Claude Securityとは — スキャンの仕組みとCLI(プラグイン)の使い分け
Claude Securityは、コードを並列スキャンして脆弱性を検知し修正パッチを提案するEnterprise向け機能です。スキャンの流れ、ターミナル(Claude Code)から使う方法、有効化の前提を解説します。
Claude Securityは、GitHub上のコードベースを並列にスキャンして脆弱性を検知し、レビュー用の修正パッチを提案するEnterprise向け機能です。パターンマッチング型の従来スキャナーと違い、ファイルをまたいだデータの流れを追跡してロジックレベルの脆弱性を見つけます。見つけた候補は自分自身で再検証してから報告されます。
ターミナルから使いたい場合の入口は、Claude Code用のClaude Securityプラグイン(ベータ)です。製品ページではすべてのClaude Codeユーザーに向けたベータとされています。一方、Mythosでのスキャンはclaude.ai/securityの本体だけで動きます。違いは3つの入り口の使い分けにあります。
Claude Securityとは何か
「コードベースをスキャンして脆弱性を検知し、対象を絞った修正パッチを人間のレビュー向けに提案する、Claudeに組み込まれた機能」が公式の定義です。Enterpriseプランのユーザー向けにパブリックベータで提供されています。
スキャンはClaude Mythosで動き、利用者はこのモデルに直接触れずに検知結果だけを受け取ります。提案されたパッチはClaude Code on the Webのセッションとして開き、アカウントで使えるモデルで実装を進められます。
従来の静的解析ツールは固定のパターンを当てます。既知の脆弱性の型はよく拾いますが、誤検知が多くなりやすく、複雑な問題は見落としがちです。
Claude Securityはエージェントが実行のたびに分析内容を調整し、セキュリティ研究者のようにコードの文脈を推論します。Gitの履歴を読み、データの流れを追い、ビジネスロジックまで理解したうえで、実在する脆弱性と実際の修正を探します。ビジネスロジックまで追う深さを得る代わりに、同じリポジトリでも実行ごとに結果が変わり得ます。
重点を置くのは深刻度の高い脆弱性で、メモリ破壊、インジェクション、認証バイパス、複雑なロジックエラーの4種が挙がっています。
スキャン(scan)は、リポジトリを選んで開始すると次の3段階で進みます。
- 並列スキャン: ファイルをまたいだデータフローを追跡し、複数コンポーネントにまたがる脆弱性パターンを検知します。
- 検証: 各結果は多段階の検証を通り、Claude自身が結果に反証を試みます。製品ページはこの工程を敵対的検証(adversarial verification pass)と呼びます。報告される実在の問題を増やしつつ、誤検知を減らす狙いです。検証を通った結果には確信度の評価と修正パッチの提案が付き、Claude Code on the Webで開けます。
- レビューとパッチ: 検知結果からClaude Codeのセッションに移り、提案パッチを確認します。
自分の組織で使えるか — 有効化の前提と手順
対応リポジトリはGitHub.comとGitHub Enterprise Serverだけです。前提条件は5つで、Claude Code on the Webをすでに使っている組織なら、ほとんどが満たされています。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| プラン | 内容有効なClaude Enterpriseアカウント |
| Claude Code on the Web | 内容組織で有効(claude.ai/code) |
| Extra Usage | 内容従量課金のため有効化が必要 |
| GitHub App | 内容Claude GitHub Appを対象リポジトリに許可 |
| シート | 内容スキャンする全員がプレミアムシート(標準シートにClaude Code on the Webは含まれない) |
GitHub Enterprise Serverの場合は、アプリをGHESインスタンス側に入れ、そのインスタンスをClaude Code on the Webに接続済みにしておきます。
有効化の確認順
- 1
Extra Usageと支出上限
組織の請求設定でExtra Usageを有効にします。有効化後はClaude Security専用の支出上限も別に決められます。
- 2
GitHub Appのアクセス範囲
GitHub組織の「Installed GitHub Apps」で、対象リポジトリにアクセスが許可されているか確認します。
- 3
プレミアムシート
スキャンするユーザー全員のシートを、Claude.aiの管理コンソールで確認します。
- 4
機能のオン
Claude Securityのトグルをオンにします。
