登記簿謄本の読み方をClaudeで整理する — 全部事項証明書PDFの手順
登記情報提供サービスで取得した全部事項のPDFをClaudeに読ませ、甲区・乙区を時系列の表にして抵当権の抹消と共有者を確認する手順です。スキャン精度の確かめ方と個人情報の扱いも扱います。
登記簿謄本は、Claudeに読ませると「甲区と乙区の記載を、どの順番で何が起きたか」という時系列の表にしやすい書類です。ただし、読み取りが一箇所ずれると権利関係の理解そのものがずれます。この記事では、全部事項のPDFを渡してから表にし、抵当権の抹消と共有者を確かめるまでを、検算の方法つきで順に説明します。
手元のPDFは「証明書」か「登記情報」かを先に見分ける
読み込ませる前に確かめたいのは、そのPDFの出どころです。名称が似ていても、法務局で交付を受ける登記事項証明書と、オンラインで見る登記情報は別物です。
登記情報提供サービスの案内ページには、次の趣旨の説明があります。このサービスでは登記情報を確認できますが、印刷しても認証文や登記官印がないため、証明書にはなりません。証明書が必要なときは、法務省の登記・供託オンライン申請システムで請求して、郵送か登記所窓口で受け取る方法が別にあります。
整理の目的が「自分で権利関係を把握する」ことなら、登記情報提供サービスのPDFで足ります。融資や契約の提出書類に使うなら、証明書を取り直す必要があります。
登記情報提供サービスの利用料金
全部事項
330円
不動産登記情報
所有者事項
140円
不動産登記情報
地図
360円
図面も360円
利用料金は、国に納める登記手数料と協会手数料10円(消費税込み)を合わせた額です。請求した事項の記録がない場合も、その旨が表示されて課金されます。
請求の際は、住所(住居表示)ではなく地番または家屋番号で不動産を特定します。住所で調べて取り違えると、別の土地のPDFを丁寧に読ませることになります。届いたPDFは表題部の地番・家屋番号と照合します。
利用時間は平日が午前8時30分から午後11時まで、土日祝日が午前8時30分から午後6時までで、年末年始は休業です。
表題部で、どの土地・建物の記録かを確かめる
全部事項の先頭にあるのは、甲区・乙区ではなく表題部です。表題部には、その不動産がどれかを示す「表示」の記録が入ります。不動産登記規則は、登記記録を表題部と権利部に分け、表題部の欄と記録事項を土地・建物・区分建物ごとに別表で定めています。
土地の表題部には、不動産番号、所在、地番、地目、地積などが記録されます。建物(区分建物でないもの)では、不動産番号、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などです。附属建物があれば、その表示も同じ表題部に載ります。区分建物は別表が分かれており、一棟の建物の表示欄もあります。
権利関係を読む前に、この欄の地番または家屋番号が、取得しようとした不動産と一致しているかを見ます。請求時に住所ではなく地番・家屋番号で特定するのは、ここで照合するためです。PDFの取り違えは、表題部を見れば最初に気づけます。
甲区と乙区の役割と、時系列の並べ方
Claudeに表を作らせる前に、こちらが読み方の骨格を持っておくと、出力の誤りに気づけます。
不動産登記規則は、権利部を甲区と乙区に分けると定めています。甲区には所有権に関する登記事項、乙区には所有権以外の権利に関する登記事項が記録されます。抵当権は所有権以外の権利なので乙区、売買や相続による名義の変遷は甲区に載ります。
時系列にするときの落とし穴が、順序の決まり方です。同じ区の中の登記は順位番号で前後が決まります。別の区の登記どうしは、順位番号では比べられず、受付番号で前後が決まります。
つまり、甲区の「順位番号3」と乙区の「順位番号2」を、番号の大小で並べてはいけません。「所有者が変わってから抵当権が付いたのか、付いてから所有者が変わったのか」は、受付年月日と受付番号を見る必要があります。
区をまたぐ並べ方
同じ区の中
甲区どうし、乙区どうしは順位番号の小さい順に並べます。
甲区と乙区をまたぐ
順位番号は使えません。受付年月日と受付番号で前後を決めます。
この点を、プロンプトに先に書いておきます。
Claudeに渡すプロンプトと出力の形
