KPIツリーの作り方 — Claudeで分解し指標定義表とArtifactの図まで仕上げる
売上などの最上位指標を一段ずつ分解し、各指標の定義・算出元・更新頻度を表にして、ツリーをArtifactの図にするまでの手順です。分解の抜け漏れを人が確かめる5つの点も扱います。
ClaudeでKPIツリーを作ると何が手に入るか
KPIツリーは、売上や利益のような最上位の目標を、要因に分けて枝分かれさせた図です。一番下の枝まで降りると、現場が毎週動かせる数字にたどり着きます。
Claudeに任せると、分解の下書きと指標定義表、ツリーの図を同じ会話の中で作れます。ただし、分解の筋が事業に合っているかを決めるのは人です。この記事は、Claudeに書かせる範囲と人が確かめる範囲を分けながら、最上位指標から定義表つきのツリーまでを組み立てる手順です。
完成物は2つあります。1つは指標定義表で、各指標の定義・算出元・更新頻度・担当を1行ずつ書いた表です。もう1つはツリーの図で、Artifactとして保存し、あとから直したり共有したりできます。
手順1最上位指標と前提を人が決める
最初に人間が決めるのは、ツリーの根になる指標です。ここをClaudeに選ばせると、一般的な「売上」や「利益」が並ぶだけで、事業の課題に刺さるツリーになりません。
決める項目は次の4つです。
| 項目 | 例 | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 最上位指標 | 例月次のオンライン売上 | 決めないと起きること分解の軸が毎回ぶれる |
| 期間と単位 | 例月次・税抜・円 | 決めないと起きること同じ名前の指標で数字が合わなくなる |
| 事業モデル | 例単品EC、定期購入、予約制サービスなど | 決めないと起きること売上の式が事業と食い違う |
| 使う場面 | 例週次の定例会で見る | 決めないと起きること枝の細かさが合わない |
使う場面は特に効きます。経営会議で見るなら3段で足ります。現場の担当者が毎週動かす数字まで降りるなら、4〜5段が要ります。
会話の冒頭に、これらをそのまま貼ります。
これからKPIツリーを一緒に作ります。前提は次のとおりです。
- 最上位指標: 月次のオンライン売上(税抜・円)
- 事業: 化粧品の単品EC。定期購入はなし
- 使う場面: 毎週月曜の定例会で、担当者が動かせる数字まで見る
- 現在の悩み: 売上は横ばいだが、広告費だけが増えている
まず分解の方針を2案出してください。まだ表や図は作らないでください。最後の一文が肝です。最初から表と図を求めると、Claudeは1案だけを仕上げに向かいます。方針の段階で止めて、案を比べてから進みます。
手順2一段ずつ分解させて、式を確認する
分解は一段ずつ進めます。全体を一度に出させると、段ごとの食い違いを見落としやすくなります。
KPIツリーの分解には、大きく2つの型があります。
分解の型は2つ
掛け算型
売上=客数×客単価のように、積で表せる要因に分けます。各枝が式でつながるので、1本の枝を改善したときの影響を計算しやすい型です。
足し算型
売上=新規顧客の売上+既存顧客の売上のように、内訳に分けます。構成比は見えますが、枝を動かしたときの効き方は式では出ません。
迷ったら、上位は掛け算型、下位は足し算型の混在も珍しくありません。ただし、1つの親の下では型を揃えます。同じ親の下に掛け算の枝と足し算の枝が混ざると、式として成り立たなくなります。
依頼文は、段を指定して式を書かせる形にします。
採用した方針A(売上=客数×客単価)で、第1段を分解してください。
出力は次の形式のテキストのツリーにしてください。
- 各ノードに「式」を添える(例: 売上 = 客数 × 客単価)
- 子ノードを足し合わせても親と一致するか、1行で自己点検する
- 迷った箇所は「要確認」と書き、理由を1文で添える「要確認」を書かせておくと、Claudeが無理に埋めた箇所が見分けられます。出てきた分解は、次のような構造になります(例として手で書いたものです)。
月次売上
├─ 客数
│ ├─ 新規客数 = 訪問数 × 購入率
│ └─ 既存客数 = 前月までの購入者数 × 再購入率
└─ 客単価 = 平均購入点数 × 平均商品単価第1段が固まったら、次の段へ進みます。段ごとに「子ノードの式から親が復元できるか」を確かめてから進むと、後から直す量が減ります。
手順3指標定義表を作る
ツリーの枝が出そろったら、枝ごとの定義を表にします。ツリーだけでは、同じ「購入率」でも分母が訪問数なのかセッション数なのかが分かりません。ここが決まっていない指標は、会議のたびに数字が食い違います。
表の列は5つに絞ります。
| 列 | 書く内容 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 指標名 | 書く内容ツリー上の名前と同じ表記 | 書き方の例購入率 |
| 定義(式) | 書く内容分子と分母、除外条件まで | 書き方の例購入完了セッション数 ÷ 全セッション数(社内アクセスを除く) |
| 算出元 | 書く内容数字を取るシステムと画面 | 書き方の例アクセス解析のコンバージョン画面 |
