Claudeで家賃滞納の督促文面を段階別に作る手順と弁護士へ渡す線引き
家賃滞納の連絡・再依頼・保証人への通知をClaudeで下書きする手順と、催告書や契約解除予告の手前で止めて弁護士に渡す線引きを、民法の条文とUsage Policyで示します。
家賃の滞納は、管理会社の担当者やオーナーが毎月どこかで抱える連絡業務です。文面の下書きはClaudeに任せやすい作業ですが、契約解除につながる書面まで任せると、AnthropicのUsage Policyが高リスクとして扱う領域に入ります。
そこで、督促を4つの段階に分け、Claudeに書かせる範囲と人が決める範囲を段階ごとに決めます。1〜3段階は連絡文の下書き、4段階は弁護士へ渡す事実の整理までです。
滞納の段階ごとに、Claudeに任せる範囲を分ける
督促の文面は、段階が進むほど書面の法的な重みが増します。最初の連絡と、契約解除を予告する書面とでは、同じ「お願いの文章」でも扱いが違います。
次の表は、滞納の段階を4つに分けた例です。月数や送る順番は、契約書や管理委託契約書の定めと社内の運用で変わるため、あくまで組み立ての叩き台として使ってください。
| 段階 | 文面の目的 | Claudeに任せる範囲 | 人が決めること |
|---|---|---|---|
| 1滞納直後 | 文面の目的行き違いの確認 | Claudeに任せる範囲下書きまで | 人が決めること送る日、請求額 |
| 2再度の依頼 | 文面の目的期限を区切った支払依頼 | Claudeに任せる範囲下書きまで | 人が決めること期限日、分割の可否 |
| 3保証人・保証会社 | 文面の目的滞納の事実の連絡 | Claudeに任せる範囲事実を引用した下書き | 人が決めること連絡先、連絡の順序 |
| 4法的手続きの前 | 文面の目的催告・解除・請求の検討 | Claudeに任せる範囲時系列の整理まで | 人が決めること内容のすべて(弁護士) |
段階4でClaudeに頼むのは、書面の作成ではなく事実の整理です。その理由は、後半の「催告書と契約解除予告の手前で止める」で条文とあわせて説明します。
Projectsに案件の前提と文面の規則を置く
毎回の依頼に口調や禁止表現を書き直すと、段階によって文面がぶれます。Claudeのプロジェクトには、資料を置く知識ベースと、そのプロジェクトのチャットに効く指示欄があります。指示の例として、サポート記事は「より丁寧な口調にする」「特定の役割の視点で答える」といった使い方を挙げています。
家賃督促の文面規則は、この指示欄に置くのが向いています。
あなたは賃貸管理会社の事務担当の文面作成を補助する。
・入居者への文面は、丁寧で事務的な口調にする。責める表現、
「至急」「厳重に」などの強い語、将来の不利益をほのめかす表現は使わない
・金額・日付・契約番号は、貼り付けた元データからそのまま引用し、
計算し直さない。元データに無い数字は「要確認」と書く
・行き違いで入金済みの場合は連絡をもらう旨の一文を必ず入れる
・契約の解除、明渡し、法的手続き、遅延損害金の金額の確定については
文面を作らず、「担当者または弁護士の判断が必要」とだけ答える最後の1項目が、段階4への歯止めです。指示欄で断るよう決めておくと、「解除の通知も書いて」と頼んでしまっても、書面がそのまま出てきません。
知識ベースには、自社の賃貸借契約書のひな形、滞納時の対応フロー、過去に送った文面の型を置けます。ただし、入居者ごとの氏名や連絡先、滞納額の明細は、案件の都度チャットに貼る形に分けておくと、プロジェクトの共有範囲を広げたときに個人情報が漏れる心配が減ります。
段階1滞納直後は、入金確認と行き違いの確認に絞る
最初の連絡は、相手を責めずに事実を伝える文面にします。入金が遅れているのか、振込が行き違っているのかは、この時点では分かっていないからです。
入力するのは、契約番号(氏名は仮名や入居者番号に置き換えても構いません)、対象月、請求額、支払期日、入金口座です。Claudeに計算はさせず、元の請求データから引用させます。
次の滞納情報から、入居者宛ての確認メールを下書きして。
契約番号: A-0123 / 対象月: 10月分 / 請求額: 85,000円 / 支払期日: 10月末日
・口調は丁寧で事務的に。理由を決めつけない
・入金済みの場合の連絡先を最後に入れる
・返信の期限は送付日から7日後とする出てくる文面は、例えば「A-0123のご契約について、10月分のお家賃85,000円の入金を確認できておりません。行き違いでお支払い済みの場合は、お手数ですがご連絡ください」のような形になります(例示です)。
この段階の文面には、遅延損害金や契約解除への言及を入れません。まだ「入金が確認できない」という事実しか分かっていないので、後続の段階に持ち越します。
段階2再度の依頼は、期限と相談窓口を並べる
