Claudeでカスタマージャーニーマップを作成する手順 — Artifactsで施策の抜けを洗う
認知・検討・購買・継続の各段階について、行動・感情・タッチポイントをClaudeでArtifactsの表と図にまとめ、施策の抜けを洗い出す手順です。材料の置き方、依頼文の型、共有までを扱います。
Claudeでカスタマージャーニーマップを作る
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品を知ってから使い続けるまでの流れを、段階ごとに一枚へ並べたものです。Claudeなら、手元のインタビューメモやアンケート結果を渡して、表とインタラクティブな図の両方を一度に作れます。
この記事では、認知・検討・購買・継続の4段階を例に、各接点での顧客の行動・感情・タッチポイントをArtifactsにまとめる手順を書きます。最後の工程は、できあがったマップを見て施策の抜けを洗い出す作業です。マップは眺めて終わりでは意味が薄く、手を打っていない接点を探して初めて使えます。
人物像そのものを作りたい場合は、Claudeで顧客データからカスタマーペルソナを作る手順が先です。ここではペルソナができている前提で、購買までの段階とタッチポイントに話を絞ります。
始める前に確認すること
Artifactsを使うには、設定のCapabilitiesでクラウド上のコード実行とファイル作成をオンにしておきます。Free・Pro・Maxは個人の設定画面、Team・Enterpriseは組織設定側にあります。オフのままだと、作った表や図が画面の横に開きません。
Artifactsは、Free・Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使えます。Claude Docs・Slides・Designといったテンプレートは有料プラン限定のベータで、Enterpriseでは所有者がテンプレートごとにオンにするまで使えません。表と図を作るだけなら、無料プランでもチャットの中で完結します。
用意する材料は次のとおりです。
| 材料 | 役割 | 無くても始められるか |
|---|---|---|
| ペルソナの要約 | 役割誰のジャーニーかを固定する | 無くても始められるか始められる(仮の顧客像で代用) |
| インタビュー・アンケート | 役割感情や引用の根拠になる | 無くても始められるか始められるが根拠が薄くなる |
| 現状の施策一覧 | 役割抜け漏れ判定の比較対象 | 無くても始められるか抜けの洗い出しに必須 |
| 自社の接点リスト | 役割タッチポイントの候補 | 無くても始められるか始められる |
手順1: 材料をProjectに置く
同じ顧客について何度も手直しするなら、Projectに材料を置きます。Projectは独自のチャット履歴とナレッジベースを持つ作業空間で、アップロードした文書がその中の全チャットの文脈になります。プロジェクト指示に役割や口調を書くこともでき、たとえば「B2B SaaSの事業企画担当として答える」と入れておけます。
ファイルの上限は場面で変わります。
| 置き場所 | 1ファイルの上限 | 点数 |
|---|---|---|
| 個別のチャット | 1ファイルの上限500MB | 点数1チャット20ファイルまで |
| Projectのファイル | 1ファイルの上限30MB | 点数数は無制限(合計がコンテキストウィンドウに収まる範囲) |
Projectのファイルは、画像を含むPDFを除いてテキストの抽出だけが行われます。インタビュー記録に貼った図表は読まれないと考えて、重要な数字は本文に書き出しておきます。XLSXを渡すときも、コード実行とファイル作成のオンが条件です。
有料プランでは、プロジェクトの知識が上限に近づくとRAGモードが自動で有効になり、容量が最大10倍まで広がります。
手順2: 段階と観点を先に決めて依頼する
Claudeにいきなり「ジャーニーマップを作って」と頼むと、一般論の並んだ無難な表になります。効くのは、行(観点)と列(段階)を人間側で先に決めておくことです。
添付のインタビュー記録12件と、ペルソナ要約を読んで、
「中小企業の経理担当者」のカスタマージャーニーマップを作ってください。
段階は「認知・検討・購買・継続」の4つです。
各段階について次の行を埋めてください。
- 顧客の行動
- 顧客が考えていること
- 感情(5段階。理由を1文で)
- タッチポイント(自社・他社・口コミを区別)
- 根拠(どのインタビューの発言か。無ければ「推測」と書く)
表と、感情の上下が分かる図を、1つのアーティファクトにまとめてください。最後の「根拠」の行が肝です。インタビューに無い内容を「推測」と明示させておくと、マップの中で事実と仮説を見分けられます。この行を省くと、Claudeの補った内容が実データと同じ顔で並びます。
手順3: 表と図をどう出すかを決める
Claudeは会話の中でカスタム図解を作れます。フローチャートやグラフ、並べて比べる図などが、回答の途中にそのまま描かれます。ただしこの図解は、既定では会話が進むと消える一時的なものです。
残したいときの選択肢は次の3つです。
- 画像としてコピーする(資料に貼る用)
- SVGまたはHTMLとしてダウンロードする
- アーティファクトとして保存し、あとから編集や公開を続ける
ジャーニーマップは何度も手直しする成果物なので、最初からアーティファクトとして依頼します。感情曲線のような複雑な図を狙うなら、Opusに切り替えると複雑な図が出やすくなります。可視化にはOpusが向くと公式ヘルプが案内しています。
Claudeが図を出さず文章で返してきたときは、「図にして」「表とグラフにして」と言い直します。カスタム図解はベータ機能で、期待した場面で必ず出るとは限りません。
手順4: 編集を重ねてマップを仕上げる
初版はほぼ必ず、いくつか直したい箇所が出ます。編集の方法は3通りあります。
- Claudeに直してほしい内容を会話で伝える
