Claudeでeラーニング研修動画の台本を作る手順 — 構成とナレーションを分ける
研修動画の台本を、スライド構成案とナレーション台本の2段階に分けてClaudeで作り、PowerPointのテンプレートへ流し込む手順をまとめます。
eラーニング教材や研修動画の台本は、スライドの構成案とナレーション台本を別々の成果物として作ると、Claudeで安定して回せます。1回の依頼で両方を書かせると、スライドの文字が読み上げ原稿に引きずられて長くなり、ナレーションはスライドの箇条書きの言い換えに終わりがちです。
この記事では、学習目標を固定してから構成案を表で出し、スライド番号をキーにナレーションを別出しし、最後にPowerPointのテンプレートへ流し込む流れを説明します。動画そのものの書き出しや音声の合成は、Claudeの仕事に含めません。
3つの成果物と、それぞれを作る場所
台本づくりは、学習目標、スライド構成案、ナレーション台本の3つに分けて考えます。作る場所は次のように振り分けられます。
成果物ごとの作業場所
学習目標・受講者条件・文体ルール
場所はClaudeのプロジェクトです。何本作っても同じ前提で書かせるための土台になります。
スライド構成案(表)
場所はClaudeのチャットです。1枚1メッセージで骨格を固めます。
ナレーション台本
場所はClaudeのチャットで、Word文書でも構いません。スライド番号と1対1で対応させます。
完成スライド
場所はPowerPointのClaudeアドインです。社内テンプレートに沿って組み上げます。
プロジェクトは、独自の会話履歴とナレッジベースを持つ作業スペースです。文書や文脈をアップロードでき、プロジェクト指示でトーンや役割も指定できます。研修の連載で口調を揃えたいときの考え方は、Claudeでポッドキャスト台本を構成から作る手順と共通です。
手順1: 学習目標と受講者条件を先に固定する
台本の質は、最初に渡す条件でほぼ決まります。プロジェクトの指示欄に、次の項目を書いておきます。
# 研修コンテンツ制作ルール
- 受講者: 入社1年目の営業職。業界用語は初出で必ず説明する
- 1本の長さ: 5分(ナレーション秒数の実測値は別紙に記載)
- 学習目標: 各動画の冒頭で「見終わったらできること」を1文で示す
- 1スライド=1メッセージ。スライドの文字は体言止めの短い句にする
- ナレーションは話し言葉。1文は40字前後で切る
- 社外秘の顧客名・数値は仮名にする「ナレーション秒数の実測値」は、自分で数える項目です。担当者が実際に1本読み上げて秒数を測り、「1スライドあたりの平均字数」として指示に書き足します。一般的な読み上げ速度を機械的に当てはめるより、自社の話し方に合った字数配分になります。
手順2: スライド構成案を表で出させる
構成案の段階では、ナレーションを書かせません。スライド番号、見出しメッセージ、載せる要素、想定秒数だけを表にします。
次の研修テーマで、動画1本ぶんのスライド構成案を作ってください。
テーマ: 新規顧客への初回ヒアリングの進め方
元資料: 添付の営業マニュアル第3章
出力は表で、列は次の4つだけにしてください。
スライド番号 / このスライドで伝える1メッセージ / 載せる図表・要素 / 想定秒数
ナレーション文はまだ書かないでください。
最後に、学習目標に対して抜けている論点があれば別途挙げてください。出力は、例えば次のような表になります(形式の例です)。
| No. | 1メッセージ | 載せる要素 | 秒数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1メッセージこの動画で身につくこと | 載せる要素学習目標1文 | 秒数20 |
| 2 | 1メッセージヒアリングの目的は課題の特定 | 載せる要素3ステップの図 | 秒数40 |
| 3 | 1メッセージ最初の質問は状況確認から | 載せる要素質問例の吹き出し | 秒数45 |
構成案の段階で直す価値は大きいです。ナレーションまで書き上げた後に順序を入れ替えると、台本全体の繋ぎが崩れるためです。「スライド3と4を入れ替えて」「論点Cを独立した1枚にして」といった修正は、この表に対して行います。
末尾の「抜けている論点」の依頼は、Claudeに補完させるのではなく、元資料との照合を求める点がポイントです。指摘された論点が元資料に本当にあるかは、必ず人が確かめます。
手順3: ナレーション台本をスライド番号に紐づけて別出しする
構成案が固まったら、同じ会話の中でナレーションを書かせます。スライド番号をキーにして、1行が1スライドに対応する形にしておくと、後工程の収録・字幕・差し替えで迷いません。