| 更新頻度 | 書く内容いつ数字が入れ替わるか | 書き方の例日次(翌朝に確定) |
| 担当 | 書く内容数字の定義を決める人 | 書き方の例マーケ担当 |
「担当」は、数字を作る人でなく、定義を変えてよいか判断できる人を書きます。定義が変わったときに過去の数字をどう扱うかも、その人が決めます。
依頼文は、ツリーの全ノードを表に落とす形です。
確定したツリーの全ノードについて、次の5列の表を作ってください。
指標名 / 定義(式) / 算出元 / 更新頻度 / 担当
条件:
- 算出元と担当は、私が渡した情報にある範囲でだけ書く
- 情報が無い欄は推測で埋めず、「未定」と書く
- 同じ名前で定義が2通り考えられる指標は、行の末尾に「定義が割れる可能性」と注記する2つ目の条件が重要です。算出元や担当は、Claudeが社内の事情を知らない領域です。何も言わなければ、もっともらしいシステム名や部署名で埋めてきます。「未定」を許可しておけば、その空欄がそのまま人の仕事の一覧になります。
表ができたら、各指標について算出元の数字を1つだけ実際に引いてみます。定義どおりに計算した値と、現場で見ている値が合うかを確かめる作業です。
手順4ツリーをArtifactの図にする
表が固まってから、図を作ります。図は、ツリーの構造と指標の現在値を一枚で見せるのが目的で、定義の置き場所は表です。
Artifactは、Claudeが作った成果物を会話の横で開く領域です。内容が長く、あとで直したり使い回したりしそうなときに作られます。ダイアグラムやフローチャート、ダッシュボードもArtifactになります。作ったものは、サイドバーのArtifactsタブに保存されます。
ツリーの図には、文章でなくノードを描かせる依頼が向きます。
確定したツリーと指標定義表をもとに、KPIツリーの図をArtifactで作ってください。
- 親子関係を線でつなぐ
- 各ノードに指標名と、直近の実績値の入力欄を置く
- ノードを押すと、定義表の該当行(定義・算出元・更新頻度・担当)を表示する
- 実績値は私が入力する。サンプル値を勝手に入れない最後の条件を入れないと、見栄えのために架空の数字が並びます。数字が入った図は本物に見えるので、入力欄は空のまま渡してもらいます。
実際の数字を流し込みたいときは、Artifactsのテンプレートに「Dashboards(ベータ)」があります。データ基盤やSalesforceのような接続済みアプリのデータからダッシュボードを作り、各グラフにはクエリと最終更新時刻が表示されます。算出元の列に書いた内容と、グラフが実際に使うクエリが一致しているかを見比べる材料になります。
Artifact自体も、接続したアプリに読み書きできます。初めて接続アプリが必要になったとき、Claudeが使うアプリとツールを示し、承認を求めます。個々のツールはオフにでき、選択はそのArtifactの次回以降に引き継がれます。操作のたびに承認が要るコネクタのツールは、Artifactからは使えません。ProとMax、Team、Enterpriseの各プランが対象で、webとデスクトップで使えます。
ツリーに入れる数字が、そもそもどの書類から来るのか知りたいときは、請求書や入出金から収支の数字を作るClaude中小企業経理ガイドが参考になります。
手順5分解の抜け漏れを人が確認する
図ができても、ツリーが正しいとは限りません。Claudeの分解は構文として整っていて、読むと納得してしまうからです。人が確かめる点は、次の5つに絞れます。
人が確かめる5つの点
1. 足したら親に戻るか
子ノードを組み合わせたとき、親の数字が再現されるか。実績値を1か月分入れて、掛け算や足し算が合うかを電卓で確かめます。
2. 抜けと重なり
子どうしが重なっていないか、親の要素が子に漏れていないか。「その他」の枝が大きいときは、分解の切り口が粗いサインです。
3. 動かせる枝か
一番下の枝を、担当者が実際に動かせるか。天候や為替のように、自分では動かせない指標は、参考値と分けて印を付けます。
4. 定義が割れていないか
同じ名前の指標が、部署ごとに別の式で使われていないか。現場の担当者に定義表を読んでもらい、「うちはそう数えていない」の声を拾います。
5. 算出元が実在するか
表に書いた画面やシステムから、実際にその数字が取れるか。取れない指標は、ツリーに残すか、計測の仕組みを先に作るかを決めます。
どれもClaudeに「確認して」と頼むだけでは足りない点です。1と5は実データに触れないと答えが出ません。3と4は、現場の知識を持つ人の判断になります。
2だけは、Claudeに下書きを頼めます。「このツリーで、親の要素が子に漏れている箇所と、子どうしが重なっている箇所を挙げて」と頼み、挙がった指摘を人が採否します。挙げさせる前に正解を教えない点がコツで、先に結論を渡すと、Claudeはそれに合う指摘しか返さなくなります。
先行指標と遅行指標の区別も、この段階で入れておくと使いやすくなります。売上のように結果が出てから分かる数字を遅行指標、訪問数のように先に動く数字を先行指標と呼びます。表に列を1つ足して、各行に印を付ければ足ります。
手順6直して、共有する