トグルの場所は公式の2ページで書き方が違います。サポートセンターの記事は「Organization settings > Claude Security」で、組織オーナーが「Turn on for your organization」をオンにすると説明します。チュートリアルは管理コンソールのclaude.ai/admin-settings/claude-securityを案内しています。どちらから入っても、有効化後はClaude Code on the Webの画面にセキュリティスキャンの入口が現れます。
スキャンの実行からパッチ適用まで
claude.aiのサイドバーにあるSecurityアイコン、またはclaude.ai/securityから入ります。リポジトリを選び、必要ならディレクトリやブランチに範囲を絞って開始します。リポジトリの規模によって、完了まで数分から数時間かかります。
結果が出たあとの選択肢は4つです。
- 詳細のレビュー
- プロジェクト・スキャン・個別の検知を単位にしたCSVまたはMarkdownへのエクスポート
- 該当の脆弱性に絞ったClaude Code on the Webセッションでの修正
- 誤検知や対象外の場合の、理由付きの却下
却下した結果は以降のスキャンで再表示されません。着手は深刻度の高いものからが公式の推奨です。スキャン履歴はclaude.ai/securityに残ります。
却下の理由は記録として引き継がれ、Claude Securityで下したトリアージの判断が、チームが普段使うほかの場所でも見えるままになります。
提案されるパッチは、コードの構造とスタイルを保つ形に絞られた修正です。フィードバックは、製品内の右側にあるアイコンから送れます。
検知対象と深刻度の見方
検知結果の分類は次の8種類です。
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| インジェクション(SQL・コマンド・コード・XSS) | 内容信頼できない入力がクエリ構造を変える、または実行される | 例' OR 1=1--、; rm -rf / |
| インジェクション(XXE・ReDoS) | 内容パーサーや正規表現が細工された入力で悪用される | 例XML <!ENTITY> による/etc/passwd読み取り |
| パス・ネットワーク(パストラバーサル・SSRF・オープンリダイレクト) | 内容入力がファイルパスやリクエスト先を制御する | 例../../etc/passwd、http://169.254.169.254/へのリクエスト |
| 認証・アクセス(認証バイパス・権限昇格・IDOR/BOLA・CSRF・レース) | 内容アクセスチェックが欠落・回避可能・競合状態にある | 例GET /orders/123が他人の注文を返す |
| メモリ安全性 | 内容バッファ/整数オーバーフロー、UAF、unsafeの誤用 | 例主にC/C++/Rustのunsafeコード |
| 暗号 | 内容タイミングリーク、アルゴリズム混同、弱いプリミティブ | 例alg=noneのJWT、MD5/SHA-1/DES/ECB |
| デシリアライゼーション | 内容信頼できないバイト列がオブジェクト構築を駆動する | 例pickle、Java readObject、YAML load |
| プロトコル・エンコーディング | 内容レイヤー間の解釈の不一致、宣言サイズの過信 | 例Hostヘッダー経由のキャッシュ汚染 |
深刻度は分類ではなく、リポジトリごとの悪用可能性で決まります。同じ分類でも、別のリポジトリでは別の深刻度になります。
深刻度の判定基準
High
認証不要のリモート攻撃者が、デフォルト構成のまま悪用できます。例は公開APIエンドポイントの認証なしコマンドインジェクションです。
Medium
認証の背後にあるか、特定のロール・既知の識別子・ユーザー操作といった現実的な前提が1〜2個必要です。
Low
前提が3つ以上、ローカルアクセス限定、または具体的な攻撃経路を示せないものです。
深刻度のしきい値は設定変更できません。8分類の掘り下げはClaude Securityの脆弱性タイプと深刻度の判定基準にあります。
各検知結果が持つ項目は、タイトル・詳細・ファイルパスと行番号・影響・再現手順・推奨される修正・深刻度・ステータス(Open/Dismissed/Resolved)・カテゴリー・リポジトリ・ブランチ・作成日です。却下された結果には、却下理由と任意のメモが加わります。
運用に乗せるときの設計
継続運用の要点は、リポジトリ・サービス・チームごとにプロジェクトを分けることです。結果の帰属がはっきりし、レビュアーが他チーム分に埋もれません。堅牢化したブランチとmainを、順番待ちなしに並べて比べる使い方もできます。
初回スキャンや大きな変更の後は、スキャンの労力を「Standard」と「Extended」から選べます。深く見たいときはExtendedを使う、というのがチュートリアルの案内です。
週次のような固定サイクルは、直近の変更で入った問題を拾いつつ、バックログを積み上げにくくします。ただし担当者が決まっていないと、検知が溜まるだけになります。月曜のトリアージ会議やスプリントの区切りなど、すでにある行事に結びつける形です。
