Claudeでキックオフ資料とWBS・体制図を起こす手順 — 合意範囲から
提案書と契約書の合意範囲をClaudeのProjectsに入れ、WBS・体制図・役割表・初回の論点管理表・キックオフ資料の下書きを順に作る手順です。使う機能の条件も説明します。
コンサルの案件が受注できると、キックオフまでの数日で「WBS、体制図、役割表、論点の一覧、当日の資料」を一気にそろえることになります。材料はすでに手元にあります。提案書と見積もり、契約書の別紙に書いた合意範囲です。ここから作る順序を決めておけば、Claudeに下書きを任せても、範囲の食い違いを立上げの時点で拾えます。
この記事では、合意範囲を1枚の表に起こし、その表を唯一の元にしてWBS・体制図・役割表・論点管理表・キックオフ資料を作る手順を説明します。
提案前の要件整理はClaudeでRFPの要件を提案書の章立てに対応づける手順で、始まったあとの週報とリスク管理はClaudeとAdobe Workfrontを連携して週報とRAIDを更新する手順で扱っています。
立上げ資料を「合意範囲表」から作る理由
WBS(作業分解構成図)も体制図も、元をたどれば「何を、いつまでに、誰が」という合意です。資料ごとに提案書を読み直させると、WBSにあって契約にない作業や、体制図にいない担当者が混ざります。
先に合意範囲表を作り、他の資料はすべてその表から派生させます。表に列として持たせるのは次の6つです。
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 成果物 | 中身納品物の名称と形式 |
| 作業 | 中身成果物を作るために必要な作業 |
| 期限・マイルストーン | 中身提案書または契約の日付 |
| 前提 | 中身クライアント側が用意するもの、前提にした条件 |
| 除外 | 中身今回の範囲に入らないと明記したもの |
| 根拠 | 中身提案書・契約書の章や頁 |
たとえば次のような行になります(架空の案件の例です)。
| 成果物 | 作業 | 期限 | 前提 | 除外 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 業務フロー図(現行) | 作業部門ヒアリング8回、図の作成 | 期限開始後4週 | 前提顧客が担当者を各部門から出す | 除外海外拠点の業務 | 根拠提案書p.12、契約別紙1 |
「除外」と「前提」の列が、立上げでは特に効きます。キックオフの場で認識が割れやすいのは、含まれるものよりも含まれないものだからです。
準備 — ProjectsとArtifactsの使える条件
この作業は、案件ごとにProjectsを1つ作るところから始めます。Projectsは、専用のチャット履歴と知識ベースを持つ作業スペースで、文書を入れておくと、そのプロジェクト内のチャットで参照されます。プロジェクトごとにカスタム指示も置けます。Freeアカウントでも使えますが、作れる数は5つまでです。
Artifactsを使う側の条件もあります。サポートページには、Artifactsを使うにはSettings > Capabilitiesで「クラウドでのコード実行とファイル作成」をオンにする必要があると書かれています。Team・Enterpriseでは、同じ項目が組織設定(Organization settings > Capabilities)側にあります。組織の管理者が閉じている場合は、自分では開けません。
ExcelやWordのファイルを作るコード実行とファイル作成も、Free・Pro・Max・Team・Enterpriseで使えます。ただしTeamでは、組織のオーナーが無効にできます。
アップロードの上限を先に確かめる
提案書や契約書は、次の上限に収まるかを確かめてから入れます。
- チャットへのアップロードは1ファイル500MB、1チャット20ファイルまで。PDFは1,000ページまで
- プロジェクトの知識ベースは1ファイル30MBで、本文のテキスト抽出のみ(マルチモーダルPDFを除く)
- 画像が埋め込まれたWordやPowerPointは、Claudeが読み取るのは文字だけで、埋め込み画像は解釈されない
