ClaudeのLatchBioコネクタで解析ワークフローを起動する手順と置き場所の決め方
LatchBioコネクタの接続方法と9つのツールの役割、起動前に決める入力と出力の置き場所、課金・権限の注意点をまとめます。launch_workflowの承認設定例つきです。
LatchBioコネクタは、Claudeの会話からLatchのデータを一覧し、バイオインフォマティクスのワークフローを起動して、実行状況まで追えるようにするコネクタです。Latchの説明では、NextflowまたはPythonで書かれたサーバーレスのパイプラインを、Claudeを離れずに動かせます。
Claudeのコネクタ一覧では「Anthropic verified」の表示が付き、2026年6月に追加されました。サインインは必須で、接続先のURLは https://mcp.latch.bio/mcp です。
接続そのものは数分で終わります。つまずきやすいのは接続の後です。どのファイルを解析に使い、結果をどこに書かせ、誰の課金で動くのか。依頼する前に決めておくと、起動後のやり直しが減ります。
LatchBioコネクタで何ができるのか
提供元のMCPドキュメントには、9つのツールが載っています。大半は「読む」ためのもので、実行を始めるのは launch_workflow の1つです。
| ツール | 役割 |
|---|---|
list_workspaces | 役割自分がアクセスできるワークスペースを列挙(既定のワークスペースを含む) |
list_files | 役割Latch Dataのディレクトリ直下を列挙(ファイルの中身は返さない) |
get_file | 役割ファイルへのアクセス情報を返す(Consoleのリンクか、署名付きのダウンロードURL) |
list_workflows | 役割ワークスペースのワークフローと、起動できる公開ワークフローを探す |
get_workflow_schema | 役割ワークフローの起動に必要な情報とパラメータのスキーマを取得 |
launch_workflow | 役割スキーマに合うパラメータ値でワークフローを起動 |
list_executions | 役割実行の一覧(名前・ワークフロー・状態で絞り込み可) |
get_execution | 役割実行の状態、タスクノード、結果ファイル、ConsoleのURLを取得 |
get_task_logs | 役割タスクログをその場で返すか、全文の署名付きダウンロードURLを返す |
注意したいのは list_files の説明です。返るのはディレクトリの中身の一覧だけで、ファイルの本文ではありません。FASTQや結果の表をClaudeに読ませて解釈させたい場合、このコネクタ単体では本文が届きません。get_file が返すのはリンクか署名付きURLで、本文を取り込む仕組みはドキュメントに記載がありません。
つまりこのコネクタは、解析を「Claudeが自分で計算する」入口ではなく、Latch上のパイプラインを「Claudeが起動して見張る」入口です。解析の中身はLatchのワークフローが担います。
Claude側の仕事とLatch側の仕事
Claudeに任せる
ワークスペースとワークフローの検索、パラメータの組み立て、起動、状態とログの確認。
Latchに残る
データの保管、パイプラインの計算、課金、結果ファイルの置き場所。
接続する前に用意するもの
Latch MCPの利用にはLatchのアカウントが要ります。MCP専用の料金はありません。ただし、MCPから起動したワークフローは、ConsoleやSDKから起動したときと同じ料金で課金されます。Claudeの会話で気軽に起動できても、費用は通常どおり発生します。
課金まわりで押さえておく点は4つです。
- Latchの課金は従量制で、1 Latchクレジットは1 USDに相当する
- ワークスペースごとに月次の利用上限と通知額を設定できる。上限に達すると、ワークフローの起動やポッドの開始ができなくなる
- 未払い残高があると、データの閲覧とダウンロードはできるが、ワークフローは起動できない
- ワークスペースのロールがViewerだと、閲覧とダウンロードだけで、実行はできない(Member以上が必要)
初めて試すなら、先にLatchのConsoleで月次の利用上限を決めておくと安心です。Claude側の承認ダイアログは1回ごとの確認で、月の総額を止める仕組みではありません。
Claudeに接続する手順
ClaudeのWeb版とDesktop版は、コネクタ一覧から追加します。ディレクトリに載っているので、カスタムコネクタとしてURLを手入力する必要はありません。
Claude(Web / Desktop)での接続
- 1
コネクタ一覧を開く
CustomizeのConnectorsを開き、「+」からLatchBioを探します。
- 2
追加して認証する
説明と機能を確認して追加すると、Latchアカウントへの認可を求められます。サインインして許可します。
- 3
ツール権限を確認する
追加したコネクタのTool permissionsで、ツールごとに「Always allow」「Needs approval」「Blocked」を選べます。起動系は承認を残す設定が無難です。
