Claudeで診療報酬改定の点数変更を院内周知の資料にまとめる手順
告示と通知のPDFから、改定前後の点数と算定要件の変更を抜き出し、窓口・算定担当・医師向けの変更点表に仕立てる手順です。点数の検算と、人が原本で確かめる範囲も分けて示します。
診療報酬が改定されると、院内には「何がいくつから何点に変わったのか」「自分の部署は何をすればいいのか」を伝える資料が要ります。告示も通知も数百ページ単位のPDFで、全部を全職種に配っても読まれません。ここで効くのが、同じ原本から職種別の変更点表を作り分ける使い方です。この記事では、告示と通知のPDFをClaudeに読ませ、窓口・算定担当・医師看護職の3方向に配る資料まで仕上げる手順を書きます。
扱う資料は厚生労働省が公開している告示・通知で、患者情報は含みません。個人情報の持ち込みを心配せずに試せる、医療機関向けの入り口にしやすい題材です。
原本は4種類に分かれている
改定の原本は、1つのPDFにまとまっているわけではありません。厚生労働省が公開している令和6年度の改定ページを例にすると、省令・告示・通知の欄に、役割の違う文書が並んでいます。
| 文書 | 例(令和6年度) | 周知資料での使いどころ |
|---|---|---|
| 告示(点数表) | 例(令和6年度)診療報酬の算定方法の一部を改正する告示(告示第57号)。別表第一が医科点数表 | 周知資料での使いどころ点数そのものの変更 |
| 留意事項通知 | 例(令和6年度)診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第4号)。別添1が医科点数表 | 周知資料での使いどころ算定要件・算定回数の変更 |
| 施設基準の告示と通知 | 例(令和6年度)基本診療料の施設基準等の一部を改正する告示(告示第58号)と、届出の取扱いの通知 | 周知資料での使いどころ届出が要る項目の洗い出し |
| 疑義解釈 | 例(令和6年度)疑義解釈資料の送付について(その1〜その23) | 周知資料での使いどころ運用の細かい取扱い |
同じページには、施設基準の届出チェックリスト(病院用・医科診療所用)のExcelも載っています。届出の漏れを防ぐ表を一から作るより、これを土台にしたほうが速く済みます。
点数だけ見れば告示で足りそうですが、院内で困るのは「点数は変わらないが算定要件が変わった」項目です。要件は留意事項通知に書かれます。周知資料を告示だけから作ると、算定担当者向けの情報が落ちます。
先に決める: 何をClaudeに任せ、何を人が確かめるか
分担は次のとおりです。
Claudeと人の分担
Claudeに任せる
長いPDFから該当箇所を拾う、旧と新を表に並べる、職種別に並べ替える、周知文の下書きを書く
人が確かめる
点数の数値、算定要件の文言、施行日、院内で該当する診療行為かどうか
診療報酬は、数値や「〜の場合に限り」といった条件が1つ違うだけで請求が変わります。Claudeが作った表は下書きで、周知前に原本と照らす工程を必ず入れます。これを前提に、依頼文も「原文の条文をそのまま添える」「ページを必ず付ける」形にします。
手順1: 資料を読める形に整える
ファイルのアップロードには、プランと機能の条件があります。
- Claudeのファイル作成(Excel・Word・PowerPoint・PDFの生成)は、Free・Pro・Maxでは既定で有効です。TeamとEnterpriseも既定で有効で、組織のオーナーが設定で無効にできます
- XLSXをアップロードするには、コード実行とファイル作成を有効にしておく必要があります
- 1ファイルの上限は、アップロードもダウンロードも30MBです
- PDFは100ページ以下なら、文字と図表の両方を読みます。101〜1000ページは文字のみで、1000ページを超えるものはアップロードできません
APIのPDF対応では、1リクエストのページ数が最大600ページ(コンテキストウィンドウが1M未満なら100ページ)で、1ページあたり約1,500〜3,000トークンを使うとされています。点数表のように小さな文字が詰まったPDFは、ページ数より先にコンテキストが埋まります。
通知の本文や別添が長いときは、診療科や章の単位で分けて読ませます。
# 例: 留意事項通知の別添を章ごとに分ける(qpdfを使う場合)
qpdf tsuchi_besten1.pdf --pages . 1-80 -- part1.pdf
