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コンサルがClaudeに顧客資料を渡す前のNDA点検表 — 契約と設定の確認順

コンサルがClaudeに顧客資料を渡す前のNDA点検表 — 契約と設定の確認順

顧客の機密資料をClaudeに渡す前に、NDA・使うプランの契約・管理画面の設定をどの順で確かめるか。条項ごとの見る点と、保持期間とのずれを表にします。

顧客の資料をClaudeに渡してよいかは、3つの層が噛み合ったときに決まります。クライアントとのNDA(秘密保持契約)の文言、使うプランの契約条件、管理画面の設定です。Anthropic側の約束がどれだけ手厚くても、NDAが第三者への開示を許していなければ渡せません。逆にNDAが許していても、個人向けプランの学習設定を放置していれば、約束の前提が崩れます。

この記事は、コンサルタントが案件の前に埋める点検表として、確認の順番と各項目の見る点をまとめたものです。一般的な機密入力の安全性はClaudeに機密情報を入力しても安全かに、士業の守秘義務は税理士と弁護士の記事にあります。ここで扱うのは、守秘義務を法律ではなくクライアントとの契約で負うコンサルの側の確認です。

確認の順番は、NDA、プラン、設定、記録

順序には理由があります。NDAは「渡してよいか」を決め、プランと設定は「渡した後にどう残るか」を決めます。前者が曖昧なまま後者を整えても、許諾のない開示の事実は変わりません。

手順

案件の前に4段で確かめる

  1. 1

    NDAとクライアントの指示を読む

    秘密情報の定義、第三者への開示の例外、廃棄義務、保管場所の条件を拾います。AIの利用に触れた条項や、クライアント側のAI利用ポリシーがあればそれも読みます。

  2. 2

    使うアカウントの契約を確かめる

    Team・Enterprise・APIの商用契約か、Free・Pro・Maxの個人向けか。ここで学習利用の既定が逆になります。

  3. 3

    管理画面の設定を確かめる

    フィードバックの無効化、保持期間、共有範囲を見ます。Ownerでないと触れない設定もあります。

  4. 4

    確認結果を案件ごとに残す

    後から「なぜ渡してよいと判断したか」を示せる状態にします。書式は後半の節に置きました。

NDAと業務委託契約で読む6つの条項

NDAの条文はクライアントごとに違うため、ここに書けるのは「どの条項を見て、Claude側の何と突き合わせるか」までです。条文の解釈そのものは、契約の相手方と弁護士の領分になります。

見る条項読む点突き合わせるClaude側の材料
秘密情報の定義読む点資料だけか、議事録・メモ・分析結果まで含むか突き合わせるClaude側の材料入力も出力も顧客の秘密情報として扱われる(商用条件)
第三者への開示読む点再委託先・サービス提供者・アドバイザーに出せるか突き合わせるClaude側の材料Anthropicは第三者。商用ではデータの処理者の立場
目的外利用の禁止読む点案件以外の目的に使われないか突き合わせるClaude側の材料学習利用の既定と、例外になる操作
返還・廃棄読む点終了時の期限と、バックアップの扱い突き合わせるClaude側の材料削除してからバックエンドで消えるまでの日数
保管場所・越境読む点国内保管や地域の指定があるか突き合わせるClaude側の材料保存先と処理国
事前承諾・事故通知読む点AI利用に書面の承諾が要るか突き合わせるClaude側の材料承諾を取る相手と、記録の残し方

NDAがAIに一言も触れていない場合は、「再委託先」や「サービス提供者」のような既存の文言でClaudeの提供元への開示が読めるかが争点になります。読めるかどうかが曖昧なときは、利用目的と使うプランを示して書面で確認を取る選択肢があります。口頭の了解だけで進めると、事故の後に許諾の範囲を示せません。

Anthropic側の約束は、プランで二分される

Claudeの学習利用の既定は、個人向けと商用で逆です。

くらべる

学習利用の既定

Free / Pro / Max

個人向け

チャットやコーディングセッションは、ユーザーが改善への利用を許可した場合に学習に使われます。安全性レビューの対象としてフラグされた会話も、検出能力の改善に使われます。許可していてもインコグニートチャットは学習に使われません。

Team / Enterprise / API など

商用

入力も出力も、既定ではモデルの学習に使われません。フィードバックの送信や、データ提供への明示的な同意が例外になります。

クライアント資料を扱うアカウントがどちらかは、最初に確かめる点です。個人のProやMaxで受けた案件を、そのまま顧客資料の処理にも使っていることは珍しくありません。個人向けの設定は本人がいつでも切り替えられるため、クライアントに「いつ時点でどの設定だったか」を示すには、設定の状態を自分で記録しておく必要があります。

