ClaudeとPitchBookを連携する方法 — 投資家・M&A担当者向けの企業調査データ
PitchBook Premiumの企業・ディール・投資家データをClaudeから検索・分析できるConnectorの接続手順と、照会できる16ツールの内訳をまとめます。
ClaudeとPitchBookの連携とは — できることと対象データ
Claude PitchBook連携(PitchBook Premium connector)は、PitchBookに蓄積された企業・ディール・投資家データを、Claudeとの会話から検索・分析できるConnectorです。投資家・M&A担当者が対象企業の調査をチャットの中で完結させられます。開発元はPitchBook自身で、ConnectorsディレクトリのFinancial servicesカテゴリに掲載されています。Connectorページに記載された追加時期は2025年11月です。
名称に「Premium」が付く通り、接続にはPitchBookアカウントでのサインインが必須です。Connectorページの説明どおり、実際に照会できるデータの範囲はそのアカウントが契約しているPitchBook Premiumの内容に依存します。接続すればPitchBookの全データが見えるようになるわけではありません。金融業界でのClaude活用全体の位置づけは金融業界のClaude活用ガイドにまとめています。
公式の説明文は「PitchBookの業界最先端の未上場資本市場インテリジェンスをClaudeに持ち込む」という一文で始まります。企業・ディール・ファンド・関係者を横断的に検索・分析できる点が中心的な価値です。PitchBook自体は未上場企業・ベンチャーキャピタル・プライベートエクイティの取引データを扱う調査プラットフォームで、投資銀行や運用会社のアナリストが日常的に使う業界標準の1つです。M&Aのソーシング段階で対象企業の資金調達履歴や投資家構成を洗い出す作業を、PitchBookの画面を開き直さずに会話の中で進められます。
公式ページの説明文には「Powered by our MCP server」という一文もあります。PitchBook Premium connectorは単なるConnector名ではなく、MCP(Model Context Protocol)のサーバーとして実装されていることを示す表現です。
PitchBookコネクタで照会できる16種類のツール
公式ページに掲載されたツールは16個あり、すべて pitchbook_ から始まる名前です(以下の表では接頭辞を省いて表記します)。中身はすべて検索・取得系の名前で統一されていて、作成・更新・削除を示す名前のツールは1つも含まれていません。
| 分類 | 主なツール(pitchbook_ を省略表記) | 照会できる内容 |
|---|---|---|
| 企業調査 | 主なツール(pitchbook_ を省略表記)search / get_profile / get_company_financials | 照会できる内容企業の検索、プロフィール、財務情報 |
| ディール分析 | 主なツール(pitchbook_ を省略表記)get_company_deals / get_deal_participants / get_deal_cap_table | 照会できる内容ディールの参加者、資本構成表(キャップテーブル) |
| 投資家・ファンド | 主なツール(pitchbook_ を省略表記)get_company_investors / get_investor_funds / get_investor_investments / get_fund_lp_commitments | 照会できる内容投資家の投資先一覧、ファンドのLP出資状況 |
| 市場調査 | 主なツール(pitchbook_ を省略表記)get_news_analysis / get_call_transcripts_analysis / get_private_market_reports_analysis / get_public_market_reports_analysis | 照会できる内容ニュース・決算説明会・市場レポートの分析 |
| その他 | 主なツール(pitchbook_ を省略表記)get_team_members / get_help_center_analysis | 照会できる内容経営陣情報、PitchBookヘルプセンターの参照 |
16個すべてが search または get 系の名前である点は、このConnectorが照会・分析専用に設計されている根拠になります。財務データや投資家情報のように機密性の高い情報を扱う一方、Claude側からPitchBookのデータを書き換える経路自体が存在しません。誤操作で数値を書き換えてしまう心配をせずに使えます。
表の市場調査系4ツールは、個社の財務データだけでは見えない業界全体の動きを補う役割です。決算説明会の書き起こし分析や、未上場・上場それぞれの市場レポートを組み合わせて照会できます。投資委員会向けの資料に業界トレンドの裏付けを添える場面で使えます。
典型的なデューデリジェンスの流れでは、search で対象企業を絞り込みます。次に get_profile で概要をつかみ、get_company_deals と get_company_investors で資金調達の履歴と投資家構成を照合する、という順序で依頼を重ねられます。買収候補が複数ある場合は get_deal_cap_table(資本構成表)まで踏み込めば、既存株主の持分比率が交渉にどう影響するかも確認できます。ファンド側の実務では get_fund_lp_commitments が使えます。LP(リミテッド・パートナー、出資者)ごとの出資状況を照会し、次のファンドレイズで声をかける対象を絞り込む用途です。
個人アカウントで接続する手順
Free・Pro・Maxのいずれでも、接続の流れは共通です。
- Claudeで「Customize」→「Connectors」を開く、またはチャット下部の「+」から「Connectors」→「Manage connectors」を選ぶ
- Financial servicesカテゴリ、または検索窓からPitchBookを探す
