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Claudeで同意書をやさしい日本語に直し、意味のずれを確かめる

Claudeで同意書をやさしい日本語に直し、意味のずれを確かめる

患者向けの同意書や説明文をやさしい日本語に書き換え、原文との意味のずれをプロジェクトと別チャットの逆変換で確かめる手順をまとめます。

同意書や説明文をやさしい日本語に書き換える作業は、Claudeに文章を渡せば数十秒で形になります。難しいのはその後です。短く言い換えた結果、「ただし」の条件が落ちたり、「〜しないことがあります」が「〜しません」に変わったりしても、書き換えた本人は気づきにくいものです。

この記事では、Claudeのプロジェクト機能に書き換えの規則を持たせ、別のチャットで逆変換して原文と突き合わせる手順を扱います。書き換えより、意味のずれを見つける工程に重心を置いています。

書き換えの規則はプロジェクトの指示に置く

Claudeのプロジェクトには、プロジェクト指示(project instructions)を書く欄があります。ここに書いた内容は、そのプロジェクト内のすべてのチャットで使われます。毎回プロンプトを貼り直さなくても、同じ規則で書き換えが続けられます。

プロジェクトは無料アカウントでも作れ、上限は5つです。作成はサイドバーの「Projects」から「New Project」を選びます。名前と説明は人間向けの項目で、Claudeには渡りません。

あなたは病院の患者説明文を、やさしい日本語に書き換える編集者です。
次の規則を守ってください。
- 1文は40字以内を目安にし、1文に1つのことだけを書く
- 専門用語は、日常語に言い換える。言い換えられない語は
  そのまま残し、直後に( )で短い説明を付ける
- 「〜でない場合を除き」のような二重否定や条件の入れ子は、
  文を分けて「もし〜なら」の形で書く
- 数字、日付、金額、薬の名前、連絡先は原文のまま写す
- 原文にないことは足さない。分からない箇所は「原文確認」と書く
- 削った文や言い換えた語は、最後に対応表で報告する

上の指示は、書き換えの質を決める編集上の規則の一例です。病院ごとの表記ルールがあれば、そちらに差し替えてください。肝心なのは最後の2行です。「足さない」「削ったものを報告する」を指示に入れておくと、ずれを後から探す手がかりが残ります。

原文はプロジェクトの資料に入れない

プロジェクトには、資料をアップロードする「プロジェクト知識」の欄もあります。ここに入れたファイルは、プロジェクト内のすべてのチャットで参照されます。反対に、プロジェクト内でもチャット同士の文脈は共有されません。共有したい情報は知識として登録する必要があります。

この性質が、今回の検証手順の土台になります。ただし文脈が共有されないのはチャット同士の話で、プロジェクトの指示と知識は、そのプロジェクト内のどのチャットにも届きます。

  • 用語集や院内の表記ルールのように、毎回使うものは知識に入れる
  • 書き換え対象の同意書は知識に入れず、各チャットに貼るか添付する
  • 逆変換は、プロジェクトの外の新しいチャットで行い、原文を一切見せない

原文を知識に入れてしまうと、プロジェクト内のチャットからは原文が参照できます。そうなると「書き換え文だけから元の意味が復元できるか」という確認が成り立ちません。逆変換をプロジェクトの外で行うのは、このためと、プロジェクト指示との衝突を避けるためです。

メモリーはプロジェクトごとに別々に保持され、プロジェクト外のチャットのメモリーとも分かれています。プロジェクトのメモリーはプロジェクトの外で開いたチャットには入らないので、逆変換をプロジェクトの外で行う意味はここにもあります。ただしプロジェクト外のチャットのメモリーに原文を扱った履歴があるなら、その扱いも確かめておきます。書き換え側のプロジェクトのチャットでメモリーの持ち込みを避けたいときは、最初のメッセージを送る前に「+」メニューの「Memory」をオフにする方法があります。