PDFは、テキストより先に置きます。公式のPDF対応の案内は、PDFをテキストより前に置くこと、PDFビューアー上の論理ページ番号でページを指定することを勧めています。以下はClaude.aiやAPIのどちらでも使える依頼文の一例です。
添付は不動産の全部事項のPDFです。次の手順で整理してください。
1. 最初に表題部の不動産番号、所在、地番(建物なら家屋番号、
種類、構造、床面積)を書き出してください。
2. 甲区と乙区の各登記を、1行ずつ表にしてください。
列は「区・順位番号」「受付年月日・受付番号」「登記の目的」
「原因」「権利者その他の事項」「抹消の記号の有無」「PDFのページ」。
3. 甲区と乙区をまたぐ前後は受付番号で決めます。順位番号で
比べず、受付年月日と受付番号の順に並べ替えてください。
4. 抹消の記号(下線など)が付いているか、判読に自信がない行は
「要目視」と書き、推測で埋めないでください。
5. 表の後に、現在も有効と読める乙区の権利と、甲区の現在の
所有者(共有なら全員と持分)を別に書いてください。出力の「PDFのページ」列を入れる意図は、後で人が原本の該当箇所を開いて照合できるようにするためです。表の各行に出典ページを持たせておくと、検算で原本のどこを見るかが決まります。
APIから呼ぶ場合の書き方は、公式ドキュメントの例に沿った形で、次のようになります。
import anthropic, base64
client = anthropic.Anthropic()
with open("zenbu_jiko.pdf", "rb") as f:
pdf_data = base64.standard_b64encode(f.read()).decode("utf-8")
message = client.messages.create(
model="MODEL_ID", # 利用するモデルIDに置き換える
max_tokens=4096,
messages=[{
"role": "user",
"content": [
{"type": "document", "source": {
"type": "base64",
"media_type": "application/pdf",
"data": pdf_data}},
{"type": "text", "text": "上記の手順で整理してください。"},
],
}],
)
print(message.content)PDFに暗号化やパスワードがあると読めません。公式の要件は「標準的なPDF(パスワード・暗号化なし)」で、リクエスト全体が32MB以内、1リクエストあたり600ページまで(コンテキストウィンドウが1M未満のモデルでは100ページ)です。ページ数が多い場合は、分けて渡す方法があります。
抵当権の抹消と共有者を確認する
表ができたら、次の三点を、Claudeの出力と原本の両方で突き合わせます。
抵当権が「今も付いているか」
乙区の抵当権設定が、その後の抹消の登記で消えているかを見ます。登記官は、登記事項を抹消するときに抹消する記号を記録すると規則に定められており、紙や画面でどう見えるかは様式によって違うことがあるので、依頼文では「下線など」と幅を持たせています。
この「抹消の記号の有無」が、最も読み違えやすい点です。依頼文で「抹消の記号の有無」を独立した列にしているのはそのためです。抹消の登記が別の行として載っているか(原因が「弁済」などか)と、元の行に記号が付いているかを両方確認します。片方だけ見ると、消えたはずの抵当権を現役と読んだり、その逆を起こしたりします。
共有者と持分
甲区に共有者の記載がある場合、全員の氏名と持分が表に出ているかを数えます。「持分○分の○」の分数が、全員分を足して1になるかを人が確かめます。足し合わせて1にならないなら、読み落としか読み違いです。
所有者が誰から誰に変わったか
甲区の移転の登記を順に追い、直近の所有権登記の名義人が、売り主として名乗る人と一致するかを確かめます。氏名や住所の変更は、名義人の表示を直す登記として別の行に載ることがあります。
スキャンPDFでどこまで正しく読めるか
登記情報提供サービスからは、請求時にシステム内でPDFファイルが作成されます。一方、紙の謄本をスキャンしたものは、ページが画像になっています。
