Claude Media
Claudeで条例案の立法事実と他自治体の比較表を作る手順

Claudeで条例案の立法事実と他自治体の比較表を作る手順

他自治体の条例PDFを複数アップロードし、規定項目×自治体の比較表をExcelで出す手順と、立法事実の材料を出典つきで別表にまとめる方法、条文の転記ずれを検算する流れを解説します。

Claudeで条例案の立法事実と他自治体の比較表を作る手順

他自治体の条例をPDFで複数アップロードし、「規定項目×自治体」の比較表をExcelで出させる。条例を新しく作る検討段階で、Claudeが最も手間を減らせるのはこの作業です。ただし比較表は「他の団体がどう定めているか」を示すだけで、「自団体でなぜ必要か」を示す立法事実にはなりません。この記事では、比較表と立法事実の材料を別々の表にして、どちらも出典つきで作らせる流れを示します。

条例案の中身や制定の要否は、法制担当と例規審査の判断が前提です。ここに出す条例名と数字は説明用の架空のもので、実在の団体のものではありません。

比較表と立法事実は、別の問いに答える表

立法事実とは、その条例を必要とし、内容を合理的だと説明する根拠になる社会的・経済的な事実のことです。相談件数の推移、事故や被害の発生状況、既存の法令や条例では対処できない場面などがあたります。

一方、他自治体の条例の比較は、規定をどう設計するかの参照材料です。2つの表の役割は次のように分かれます。

立法事実の整理表他自治体の比較表
答える問い立法事実の整理表自団体でなぜ必要か他自治体の比較表他団体はどう定めているか
材料立法事実の整理表統計・相談記録・調査・既存法令の定め他自治体の比較表他団体の条例本文・施行規則
行立法事実の整理表事実1件ずつ他自治体の比較表規定項目ごと
出典の単位立法事実の整理表資料名・ページ・数字他自治体の比較表団体名・条・項

他団体が同種の条例を定めている事実は、制度設計の手がかりにはなっても、自団体の地域課題の証拠にはなりません。2つを同じ表に混ぜると、議会や庁内の審査で「根拠はどこか」と問われたときに答えにくくなります。Claudeに頼むときも、表を分けて別々のファイルで出してもらうのが確実です。

地方自治法第14条は、義務を課したり権利を制限したりするには、法令に特別の定めがある場合を除いて条例によるとしています。届出義務や勧告・公表の規定を置く条例ほど、必要性を事実で示す場面が増えます。

他自治体の条例を集めて、Claudeに渡せる形にする

ファイル作成機能は、Free・Pro・Maxでは既定で有効です。Team・Enterpriseは組織の設定で使えるかが決まります。設定の場所と作れるファイルの種類はClaudeのファイル作成・編集機能とセキュリティ設定にまとめています。

資料の渡し方で押さえておく点は4つです。

準備

条例PDFを渡す前の確認

  • 例規集サイトはClaudeから開けない前提で

    ファイル作成機能の承認済みドメインは、GitHub・npm・PyPIなどの開発系が中心で、自治体の例規集サイトは含まれません。条例はPDFかテキストで自分が保存して渡します。

  • 1つのチャットに載せられる数

    チャットへのアップロードは1チャット20ファイルまでです。比較したい団体が20を超えるなら、団体を絞るか、複数の条例を1つのPDFにまとめます。

  • 100ページを超えるPDF

    PDFは100ページ以下なら文字と図表の両方を、101ページ以上は文字のみを読みます。条例本文だけなら文字で足ります。審議会資料のグラフを読ませたいときは、該当ページだけを切り出します。

  • Word形式の資料

    PDF以外の文書は、文字だけが抽出され、埋め込まれた画像は読まれません。別表が画像で貼られたWordファイルは、PDFにして渡します。

ファイル名は「団体名_条例名_最終改正日」の形で揃えると、あとで比較表の出典欄と突き合わせやすくなります。例規集は改正のたびに更新されるため、取得日もファイル名か一覧に残しておきます。

比較する規定項目を先に決める

「条例を比較して」と頼むと、Claudeは各条例の目立つ条文を拾った表を作ります。団体ごとに拾う項目がずれて、横に並べても比べられません。先に規定項目の骨格を自分で決め、その順に埋めさせます。

