Claudeで教科書を読解レベル別の教材に変換する手順
教科書1ページの写真をClaudeに読み取らせ、読解レベル別のハンドアウトとスライド、確認テストを一括生成する手順とプロンプト例をまとめます。
同じ授業で使う教材でも、生徒の読解力は一様ではありません。教科書1ページをそのまま配ると、上位層には物足りず下位層にはつまずきの元になります。Claudeは教科書の見開きを1枚読み取り、スライド・読解レベル別のハンドアウト・確認テストを同じ内容・同じ基準に沿って一括で作ります。写真やスキャンを渡すだけで、レベルごとの作り直し作業が1回の依頼に置き換わります。
何を渡すと教材一式になるのか
Anthropicの公式実例(Claude Academy)が「必要な材料」として挙げているのは3つです。生徒の名簿ではない点に注意してください。
渡す材料は3つ
教科書ページ
写真・スキャン・PDFのいずれか。実例は地学の見開き(プレートテクトニクスの図解とサイドバー付き)です。
対応させる学習基準
学習基準や到達目標のテキスト。実例は学習基準ESS2を書いた
state-standards-ess2.txtです。各バージョンのルール
いくつに分けるか、何を変え、何を揃えるか。実例では「概念は同じ、語彙と文長だけ変える」です。
生徒ごとの読解レベルを書いた名簿CSV(my-class-roster-levels.csv、A=学年以下、B=学年相当、C=学年以上)は、実例のプロンプトには添付されていますが、公式の「必要な材料」の一覧には入っていません。
読み取りについて、Opus 5はこの解像度なら小さな文字や図のラベルを確実に読み取れるため、欲しい部分に切り抜かず見開き全体のまま渡せます。Opus 5は自分が作る文書やスライドを確認する力も強く、ファイルが最初から完成度の高い状態で返るとされています。
claude.aiで1ページ分を変換する
1回だけ、あるいは数ページ分を試すなら、claude.aiのチャットで完結します。ページの画像と学習基準のファイルを添付し、欲しい成果物と各バージョンの違いを箇条書きで指定します。公式の実例プロンプトは次の形です。
添付したファイル:
tectonics-textbook-p214-215.jpg(元の見開き。図解とサイドバー含む)
state-standards-ess2.txt(対応させる学習基準)
my-class-roster-levels.csv(生徒ごとの読解レベル。A=学年以下、B=学年相当、C=学年以上)
この教科書見開きから、次を作ってください:
・要点をカバーするスライド8〜10枚(図解は1枚に簡略化して再描画)
・1ページの読解ハンドアウト3種(レベルA・B・C。概念は同じで語彙と文長だけ変える)
・学習基準を確認する3問の確認テスト(全レベル共通の設問)
すべてのバージョンで扱う概念と基準を揃えてください。
レベルAで簡略化した語彙は一覧にしてください。プロンプトの肝は、バージョン数・変えるもの・揃えるものを1文で書いていることと、最後の「簡略化した語彙は一覧に」です。モデルの選択はOpus 5にします。ファイル作成機能が有効なら、スライドとハンドアウトが実際の.pptxと.docxのファイルで返ります。
返ってくる5ファイルと、変更点の報告
出力はスライド1本(.pptx)、読解ハンドアウト3本(.docx、レベルごとに別ファイル)、確認テスト1本(.docx)の計5ファイルです。実例では次の名前で返っています。
tectonics-slides.pptx(9枚)tectonics-reading-A.docx〜tectonics-reading-C.docxtectonics-exit-ticket.docx
それぞれが「ESS2-1・ESS2-2に対応」のように、指定した学習基準のどの項目に紐づくかを示した状態で届きます。3レベルすべてが「プレート境界の3種類」「プレート運動の駆動力」「地表に現れる結果(山脈・海溝)」を共通で扱い、レベルCだけがマントル対流のサイドバーを加えます。
レベルAの語彙は、"lithosphere"が「地球の外側の殻」、"asthenosphere"が「その下のやわらかい層」、"subduction"が「一方のプレートがもう一方の下に沈み込む」のように言い換えられ、1文は15語未満に収まります。
ファイルとは別に、短い報告文が付きます。中身は、レベルごとに簡略化した語彙と、ページにあっても入らなかったものです。実例で外れたのは、指定した学習基準の対象外だった「地質学の仕事」というコラムでした。スライド4枚目の図は縮小ではなく、プレート境界3種類をラベル付きで描き直した簡略版で、元ページの小さな挿入地図は「鮮明に再現できなかった」として含められていません。小さな文字は確実に読める一方で、図の再現には限界がある、という両面が同じ出力に出ています。
公式はこの報告文を積極的に使うよう勧めています。書き換え・簡略化・翻案を頼むときは「変更点と除外した内容を一覧にして」と1行足し、原文との逐一比較ではなく、Claudeが下した判断だけを確認する運用です。
4つ目のレベルを足す・スライドの順番を変える
ルールは最初の依頼に書いてあるので、追加は1行で済みます。レベルAをベースに英語・スペイン語の対訳用語集を付け、設問の一部を図表の読み取り問題に替えたバージョンは、次のように頼みます。
レベルA-EL版を追加してください。レベルAと同じ内容に、
重要語5つの英西対訳の用語集ボックスを付け、
設問3の代わりに図表読み取りの設問を1つ入れてください。スライドは、強調する論点を変えて作り直せます。次の依頼では、枚数を保ったまま「地表に現れる結果」から始まる構成に並べ替えます。
地表に現れる結果(山脈・海溝・地震)から始まり、
境界の種類が2番目に来るようスライドを再構成してください。
9枚のままにしてください。どちらも、レベルA・B・Cの区分やファイル形式を書き直す必要はありません。公式は、以前のルールを保ったまま新しいバージョンが加わると説明しています。
単元全体を回すなら、Coworkのプロジェクトに移す