Latch側のドキュメントは、Claudeへの追加手順としてカスタムコネクタの設定を案内し、リモートMCPのURLに https://mcp.latch.bio/mcp を入力するよう書いています。ディレクトリ経由でもカスタムコネクタ経由でも、最後はLatchアカウントへの認可画面に進みます。カスタムコネクタの一般的な作り方はCoworkカスタムコネクタ自作ガイドにあります。
ここで与える認可は、接続したAIクライアントがMCPサーバーに入るためのものです。この資格情報では、Latch SDKやConsoleに一般的にログインすることはできません。
Claude Codeから使う場合は、ターミナルで次のコマンドを実行します。
claude mcp add --transport http latchbio \
https://mcp.latch.bio/mcp追加したら、Claude Codeの中で /mcp を実行し、表示されるOAuthの流れに従って認証します。サーバー名を latchbio にしているので、以降のツール名は mcp__latchbio__launch_workflow のように mcp__<サーバー名>__<ツール名> の形になります。
依頼する前に決める入力と出力の置き場所
ここがこの記事の中心です。ツールの使い方より、起動前の段取りで結果が決まります。
入力はLatch Dataに置いておく
list_files が見るのはLatch Dataです。Latch Dataはバイオ系データ向けのクラウドストレージで、シーケンサーの生データから解析後の結果まで置けます。AWS S3やGCPのバケットをマウントして、Latch上のデータと同じように扱う方法もあります。
Latch上のファイルは latch:// で始まるURLで指せます。たとえば latch:/// は現在のワークスペースのルート、latch://shared/... はそのワークスペースに共有されたデータを指します。依頼文でパスを渡すときは、この形式に揃えておくと、ワークフローのパラメータに入れやすくなります。ただし、ワークフローごとのパラメータの型は get_workflow_schema で見るのが確実です。
Claudeに任せる前に、次の3点を人間が決めておきます。
- 入力ファイルがLatch Dataにあるか(なければ先にアップロードやバケットのマウントをする)
- どのワークスペースで動かすか(
list_workspacesで一覧できる) - どのワークフローを使うか(Latchが検証したVerifiedワークフローか、コミュニティ製か)
Verifiedの表示があるワークフローは、Latchのエンジニアが選別して検証したものです。コミュニティ製は積極的な審査がされず、品質にばらつきがあると説明されています。起動を任せるなら、まずVerifiedから選ぶのが安全です。
例: バルクRNA-seqを動かす場合
LatchのバルクRNA-seqのドキュメントは、Console上の手順を次の流れで示しています。
- 生のFASTQ(
.fastqまたは.fastq.gz)をLatch Dataにアップロードする - Latch Registryにサンプルシートを作る
nf-core/rnaseqワークフローを開き、Registryからサンプルを取り込む- 参照ゲノムを選ぶ(Latch検証済みのものか、自前のFASTAとGTF)
- 実行名(Run Name)を入れて起動する
この流れで人間の判断が要るのは、サンプルの対応づけと参照ゲノムです。実行名にはスペースを使わないよう注記があります。
Consoleの手順にある「Registryから行を取り込む」操作を、MCPのツールで代行できるかどうかは、Latch MCPのドキュメントに記載がありません。launch_workflow はパラメータ値を渡して起動するツールなので、サンプルシートの中身を依頼文かパラメータで渡す形になると考えられます。実際の入力欄は get_workflow_schema の結果で確かめてください。
出力は既定の場所に任せるのが基本
同じドキュメントは、出力先ディレクトリを既定の場所のままにするよう勧めています。完了後の結果は、出力先の中の、付けた実行名のフォルダにまとまります。まず見るのは、実行のHTMLレポートと、使ったアライナー名のフォルダ内の計算結果です。
起動した後の確認先は、ツールごとに分かれます。
- 状態と結果ファイル:
get_execution(ConsoleのURLも返る) - 失敗の原因:
get_task_logs(短ければそのまま、長ければ署名付きURL) - 過去の実行の探索:
list_executions
Claudeに「結果を要約して」と頼む場合も、get_execution が返すのは結果ファイルの所在で、中身の解釈は別の手段が要ります。結果のCSVの中身まで読ませたいなら、署名付きURLなどで自分の手元に取得してから渡す手順を別に用意します。
落とし穴
get_ 系のツールは署名付き URL を返す
get_file と get_task_logs は、署名付きのダウンロードURLを返すことがあります。URLを知る人はそのファイルを取得できるため、チャットの共有やログの貼り付けでデータが外に出ないよう、扱いに気をつけます。
起動を安全に任せる承認設定
Latchのドキュメントによれば、Claudeは既定でワークフローの起動前に許可を求めます。それでもコネクタを複数入れると、承認の設定は意識して固定しておきたいところです。