条例の種類によって項目は変わりますが、義務を伴う条例なら次の並びが出発点になります。

  • 目的・定義・基本理念
  • 市(町)の責務、事業者の責務、住民の役割
  • 届出・報告などの義務の有無と対象
  • 助言・指導・勧告・公表の段階
  • 罰則(過料・罰金)の有無と上限
  • 審議会など意見を聴く仕組み
  • 施行期日と経過措置
  • 委任する規則・要綱

罰則の列は、設計の自由度に上限がある項目です。地方自治法第14条第3項は、法令に特別の定めがあるものを除き、条例に違反した者に対して、2年以下の拘禁刑、100万円以下の罰金、拘留、科料もしくは没収の刑、または5万円以下の過料を科す旨を条例中に設けられるとしています。他団体の条例にある罰則を、そのまま自団体の案に写せるわけではない点に注意してください。

比較表をExcelで出す依頼文

項目と団体の2軸を決めたら、次のように依頼します。

添付した3市の条例(A市・B町・C区)を比較し、Excelで出力してください。
 
シート1「比較表」
- 行: 次の規定項目(目的・定義 / 責務 / 届出義務 / 勧告・公表 /
  罰則 / 審議会 / 施行期日)
- 列: 項目 | A市 | B町 | C区 | 気づき
- 各セルには、該当する条番号と30字程度の要旨を書く
- 条文に定めがない項目は「規定なし」と書く。
  定めがあるか読み取れない場合は「要確認」と書く
 
シート2「原文」
- 比較表の各セルの根拠になった条文を、団体・条・項とともに
  原文のまま1行ずつ転記する
 
要旨はあなたの言い換えで構いませんが、数値(過料の額、日数、
年齢など)は原文のとおりに書いてください。

ポイントは、「規定なし」と「要確認」を区別させている点です。条例のPDFは附則や別表に重要な定めがあることがあり、読み落としと本当に規定がないことを同じ言葉にすると、あとで見分けられません。

例えば、次のような表になることを期待します(自転車の安全利用を促す、架空の条例の例です)。

項目A市B町気づき
事業者の責務A市第5条 従業員への周知に努めるB町規定なし気づきB町は事業者に触れていない
罰則A市規定なしB町第11条5万円以下の過料気づき過料の対象行為はB町のみ
施行期日A市公布の日から3月後B町規則で定める日気づき施行前の周知期間の差

「気づき」の列は、Claudeが推測で書く欄です。条文の事実と混ざらないよう、事実の列(条番号と要旨)と分けておくと、後で自分の言葉に書き直す箇所が見えます。

転記と要旨が原文どおりかを検算させる

比較表で怖いのは、条番号のずれ、数値の転記ミス、別の団体の条文との取り違えです。ファイル作成機能では、Claudeがコードを実行できるため、比較表とシート2の原文、そして元のPDFを機械的に突き合わせさせられます。

作成したExcelについて、次を確認し、結果を表にしてください。
 
1. シート2の「原文」が、添付PDFの該当団体の条文に一字一句
   一致しているか(空白と改行は無視)
2. シート1の要旨に出てくる数値が、シート2の原文に含まれているか
3. 「規定なし」とした項目について、PDF全体を検索し、
   同じ趣旨の条文が別の条・附則・別表にないか
 
一致しない箇所は、セルの位置と差分を列挙してください。

1つ目の確認は、次のような短いスクリプトでできます。Claudeが書いて実行するときの形の例です。

import re
 
def norm(s: str) -> str:
    return re.sub(r"\s+", "", s)
 
def check(source_text: str, quotes: list[tuple[str, str]]) -> None:
    src = norm(source_text)
    for cell, quote in quotes:
        if norm(quote) not in src:
            print(f"原文と一致しません: {cell}")

「問題なし」と返ってきても、鵜呑みにはできません。この検算が見るのは、転記が原文と一致しているかどうかです。要旨の読み方が正しいか、他団体の同名の条文を取り違えていないかは見ません。比較表の「気づき」の列は、人の目で読み直します。