qpdf tsuchi_besten1.pdf --pages . 81-160 -- part2.pdfページを指すときは、PDFビューアに表示される番号を使うと伝えます。紙面に印字されたページ番号とずれていることが多く、根拠ページの照合でつまずきます。
手順2: 点数の変更を、旧と新の対にした表にする
最初の依頼では、判断を挟まずに「書いてあること」だけを表にします。
添付は、診療報酬改定の告示(別表第一・医科点数表)です。
改正前後の点数が分かる項目について、次の列の表にしてください。
- 区分番号
- 項目名
- 改正前の点数
- 改正後の点数
- 原本のページ(PDFビューア上の番号)
原文に書かれている数字だけを使い、計算や推測はしないでください。
改正前の点数が原本に見当たらない項目は「原本に記載なし」と書いてください。改正前後が1つの文書に並んで載っていない場合は、旧の点数表と新の点数表を両方添付して、区分番号で突き合わせさせます。どちらの形でも、依頼文の核は同じです。「計算しない」「推測しない」「ない項目は印を付ける」の3つを書いておきます。
表の形は、たとえば次のようになります。数値は説明用の架空の例で、実際の点数ではありません。
| 区分番号 | 項目名 | 改正前 | 改正後 | ページ |
|---|---|---|---|---|
| A000 | 項目名(項目名の例) | 改正前100点 | 改正後105点 | ページ12 |
| B001 | 項目名(項目名の例) | 改正前200点 | 改正後200点 | ページ31 |
点数が変わらない行は、そのまま残して構いません。「変わらないことを確認した」という情報も、後で問い合わせが来たときに役立ちます。
手順3: 点数の検算は、Claudeにコードで比べさせる
表ができたら、差分の列を足します。ここは文章で言い換えさせず、計算で出させます。コード実行とファイル作成が有効な環境なら、Claudeは計算用のコードを書いて走らせ、結果をExcelにして返せます。
上の表を、Excel(.xlsx)で出力してください。
「増減」列は、改正後の点数から改正前の点数を引いた値を、
数式ではなくコードで計算して入れてください。
どちらかが数値でない行は、増減を空欄にして「要確認」の列に印を付けてください。そのうえで、人が行う検算を決めます。
- 1
増減が0以外の行を抜き出す
数行ずつ選び、原本の点数表と見比べる
- 2
「要確認」の行を埋める
原本から手で埋める
- 3
区分番号の件数を確かめる
原本に載っている項目数と大きくずれていないか確認する
行が抜けるのは、PDFのページ数が多いときです。ページを分けて読ませた場合は、分けた単位ごとに確認します。
手順4: 算定要件の変更は、条文をそのまま添えて拾う
点数が同じでも、算定できる条件が変わる項目があります。留意事項通知(別添1・医科点数表)から、要件の変更を拾います。
添付は、診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)の別添1です。
次の観点で、算定要件が変わったと読み取れる箇所を拾ってください。
- 算定できる回数や期間が変わった
- 算定できる施設や職種の条件が変わった
- 新しく書類や記録が必要になった
- 算定できなくなった組み合わせ
列は「区分番号」「変更の種類」「変更後の条文(原文のまま)」「ページ」です。
要約は書かず、条文をそのまま引用してください。
改正前の条文がこの資料に無い場合は、変更点と断定せず「変更の可能性」と書いてください。通知の別添に、改正前の文言が載っているとは限りません。旧通知も一緒に渡せば変更箇所を特定できますが、新しい通知だけでは「新しく書かれたのか、前からあったのか」をClaudeは判別できません。この区別を依頼文で求めておくと、変更の可能性という扱いで下書きに残り、人が旧通知で確かめる順番が付きます。
手順5: 職種別に切り分けて、配る単位に仕立てる
表が整ったら、配布資料にします。1枚で全員に配るより、職種ごとに見る項目を絞ったほうが読まれます。分け方の例は次のとおりです。
| 配る相手 | 載せる項目の例 |
|---|---|
| 窓口・受付 | 載せる項目の例患者への掲示や説明に関わる項目、領収証・明細書の取扱い |
| 算定・レセプト担当 | 載せる項目の例点数の変更、算定要件の変更、算定できなくなった組み合わせ |
| 医師・看護職 | 載せる項目の例診療・記録の仕方が変わる項目、新しく必要になった書類 |
| 施設基準の届出担当 | 載せる項目の例届出が必要になった項目と、届出チェックリストの該当行 |