Claudeは、PDFの各ページを画像に変換し、抽出したテキストと並べて読む仕組みです。画像として読む経路があるため、スキャンPDFでも扱えます。ただし、画像の解釈には精度の限りがあります。公式は、低品質・回転・非常に小さい画像では誤って解釈する場合があると説明しています。
登記では、抹消の記号、細かい持分の分数、手書きの訂正が、まさにその条件に当たりやすい箇所です。そこで、読ませる前に次の準備をします。
- 各ページを正立の向きに直す(傾き・回転を補正する)
- 解像度を落とさず、文字がかすれない設定でスキャンする
- 共同担保目録のような小さい字の表は、ページを分けて渡す
精度を信じる前に、自分の書類で試します。手元に結果が分かっている謄本が一通あれば、それを使うのが近道です。
- 同じPDFを3回読ませ、表の行数と持分の数字が毎回一致するかを見る
- 抹消の記号が付いた行を、人が先に全部チェックしておき、Claudeの「抹消の記号の有無」列と突き合わせる
- 食い違った行の傾向(掠れた線か、細かい分数か)を記録し、次から「要目視」にする基準にする
一致しない行は、そのページだけ向きと解像度を整えて渡し直す手があります。結果が良くなる保証はないので、最後の判断は、原本を見る人間が持ちます。
個人情報を渡す前に決めておくこと
全部事項には、所有者や債権者の氏名と住所が載っています。第三者の個人情報を含む書類をAIに渡すことになるため、渡し方を先に決めます。
- 自分の不動産以外のものは、渡してよいかを先に確認する。取引先や相続の相手方の情報なら、本人や依頼元の了解が前提になる
- 名義人の氏名を「甲」「A」「B」のような記号に置き換えてから渡す方法がある。表の構造と順位番号、受付番号は残るので、時系列と共有関係は読める。記号と実名の対応表は、手元に残して照合に使う
- 住所は丁目・番地を削り、市区町村名までにする。ただし、住所の一致確認が目的なら人が原本で見る
- 使う環境のデータの扱い(会話内容の保存・学習への利用)の設定は、利用前に確かめる
置き換えると、名義人の同一性を確かめる作業は人の側に残ります。AIに渡す情報量を減らすほど安全になる代わりに、AIに任せられる範囲は小さくなります。
住所変更登記の義務化と、名義人の住所の突き合わせ
登記を読むとき、見落としやすいのが名義人の住所と現住所のずれです。法務省の特設ページによると、住所や氏名・名称の変更があった場合は、変更の日から2年以内に登記する義務があります。令和8年4月1日より前に変更があったものも対象で、その場合は令和10年3月末までに登記が必要です。正当な理由なく義務に違反した場合は、5万円以下の過料が科される可能性があります。
そこで、Claudeに次のような依頼を足すと、確認のきっかけになります。
甲区の現在の所有者の住所と、乙区の抵当権者・債務者の住所を
一覧にしてください。登記された住所と、私が伝える現住所が
異なる名義人を挙げてください。食い違いが出ても、それが登記の義務違反に当たるかどうかを判断するのは、登記の専門家です。ここでAIに頼めるのは、食い違いの「候補」を挙げる作業までです。
AIに任せない範囲
登記の読み取りは、契約書や重要事項説明書の点検とは役割が違います。重要事項説明書の点検でAIが担える範囲と宅建士の仕事の境目は、重要事項説明書のチェックをAIに任せられるかで扱っています。登記は、その前提になる権利関係を、自分の目で理解するための材料です。
Claudeの表は、次の用途に向いています。
- 数十行ある乙区の経過を、時系列で一覧にして全体像をつかむ
- 司法書士や不動産会社に確認したい質問の下書きを作る
- 相続や売却の準備で、必要な書類の抜けを洗い出す
一方で、次の判断は、表の出力を根拠にせず専門家に確認します。
- 抵当権の抹消登記が完了しているかの最終判断
- 共有持分の割合の確定
- 登記の記載から、実際の権利が有効かどうかの法的な評価
PDFを読む作業の一般的な進め方は、保活の点数表PDFを読み込む手順と共通します。空き家の登記や修繕の記録を一緒に整えるなら、空き家管理の点検記録の整理も参考になります。
まとめ
登記簿謄本をClaudeで整理するときの肝は、区をまたぐ前後を受付番号で決めることと、抹消の記号を独立した列で確かめることです。PDFの出どころ(証明書か登記情報か)、スキャンの品質、渡す個人情報の範囲を先に決めておけば、表は権利関係をつかむための下書きとして使えます。最終的な確認は、原本と専門家の目で行います。