商用契約のほうは、契約文書の側に手がかりがあります。

  • データの立場: Team・Enterpriseでは、顧客が管理者(Controller)、Anthropicが処理者(Processor)として位置づけられます。Anthropicは顧客の指示に沿って、サービス提供のためにだけデータを処理します
  • DPAの扱い: データ処理補遺(DPA)は、商用利用規約の一部として自動的に組み込まれます。規約に同意した時点でDPAにも同意したことになります
  • 機密情報の定義: 商用利用規約では、Customer Content(入力と出力)が顧客の機密情報と定められ、Anthropicが学習に使うことは禁じられています

規約の秘密保持条項には、NDAの読み方の参考になる部分もあります。受領側が機密情報を共有できる相手を「職務上知る必要のある従業員・代理人・アドバイザーで、同等以上の秘密保持義務を負う者」に限り、その行為には受領側が責任を負う、という構造です。クライアントとのNDAにも同じ形の条項があるなら、コンサルは自分の再委託先やツールの提供元の行為にも責任を負う側に立ちます。Anthropicの義務はコンサルに対するもので、クライアントに対するものではない点も、線引きの材料になります。

第三者のプラットフォーム経由でClaudeを使う場合は、そのプラットフォームの利用条件が適用されます。DPAの説明に添えられた注意書きがこの点を明示しているので、経路が違う案件では契約の確認先も変わります。

管理画面で確かめる5つの設定

商用プランでも、既定のままでは残るものがあります。設定の違いを案件前に確かめておけば、NDAの条項との照合がしやすくなります。

設定

案件前に見る設定

  • フィードバックの送信

    親指の上下ボタンを押すと、その会話全体(内容、カスタムスタイル、モデル設定を含む)が最長5年間保存されます。この情報は、サービスの分析や研究、モデルの学習に使われうるものです。コネクタ(Google DriveやMCPサーバー)の生データは含まれませんが、会話にコピーした内容は含まれます。TeamとEnterpriseのOwnerは、組織設定の「Data and Privacy」にある「Rate chats」で、この送信を無効にできます。

  • 保持期間

    Enterpriseでは、Ownerがチャットとプロジェクトの保持期間を設定できます。最短は30日で、既定は無期限です。プロジェクトの保持期間はその中のチャットより優先されるので、プロジェクトを無期限のままにすると、チャットだけ短くしても消えません。

  • ゼロデータ保持(ZDR)

    対象は、対象のAPI、組織のAPIキーを使う製品、EnterpriseプランのClaude Codeです。承認制で、組織単位で適用されます。claude.aiのチャットは、この取り決めの対象に挙がっていません。

  • 保存と処理の場所

    データの保存先は米国です。処理は、米国・欧州・アジア・オーストラリアの一部の国にルーティングされることがあります。ルーティングの地域を選べるのは、Claude Developer Platformの利用者と、従量課金のEnterprise利用者です。

  • プロジェクトの共有

    TeamとEnterpriseでは、プロジェクトを他のメンバーに共有できます。Ownerは組織全体で共有をオフにできます。共有をオフにしても、すでにある共有は残ります。

ZDRについては、「契約すればClaudeのチャットも保存されなくなる」という読み違いが起きやすい点に注意してください。ZDRが及ぶ範囲は、APIと、APIキーで使う製品、EnterpriseのClaude Codeに限られます。ZDRでも、Usage Policyの執行のための安全性分類器の結果は保持されます。

保持期間の変更にも癖があります。期間を短くすると、新しい期間の外に出たデータは保存した時点で完全な削除の予定に入り、毎日の処理で消えていきます。大量のデータでは数日かかり、元に戻すことはできません。削除は協定世界時の午前0時に行われます。案件の終了時に一括で整理する運用を決めるなら、先に対象のプロジェクトを分けておきます。

NDAの廃棄期限と、Anthropic側に残る日数のずれ

NDAの廃棄・返還条項は、「終了後◯日以内」のような期限を置くことがあります。Claude側の保持は、次のように層になっています。

データ残る期間備考
チャットを削除した後の履歴残る期間即時に画面から消え、バックエンドからは30日以内に削除備考商用プラン
インコグニートチャット残る期間30日以内に自動削除備考Usage Policy違反としてフラグされた場合を除く
APIの入力と出力残る期間受領または生成から30日以内に削除備考長期保持のサービス・ZDR・法令対応は別
Usage Policy違反としてフラグされた入出力残る期間最長2年備考分類スコアは最長7年
親指ボタンのフィードバック残る期間5年備考関連する会話全体を保存

ここから見える点が2つあります。1つ目は、「削除した」と「バックエンドから消えた」の間に最大30日の幅があることです。NDAの廃棄期限が30日より短い、あるいは終了日から数えて30日ちょうどの場合は、終了の日に削除しても期限内に消えたとは言い切れません。案件の終盤で削除を進めるか、保持期間を短く設定する運用が候補になります。

2つ目は、フラグとフィードバックが廃棄義務の例外になりうることです。どちらも利用者側の操作で避けられるとは限りません。フラグは自動の安全性システムが付けるため、NDAの廃棄条項に「例外なく」とあれば、そのままでは約束できない場合があります。この種の例外は、AI利用の承諾を取るときに併せて伝えておく項目になります。