返信がない、または入金の見込みが示されない場合の2通目です。1通目との違いは、日付の期限を区切ることと、相談できる窓口を示すことです。
Claudeには、1通目の文面と送付日を貼って、続きを書かせます。
前回(10月5日送付)の確認メールへの返信がありません。
同じ契約について、お支払いの期限を11月10日と区切った依頼文を
下書きして。前回の送付日と請求額を本文に入れ、分割や日程の
相談を受け付ける窓口(電話番号は〇〇)を案内する。分割払いを受けるかどうかは、オーナーの意向と管理委託契約の範囲で決まる事柄です。下書きの時点では「ご相談ください」と窓口を示すにとどめ、具体的な分割条件をClaudeに案出させないでください。条件を決めるのは人です。
落とし穴
期限の日付が元データとずれる
「7日後」「10日以内」のような相対的な指定を暦の日付に直す作業は、数え間違いが起きても気づきにくい箇所です。送付日と期限日は人が決めて、文面に日付で直接指定します。日付は計算させず、引用させます。
段階3保証人と保証会社には、事実を並べた通知にする
滞納が続く場合は、連帯保証人や家賃保証会社への連絡が入ります。ここでの文面は、お願いではなく事実の通知です。滞納した月、各月の請求額と入金額、これまでに入居者へ連絡した日と手段を、時系列で並べます。
次の表をもとに、連帯保証人宛ての通知文を下書きして。
・滞納月、請求額、入金額、入居者への連絡日(段階1・2の送付日)を
表から引用して箇条書きにする
・評価や推測は書かず、事実だけを並べる
・保証人が内容を問い合わせられる連絡先を入れる保証人に関しては、民法に2つ押さえておく点があります。
- 委託を受けた保証人から請求があったとき、債権者は主たる債務の元本や利息などの不履行の有無と残額を、遅滞なく伝えなければなりません(民法458条の2)
- 保証人が個人で、不特定の債務を対象とする根保証では、上限額である極度額を定めなければ契約の効力が生じません(民法465条の2)
つまり、保証人から滞納状況を尋ねられたときの答えは、請求額の内訳まで示せる状態にしておく必要があります。保証人宛ての文面を作る前に、契約書の保証人欄にある極度額を確認し、請求額がそれを超えていないかは人が見てください。
保証会社への連絡は、保証委託契約に定められた方法と期限に従います。通知の様式が保証会社ごとに決まっている場合は、その様式に入る項目をClaudeに渡して埋めさせるほうが、自由な文面より手戻りが減ります。
催告書と契約解除予告の手前で止める
段階4に進むと、文面の役割が変わります。ここからの書面は、相手に支払いを促すだけでなく、契約を解除する前提を作る意味を持ちます。
民法541条は、債務を履行しない相手に相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ契約を解除できると定めています。ただし、期間経過時点の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微なときは解除できません。
催告なしで直ちに解除できる場合は、民法542条に列挙されています。「債務者が履行を拒絶する意思を明確に示したとき」「催告しても履行される見込みがないことが明らかなとき」などです。滞納が何か月に達すれば解除できるかは、条文からは決まりません。個別の事情を踏まえた法的判断になります。
この判断をClaudeに任せない理由は、2つあります。
- Usage Policyの高リスク領域に当たる。法律分野では「個人の法的な権利・義務・責任、または具体的な法的事案で何をすべきかを助言すること」「本人が署名・提出する法的文書を準備すること」が列挙されています。住居分野では「賃貸借の終了や立ち退きの開始」が含まれます
- AIの出力を人が実質的に見直す要件がある。高リスクな推奨は、変更する権限を持つ有資格者が実行前にレビューし、判断の対象になる個人にAIの利用を伝える必要があります
一方、すでに人が決めた判断を実行に移す作業や、社内の下書き・要約は、条文の除外に挙がっています。段階1〜3の連絡文は、担当者が「連絡する」と決めた後の下書きなので、この除外の範囲に収まります。解除するか、明渡しを求めるか、どの書面を送るかをClaudeに選ばせると、除外から外れます。入居審査での同じ線引きはClaudeで入居審査をしてよいかで扱っています。
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、一般の法律事件に関する鑑定・代理・和解などの法律事務を業とすることを原則として禁じています。管理会社がオーナーに代わって滞納者と交渉する範囲がどこまで許されるかは、管理委託契約の内容と弁護士の見解に左右されます。AIがどこまで関わってよいかの整理は弁護士法72条とAIの契約書レビューにあります。