エクスポートしたCSVは、何をいつスキャンし、チームがどう対応したかの記録として監査に使えます。通知はプロジェクト単位のWebhookでSlackやJiraに流せます。送られるイベントは、スキャンの完了と新しい検知の2種類で、自社のシステムにリアルタイムで取り込めます。定期スキャンも設定でき、手動で起動しなくても継続的に範囲を見張れます。スキャンにかかる時間は、リポジトリの大きさとエージェントの動きで変わります。個人設定の「General」にある「Notifications」で、メール通知も設定できます。
料金とモデルの食い違い
スキャンはトークンの直接コストのみが課金され、Claude Security自体に追加のプラットフォーム料金はありません。プレミアムシートの単価はEnterpriseを含むプラン全体の料金で確認できます。
スキャンに使うモデルは、公式ページ同士で表記が違います。サポートセンターの記事(2026-08-27付)はClaude Mythos 5、チュートリアルと製品ページはClaude Mythos 5.1です。製品ページは、全Enterprise顧客のスキャンがMythos 5.1で動くと書いています。チュートリアルでは、プレミアムシートを持つEnterpriseの利用者が5.1でスキャンできます。
3つの入り口の使い分け
同じ「セキュリティ」を名乗る入口が3つあり、モデルも範囲も違います。
Claude Security本体・プラグイン・/security-review
Claude Security本体
claude.ai/securityから、リポジトリ全体を並列スキャンします。Claude Mythosで動くのはこの入口だけで、検知結果をプロジェクト単位で管理し、Webhookやエクスポートにも対応します。
Claude Securityプラグイン
Claude Codeアカウントで使えるモデルでスキャンを動かします。Mythosは使いません。Claude Codeの中でスキャン・検証・パッチ適用までを進められ、コードは自分の環境の外に出ません。製品ページではベータ提供で、すべてのClaude Codeユーザーが使えます。Claude Codeのワークフローに軽く組み込みたいときの入口です。
/security-review
/security-reviewは、現在のブランチとoriginの既定ブランチの差分を、インジェクション・認証・データ露出などの観点で見ます。originリモートが必要で、ambiguous argumentエラーで失敗した場合はエラー一覧に対処があります。
Claude Security本体はEnterprise向けのベータです。個人や小規模チームで近いことをするなら、プラグインや/security-reviewが手の届く選択肢です。
つまずきの切り分け
セキュリティページが「Install GitHub App」を繰り返し要求する
claude.ai/securityは、接続している自分のGitHubアカウントに個別のチェックをかけます。組織全体のインストールが済んでいても、あなた個人だけ失敗することがあります。原因は4つです。
- GitHubアカウントがClaudeに接続されていない(Customize > Connectorsで確認)
- 接続しているアカウントが、アプリをインストールした組織のメンバーでない
- GitHub組織がSSOを必須にしていて、Claudeアプリの認可が別途必要
- GitHub組織のIP許可リストが、このチェックをブロックしている
最後の原因だけ、設定箇所が紛らわしくなります。GitHubの「Enable IP allow list configuration for installed GitHub Apps」は、Code Reviewのようなアプリ本体の通信を通します。この個別チェックは対象外なので、組織レベルの許可リストに160.79.104.0/21を手動で追加します。GitHub Enterprise Serverを使う場合は、インスタンスがAnthropicのIPアドレスからの受信を許可している必要があります。
大規模リポジトリの範囲の絞り方
大きなリポジトリでは、ディレクトリを選んでスキャンするとスキャンの成功率が上がります。チュートリアルも、リポジトリ全体ではなくディレクトリやモジュール単位に絞る方法を強く勧めています。大規模なモノレポでは、範囲を絞ると再現性が上がり、エージェントの注意も絞られるためです。
適用前に押さえる制約
提案されたパッチは、重要なシステムでは特に、適用前に必ず人間がレビューします。スキャンできるのは、自社が所有し、スキャンに必要な権利をすべて持つコードだけです。オープンソースプロジェクトなど第三者のコードは対象外です。
データ保持については、法令順守や利用ポリシー違反への対応でAnthropicがデータを保持する場合があり、ゼロデータリテンションの対象外です。
まとめ
組織の購入前に確かめる点は、プレミアムシートの人数とExtra Usageの上限です。スキャン量に比例して課金されるので、最初は範囲を絞った1リポジトリで費用の感触をつかむ運用が現実的です。