体制図や工程の図が画像として貼られている資料は、図の中身が読まれません。図の内容は文字で書き出して入れ直します。
顧客の資料を渡す前の契約・設定の確認は、コンサルがClaudeに顧客資料を渡す前のNDA点検表にまとめています。
手順
立上げ資料を作る順序
- 1
案件のProjectを作り、資料を入れる
提案書、見積もり、契約書(別紙を含む)、議事録を知識ベースに入れます。カスタム指示には、次の例のように「資料にないことは空欄にする」を書いておきます。
- 2
合意範囲表を作り、人が確認する
提案書・契約書から表を起こし、根拠の頁を見ながら除外と前提を直します。
- 3
表からWBSを作る
成果物から作業へ階層を下ろし、Excelファイルで受け取ります。
- 4
体制図と役割表を作る
両社の担当者名簿から、体制図と、作業ごとの役割(RACI)を作ります。
- 5
初回の論点管理表を作る
資料間の食い違いと未確定事項を、期限・担当つきの表にします。
- 6
キックオフ資料にまとめる
ここまでの表を、当日の進行順のスライドに並べます。
カスタム指示の例
あなたは案件の立上げ資料を作る補助役です。
- 提案書・契約書・議事録に書かれていないことは書かず、「未確定」と表示する。
- 表の各行に、根拠となる資料名と章または頁を付ける。
- 数字・日付・氏名は資料の表記のまま写す。言い換えない。
- 合意範囲に含まれる作業と、除外された作業を混ぜない。合意範囲表を起こす
添付の提案書と契約書別紙から、合意範囲表を作ってください。
列は 成果物 / 作業 / 期限 / 前提 / 除外 / 根拠(資料名と頁)。
提案書と契約書で書き方が違う箇所は、別の表「食い違い」にまとめてください。食い違いの表が、初回の論点管理表の最初の材料になります。たとえば、提案書は「月次報告」、契約書別紙は「週次報告」と書いているといった差です。Claudeが拾うのは書面上の差だけで、どちらが正しいかは決められません。担当パートナーが確認します。
WBSを作る
合意範囲表の行だけを使って、WBSを作ってください。
- 階層は 成果物 > 作業パッケージ > 作業 の3段
- 各作業に ID(1.2.3 の形式)、期間の目安、前提となる作業のID、担当候補の役割名
- 合意範囲表にない作業は追加しない。必要そうな作業は別シートに「候補」として分ける
- Excel(.xlsx)で出力する「候補」を別シートに分けるのが、この手順の要点です。経験のあるチームほど、契約にない作業を善意で足してしまいます。足すかどうかは、人が範囲との関係を見て決めます。
Excelの数式やシート構成の作り込みは、Claude for Excelで事務事業評価と予算要求の説明資料を下書きする手順のように、既存のブックの中で進める方法もあります。
体制図と役割表をArtifactで作る
Artifactは、会話の横に開く独立したウィンドウに出る成果物です。サポートページによると、文書、コードスニペット、画像、図やフローチャート、ダッシュボードなどが対象です。体制図は図として、役割表は文書として、それぞれ作れます。
添付の担当者名簿から、体制図と役割表を作ってください。
- 体制図: 両社のステアリングコミッティ、PM、各ワークストリームのリードを上下関係で描く
- 役割表: WBSの作業パッケージを行、人を列にして R(実行)A(説明責任)C(相談)I(報告)を入れる
- 名簿にない人は入れず、空席は「未定」と表示する
- 各作業パッケージで A は1人だけにする役割表では、検算を1つ入れておきます。各行にAが1つだけあるかを、Claudeに数えさせます。Aが2人の行は責任の所在が割れ、Aがいない行は誰も説明責任を負いません。
作ったあとは、会話で直すか、ドキュメント形式なら直接編集できます。Docsは、Claudeとチームが同時に書き込める文書で、Word・PDF・Markdown・Google Docsに書き出せます。
初回の論点管理表を共有ストレージで持つ