Claudeのコネクタ設定では、Tool permissionsで読み取り系と書き込み・削除系にカテゴリが分かれ、カテゴリ単位でも個別でも「Always allow」「Needs approval」「Blocked」を選べます。権限は元のサービス側の権限と併用され、Claude側で許可しても、Latch側で実行権限のない人が起動できるようにはなりません。
Claude Codeでは、settings.json の permissions で同じことができます。mcp__<サーバー名>__* の形のワイルドカードは、allowルールではサーバー名の後ろに限って使えます。次は、Latchの一覧系・取得系を許可し、起動だけ毎回確認する設定の例です。
{
"permissions": {
"allow": [
"mcp__latchbio__list_*",
"mcp__latchbio__get_execution"
],
"ask": [
"mcp__latchbio__launch_workflow"
]
}
}get_* で一括許可しなかったのは、前節のとおり get_file と get_task_logs が署名付きURLを返すためです。URLの発行まで自動承認してよいかは、扱うデータの機密度で決めます。
コネクタ設定の失敗例はClaude Connectorsの権限設定でよくある失敗と対策に整理しています。
起動依頼の流れと依頼文の例
実際の依頼は、いきなり起動させず、確認を挟んで段階を踏ませるとうまくいきます。ツールの並びで言えば、次の順です。
起動前の切り分け
- Q動かすワークスペースは決まっているか?答えがいいえのとき答えがはい
list_workspacesで一覧を出し、使うものを指定します。
- Q入力ファイルは Latch Data にあるか?答えがいいえのとき答えがはい
先にアップロードか、バケットのマウントを済ませます。
- Qワークフローのパラメータは埋まっているか?答えがいいえのとき答えがはい
get_workflow_schemaの結果を見て、足りない値を依頼文で補います。
launch_workflow で起動し、get_execution で追う
承認ダイアログで内容を確認してから許可します。
依頼文は、たとえば次のような形にできます。これは書き方の一例で、実際の応答はワークフローとアカウントの状態で変わります。
Latchのワークスペース一覧から、研究室用のものを選んでください。
そこで使える nf-core/rnaseq 系のワークフローを探し、
パラメータのスキーマを見せてください。
まだ起動しないでください。入力は latch:///rnaseq/run1/ の
FASTQ を使う予定です。足りない値があれば質問してください。「まだ起動しないでください」と明示すると、スキーマの確認で止まります。値が揃ったら、実行名と出力先(既定のまま)を指定して起動を許可します。
つまずきやすい点
起動できない、結果が見えないという場面の多くは、コネクタではなくLatch側の条件です。
| 症状 | まず見る場所 |
|---|---|
| 起動が拒否される | まず見る場所ワークスペースの未払い残高と月次の利用上限 |
| 実行権限がない | まず見る場所ワークスペースのロール(Viewerは実行不可) |
| 見たいファイルがない | まず見る場所別のワークスペースを見ていないか(list_workspaces) |
| ログが途中までしか出ない | まず見る場所get_task_logs の署名付きURLから全文を取得 |
もう1つ、コネクタ全般の注意があります。コネクタの掲載ページには、信頼できる開発元のコネクタだけを使うようにという注意書きがあり、Anthropicはツールの内容を管理せず、期待どおり動くことや後から変わらないことを保証できないと説明されています。研究データを扱うなら、組織のセキュリティ方針と照らしてから有効にします。
隣接する記事との使い分け
LatchBioコネクタは「Latch上のパイプラインを起動して追う」ためのものです。同じライフサイエンスでも入口が違う記事があります。
- 製薬・創薬でClaudeがどう使われているかの全体像は、Claude製薬創薬活用ガイド
- 研究室のHPCクラスタにClaudeを繋ぐ方法は、Claude ScienceのHPC接続
- コネクタ全般の仕組みと追加方法は、Claudeのコネクタとは
LatchBioのコネクタ掲載ページには、関連コネクタとしてPubMed、Consensus、IHME GBD、Wiley Scholar Gateway、Clinical Trials、Elicitが並んでいます。解析を回す前の文献調査には、これらを併用する構成が考えられます。
まとめ
LatchBioコネクタは、解析そのものをClaudeに計算させるのでなく、Latch上のパイプラインの起動と監視をClaudeに任せる入口です。9つのツールのうち、実行が始まるのは launch_workflow だけで、残りは一覧と取得に使います。
依頼の前に決めるのは、入力をLatch Dataに置くこと、動かすワークスペースとワークフローを選ぶこと、出力先を既定のまま使うことの3点です。費用はConsoleやSDKと同じ従量課金で、月次の上限はLatch側で設定します。起動の承認はClaude側の設定でも固定でき、署名付きURLを返すツールの扱いだけは、データの機密度に合わせて決めます。