確定した構成案に沿って、ナレーション台本を作ってください。
- スライド番号ごとに見出しを立て、その下にナレーション本文を書く
- 各スライドの想定秒数に収まる字数にする
- 画面の文字を読み上げるだけにせず、画面にない補足を1つ足す
- 専門用語は初出のスライドで説明する
- 各スライドの末尾に【画面操作メモ】として、強調するタイミングを書く画面の文字をそのまま読み上げると、受講者には同じ情報が二重に届き、冗長になりがちです。画面には要点、音声には補足という役割分担を、指示の段階で明示します。
台本ができたら、想定秒数との整合を確認させます。ただし、Claudeが返す字数や秒数の見積もりは目安です。収録前に担当者が声に出して読み、実際の所要時間を測って修正します。
手順4: PowerPointのテンプレートへ流し込む
構成案とナレーションが揃ったら、スライドとして組み上げます。使い方は2通りあります。
Claudeのチャットでファイルを生成する方法は、コード実行とファイル作成の機能でPowerPoint(.pptx)を作れます。この機能はFree・Pro・Max・Team・Enterpriseの全プランで、Web・デスクトップ・モバイルが対象です。Free・Pro・Maxでは、設定の「Capabilities」で「Code execution and file creation」をオンにします。生成ファイルの上限は1ファイル30MBです。Teamでは既定でオン、Enterpriseでは新規の組織で既定オンです。組織のオーナーは組織設定の「Capabilities」から無効にできます。
PowerPointのClaudeアドインを使う方法は、社内テンプレートが決まっているときに向いています。アドインは、開いているデッキのスライドマスター、レイアウト、フォント、配色を読み取って生成します。テンプレートを適用した状態で依頼するのが、公式のベストプラクティスにも挙がっています。
.pptxの作り方は2通り
チャットで.pptx生成
CSVなどのファイルをアップロードして、資料化を頼めます。テンプレートは依頼文で指定します。
PowerPointアドイン
Pro・Max・Team・Enterpriseで使えます。開いているデッキの中で、選択したスライドだけを編集できます。
アドインへの依頼は、構成案の表を貼り付けて行います。
テンプレートは適用済みです。貼り付けた構成案の表どおりに、
スライド2〜8を作成してください。
- 各スライドは「1メッセージ」の見出し+図表または短い箇条書きだけ
- 手順の流れは、編集できるプロセス図にしてください
- 文字量が多い場合は、スライドを分割せず文言を削って提案してくださいアドインには「箇条書きを図やネイティブチャートに変える」機能があります。生成物は画像ではなく、あとから編集できるオブジェクトです。手順の流れ図やデータの棒グラフは、この機能に任せると作業が減ります。
手順5: 確認テストと台本の検品を作る
eラーニングでは、動画の後に理解度確認が付くことが多いです。ナレーション台本が固まった時点で、同じ会話の中に確認問題を作らせます。
確定したナレーション台本から、理解度確認の問題を5問作ってください。
- 各問が、動画のどのスライド番号の内容を問うのか明記する
- 台本に書いていない知識を問う問題は作らない
- 正答と、誤答を選んだ人向けの解説を付ける「台本に書いていない知識を問わない」という制約が、検品のカギです。動画で教えていない内容が設問に出ていないかを、スライド番号の対応から人がチェックできます。研修全体の教材づくりは、塾講師・家庭教師の教材作成にClaudeを使う方法と考え方が近く、対象者の理解度に合わせた出し分けはClaudeで教科書を読解レベル別の教材に変換する手順が参考になります。
組織で使うときの管理者側の設定
研修部門に展開するときは、管理者の設定で使える範囲が変わります。アドインはMicrosoft 365管理センターの「統合アプリ」から配布できます。「Let users access the Office Store」を無効にしている組織では、管理者が配布してもアドインが利用者に表示されないことがあります。その場合はカスタムマニフェストで配布します。
チャットで.pptxを作る機能のネットワーク設定は、同じヘルプ記事の中で記述が分かれています。「Availability」では、TeamとEnterpriseのネットワークアクセスはどちらも既定でオフです。手順の節では、Teamの既定は「パッケージマネージャーのみ許可」で、Enterpriseはオフです。社外秘の教材を扱う組織は、オーナーが「Organization settings」の「Capabilities」で実際の設定を見ます。MCP連携を有効にしていると、ネットワーク設定にかかわらず、その接続を通した通信は可能です。