弁護士へ渡す事実の整理をClaudeで作る
法的手続きへ進む場合、弁護士が最初に必要とするのは、時系列の事実です。この整理は社内の要約にあたるので、Claudeに任せられます。
次の入金履歴と連絡記録から、弁護士に渡す事実の整理表を作って。
・列は「日付 / 出来事 / 金額 / 根拠資料(契約書の条項・メール・入金明細)」
・判断や評価は書かず、記録にある事実だけを並べる
・記録に無い項目は「記録なし」と書き、補完しない
・最後に、元データに矛盾がある箇所を別に列挙する「補完しない」と「矛盾の列挙」が効くところです。滞納額や連絡日がずれたまま弁護士に渡ると、手続きの前提が崩れます。表ができたら、請求額と入金額の合計を人が検算してから渡してください。
弁護士に渡したあとの流れは、裁判所の手続きの種類で変わります。民事訴訟法には、60万円以下の金銭の支払を求める訴えで利用できる少額訴訟(368条)と、書記官が申立てにより発する支払督促(382条)があります。どちらを選ぶか、あるいは交渉で足りるかは、弁護士が事案を見て判断することです。
遅延損害金と時効は、文面に書く前に人が確かめる
督促の文面に「遅延損害金も請求します」と書きたくなる場面があります。金額の確定は、Claudeに任せないでください。
- 金銭債務の不履行による損害賠償は、遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で定まり、約定利率が法定利率を超える場合は約定利率によります(民法419条1項)
- 法定利率は年3%を基準に、3年を1期として変動します(民法404条)
- 債権者は、遅延損害金について損害の証明を要しません(民法419条2項)
賃貸借契約書に遅延損害金の率が書かれている場合は、その率が優先される可能性があるため、契約書の条項を人が確認したうえで、金額は検算してから文面に入れます。
時効にも注意が必要です。債権は、権利を行使できると知った時から5年で時効により消滅します(民法166条1項1号)。催告をすると時効の完成は6か月間猶予されますが、猶予されている間の再度の催告には、猶予の効力がありません(民法150条)。裁判上の請求や支払督促は、別の完成猶予の事由として定められています(民法147条)。
督促の連絡を重ねても時効が延びるとは限らない、という点が実務の落とし穴です。古い滞納を抱えている場合は、督促文を増やす前に、時効の起算点を弁護士に確認してもらってください。
送付前に確認する項目
Claudeの下書きを、そのまま送らないための確認項目です。社内の承認フローに組み込んでおくと、段階が進むほど確認を厚くできます。
送る前に人が確認する項目
- 金額・日付・契約番号が、元の請求データと一致している
- 文面に、脅す表現、強い命令調、将来の不利益をほのめかす言い回しがない
- 入居者の勤務先や近隣など、契約当事者以外へ滞納を知らせる記述がない
- 契約の解除、明渡し、法的手続きに触れる記述がない(触れるなら弁護士の確認を経る)
- 送付の記録(日時、手段、宛先)を残せる状態になっている
送付の記録は、段階3や段階4で時系列を作るときの元データになります。メールの送信履歴や書留の控えを、契約番号と紐付けて残す運用を先に決めておくと、整理表を作る手間が減ります。
売掛金の督促で同じ段階別の考え方を使う方法は、Claudeで売掛金の年齢調べをして督促メールを下書きする手順にあります。カスハラに近い入居者対応が増えた場合の記録様式は、カスハラ対応記録をClaudeで整理する手順で扱っています。
よくある質問
オーナー本人が督促する場合、解除通知もClaudeに下書きさせてよいか
Usage Policyの線引きは、誰が送るかでなく、Claudeに何を判断させるかで決まります。オーナーが解除すると決めた後の連絡文を下書きさせるだけなら除外に収まりますが、解除できるかの判断や書面の選択をClaudeに任せると高リスクの領域に入ります。解除の可否は条文だけでは決まらないため、弁護士に相談する選択肢があります。
入居者と連絡がつかない場合の文面もClaudeに作らせてよいか
連絡がつかない事実を並べた記録の整理は任せられます。居所を調べる、勤務先へ連絡する、といった手段をClaudeに考えさせることは避けてください。第三者への連絡は、入居者のプライバシーに関わる問題です。
まとめ
家賃滞納の督促は、段階1〜3の連絡文をClaudeに下書きさせ、段階4の手前で人と弁護士に渡すと、速さと安全性を両立しやすくなります。
Projectsの指示欄に口調と禁止表現、法的判断は断るという歯止めを置いておくと、段階ごとの文面がぶれません。金額・日付・遅延損害金・極度額の確認は、どの段階でも人が行います。解除や明渡しの判断を含む書面は、事実の整理表を作ってから弁護士に渡す流れが現実的です。