Artifactは、セッションをまたいでデータを保存できます。サポートページには、個人用ストレージ(自分だけが見える)と共有ストレージ(使う全員が同じデータを見る)があると書かれています。
論点管理表は、キックオフ後の数週間はチーム全員が更新するので、共有ストレージ向きです。一方で、同じページには注意もあります。共有ストレージの内容は使う人全員に見えるため、機密を入れる前に、そのArtifactがどちらを使っているかを確かめます。上限は1Artifactあたり20MBで、テキストのみです。
初回の論点管理表を、Artifactとして作ってください。
- 列: ID / 論点 / 影響するWBSのID / 担当 / 期限 / 状態 / 根拠
- 合意範囲表の「食い違い」と「前提」の未確認分を初期データに入れる
- 保存は共有ストレージではなく、まず私だけの個人用ストレージにする最初は個人用で作り、内容をチームで確認してから共有に切り替える使い方なら、機密を含む行が先に共有される事故を避けられます。クライアント側の担当者にも見せるかどうかは、契約上の取り決めを見て決めます。
キックオフ資料にまとめる
スライドは、テンプレートの「Slides」から作れます。ノートや、すでにチャットにある作業から発表資料を作り、各スライドを直接編集でき、Claudeの中で発表することもできます。PowerPointとPDFに書き出せます。
キックオフの進行に合わせて、スライドの構成を指定します。
合意範囲表・WBS・体制図・役割表・論点管理表から、キックオフ資料を作ってください。
構成: 1.目的とゴール 2.合意範囲(含むもの/含まないもの) 3.成果物とマイルストーン
4.体制と役割 5.進め方と会議体 6.前提と依頼事項 7.初回の論点
- 各スライドの数字・日付は、元の表から写す
- 元の表に無い内容は入れない「含まないもの」を独立したスライドか、合意範囲のスライドの右半分に置くと、認識合わせが早く済みます。
立上げ資料を渡す前の検算
Claudeが作った表は、次の点を人が確かめてから外に出します。
| 確認すること | 見る場所 |
|---|---|
| WBSの全作業が合意範囲表の行に結びつく | 見る場所WBSのID列と範囲表の作業列 |
| 体制図の全員が名簿にいる | 見る場所名簿と体制図・役割表 |
| 各作業パッケージのAが1人 | 見る場所役割表の行 |
| スライドの日付が契約書と一致する | 見る場所契約書の期限と、マイルストーンの行 |
| 論点の根拠が実在する頁を指す | 見る場所論点管理表の根拠列 |
根拠の頁は、特に実物と突き合わせます。表の「根拠」列は、書き方の体裁が整っていても、頁が違うことがあります。
つまずいたとき
- Artifactが作られない、ファイルが出てこない: Settings > Capabilitiesでコード実行とファイル作成がオンかを見ます。Team・Enterpriseは組織設定で、管理者に確認します
- 図の読み取りに失敗する: 体制図が画像で貼られた資料は、画像の中身が読まれません。図の内容を文字で書き起こして入れます
- 古い案件の資料が混ざる: 知識ベースに過去案件の提案書を残したままだと、そちらから引かれる可能性があります。案件ごとにProjectsを分けます
- 契約書の改訂前後が混ざる: 覚書や変更契約がある案件では、ファイル名に版と日付を入れ、最新の1つを指示で名指しします。範囲表の根拠列に、どの版の頁かも書かせると、あとで追えます
- 修正が一部の表にしか届かない: 範囲表を直したら、WBS・役割表・スライドを範囲表から作り直す指示を出します。表ごとに手で直すと、また食い違います
まとめ
立上げ資料の食い違いは、資料を作る速さより、元が複数あることから生まれます。合意範囲表を唯一の元にして、WBS・体制図・役割表・論点・スライドをその派生物として作り、根拠の頁を人が検算します。Claudeに任せるのは起こす作業までで、範囲の判断と顧客に見せる可否は、担当パートナーの仕事として残ります。
最初の案件では、論点管理表を個人用ストレージで作り始め、キックオフ後に共有へ移す進め方が試しやすい構成です。