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Claudeでなぜなぜ分析の飛躍を洗い出す — 各段の根拠を点検させる型

Claudeでなぜなぜ分析の飛躍を洗い出す — 各段の根拠を点検させる型

なぜなぜ分析の「なぜ」を5段に展開させるのではなく、各段に記録や観察の裏づけがあるかをClaudeに点検させ、飛躍を指摘させる手順です。Projectの設定と指示文の例つき。

なぜなぜ分析は、不具合に対して「なぜ」を繰り返し、真因に近づく手法です。Claudeに「なぜを5回やって」と頼むと、きれいな連鎖がすぐ返ってきます。ただ、その連鎖の途中に、記録で裏づけられていない段が混ざっていても、見た目では分かりません。この記事では、Claudeに原因を考えさせる代わりに、各段の根拠(記録・観察)の有無を点検させ、飛躍を指摘させる型を紹介します。Projectに資料を置き、指示文を保存し、表で判定を受け取る流れです。

なぜなぜ分析のどこで飛躍が起きるか

なぜなぜ分析が外れるときは、段数が足りないのではなく、段と段のつなぎ目が弱いことが多くあります。点検の観点を先に決めておくと、Claudeへの指示が具体的になります。ここでは、飛躍を5つの型に分けます。

点検観点

なぜの連鎖で起きやすい5つの飛躍

  • 根拠がない段

    「担当者が確認を怠った」のように、作業記録にも観察にも載っていない事柄が、原因として置かれています。

  • 複数の原因を1つにまとめた段

    実際には2つ以上の要因が重なっているのに、一本の線に畳まれています。

  • 人への帰着

    「不注意」「教育不足」で止まり、なぜ不注意が起きえたかの仕組みに届いていません。

  • 対策の言い換え

    「チェックしていなかった」は「チェックする」という対策の裏返しで、原因の説明になっていません。

  • 因果の向きが逆の段

    結果として生じた状態を、原因として置いています。

この5つは、点検用に整理した分類で、特定の規格の用語ではありません。自社の手順書に分類がある場合は、そちらの名前に置き換えて指示文に入れてください。

「展開させる」より「点検させる」が向く理由

Claudeにゼロから5段を展開させると、文章として自然な連鎖が出ます。自然であることと、事実であることは別です。展開の途中で、資料に無い設備の状態や作業者の行動が、もっともらしく補われることがあります。

点検型にすると、Claudeの仕事は「連鎖を作る」から「連鎖を資料と突き合わせる」に変わります。人間が書いた連鎖、または人間が現場で聞き取ってまとめた連鎖を渡し、各段について次の3つを返させます。

  • その段を支える記録や観察が、渡した資料のどこにあるか
  • 資料に無いなら、それは「推測」か「飛躍」か
  • 裏づけるために、現場で確かめる項目は何か

この形なら、Claudeの出力は「人が次に何を確かめるか」の一覧になります。原因を決めるのは人のままです。

Projectに置く資料と設定

不具合の記録は、毎回チャットに貼ると手間がかかります。Projectは、資料(知識)と指示を保存して、そのProject内のチャットで使い回せる仕組みです。ProjectはFreeを含む全ユーザーが使え、Freeで作れるのは最大5つです。

手順

なぜなぜ分析用のProjectを作る流れ

  1. 1

    Projectを作る

    claude.ai/projectsで「+ New Project」を押し、名前と説明を入れます。この名前と説明はClaudeには渡りません。

  2. 2

    点検の根拠になる資料を知識に入れる

    プロジェクトの知識欄の「+」から、作業記録、点検記録、変更履歴、過去の不具合報告をアップロードします。

  3. 3

    プロジェクト指示を保存する

    「Set project instructions」を開き、下の指示文を入れて「Save instructions」で保存します。

  4. 4

    案件ごとにチャットを分ける

    1件の不具合につき1つのチャットを作ります。最初のメッセージを送る前に「+」メニューで「Memory」をオフにすると、そのチャットはProjectのメモリーを使わず、追加もしません。