- ドキュメント形式のアーティファクトなら、直したい文を選択して「Edit with Claude」を押し、その場で依頼する
- 過去のメッセージを編集して、別バージョンのチャットを作る
3つ目は、たとえば「購買」を「申込」と「導入」の2段階に割った版を試したいときに向いています。元の会話とアーティファクトは残るので、比べながら選べます。
日をおいて手直しに戻るときは、ClaudeのサイドバーにあるArtifactsタブを開きます。作ったものはすべてここに保存されていて、どの会話からでも探し直せます。テンプレートから新しく始める入口も同じタブです。四半期ごとにマップを見直す運用なら、前回の会話を掘り返すより、このタブから前回のマップを開いて「今回のインタビュー3件を反映して感情を直して」と続けるほうが早く済みます。
依頼文の型は「段階Aの感情を、インタビューの発言に合わせて2から1に下げ、理由を書き直して」のように、直す場所と根拠を1つずつ指定する形です。まとめて「全体的にもっとリアルに」と頼むと、直った箇所を人間が追えなくなります。
手順5: 施策の抜け漏れを洗い出す
マップができたら、同じ会話で現状の施策を渡して突き合わせます。
次に添付する現状の施策一覧(メルマガ・ウェビナー・営業訪問・
導入後サポートなど)を、マップの各タッチポイントに割り当ててください。
そのうえで、次の3点を別のアーティファクトの表にまとめてください。
1. 感情が「2以下」なのに、自社の施策が1つも無い接点
2. 施策が複数あるのに、感情が動いていない接点
3. 他社・口コミが主なタッチポイントで、自社が関与できていない接点
各行に「打ち手の候補」を1つずつ添え、根拠が推測の行は印を付けてください。見るのは感情が落ち込む接点です。落ち込みの前後に施策が無い箇所は、手を打つ優先度の候補になります。逆に、施策が厚いのに感情が動かない接点は、費用のかけ方を見直す材料です。
出てきた「打ち手の候補」は、あくまでClaudeの提案です。実際に実行するかどうかは、実測の数値や担当部署の事情を知る人間が決めます。根拠列が「推測」の行は、次のインタビューで確かめる項目として残します。
マップを共有する・書き出す
アーティファクトは、作った時点では自分だけが見られる状態です。共有するときは公開範囲を選びます。
テンプレートから作ったものは、書き出し形式が決まっています。
| 種類 | 書き出せる形式 |
|---|---|
| Docs | 書き出せる形式Word・PDF・Markdown・Google Docs |
| Slides | 書き出せる形式PowerPoint・PDF |
| Design | 書き出せる形式zip・PDF・PowerPoint・単体HTML |
文章中心のジャーニーマップをDocsで作れば、Wordに落として関係者へ回せます。ドキュメントの作り方はClaude Docsの使い方にまとめています。経営会議向けに見せたいときは、Slidesで作ってPowerPointに書き出す選択肢もあります。
共有前に確認することが2つあります。1つ目は、共有相手にマップ以外の何が見えるかです。インタビュー記録に個人名が入っているなら、匿名化した版を別に作って、その版から図を作り直します。2つ目はアーティファクトが共有ストレージを使っていないかで、共有ストレージは利用者全員が同じデータを見ます。マップに顧客の声を蓄積する機能を足すなら、保存先を先に確認します。
つまずきやすい点
- 図が開かない: Capabilitiesでコード実行とファイル作成がオンかを確認する
- スマートフォンで編集できない: iOS・Androidでは、結果をArtifactsタブで見るまで。テンプレートからの作成や編集、共有設定はWebかデスクトップで行う
- Coworkで作った図を共有できない: Coworkのカスタム図解は共有リンクで他人に描画されない。共有する図はチャット側で作る
- 2026年8月19日より前にCoworkで作ったマップを更新したい: これはライブアーティファクトとして動き続けるものの、その場では編集できない。定期的に直す前提のマップは、チャット側で作り直してから運用を始める
- 2026年9月16日より前の会話で作ったもの: 旧アーティファクトとして動き続け、公開と共有もできるが、新規作成はできない
- エラーが出たとき: 「Try fixing with Claude」を押してエラーの内容をそのまま送る。直るとは限らないので、直らなければ別の依頼で作り直す
Claudeのマーケティング活用の中でどこに置くか
ジャーニーマップは、単発で作って終わりにしないほうが効きます。ペルソナを作る、ジャーニーを描く、施策の抜けを洗う、というのは一続きの流れです。Projectに顧客の材料とプロジェクト指示を置き、Claudeのマーケティング活用で扱うブランドの型や競合調査と並べておくと、次回の更新がその場で始まります。具体的には、Projectに最新のインタビュー記録と施策一覧を差し替えて置き、新しいチャットで「前回のマップを、追加した資料に合わせて更新して」と頼む形です。指示に段階の定義と行の並びを書いておけば、更新のたびに表の形が変わることもありません。
図解の見せ方に迷うときは、Claudeでのフローチャート作成手順が参考になります。Sankey形式のような図の種類の指定や、Mermaidへの書き出しは、そちらの手順がそのまま使えます。Projectの容量や公開まわりはClaude Projects完全ガイドにあります。
まとめ
Claudeでのジャーニーマップ作成は、材料をProjectに置き、段階と観点を人間が決め、根拠の列付きで表と図を依頼する流れで進みます。仕上げに現状施策を渡して、感情が落ちるのに手を打っていない接点を洗い出します。
肝は2点です。1つは、事実と推測を根拠列で分けること。もう1つは、初版で満足せず、直す場所を1つずつ指定して回すことです。図の見栄えより、この2点でマップの信頼度が決まります。