単元で何ページも繰り返すなら、Coworkのプロジェクト機能の出番です。プロジェクトには専用の指示・コンテキスト(ローカルフォルダ、URL、チャットのプロジェクト)・メモリー・定期タスクが付きます。
どちらの窓口で頼むか
claude.aiのチャット
添付とルール指定を1回書けば完結し、準備は要りません。次の会話では、ページもルールももう一度渡します。
Coworkのプロジェクト
ルールは指示に一度書き、フォルダにページを足すたびに短い依頼文で回します。
メモリーはプロジェクトごとに分かれます。あるプロジェクトでClaudeが学んだ内容は、ほかのプロジェクトに引き継がれません。理科と社会でプロジェクトを分ければ、語彙を簡略化する際の癖が教科をまたいで混ざることはありません。
指示には、何段階に分けるか、各レベルで変えるものと揃えるもの、確認テストの問題数を書きます。依頼側に残すのは、ページごとに変わる情報(見開きの画像と対応する基準)だけです。
tectonics-textbook-p218-219.jpgのスライド・読解ハンドアウト3種・確認テストを作成してください。
学習基準とバージョンのルールはプロジェクトの指示を使ってください。プロジェクトの作り方は3通りです。「最初から作る」「Claudeのプロジェクトからインポートする」「パソコンの既存フォルダを使う」です。claude.aiで教材用のプロジェクトを育ててきた教員は、インポートでファイルと指示をそのまま移せます(まとめての一括インポートは非対応で、1プロジェクトずつ選びます)。プロジェクトの仕組み自体は、CoworkでもClaudeのチャット側でも同じように動きます。
TeamとEnterpriseのプランでは、プロジェクトを共有できます。組織内の人に「閲覧可」か「編集可」の権限を渡せるので、同じ学年を担当する同僚の教員と学習基準やバージョンのルールを共有する使い方ができます。Enterpriseではグループ単位の共有もベータ提供されています。
保存先には違いがあります。新しく作ったプロジェクトはClaudeのアカウントに保存され、ほかの端末でも開けます。パソコンの既存フォルダから作ったプロジェクトは、そのパソコンに残り、アカウントには保存されません。Coworkのプロジェクトを使えるのはClaude Desktop(macOSとWindows)の最新版で、Claude Codeには未対応です。
不要になったプロジェクトはアーカイブできます。アーカイブするとプロジェクトの情報は画面から消えますが、パソコン上の関連ファイルやフォルダには影響しません。
2026年10月6日から、ProとMaxプランの新しいCoworkタスクはクラウドで動きます。設定の「Only on your computer」の選択肢もこの日になくなり、すでに始めたタスクはパソコン上に残ります。メッセージ欄に「Chat」と「Cowork」の切り替えが出ないProとMaxの画面は、チャットとCoworkが一つになった新しい体験で、メッセージ欄でCoworkを選ぶ手順は省けます。
学校・組織の契約で止まりやすい設定
ファイルとして出力させるには、コード実行・ファイル作成機能が有効でなければなりません。プランごとの初期状態は公式ヘルプで次のように分かれています。
| プラン | 初期状態 | 切り替える人 |
|---|---|---|
| Free・Pro・Max | 初期状態有効 | 切り替える人本人(設定の「Capabilities」) |
| Team・Enterprise | 初期状態有効 | 切り替える人組織のオーナー(組織設定の「Capabilities」) |
ファイル作成は、プランの利用上限を通常のチャットより多く消費します。1ページごとに5ファイルを作る運用を何ページも繰り返すと、上限に近づきやすくなります。ファイル作成はiOSとAndroid版のClaudeでも使えます。
この設定は組織のオーナーが組織設定で切り替える項目で、オフになっていないかは授業の前に確認しておく項目です。ネットワーク接続を許可する「Allow network egress」は、TeamとEnterpriseのオーナーが別に切り替える項目です。オフでもファイル作成は動き、その場合はあらかじめ入っているパッケージだけで作業して、インターネットには出ません。
ネットワーク設定の既定値は、公式ヘルプの同じ記事の中で記述がずれています。「提供状況」の節ではTeamもEnterpriseも「既定でオフ」と読め、「有効化の手順」の節ではTeamは「パッケージマネージャーのみ許可でオン」と書かれています。教材に外部サイトのデータを取り込む使い方をするなら、組織の実際の設定画面で確認するのが確実です。
Coworkそのものの提供範囲は、ProとMax、Team、Enterpriseの有料プランです。Webはカバーされていますが、Enterpriseは管理者が有効にしている場合に限られます。Windowsではアプリを最新版にする必要があります。
モデル選びの目安
実例の入力は密度の高いページ画像で、出力は複数のドキュメントです。公式はこの作業にOpusモデルを勧めています。日々の下書きや授業案の相談はSonnet、素早い一問一答や簡単な書き換えはHaikuが向く、という整理です。
教科書以外にも同じ手順が使える
この仕組みが効くのは、1つのソース資料から、対象ごとに異なる版を作る作業全般です。公式は同じ型の用途として、経験レベル別の研修資料、役割別のオンボーディング資料、対象者別の顧客向けドキュメントを挙げています。教科書の見開きの代わりに研修マニュアルの1ページを渡す使い方も、同じ型の延長にあります。塾講師や家庭教師が既存の教材から類題を作る場合は、塾講師・家庭教師の教材作成にClaudeを使う方法にまとめました。
まとめ
1〜数ページならチャットで足りますが、同じルールで単元を回す段階になったらプロジェクトの指示にルールを移すのが分かれ目です。出力のたびに報告文の「除外した内容」を読めば、Claudeが下した判断だけを拾えます。