最後のStepには理由があります。メモリーはFree・Pro・Maxで既定でオンで、Projectごとに独自のメモリーを持ち、同じProjectのチャットでは使われます。何もしないと、ある案件で保存された内容が、同じProjectの別の案件のチャットに入り込みえます。そのために、上のStepでMemoryをオフにしています。

また、有料プランでは、プロジェクトの知識がコンテキストの上限に近づくと、Claudeが自動でRAGモードを有効にして容量を広げます(RAGは検索で必要な部分だけを引く仕組みです)。ただし、ヘルプセンターにはRAGモードで何が引かれるかの説明がありません。点検の根拠に使う資料は、案件のチャットに直接添付するほうが、Claudeが見ている範囲を確かめやすくなります。

プロジェクト指示の例

指示文の要点は3つです。根拠は渡した資料からだけ引くこと、資料に無いものは「根拠なし」と書くこと、原因を新しく考え出さないことです。次は、そのまま使える書き方の例です。

あなたは製造現場の品質改善を支援するレビュー担当です。
ユーザーが渡すなぜなぜ分析の連鎖を、各段ごとに点検してください。
 
規則:
1. 根拠として使ってよいのは、このProjectの資料と、
   チャットに添付された資料だけです。
2. 各段について、根拠の資料名と該当箇所を引用してください。
   見つからない場合は「根拠なし」と書いてください。
3. 「根拠なし」の段は、推測か飛躍かを区別し、
   確かめる方法を1つ以上挙げてください。
4. 新しい原因を自分で追加しないでください。
   原因の候補が思い浮かんでも、「候補」と明記して別枠に書いてください。
5. 判定は「根拠あり」「推測」「飛躍」のいずれかで、
   理由を1文で添えてください。

3番目の規則が、点検型の核です。「根拠なし」と言われた段に、確認の方法が付いていれば、現場で動けます。

連鎖を渡して、判定表を受け取る

チャットには、不具合の報告と、確認済みの事実、現時点の連鎖を渡します。次は、架空のプレス加工ラインの例です。

【不具合】金型交換後の初回ロットで、寸法Aが規格上限を超えた(30個中4個)。
【確認済みの事実】
 - 交換は第2シフトの引き継ぎ直後に実施
 - 交換記録に「ボルト締付トルク」の記入欄はあるが空欄
【連鎖】
 1. なぜ寸法Aが超えた? → 金型の位置がずれたから
 2. なぜずれた? → ボルトの締付が不十分だったから
 3. なぜ不十分? → 作業者がトルクレンチを使わなかったから
 4. なぜ使わなかった? → 作業者の注意不足

この入力に対して、Claudeには次の列を持つ表で返させます。指示文に書いておけば、毎回同じ形で返ります。

段主張根拠の所在判定確かめる方法
1主張金型の位置がずれた根拠の所在渡された事実に位置の測定なし判定推測確かめる方法金型位置の測定値、合わせマークの確認
2主張締付が不十分だった根拠の所在トルク欄が空欄であることのみ判定推測確かめる方法緩みの有無の現物確認、トルク値の再測定
3主張トルクレンチを使わなかった根拠の所在記録に使用の有無なし判定飛躍確かめる方法工具の使用履歴、作業者への聞き取り
4主張注意不足根拠の所在根拠なし判定飛躍確かめる方法手順書に締付トルクの指定があるか確認

上の表は、指示文の規則に沿って返ってくる形の例です。実際の判定の文言や粒度は、渡す資料と指示文で変わります。どの段をどう判定するかは、出力を人が読んで確かめてください。

注目したいのは、空欄の記録をどう扱うかです。空欄は「締めていない」の証拠ではなく、「記録されていない」ことしか示しません。点検型の指示を入れておくと、Claudeはこの差を判定の理由に書きやすくなります。