令和6年度のページでは、掲示事項等の告示(告示第56号)と、領収証・明細書の交付に関する通知が省令・告示・通知の欄に別立てで載っています。窓口向けの欄は、そうした文書から拾います。
上の表から、窓口・受付スタッフ向けの変更点資料を作ってください。
- 点数そのものの説明は省き、患者への説明や掲示、領収証・明細書の取扱いに
関わる項目だけを拾う
- 1項目につき、「何が変わったか」「窓口で何をするか」を各1文で書く
- 窓口で何をするかが原本から読み取れない項目は、空欄にして「担当者確認」と書く「空欄にして担当者確認」と書かせるのが要です。原本に書かれていない対応手順を、Claudeがもっともらしく補うのを防げます。
形式はWordやPDFで1枚に収めるのが配りやすく、Claudeは.docxや.pdfの形で出力できます。算定担当向けの明細はExcelのまま渡し、ヘッダーに職種名を入れたシートを分ける形が扱いやすくなります。ファイル作成の範囲と設定はClaudeでファイル作成・編集ができる範囲とセキュリティ設定にまとめています。
手順6: 疑義解釈と期中の改正は、Projectsで追記していく
改定は、告示が出て終わりではありません。令和6年度のページを見ると、疑義解釈資料が「その1」から「その23」まで順次追加され、通知には「期中の改正等」のリンクも付いています。最初に作った資料は、その後の更新で古くなります。
継続して更新するなら、Projectsの知識に原本と最初の変更点表を置き、追加の疑義解釈が出るたびに会話を足していく形が合います。プロジェクトに置いたファイルは、永続的に参照できる資料として会話をまたいで使えます。
このプロジェクトの変更点表に、添付の疑義解釈資料(その◯)を反映してください。
- 表の既存行に関わる回答は、該当行の「備考」に追記し、回答の原文とページを添える
- 表に無い項目についての回答は、新しい行として末尾に足す
- 既存の記載と矛盾する回答があれば、書き換えず「矛盾の可能性」として別に一覧にする矛盾を勝手に直させないのは、どちらが正しいかを決めるのが担当者の仕事だからです。Projectsで大量のPDFを扱うときの検索の仕組みは、Claude ProjectsのRAG検索の仕組みと全文投入との違いで説明しています。
よくあるつまずき
- 点数表の表が崩れて、列がずれて読まれる。ページを小さな単位に分けて読ませ、列の数を依頼文に書いておきます。「区分番号・項目名・点数の3列」のように指定すると、ずれを見つけやすくなります
- 表の行数が原本の項目数より少ない。分割して読ませたとき、分割の境目の行が落ちることがあります。境目の前後1〜2ページを重ねて渡すと拾いやすくなります
- 通知から拾った「変更」が、実は以前からの文言だった。旧通知を一緒に添付していなければ、変更の有無はClaudeには分かりません。依頼文に「改正前の条文が無ければ変更の可能性と書く」と入れます
- 要約を求めたら、条文のニュアンスが変わっていた。算定要件は要約させず、原文の引用を残します。要約は周知文の下書きの段階で別に頼みます
- 疑義解釈の反映で、前に作った表を丸ごと書き換えられた。「既存行は書き換えず、備考に追記する」と書き、更新前のファイルを残します
- ファイル作成の利用量が思ったより多い。ファイル作成は通常のチャットより利用上限を多く消費します。大きなPDFを分けて何度も読ませる作業は、利用上限の残りを見ながら章ごとに区切って進めます
患者情報が入る業務との境目
この記事の題材は告示・通知という公開資料なので、患者を特定できる情報は入りません。改定後の請求で返戻や査定が出たときの整理は、通知書に患者情報が載る可能性があり、扱いが変わります。その手順はレセプトの返戻・査定通知をClaudeで事由別に整理し再請求を準備する手順にあります。病名や病歴を入力してよいかどうかの考え方は、要配慮個人情報をClaudeに入力してよいかで確認できます。
医療機関での活用の全体像はヘルスケア業界のClaude活用ガイドに載せています。
まとめ
診療報酬改定の周知資料づくりで、Claudeが受け持つのは「原本から旧と新を対にした表を作る」「職種ごとに並べ替える」「周知文の下書きを書く」ところまでです。点数と算定要件の確定、施行日の確認、院内で該当するかの判断は、原本を見られる担当者が行います。
最初は、改定項目のうち1つの章だけを選び、表にして原本と見比べてみてください。増減の列を数行抜き出して照合し、ずれが出なければ、残りの章にも同じ依頼文を広げられます。