- 「Connect」をクリックし、PitchBookのログイン画面でPremiumアカウントにサインインする
- 要求される権限の範囲を確認し、許可する
接続後は、チャット下部の「Connectors」トグルでPitchBookを都度オン・オフに切り替えられます。照会できる企業・ディールの範囲は、サインインしたアカウントがPitchBook側ですでに持っている契約範囲までです。
Web版・Claude Desktopのほか、Claude Mobile(iOS/Android)からも接続できます。ただしモバイルでのConnector追加は現時点でベータ扱いです。
Team/Enterpriseでの組織展開
Team・Enterpriseプランでは、メンバーが利用を始める前にOwnerまたはPrimary Ownerが組織側でPitchBookを有効化する必要があります。
- 「Organization settings」→「Connectors」を開く
- 「Browse connectors」からPitchBookを選び「Add to your team」をクリックする
- 各メンバーが個人アカウントと同じ手順でPremiumアカウントにサインインする
投資チーム全体でPitchBookを契約している運用会社では、Ownerが上記の手順で一度有効化すれば、メンバーは各自サインインするだけで使い始められます。なお、これとは別に、Team・Enterpriseプランでは、組織の認証基盤(IdP)を通じて管理者がConnectorを一度認可すれば、メンバーが初回ログイン時に自動でアクセスを引き継ぐ仕組み(Enterprise-managed auth)も一般提供されています。この仕組みがPitchBook Connectorでも使えるかどうかは、一次ソースでは確認できませんでした。
財務・投資データを扱ううえで押さえておきたい制約が2つあります。Team・Enterpriseプランでは、Connectorはプライベートプロジェクト内でのみ利用でき、PitchBookのデータが含まれる会話は他のメンバーと共有できません。案件の調査結果をチーム内に共有する場合、会話そのものではなく要点を別途まとめて渡す運用になります。もう1つは、Owner・Primary OwnerがConnectorごとに「Tool permissions」を設定できる点です。PitchBookのようにすべてのツールが照会専用のConnectorでも、組織のセキュリティ方針として明示的に制限をかけられます。権限設定と組織側の統制の考え方は業務SaaS連携は読み取り専用アクセスから始める理由で扱っています。
Ontraコネクタとの違い — 投資前調査と投資後管理
同じFinancial servicesカテゴリでも、PitchBookとOntraでは対象とする業務の段階が異なります。
| 項目 | PitchBook | Ontra |
|---|---|---|
| 対象データ | PitchBook未上場企業・ディール・投資家・ファンドの市場データ | Ontraエンティティ・所有構造・契約・法域データ |
| 主な利用場面 | PitchBook投資前のソーシング・デューデリジェンス | Ontra投資後のエンティティ管理・法務コンプライアンス |
| 想定ユーザー | PitchBook投資家・M&A担当者・アナリスト | Ontra投資ファンド運用会社の法務・コンプライアンス部門 |
| 書き込み対応 | PitchBookなし(照会専用) | Ontraなし(照会専用) |
両方とも照会専用という設計は共通していますが、PitchBookは「どの企業・ファンドに投資すべきか」を判断する材料を、Ontraは「すでに投資した先の構造をどう管理するか」を扱う材料を提供します。M&Aの一連の流れでは、ソーシング段階でPitchBook、クロージング後の管理段階でOntraという組み合わせが成立します。投資後のエンティティ管理・法務コンプライアンス向けの使い方はClaudeとOntraを連携する方法にまとめています。
よくあるつまずき
Connectorsの一覧にPitchBookが出てこない
Team・Enterpriseプランでは、Ownerが組織側でPitchBookを有効化していないと、メンバーの設定画面に選択肢自体が表示されません。個人アカウントではこの手順が不要で、最初から一覧に出てきます。
サインインはできるのに欲しいデータが出てこない
特定のモジュールやレポートがPremium契約に含まれていない場合、Claude経由でも同じ制約を受けます。PitchBook側の契約内容を先に確認します。
業界全体を横断検索すると応答が遅い
「この業界の企業を全部調べて」のような広い依頼は、対象企業数が多くなる分、応答に時間がかかることがあります。業界・地域・資金調達ステージなどで対象を絞ってから依頼すると、応答が安定しやすくなります。
同じ企業名の候補が複数出て絞り込めない
社名だけで検索すると、同名または類似名の企業が複数ヒットすることがあります。本社所在地や業界、直近の資金調達ラウンドといった追加情報を添えて依頼すると、search の結果が絞り込まれやすくなります。
よくある質問
取得した数値をそのまま社外向け資料に転記できますか
ツールが返す情報はあくまで検索・分析用の照会結果です。社外向け資料に転記する際に出典表記や引用条件を満たす必要があるかは、PitchBook側の契約条件を別途確認します。
まとめ
Claude PitchBook連携は、未上場企業・ディール・投資家・ファンドのデータをチャットから直接検索・分析できる、照会専用のConnectorです。16個のツールはすべて pitchbook_ で始まり、中身は search または get 系の名前で統一されていて、書き込み操作に対応するツールは含まれていません。個人アカウントは「Customize」→「Connectors」からPremiumアカウントにサインインするだけで使い始められます。Team・EnterpriseはOwnerによる組織側の有効化が前提です。同じFinancial servicesカテゴリのOntraコネクタと組み合わせれば、投資前のソーシングから投資後のエンティティ管理まで、案件の段階に応じてConnectorを使い分けられます。