ファイルの扱いにも上限があります。プロジェクト知識に入れるファイルは1つ30MBまでで、テキストの抽出が中心です。一方、チャットに直接添付する場合は1つ500MB、1チャット20ファイルまでです。PDFは1,000ページまでで、100ページ以内なら図表も解析されます。スキャンした同意書の画像は、解像度が低いと読み取りが不安定になるため、1000×1000ピクセル以上が目安とされています。

5つの手順で書き換えて確かめる

手順

書き換えから確認までの流れ

  1. 1

    必須項目を原文から抜き出す

    新しいチャットに原文を貼り、「同意の判断に必要な項目」を一覧にさせます。目的、内容、リスク、代わりの選択肢、費用、同意を取り消せること、連絡先、期限と数値が主な項目です。

  2. 2

    やさしい日本語に書き換える

    同じチャットで書き換えを依頼します。指示に従えば、対応表も一緒に出ます。

  3. 3

    対応表で削除と追加を確認する

    原文の各文が、書き換え文のどこに対応するかを人が目で追います。「対応なし」の行が、削った文です。

  4. 4

    別チャットで逆変換する

    プロジェクトに入っていない通常の新しいチャットを開き、書き換え文だけを貼ります。「この文章を、正確で詳しい通常の文章に書き直してください」と頼みます。プロジェクト内で開くと、書き換えの指示がそのまま効いてしまい、この依頼と衝突するためです。プロジェクトのメモリーはプロジェクト外のチャットとは分かれて保持されるため、外で開いたこのチャットにプロジェクトのメモリーは入りません。プロジェクト外のチャットのメモリーに原文を扱った履歴があるなら、その扱いも確かめておきます。

  5. 5

    逆変換の結果を手順1の一覧と突き合わせる

    逆変換で復元できなかった項目や、原文にない項目が出ていないかを見ます。ずれが出た箇所だけ、書き換えに戻って直します。

手順1の一覧は、あとで答え合わせに使うため、チャット内の文章ではなく自分のメモにも写しておくと安全です。書き換えを何度か繰り返すと、チャットが長くなり、最初の条件が薄れやすくなります。

逆変換の依頼文の書き方

逆変換が機能するかどうかは、依頼文で決まります。「やさしく書かれた文章を通常の文章に戻して」とだけ頼むと、Claudeは一般的にありそうな説明を補ってしまうことがあります。補った内容は、書き換え文に実際に書かれていたことなのか区別できません。

そのため、依頼文には「書かれていないことを補わない」と「読み取れない箇所を列挙する」を入れます。例えば次のような形です。

次の文章は、患者向けの説明文です。
この文章に書かれていることだけを使い、正確な通常の文章に直してください。
書かれていない内容は補わないでください。
意味が2通りに取れる箇所と、情報が足りず読み取れない箇所は、
直さずに一覧にして示してください。

「直さずに一覧にする」の指定が要です。曖昧な箇所をAIが自然に埋めてしまえば、ずれは見えなくなります。一覧に出た箇所は、そのまま書き換え文の修正候補になります。

数字と否定は機械で突き合わせる

AIによる逆変換は意味の確認に向きますが、数字や期限の一致は文字列で照合するほうが確実です。原文と書き換え文をテキストファイルに保存し、数字を含む表現だけを取り出して比べます。

extract() { grep -oE '[0-9]+(円|日|回|%|mg|歳|時間|か月)?' "$1" | sort; }
diff <(extract original.txt) <(extract plain.txt) \
  && echo "数字は一致" || echo "数字に差があります"

全角数字は半角に揃えてから比べないと、同じ数字でも差として出ます。差が出たら、言い換えの結果として正しく変わったのか、書き写しの誤りなのかを人が判断します。「3日以内」が「3日」になるような、単位や範囲の落ちも見つかります。

否定と条件の突き合わせは、機械では難しい部分です。次の表は、見落としやすい典型例です。

原文の型起きやすいずれ見るポイント
〜することがあります起きやすいずれ「〜します」と断定になる見るポイント可能性の表現が残っているか
〜しないことがあります起きやすいずれ「〜しません」と逆の意味になる見るポイント否定と可能性の順序
〜の場合を除き起きやすいずれ例外が消えて全面適用になる見るポイント例外条件が文として残っているか
〜が可能です起きやすいずれ義務のように読める見るポイント権利と義務の区別
同意を撤回できます起きやすいずれ撤回の方法や期限が落ちる見るポイント連絡先と手続きが付いているか