飛躍の指摘を、次の確認につなげる

表を受け取ったら、「推測」と「飛躍」の段を現場で確かめ、結果をチャットに戻します。戻すときは、確かめた事実だけを書き足し、連鎖の側は書き換えません。

手順

指摘から真因までの反復

  1. 1

    表の確認項目を現場で確かめる

    測定値、現物、記録、聞き取りの結果を集めます。確かめられなかった項目は、そう記録します。

  2. 2

    確かめた事実をチャットに追記する

    「金型位置の測定値は規格内だった」のように、結果だけを短く渡します。

  3. 3

    連鎖の再点検を依頼する

    事実が変わると連鎖の形も変わります。段の入れ替えや枝分かれが必要になったら、人が連鎖を直して、もう一度点検を頼みます。

この反復では、Claudeに連鎖を書き換えさせない点が肝心です。書き換えを任せると、事実が足りない段を再び文章で埋めてしまいます。

真因にたどり着いたかを逆向きに確かめる

連鎖の全段が「根拠あり」になったら、最後に逆向きの読み下しで確認します。最下段から上へ、「だから」でつないで読み、各段が成り立つかを見る方法です。

次の連鎖を、最下段から最上段に向けて「だから」でつないで読み上げ、
つなぎ目で成り立たない箇所があれば指摘してください。
また、最下段の原因を取り除いた場合に、最初の不具合が
再発しない理由を、資料の記録に基づいて説明してください。
説明できない場合は、その旨を書いてください。

「最下段を直せば再発しない」と資料から説明できないなら、そこは真因ではない可能性があります。説明できない理由が、さらに確認すべき項目になります。

任せる範囲と人が決める範囲

作業Claudeに任せる人が決める
連鎖の各段と資料の突き合わせClaudeに任せる該当箇所の引用、根拠なしの指摘人が決める引用が正しいかの確認
飛躍の型の判定Claudeに任せる5つの型への当てはめ案人が決める型の採否
確認項目の列挙Claudeに任せる現場で確かめる候補人が決める実施の優先順位と実施そのもの
真因の決定Claudeに任せる逆向き読みの下書き人が決める真因の確定と対策の承認

真因の確定は、現場の観察と責任者の判断で行います。Claudeの判定は、確かめる順序を決める補助です。

つまずきやすい点

  • 資料に無い事実が根拠として挙がる: 引用の欄に、資料に存在しない文が出ることがあります。引用された箇所を原本で検索して確かめます。見つからなければ、その段を「根拠なし」に戻します。
  • 指摘が多すぎて追えない: 全段が「飛躍」と返るときは、渡した事実が少なすぎる場合があります。確認済みの事実を足してから、もう一度点検させます。
  • 同じ表現の言い換えで「根拠あり」になる: 段2の主張が、段1の言い換えにすぎない場合があります。5つの型のうち「対策の言い換え」に当てはまらないかを、指示文で確かめさせます。
  • 長いチャットで事実が混ざる: 反復が増えると、どの事実がいつ確認されたかが見えにくくなります。区切りのたびに、確認済みの事実の一覧を出させ、新しいチャットで続けます。Memoryをオフにして始める操作は、上のStepのとおりです。

近い分析との使い分け

顧客に返す8D報告書の中で原因を扱う場合は、手順の全体をClaudeで顧客クレームの8D報告書を過去の不良記録から下書きするにまとめています。報告書の欄を埋める作業は、そちらが対象です。

数値の変動に理由を付ける作業は、不具合の連鎖とは性質が異なります。月次の差異なら、Claude for Excelで月次変動分析 — 前月比と前年同月比の理由メモを作るで、理由メモに根拠を添える流れを扱います。

また、資料に出典を付け、事実と解釈を分ける考え方は、SWOT・3C分析の下書きの手順と共通しています。

まとめ

なぜなぜ分析をClaudeに任せるときの危うさは、連鎖が自然な文章で出てくる点にあります。展開させず、点検させると、出力は「次に確かめる項目」の一覧になります。Projectに記録を置き、指示文で「資料に無ければ根拠なし」と固定し、判定表で受け取ります。表の判定を信じ切らず、引用箇所は原本で確かめます。真因の確定は、現場で確かめた事実を持つ人が行います。

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