台本の型を繰り返し使えるようにする
研修動画は1本で終わらず、シリーズになりがちです。型を毎回書き直さずに済むよう、2か所に残せます。
1つ目は、PowerPointアドインの設定にある「Instructions」欄です。「1行の箇条書きだけを使う」「強調にはブランドカラーの青を使う」といった指示を、PowerPoint内のすべての会話に効かせられます。この指示はPowerPointだけに適用され、WordやExcelとは別枠です。
2つ目は、Skillsです。有効にしたSkillは、Claude for M365のすべてのアドインで使え、関連するものは自動で適用されます。サイドバーで / を入力すると、そのアプリ向けのSkillが並び、選んで呼び出せます。「構成案の表を作る」「ナレーションを画面と分離して書く」「確認問題を作る」の3つを、それぞれSkillにしておく運用が考えられます。公式の例では、PowerPointで /deck-check のようなSkillを呼び出します。作り方はClaude Skillsとは・使い方にあります。配色やロゴの規定は、ClaudeのブランドガイドラインをSkill化して資料に自動適用するの方法で共通化できます。
教材の元資料を社内システムから引くなら、チャット入力欄の下の「+」ボタンから「Connectors」を開いて接続先を選びます。Amazon Bedrock、Google Cloud Vertex AI、Azure AI Foundry、LLMゲートウェイ経由で接続している組織では、ConnectorsとSkillsが使えない場合があります。
つまずきやすい点と、人が見るべき場所
PowerPointアドインは、動く環境が決まっています。対応するのはPowerPoint on the webと、Microsoft 365サブスクリプション付きのWindows版・Mac版です。PowerPoint 2016・2019の永続ライセンス版、ボリュームライセンス版、iPad、Androidでは動きません。研修部門で配布する端末が古い場合は、先にこの条件を照らし合わせます。
アドインの動作条件と保持期間
Windows版の最低ビルド
16.0.13127.20296
Microsoft 365サブスクリプション付き
Mac版の最低バージョン
16.46
入出力データの削除
30日以内
受信・生成から。バックエンド側
データの扱いは、台本の保管場所にも関わります。チャット履歴は端末のブラウザ領域(IndexedDB)に保存され、Anthropicのサーバーには置かれず、端末間でも同期されません。各アドインは同じ保存領域を使うので、ストア版とカスタムマニフェストを入れ替えても保存データは残りますが、履歴の一覧は入れ替えで変わります。一覧はOfficeアプリごとに分かれ、Macでは保存場所もアプリごとです。Web版のOfficeでは、チャット履歴を一時的なものとして扱います。端末を再構築すると、事前にエクスポートしない限りデータは失われます。書き出したファイルには資格情報が含まれます。確定した構成案とナレーションは別の文書に保存しておきます。
組織のデータ保持設定は引き継がれず、Enterpriseの監査ログにも含まれません。Compliance APIを有効にしたEnterpriseでは、PowerPointのセッションがその対象に入ります(公開ベータ)。研修に実在の顧客名や個人情報が入る場合は、手順1で書いたとおり仮名に置き換えてから渡します。
公式ドキュメントは、人間のレビューを経ない最終成果物や、機微・規制対象のデータを含む資料への利用を推奨していません。研修資料でも、法令や社内規程の記述は原典と突き合わせ、最終的な公開判断は担当者が行います。
動画の書き出しや音声の合成は、PowerPointアドインの機能一覧に含まれていません。ここまでの流れで整えるのは、台本とスライドまでです。動画化は、PowerPointの標準機能や別のツールで行います。YouTube向けの台本と撮影計画を並行して作る方法は、ClaudeでYouTube台本と香盤表を作るで扱っています。
まとめ
最初に確定させるのは構成案の表です。ここが固まっていれば、ナレーションの書き直しもスライド化も、スライド番号単位の差し替えで済みます。テンプレートが決まっている組織はアドイン、まず初稿が欲しいならチャット生成から始める、という選択肢があります。