初版を直すときは、会話でClaudeに頼みます。ドキュメントやMarkdownのArtifactなら、直したい文を選んで「Edit with Claude」を押すと、選んだ箇所をその場で直せます。過去のメッセージを編集すると、別の版のチャットが生まれ、それぞれが別のArtifactを持ちます。「第2段を3つに割った版」を試すときに、元のツリーを残せる方法です。
直し方は、場所を1つずつ指定する形に限ります。
「既存客数」の定義を、「前月までの購入者数」から
「直近12か月の購入者数」に変更してください。
- ツリー上のノードと、指標定義表の該当行の両方を直す
- 影響を受ける子ノードの式があれば、一覧で示すツリーと表を同時に直す、と書き添えるのがポイントです。片方だけ直すと、図と表で定義が食い違います。
共有は、Artifactを開いて「Share」から行います。Artifactは作った時点では自分だけが見られる状態で、共有するまで他の人には開かれません。
Team・Enterpriseでは、組織内に留める設定が既定です。「Anyone with the link」は、Ownerが外部共有をオンにしている場合に限り選べます。灰色で選べないときは、OwnerかPrimary Ownerに頼みます。組織外に出す設定の見方は、Claude Artifactsの管理者が組織外共有を制御する設定手順にあります。
特定の人に渡すなら、メールで招待する方法(ベータ)が使えます。招待された人は、そのメールアドレスのClaudeアカウントでサインインして開きます。権限は「Can view」「Commenter」「Can edit」の3段階から選びます。経営層には閲覧、現場の担当者には指標へのコメント権限、というように分けられます。
共有設定はiOS・Androidのアプリでは変えられません。変更はwebかデスクトップアプリで行います。
実績値を記入したツリーは、数字をそのまま見せてよい相手かを確かめてから共有します。「Anyone with the link」ではリンクを知る人が開けるので、売上のような数字は招待した人だけに絞る選択肢もあります。
Artifactに数字を残したいときは、Artifactのストレージ機能が使えます。ジャーナルやトラッカーのように、セッションをまたいでデータを持てます。個人用は自分にだけ、共有用は使う人全員に同じデータが見えます。容量は1つのArtifactにつき20MBで、保存できるのはテキストだけです。ProとMax、Team、Enterpriseのwebとデスクトップが対象で、どのデータを共有側に置くかは作った人が決めます。実績値を入れる前に、そのツリーが共有ストレージを使っていないかを確かめてください。
書き出して使い回す
ツリーと定義表を別の資料に載せたいときは、テンプレートから作った成果物を書き出せます。DocsはWord・PDF・Markdown・Google Docs、Designはzip・PDF・PowerPoint・単体HTMLに対応しています。指標定義表を文書として配るなら、Docsにして書き出す流れが自然です。文書の作り方はClaude Docsの使い方にあります。
図の形の整え方は、Claudeでのフローチャート作成手順が参考になります。顧客の行動から施策の抜けを洗う作業は、Claudeでカスタマージャーニーマップを作成する手順と考え方が近い手順です。
よくあるつまずき
ツリーを作る過程で起きやすい失敗を、原因とともに並べます。
| つまずき | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 子ノードを足しても親に合わない | 原因重なりや漏れがある | 対処実績値1か月分で検算し、差が出た枝を分け直す |
| 表の算出元が、存在しない画面名になる | 原因「未定」を許可していない | 対処依頼文に「推測で埋めない」を入れて作り直す |
| 図に架空の数字が入る | 原因実績値の扱いを指定していない | 対処「入力欄は空のまま」と指定する |
| 図と表で定義が違う | 原因片方だけ直した | 対処修正依頼に「両方を直す」と書く |
| エラーで図が表示されない | 原因コードの不具合 | 対処エラーの近くの「Try fixing with Claude」から修正を依頼する |
| 枝が細かくなりすぎる | 原因使う場面を決めていない | 対処定例会で動かす数字の粒度までに止める |
エラーが出たときは、画面のボタンでエラーの詳細が新しいメッセージに貼られます。送れば、Claudeが原因を調べて直そうとします。直るとは限らず、追加の確認が必要な場合もあります。
運用に乗せる
ツリーは作って終わりにすると、半年で実態と離れます。事業が変わると、分解の切り口も変わるからです。四半期に一度、最上位指標と第1段の式だけを見直す運用が、負担と鮮度の釣り合いを取りやすい頻度です。
見直すときは、前回のツリーをArtifactsタブから開き、同じ会話の続きで「今期の施策で新しく増えた指標を足して」と頼みます。新しい指標を足したら、定義表の同じ行にも担当と算出元を書き込みます。
担当者が数字を見る場所を一つに決めておくと、定義の食い違いが起きにくくなります。ツリーの図を週次の定例会で開く画面にして、別の資料に同じ数字を転記しないようにします。