立法事実の整理表は、出典のない行を作らせない

立法事実の表は、比較表とは逆の発想で作ります。資料があって初めて行ができるので、まず自団体の資料を渡し、その範囲だけで整理させます。

添付の資料(相談件数の集計表、庁内の事故報告、アンケート結果)から、
条例の必要性を示す事実を整理し、Excelで出力してください。
 
列: 事実の種類(件数・被害・既存制度の不足・住民の声) |
    事実(原文の数値のまま) | 出典(資料名とページ) | 時点
 
資料に書かれていないことは行にしないでください。
資料から言えないことに「推測」の列を作って書くのは構いませんが、
事実の列とは分けてください。

「資料名とページ」は、PDFビューアに表示されるページ番号で指定させます。サポートページでも、PDFの特定のページに言及するときは、紙面に印字されたページ番号ではなく、ビューア上の番号を使うよう案内されています。印字ページと食い違うPDFは、出典欄にどちらのページかを書き添えます。

Claudeに「他自治体では〜という被害が増えているので、本市でも必要です」のような文を書かせたくなりますが、他団体の状況は自団体の立法事実にならないため、この列には入れません。他団体の状況を使うなら、「参考」として別の欄に分けます。

落とし穴

統計の数字が資料から離れる

要約の途中で「約3割」「増加傾向」のような丸めた表現に置き換わると、元の数値(件数や年度)が表から消えます。事実の列は「原文の数値のまま」と指定し、検算で元資料に含まれるかを確かめます。

比較表から、条文案のたたき台まで進めるとき

比較表ができたら、次は自団体の案の骨子です。ここではClaudeに「A市とC区を参考に、自団体の案の項目別の選択肢を出して」と頼み、選択肢と、それぞれの採用理由・懸念を並べさせる使い方が現実的です。

比較表の各項目について、自団体で採りうる選択肢を2〜3案挙げ、
それぞれの利点と懸念を書いてください。
自団体の立法事実の表に根拠があるものは、その行番号を添えて、
根拠がないものは「根拠となる事実が未整理」と書いてください。

選択肢と立法事実の表の行番号をひもづけると、「この規定を置く根拠となる事実がまだない」項目が洗い出せます。条文の形にするのは、その後です。改め文や新旧対照表はClaudeで条例の改め文と新旧対照表を作る手順で扱っています。

検討中の条例案を入力する前に

制定を検討中の条例案や、庁内の統計・相談記録は、公表前の情報を含みます。何を入力してよいかは、自団体の情報セキュリティポリシーと生成AIの利用ルールが前提です。入力の線引きの考え方は自治体の生成AIガイドラインとClaudeで、入力した文書が行政文書にあたるかはClaudeに入れた文書は行政文書かで扱っています。

ファイル作成機能は、Claudeのコード実行環境で動きます。サポートページには、外部ファイルや外部サイトに仕込まれた指示でClaudeが誤誘導されうるというリスクの説明があります。他団体のPDFはいずれも公開資料ですが、出所不明のファイルは渡さない運用が無難です。

Team・Enterpriseではネットワークアクセスの設定を組織の所有者が決めます。条例PDFの比較だけなら、外部アクセスをオフにしても作業は成立します。

議会説明に回すとき

比較表と立法事実の表は、議会への説明資料や答弁の根拠にもなります。資料を根拠に答弁案を作る手順はClaudeで議会答弁案と想定問答を作るにあります。パブリックコメントに寄せられた意見を整理し、条例案に反映する段階はClaudeでパブリックコメントの意見を整理する手順の領分です。

まとめ

条例案の検討段階では、Claudeに頼む表を2つに分けます。他団体の比較表は「規定項目×団体」で、立法事実の整理表は「自団体の資料から言える事実だけ」で作ります。どちらも出典の列を必ず持たせ、転記が原文どおりかをコードで検算させます。

比較表は「他団体はこうしている」までで、立法事実は「自団体はなぜ必要か」を自団体の資料に即して示すものです。この2つを混ぜないことが、後の審査で一番効きます。

この記事を共有:XはてブLinkedIn