Claudeで入院診療計画書の記載項目を点検する手順 — 医療法6条の4の必須事項
作成済みの入院診療計画書を、医療法6条の4と施行規則1条の5〜1条の8に照らしてClaudeに点検させる手順です。必須5項目の照合表と、判定を3段に絞る指示文を載せました。
入院診療計画書の点検は、条文の項目を一つずつ書面に当てるだけの作業です。ただ、病棟で作成件数が多いと、傷病名は書いてあるのに主要な症状が無い、といった抜けが残ります。この照合はClaudeに向いています。条文の項目表と計画書の本文を並べて、各項目の記載を原文のまま引かせれば足りるからです。
この記事は、作成済みの計画書を医療法6条の4と医療法施行規則に照らして点検させる手順です。Claudeに任せるのは「記載があるか」の照合まで。治療計画の中身が医学的に妥当かどうかは、担当医の領分として最後まで人が見ます。
点検の物差しになる条文は医療法6条の4
入院診療計画書の記載事項は、医療法6条の4第1項が定めています。患者を入院させたときに、診療を担当する医師または歯科医師が、次の事項を書いた書面を作る流れです。
| 号 | 記載すべき事項 | 抜けやすい点 |
|---|---|---|
| 1号 | 記載すべき事項患者の氏名、生年月日及び性別 | 抜けやすい点生年月日だけ欠けることがある |
| 2号 | 記載すべき事項診療を主として担当する医師または歯科医師の氏名 | 抜けやすい点診療科名だけで氏名が無い |
| 3号 | 記載すべき事項入院の原因となった傷病名及び主要な症状 | 抜けやすい点傷病名のみで症状が無い |
| 4号 | 記載すべき事項入院中に行われる検査、手術、投薬その他の治療に関する計画(入院中の看護及び栄養管理を含む) | 抜けやすい点看護と栄養管理の欄が空 |
| 5号 | 記載すべき事項その他厚生労働省令で定める事項 | 抜けやすい点次の節の2項目 |
4号のかっこ書きは見落としやすい箇所です。検査・手術・投薬だけを書いて、看護と栄養管理の計画を別紙に回していると、この書面単体では4号を満たしているか判断できません。
5号の中身は、施行規則1条の7が2つ挙げています。
- 推定される入院期間
- 病院または診療所の管理者が、患者への適切な医療の提供のために必要と判断する事項
後者は院内で独自に決める欄です。条文は欄の名前を指定していないので、院内様式にある独自欄が何に当たるかは、Claudeに推測させず、人が対応表に書いておきます。
項目以外にも条文が定める要件が4つある
記載項目のほかに、点検の対象へ入れておきたい条文が4つあります。
- 入院した日から起算して7日以内に作成すること(施行規則1条の5)
- 患者またはその家族に交付し、適切な説明を行うこと(同条)
- 書面不要となる例外に当たるかどうか(施行規則1条の6)
- 書面に代えて電磁的方法で提供する場合の手続き(施行規則1条の8)
1条の6が定める例外は3つです。
| 例外 | 条文の言い回し |
|---|---|
| 短期退院の見込み | 条文の言い回し患者が短期間で退院することが見込まれる場合 |
| 診療への支障 | 条文の言い回し書面を交付することで、患者の適切な診療に支障を及ぼすおそれがある場合 |
| 生命・身体・財産への危険 | 条文の言い回し書面を交付することで、人の生命、身体または財産に危険を生じさせるおそれがある場合 |
「短期間」が何日を指すかは、この条文に数字がありません。Claudeに「3日以内の入院は例外」のような線を引かせないでください。例外に当たると判断した記録が院内にあるかを、点検表の「人が確認」列に回します。
Claudeに渡す材料と、渡さないもの
Claudeのプロジェクトは、プロジェクトナレッジに置いた資料をそのプロジェクト内の全チャットで使えます。指示文(プロジェクトインストラクション)も同じ範囲に効きます。一方、チャット同士の文脈は、ナレッジに入れない限り共有されません。ここを使い分けます。
点検用プロジェクトの用意
- 1
条文をナレッジに置く
e-Govから医療法6条の4と施行規則1条の5〜1条の8の本文を取り、テキストにして入れます。Claudeの記憶に頼って条文を言わせません。
