
| 薬剤師 | 保険薬局の勤務経験(年) | 病院薬剤師の経験(年) | 週の勤務時間 | 当該薬局の在籍(月) | 研修認定 | 地域活動 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| P | 保険薬局の勤務経験(年)6 | 病院薬剤師の経験(年)0 | 週の勤務時間40 | 当該薬局の在籍(月)30 | 研修認定あり | 地域活動あり |
| Q | 保険薬局の勤務経験(年)2 | 病院薬剤師の経験(年)2 | 週の勤務時間32 | 当該薬局の在籍(月)8 | 研修認定あり | 地域活動なし |
(列構成を示すための架空の例です。)
薬剤師Qは、病院薬剤師の経験が2年あります。ただし、病院の経験は1年が上限で、薬局の経験に算入できます。上の表のままだと、薬局2年に病院1年を足して3年になります。この「上限1年」の足し算を、Claudeに計算させる場合は、式を書かせてください。
薬剤師Qの勤務経験を、薬局の経験年数と病院の経験年数(上限1年)に
分けて計算し、式を書いてください。届出時点の3年以上を満たすかを、
「満たす」「満たさない」「不明」で答えてください。計算の式があれば、人が読み返せます。結果だけを返させると、算入の上限を見落としたのかが分かりません。
地域活動の列は、「あり」「なし」だけでは足りません。何の活動に、いつ参画したかが、後から説明できなければ、点検の意味が薄れます。この列に、活動名と日付を入れておくと、Claudeに「参画の根拠が書かれていない行」を拾わせられます。
点検で拾いやすいつまずき
留意事項通知を読むと、算定の誤りは、次のような場面で起こりやすいと分かります。
落とし穴
かかりつけ薬剤師が不在の日に、そのまま「イ」を算定する
やむを得ない事由でかかりつけ薬剤師が業務を行えない場合は、薬局の他の保険薬剤師が指導してもかまいません。ただし、このときは「ロ」で算定します。指導した薬剤師の欄を一覧に入れておくと、「イ」と指導者の食い違いをClaudeに拾わせられます。
ほかに、一覧に列を足して防げる誤りがあります。
- 他薬局の「かかりつけ」の記載がある手帳に、上書きしていないか(原則として、上書きしてはならない)
- 患者の選択でかかりつけ薬剤師を変えたとき、薬歴にもその旨を書いたか
- 手帳を提示しなかった患者を、2の枠で扱っているか(3月以内の再来局でも、手帳の提示がなければ2になる)
- 同一月内に、同じ薬局の別の薬剤師で「イ」を算定していないか
どれも、元のシステムの列を増やせば、Claudeが機械的に拾える項目です。人が目で追うと、月末の忙しさのなかで見落としやすい項目でもあります。
結果の扱いと、ほかの加算への広がり
Claudeの出力は、点検の下書きです。「あり」と答えた行も、手帳のコピーや薬歴の原本と照らして、薬剤師が確かめます。「なし」と「不明」の行は、同意を取り直すのか、記録を探すのか、算定区分を見直すのかを、管理薬剤師が決めます。
令和8年度の改定では、かかりつけ薬剤師に関連する加算も新設されました。かかりつけ薬剤師フォローアップ加算が50点(3月に1回)、かかりつけ薬剤師訪問加算が230点(6月に1回)です。どちらも、対象は服薬管理指導料の1の「イ」または2の「イ」を算定している患者です。同意の点検で「イ」の根拠が崩れた患者は、この2つの加算の前提も崩れます。
同じ型の点検は、別の領域でもできます。要件を通知から分けて、記録と突き合わせる手順は、看取り介護加算の算定要件の点検にあります。薬局の記録をProjectsで整える流れは、疑義照会の記録を整える手順が扱っています。在庫側の点検に関心があるなら、薬局の不動在庫を返品候補に洗い出す手順が近い内容です。
TeamまたはEnterpriseプランでは、Projectsを組織内の他のメンバーと共有できます。「閲覧のみ」と「編集可」の権限を選べるため、点検の基準を管理薬剤師だけが編集し、ほかの薬剤師は閲覧と利用に留める運用ができます。
まとめ
かかりつけ薬剤師指導料が削除されたあと、点検の主役は「同意書」ではなく、手帳のコピーと薬歴の記載、そして薬剤師ごとの要件に移りました。基準は告示と通知の原文から作り、患者は管理番号に置き換え、Claudeには仕分けまでを任せる。この3点を守れば、月次の点検は一覧を貼るだけで回せます。
最後の判断は、いつも人が持ちます。届出の可否や算定の可否に迷う行は、管轄の地方厚生局に問い合わせてください。