最も重いずれは、撤回の権利と、同意しなくても不利益がないことの記述が落ちる場合です。同意書では、必須項目の一覧に必ず入れておきます。

用語集をプロジェクト知識に入れて言い換えをそろえる

同じ書類の中で、同じ意味の語が「検査」「テスト」「調べること」と揺れると、読み手は別のものだと受け取ります。プロジェクト知識には、院内で使う言い換えの対応表を入れておくと便利です。

原文の語,やさしい日本語,補足の付け方
侵襲,体に傷をつけること,初出のみ( )で原語を残す
有害事象,体に起きた悪いこと,薬との関係は問わない
撤回,やめると決めること,いつでも可能と書く

この表の右列は、あくまで書式の例です。医療者が内容を確認してから登録してください。誤った言い換えを知識に入れると、全チャットに同じ誤りが広がります。

ずれの具体例

次の例は、手順で見つけたいずれを示すための架空の一文です。

くらべる

否定と可能性が落ちる例

架空の例

原文

検査のあと、熱が出ることがあります。出た場合は連絡してください。

要修正

ずれた書き換え

検査のあと、熱が出ます。出たら連絡してください。

このずれは、逆変換が「必ず熱が出る」と断定で復元され、必須項目の一覧にある「可能性の表現」と食い違うことで見つかります。文として自然であるほど、読み流すと気づきません。

最後は人が確認し、個人情報は入れない

Claudeの出力には誤りが混じりえます。この手順は、ずれを見つける確率を上げるものであって、ゼロにはしません。書き換えた文は、院内の説明担当者や、同意書の審査を担う部署が確認します。研究の同意書や、施設の承認を受けた様式の文言を変える場合は、変更自体に手続きが必要になることがあります。

読み手に実際に読んでもらう確認も有効です。外国にルーツのある患者や、日本語を学習中の方に読んでもらい、「この文書は何について同意するものか」を自分の言葉で話してもらいます。AIの逆変換では拾えない、読み手側のつまずきが見えます。

入力する内容にも注意が必要です。書き換えの対象は様式の雛形に絞り、患者の氏名、ID、検査結果などは入れません。診療情報を扱う場合の契約や指針は、Claude EnterpriseのBAA締結と前提条件や、医療情報システム安全管理ガイドラインと生成AI入力の扱いで整理しています。医療の専門用語をClaudeがどこまで正確に言い換えられるかは、業界用語の理解精度の検証が参考になります。

複数人で使うときのプロジェクト共有

TeamまたはEnterpriseプランでは、プロジェクトを組織内の他のメンバーと共有できます。権限は「Can view」と「Can edit」の2段階です。Can viewのメンバーは、指示や知識を読み、プロジェクト内でチャットできますが、編集はできません。指示の変更は、Can editの担当者に限っておくと、規則が現場ごとにばらつきません。

共有の可否は管理者の設定にも左右されます。管理者が共有を止めている場合、新しい共有はできません。

有料プランでは、プロジェクトの知識がコンテキストウィンドウの上限に近づくと、RAGモードが自動で有効になります。用語集を大きく育てても、容量を理由に入れられなくなる心配は小さくなります。ただしRAGでは必要な部分だけを検索して使うため、「この表記ルールは必ず適用される」と考えるのは避け、重要な規則はプロジェクト指示に書いてください。

まとめ

書き換えの質は、プロジェクト指示の規則で一定にできます。ずれの発見は、原文を見せない別チャットでの逆変換、対応表、数字の機械照合の3点で行い、最後は人が読みます。

特に手順の核は、原文を知識に入れず、逆変換をプロジェクトの外で行うことです。プロジェクトの便利さが、逆変換の独立性を壊すことがあります。

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