- 2
院内様式の欄名を対応表にする
様式の欄が、条文のどの号に当たるかを自分で書いておきます。独自欄の扱いはここで決めます。
- 3
指示文に判定の型を書く
次の節の指示文を、プロジェクトインストラクションに貼ります。
- 4
計画書は匿名化してチャットに貼る
患者名・ID・生年月日は記号に置き換えます。実データはナレッジに常設しません。
プロジェクトの可視性にも注意が要ります。TeamまたはEnterpriseプランでは、作成時に「非公開(招待した人だけ)」か「組織全体に公開」かを選びます。公開にすると組織の全員がプロジェクトを見て使えます。条文と点検表だけのプロジェクトなら共有しても害は小さい構成ですが、計画書の本文を貼ったチャットを共有する場合は、共有の範囲が個人情報の取り扱いルールに収まるかを先に確かめます。生成AIへの入力そのものの可否は医療情報システム安全管理ガイドラインで生成AI入力はどう扱われるかが扱っています。
判定を3段に絞る指示文
判定の語彙は少ないほど運用しやすくなります。「適切」「不十分」のような評価語は、医学的な妥当性の判断に滑りやすいので使いません。
あなたは入院診療計画書の記載項目を点検する補助です。
ナレッジの医療法6条の4・施行規則1条の5〜1条の8だけを物差しにします。
治療内容の医学的な妥当性は評価しません。
貼られた計画書を、次の列の表にしてください。
列: 号 / 項目 / 計画書の該当箇所(原文のまま引用)/ 判定 / 理由
判定は3つだけを使います。
- 記載あり: 該当箇所を原文のまま引用できる
- 記載なし: 計画書のどこにも該当する記載が見当たらない
- 人が確認: 欄はあるが内容が条文の項目を満たすか読み取れない、または院内の判断が要る
守ること:
- 引用できない項目を「記載あり」にしない。推測で補わない
- 日付の計算、例外(1条の6)に当たるかの判断はしない。「人が確認」に回す
- 表のあとに、「記載なし」と「人が確認」だけを番号付きで再掲する判定の3段目「人が確認」が肝です。ここが無いと、Claudeは読み取れない項目を「記載あり」か「記載なし」のどちらかに倒します。倒した判定は、見た目では正しそうに見えるため、点検者が信じてしまいます。
出力の読み方 — 例示の表
次は、指示文に従って返ってくる表の形を示した例です(条文の項目に沿った書式の例であり、実際の出力そのものではありません)。
| 号 | 項目 | 該当箇所 | 判定 | 理由 |
| 1 | 氏名・生年月日・性別 | 「患者A、昭和XX年X月X日、女」 | 記載あり | 3点とも引用できる |
| 2 | 主たる担当医の氏名 | 「担当科:内科」 | 人が確認 | 科名のみで氏名の記載が見当たらない |
| 3 | 傷病名・主要な症状 | 「傷病名:肺炎」 | 人が確認 | 傷病名はあるが症状の記載が無い |
| 4 | 検査・手術・投薬等の計画 | 「採血、胸部X線、抗菌薬投与」 | 人が確認 | 看護・栄養管理の計画が書面内に無い |
| 5-1 | 推定される入院期間 | (該当なし) | 記載なし | 期間の記載が見当たらない |2号と3号の判定は「記載なし」にしない点がポイントです。担当科は書いてあるので「何も書いていない」とは言えません。かといって氏名の条件を満たすとも言えない。こういう中間は「人が確認」に置き、理由欄に何が足りないかを書かせます。
返ってきた表は、そのまま信用せずに2点を突き合わせます。
- 「該当箇所」の引用が、貼った計画書に本当に存在するか(検索で一致を見る)
- 「記載なし」とされた項目が、別の欄や別紙に書かれていないか
「記載あり」の誤りを減らす確認の型
照合の誤りは、ほとんどが「引用が見た目だけ近い」ところから起きます。次の型で防ぎます。
落とし穴
引用が計画書に無い言い回しになっている
Claudeが要約を引用符で囲んでしまうことがあります。引用部分を計画書の本文で文字列検索し、一致しなければ「記載あり」を取り消します。指示文の「原文のまま」は、この検索を前提にした要求です。
落とし穴
別の患者・別の入院日の記載を拾っている
複数の計画書をまとめて貼ると、項目が混ざります。1回のチャットに貼る計画書は1通までにします。