Anthropicの保持の説明には、法令で必要な場合の保持と、契約で許される場合の匿名化データの長期保持も書かれています。これらは顧客資料そのものの保持とは別に、契約書の例外条項を読む材料になります。

渡す前の切り分けフロー

ここまでの確認を、案件ごとの分岐にまとめます。上から順に確かめ、止まった箇所の対処を先に進めます。

切り分け

顧客資料を渡す前の切り分け

  1. Q使うアカウントは、Team・Enterprise・APIなど商用契約のものですか?
    答えが個人のFree・Pro・Maxです

    学習利用の許可設定が「許可」になっていないかを先に確かめます。顧客資料の処理は商用アカウントに移す選択肢があります。個人向けの設定は本人が切り替えられるため、設定した日付の記録も残します。

    答えがはい
  2. QNDAの第三者開示条項で、Claudeの提供元への開示が許されていますか?
    答えが許されているか読み取れません

    利用するサービス、プラン、データの扱いを示して、クライアントに書面で承諾を求めます。承諾が取れるまでは、顧客名・個人名・金額を伏せた資料だけを使う運用が候補です。

    答えがはい
  3. QNDAの廃棄期限は、Anthropic側の削除日数と矛盾しませんか?
    答えが期限のほうが短い、または余裕がありません

    案件の途中で削除を進めるか、Enterpriseの保持期間を短く設定する運用を検討します。フラグと親指ボタンの例外も、承諾の依頼文に含めます。

    答えがはい
  4. Qフィードバックの無効化、保持、共有の設定を管理画面で確かめましたか?
    答えがまだ確かめていません

    Ownerに設定の確認を依頼します。設定を変えられない立場なら、その事実を記録に残します。

    答えがはい

記録を残して渡す

確認した契約と設定を、案件の記録に書いてから資料を渡します。

点検結果の記録と、案件ごとのProject

記録は長くなくて構いません。次のような項目を、案件の初日に1枚書き込みます。例えば次の形です。

## 案件記録: A社 業務改善調査
- NDA: 締結日 / 秘密情報の定義(第○条)/ 第三者開示の例外(第○条)
- AI利用の承諾: 有 or 無 / 承諾日 / 承諾を受けた担当者
- 使用アカウント: Team or Enterprise or API / Owner名
- 学習・フィードバック: 商用既定 / Rate chats 無効化(済 or 未)
- 保持: 通常 / 短縮(日数)/ 案件終了時の削除予定日
- 保存と処理の地域: 保存は米国 / 地域指定の有無
- Project名: A社_業務改善_2026Q4
- 渡さない情報: 個人名、未公表の財務数値、…

案件ごとにProjectを分けると、記録と実体の対応が取れます。保持期間はプロジェクト単位で効くので、案件が終わったらプロジェクトごと整理できます。次の指示文は、そのProjectの指示に置く例です。

このProjectはA社の業務改善調査の資料だけを扱います。
- 資料の顧客名は「A社」、個人名は役職に置き換えた形で受け取ります。
- 他の案件の名前や数値が資料に混ざっていたら、回答の前に指摘します。
- 出力は、A社に提出する前提の下書きとして書きます。

この指示文は取り違えを減らす補助にすぎません。NDA上の許諾や、設定の確認に代わるものではなく、渡すデータの範囲はあくまで人が決めます。共有をオフにしたProjectでも、既存の共有は残るので、案件の開始時に共有状態を確かめます。SOWと見積を置いた後の使い方は変更要求の範囲判定にあります。

クライアントの質問票に出せる材料

大手のクライアントは、AIの利用について質問票を送ってくることがあります。商用プランでは、次のような材料が揃っています。

  • 取得済みの認証: HIPAA対応の構成(BAAあり)、ISO 27001:2022、ISO/IEC 42001:2023、SOC 2 Type IとType II。文書の写しはTrust Portalから請求できます
  • サブプロセッサ(再処理業者)の一覧: Anthropicが顧客データの処理に使うクラウド事業者は、サブプロセッサ一覧に載っています
  • 変更の通知: 処理を行う場所やサブプロセッサの変更は、Trust CenterのNews Feedを購読すると受け取れます

質問票への答え方は、Claudeのセキュリティチェックシートに一次資料で答える方法が一次資料の引き方まで扱っています。法人契約を選ぶ段階の比較はClaude法人プランの契約ガイドにあります。

まとめ

コンサルが顧客資料をClaudeに渡す前の確認は、NDAで許諾の範囲を決め、プランで約束の性質を確かめ、設定で残り方を絞り、記録に残す4段で足ります。見落としやすいのは、個人向けプランの学習設定、親指ボタンの5年保存、削除後30日の幅の3点です。この3つはNDAの条項と直接ぶつかりうるため、承諾の依頼文に書いておくと、後で食い違いが出にくくなります。

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