落とし穴
欄名だけを見て中身を空として扱っている
様式によっては、欄名が小さく、記入が余白に手書きで足されていることがあります。スキャン画像を読ませる場合は、文字起こしの結果を人が先に直してから点検に回します。
日付と交付の確認は人が持つ
「入院した日から起算して7日以内」は、施行規則1条の5の要件です。作成日と入院日が計画書に書いてあれば、日数を数えるのは簡単に見えます。それでもClaudeには数えさせません。日付の数え方は院内の運用で揃えているはずで、そこに生成AIの計算が入ると、起算の扱いが変わるおそれがあるためです。
同じ理由で、交付と説明の確認も人の列に置きます。条文は「患者またはその家族に交付し、適切な説明を行う」ことを求めています。計画書に説明の日付や署名の欄があるかは院内様式の話で、引用した条文の範囲に署名欄を求める定めはありません。欄があるなら埋まっているかを見て、無いなら説明の記録をどこに残しているかを人が確かめます。
多職種の関与も、条文は努力義務として書いています。医療法6条の4第4項は、書面の作成にあたって医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の知見を十分に反映させること、書面の内容に基づいて連携して医療を提供することを求めています。計画書の書式上、看護や栄養の欄が埋まっているかは見られますが、実際に多職種で作ったかは書面からは読めません。
電磁的に提供している病院が追加で見る点
書面の代わりに電磁的方法で提供している場合は、施行規則1条の8が別の条件を置いています。
- あらかじめ、患者またはその家族に、使う電磁的方法の種類とファイルの記録方式を示し、承諾を得る
- 承諾のあとに、患者または家族から提供を受けない旨の申出があったときは、その方法での提供をしない(再び承諾した場合は除く)
- 患者または家族がファイルの記録を出力して書面を作れる方法にする
計画書そのものの点検とは別の、運用の確認事項です。承諾の記録がどこに残るかを、点検表の末尾に項目として足しておくと、記載項目の点検と一緒に見直せます。
退院時の書面とは別の点検にする
6条の4第3項は、患者を退院させるときの書面を努力義務として定めています。退院後の療養に必要な保健医療サービスや福祉サービスに関する事項を書く、別の書面です。入院時の計画書と同じ指示文では点検できません。看護側のサマリーを下書きする流れはClaudeで退院時の看護サマリーを下書きする手順にまとめています。
病院の診療記録として保管する範囲も、条文で触れられています。病院の施設・記録の基準を定める施行規則20条は、過去2年間の診療に関する諸記録の一つに入院診療計画書を挙げています。施行規則21条の5と、特定機能病院を対象にした22条の3の記録の定めにも、同じく入院診療計画書の名前が出てきます。保管年数の根拠が必要な場面では、該当する病院の種別の条を引きます。診療録の記載点検の考え方はClaudeで歯科の診療録の記載を点検するでも同じ形です。
この点検でわかることと、わからないこと
点検できるのは、医療法6条の4が挙げる項目と、施行規則1条の7の2項目が計画書に書かれているかです。院内の様式にそれ以外の欄があり、条文以外の根拠で必要になっているなら、その欄は対応表に「法定外」と書いて別枠で扱います。
わからないのは、記載内容の正しさです。入院期間の見込みが妥当か、検査の組み合わせが適切か、といった判断は条文の外にあります。Claudeの表に「記載あり」と出た項目でも、中身は担当医と看護師が読みます。診療録そのものをSOAPで整える流れはClaudeでSOAP形式の診療録に整えるに別の手順があります。
まとめ
入院診療計画書の点検は、条文の5つの号と、施行規則の2項目、7日以内と交付・説明の要件に分けると、Claudeに任せる部分と人が持つ部分がはっきりします。Claudeには、引用付きの照合と「記載なし」「人が確認」の拾い出しを任せます。日付の計算、例外の判断、内容の妥当性は人の列に置きます。条文をナレッジに入れ、判定を3段に絞った指示文を一度作っておけば、同じ型で次の計画書にも回せます。